#インタビュー

【SDGs未来都市】愛知県名古屋市 | 新しい時代にふさわしい豊かな未来を創る!世界に冠たる「NAGOYA」へ

名古屋市 インタビュー

名古屋市役所総務局企画課

introduction

愛知県名古屋市は、県西部に位置する人口約232万人を有する都市です。特別区である東京都を除くと、横浜市・大阪市に次いで日本で3番目に人口が多く(令和2年度国勢調査)、強い経済力を基盤に、安定した雇用を生み出している地域です。さらに、名古屋市は昔から環境意識が高く、日本有数の大学が集まる地域といった特色もあります。

今回は、名古屋市のSDGsへの取り組みについて、名古屋市総務局企画課にお話を伺いました。

「ごみ非常事態宣言」をきっかけに環境への意識が高まる

–本日はよろしくお願いします!早速ですが、名古屋市の特徴について教えてください。

名古屋市:

名古屋市は、日本のほぼ中央に位置する都市で、鉄道や幹線道路、名古屋港を抱えるなど、広域の交流ネットワークの中心地です。

また、世界レベルの産業技術、大都市ならではの商業・サービス業の集積があり、強い経済力に裏付けられた安定的な雇用があるほか、日本有数の大学の集積地でもある点も特徴です。

–名古屋市は環境への意識が高いと伺いましたが、その理由はなんでしょうか?

名古屋市:

名古屋市の環境を語る上で、重要なターニングポイントとして挙げられるのは、市が1999年に出した「ごみ非常事態宣言」です。当時、本市のごみ処理量は、一貫して右肩上がりで増え続け、1998年度には年間100万トンに迫り、焼却・埋立の両面で処理能力の限界を迎えつつある状況になっていました。

そうした状況を受け、港区にある藤前干潟に新しい埋立処分場を作る計画を進めていました。

藤前干潟

しかし、藤前干潟は、渡り鳥の重要な飛来地であったため、埋め立て中止を求める声も多く、「快適で清潔な市民生活と自然環境の保全との両立」をいかにして図るべきか悩み抜いた末、埋立処分場計画の中止を決断したんです。ごみの埋立地を増やすのではなく、ごみ非常事態宣言を発表し、市民や事業者とともに大幅なごみ減量へ向けて一歩を踏み出すこととしました。

–「ごみ非常事態宣言」とは、どのような取り組みなのでしょうか?

名古屋市:

宣言を発表することで、名古屋市のごみ処理の窮状を率直に伝えるとともに、市民・事業者・行政が協力し、プラスチック製および紙製容器包装の新資源収集を始め、徹底した分別により、ごみ処理量を2年間で20万トン削減するという目標を掲げました。

–可燃ごみ・不燃ごみの他に、紙製容器包装、プラスチック製容器包装などに分けてごみを捨てるということですか。慣れないうちは大変そうですね!

名古屋市:

そうですね。開始当初は、2か月間で10万件を超す苦情・問合せが市役所に寄せられるなど、混乱もありました。ですが、市民や事業者の皆さまによる分別の徹底や、中が透けて見える指定袋の導入など工夫を重ねたことで、目標を達成することができたんです。現在では、ごみ非常事態宣言当時と比較して、約4割ものごみ削減に成功しています。

ごみ埋立地の様子

–埋立地がかなりスッキリしましたね!

名古屋市:

はい。しかしこれは、行政だけで達成できたことではありません。

地域の方々が、集積場所で袋の中身を分別し直すなどの取り組みを粘り強く続けてくださいました。こうした市民や事業者の皆さまの協力がなければ、実現できなかったと思っています。

–行政と市民が一体となって取り組んだ結果だったのですね。

名古屋市:

そう思います。「ごみ非常事態宣言」を乗り越えたことで、名古屋市には市民・事業者と行政が一丸となって課題を乗り越える「協働の文化」が根付いたと考えています。

その土台が、その後の、「自然の叡智」をテーマとした2005年の万博「愛・地球博」や2010年の「生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)」へとつながっています。

–環境意識の高さには、そのような背景があったのですね!

名古屋市:

現在は、環境への取り組みも含めSDGsにしっかりと取り組んでいます。名古屋市は、今後第20回アジア競技大会の開催や、リニア中央新幹線の開業も控えていますからね。本市の特性や特長を活かして、長期的な展望に立った持続可能なまちづくりを進めています。

–ぜひ具体的な取り組みについて教えてください!

SDGs未来都市・名古屋市が行うSDGsの取り組み

–ここからは、名古屋市が現在行っている取り組みについて伺います。具体的な取り組み内容について教えていただけますか?

名古屋市:

名古屋市は、2019年に「SDGs未来都市」に選定されました。名古屋市は、SDGs未来都市として、SDGsの理念に基づき誰一人取り残さない、経済・社会・環境が調和した持続可能で強靭な都市の構築に取り組んでいます。まずは、経済・社会・環境の3側面からそれぞれ取り組みを紹介します。

経済 :交流を促進し、新たな価値を創出!「イノベーション戦略」

中小企業のイノベーション創出の促進やスタートアップの支援、MICEの推進など、新たな価値の創出に取り組んでいます。

社会:来たれアジア!リニア!「都市機能強化戦略」

最先端モビリティ都市の実現に向けた取り組みやリニア中央新幹線開業に向けた名古屋駅周辺のまちづくりなど、大交流を支える都市機能の強化に取り組んでいます。

環境:持続可能な未来へ!「環境都市推進戦略」

低炭素なライフスタイル・ビジネススタイルへの転換の促進、緑に親しめる環境づくりや生物多様性の保全など、環境都市の推進に取り組んでいます。

名古屋が誇る協働力を礎につなぐ未来創造プロジェクト「SDGs未来創造クラブ」

このように、3側面すべてに統合的に取り組んでいます。また、SDGs未来都市として、名古屋市の特徴的な取り組みを紹介します。

もともと名古屋市には、市民・市民団体、企業、教育機関、行政が協働で作る環境活動のネットワークとして2005年に開学した「なごや環境大学」があるんですが、SDGs未来都市に選定を受けたことを契機に、この協働体としての基盤を活かし、更なるネットワークの拡大を目指して新たに「なごや環境大学SDGs未来創造クラブ」を設立しました。

「SDGs未来創造クラブ」では、持続可能なまちづくりの担い手として「まちづくりプロジェクト」「人づくりプロジェクト」の2つのプロジェクトに取り組んでいます。

なごや環境大学とは

市民・市民団体、企業、教育機関、行政が立場や分野をこえて協働で運営し、知識や経験、問題意識を持ち寄って学び合うネットワーク。子どもから大人まで、どなたでも参加可能。「持続可能な地球社会」を支える「人づくり・人の輪づくり」を進め、行動する市民、協働する市民として、「共に育つ(共育)」ことを目的とするもの。

参考:なごや環境大学

–具体的に教えてください。

名古屋市:

「まちづくりプロジェクト」では、低炭素モデル地区である中区錦二丁目をモデルエリアに、団体・企業等のあらゆる主体が参画して、地域課題等を検討するワークショップやマルシェを開催するなど、まち全体でSDGsの意識向上や浸透・波及に取り組んでいます。

マルシェでは、新しい暮らしを提案する物販やファッション、フェアトレードの紹介、錦二丁目のビル屋上で採れたハーブを使ったメニューの提供などをしました。

–屋上菜園で採れた食べ物をマルシェで買うことができるのですね。自分の住むまちではどんなSDGsの取り組みがされているのか、肌で感じることができて素敵です。

名古屋市:

そうですね。また、「人づくりプロジェクト」では、2030年を見据え、次世代を担う子どもたちへのSDGsの浸透に取り組みました。

ゲームや動画等を通じてSDGsについて楽しく学べるウェブサイト「なごやSDGs街(マーチ)」を開設したり、東山動植物園や名古屋市科学館などの施設を「SDGsフィールド」と設定して、体験型学習を推進したりして、子どもたちへの普及に取り組んでいます。

業種を越えてつながる場「名古屋市SDGs推進プラットフォーム」

新たに注力している取り組みを紹介させてください!2021年5月に設立した「名古屋市SDGs推進プラットフォーム」です。これはSDGsに取り組んでいる企業や団体、大学に会員となっていただき、業種を越えたパートナーシップを構築し、名古屋市全体でSDGsの取り組みを促進させることを目的としています。

–「名古屋市SDGs推進プラットフォーム」では、具体的にどのようなことを行っていますか。

名古屋市:

会員となっていただいた企業や団体のSDGsへの取り組みをウェブサイトで紹介し「見える化」したり、セミナー・交流会を開催したりすることで、企業等のSDGsの取り組みを支援するものです。

今年度は、会員同士の交流を意識して取り組んでいきたいと考えています。SDGsという共通認識で集まった会員が交流や意見交換を重ねることで、他業種との連携や、新たな事業の着想に貢献できればいいなと考えています。

–プラットフォームで人々が交流することで、新しいアイデアが生まれ、名古屋市全体としてのSDGsの取り組みもより前進しそうですね!

名古屋市:

私自身も、市全体のSDGsの発展に繋がることを期待しています。現在は300を超える企業や団体が参加してくださっていますが、今後はより多くの方にこの取り組みの趣旨を理解していただき、地域全体でSDGsを盛り上げていけたらと思っています。

名古屋市SDGs推進プラットフォーム

最後に、普及啓発について、お話しします。市民の皆様にSDGsを知ってほしいなという思いで、SDGsの各ゴールが示す目標や名古屋市の取り組み内容についてまとめた冊子「SDGsってなに?」を制作・配布しています。

ぜひ冊子を見ていただきたいんですが、マンガを使ってSDGsを紹介するなど、子どもからお年寄りまで幅広い世代へアプローチすることを意識しています。

さらに、若い世代へのアプローチとして、市内大学生向けのアイデアコンテスト「SDGs IDEA FORUM」を開催しています。地域の課題やその現状を大学生に伝え、解決するアイデアを考えてもらったんです。

これまで2回開催しましたが、昨年度のコンテストでは、36件のアイデアが集まりました。その中から特に優秀だった8件のアイデアを選出して、決勝コンテストを開催しました。

–たくさんの大学が集まる名古屋ならではの取り組みですね。

名古屋市:

はい。SDGsの認知度の高まりと意欲的な学生の多さを感じ、とても有意義だったと思っています。

行政と市民が一体となって、より良いまちに

–最後に、名古屋市の今後の展望について教えてください。

名古屋市:

現在の取り組みを大切に継続しつつ、SDGsについての認知・理解を高めることで、より多くの市民・企業・団体を巻き込んでいきたいですね。

名古屋市は今後、リニアの開通で交流人口がさらに増えることが予測され、飛躍のチャンスを迎えています。市民と行政が一体となって課題を解決できる地域特性を活かして、市民の皆さんと協力しながら、今後はSDGsにまつわるさらに多くの課題を解決していきたいですね。

–更なる飛躍へむけた名古屋市の取り組みに、今後も注目ですね。本日は、ありがとうございました!

関連リンク

名古屋市 公式サイト https://www.city.nagoya.jp/