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ウォームハーツコーヒークラブ|マラウイのコーヒーが現地の給食支援になる。売上の100%が寄付になる仕組みとは

ウォームハーツコーヒークラブ

ウォームハーツコーヒークラブ 山田真人さん インタビュー

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山田 真人

東京都北区赤羽出身で、英国通信会社のMobellの社員。日本のセールス、マーケティング担当。主に訪日外国人向けの通信事業を、ビジネスとして実施し、その売り上げをチャリティ事業に繋げています。

Mobellのチャリティであり、日本のNPOであるせいぼじゃぱんの理事長を務め、東アフリカのマラウイの給食支援を展開しており、その事業の一環として、マラウイコーヒーを通して、現地の給食支援をする事業も展開しています。現在は、こうしたMobellのビジネス、チャリティのネットワークを生かし、オンライン留学の展開や、学校、企業との協働の機会も広げています。活動のミッションは、「学校給食を通して、世界中の子供たちを飢餓から救う」ことと同時に、「チャリティの文化を日本に広げるムーブメントを作る」ことです。そのために、学生ボランティアを始め、多くの人々との繋がりから、社会変革を目指し、活動しています。

introduction

2016年よりマラウイの給食支援を行っているウォームハーツコーヒークラブ。マラウイ産コーヒーの売上の100%を給食支援に寄付しています。本日は、美味しいコーヒーで社会貢献ができる仕組みと支援の内容、そしてちょっと珍しいマラウイ産コーヒーの魅力について、ウォームハーツコーヒークラブの山田さんにお話を伺いました。

コーヒーの売り上げが100%寄付になる仕組みとは?

–はじめにウォームハーツコーヒークラブの事業内容をお聞かせください。

山田さん:

私達は南アフリカ・マラウイの学校給食支援を行っているNPO団体です。マラウイ産のコーヒーを販売し、その売上を100%学校給食支援として寄付しています。

–販売価格の一部が寄付になるというのはよくありますが、全額というのはすごいですね。どういった仕組みなのでしょうか。

山田さん:

NPO団体なので法人の性格上、利益を発生させることができません。ただ、団体を運営して行くうえで必要となる運営費や人件費は、ウォームハーツコーヒークラブの活動に共感してくれた支援企業3社から出していただいています。

<寄付・各社の協賛の仕組み>
<寄付・各社の協賛の仕組み>

–団体を運営するための費用は別の企業から捻出されているので、お客さんがコーヒーに支払ったお金はそのまま、全額が寄付されるということですね。

山田さん:

はい。協力会社であるアタカ通商がコーヒー農園からコーヒー豆を買いつけて生豆を提供してくれます。それをウォームハーツコーヒークラブが販売するという形です。

–なるほど。実際の運営には複数社が関わっているのですね。

山田さん:

そうですね。販売するコーヒー豆の焙煎・梱包・配送はMobell、LIVE COFFEEの2社が負担していますので、ウォームハーツコーヒークラブ単体では販売だけを行っています。

フェアトレード認証も取得した、深入りで濃い味わいのマラウイコーヒー

–マラウイコーヒーについて詳しく教えて下さい。どんな特徴がありますか?

山田さん:

ウォームハーツコーヒークラブで扱っているのは、100%アラビカ種です。風味は一般的なアフリカコーヒーでイメージされるような深煎りで濃い味のコーヒーです。タンザニアやエチオピアのコーヒーも有名ですが、その風味にすごく似ていますね。

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<マラウイコーヒーの豆>

–濃いコーヒーをしっかり飲みたいという人向けですね。マラウイという場所は、もともとコーヒー作りに適した場所だったのでしょうか。

山田さん:

正直、ものすごく適している場所ではないんです。コーヒーベルト(コーヒー栽培に適した地帯)というのがあり、ここに位置する国としてはブラジル・インドネシアが有名です。マラウイはこのコーヒーベルトより少し緯度が低いところにあります。世界一適している場所とは言えませんが、でもマラウイのコーヒーもすごく美味しいよと自信を持って言えます。

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<コーヒー農園とコーヒー豆を洗浄する様子>

–なるほど。マラウイコーヒーはフェアトレード認証を取っていると聞きました。

山田さん:

コーヒー豆を栽培しているムズズコーヒー協同組合は2011年から認証を取っています。フェアトレード認証を得るとプレミアムという奨励金が支払われます。マラウイにはそうしたプレミアムで建てている保育園やアグリビジネススクールがあり、コーヒーによってコミニュティが活性化されているなと感じました。

–コーヒーによって農家だけでなく、生産地にも貢献できるのですね。

1日1万6,000食を子どもたちへ届ける

–マラウイでの給食支援の取り組みについて詳しく教えて下さい。

山田さん:

給食支援は2016年から活動を始め、今は現地にいる7人のスタッフとともに、1日約1万6000人程度の子どもたちに学校給食を届けています。

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<現地スタッフ>

–1日に1万6000人!すごい数ですね。

山田さん:

実際に食事を作ったり配ったりするのは、現地のボランティアや子どもたちのお母さんです。スタッフはそれぞれ小学校や幼稚園に行って学校給食の作り方、出し方を伝えます。パートナーシップを結んだ小学校や幼稚園に学校給食の制度を根付かせる「学校給食のフランチャイズ」といった感じの活動です。

–パートナーシップを結んでいる学校はどのくらいあるんでしょうか。

山田さん:

概算で幼稚園が40校、小学校12校になります。南部に団体のマラウイスタッフがいるため、定期的に様子を見てスタッフが北部に訪問し、給食を配分しています。そのため、貯蔵施設を持っていたり、倉庫に鍵をかけられるなど、管理体制の整っている学校と主に提携を進めています。

–子どもたちはどんな給食を食べているのですか?

山田さん:

ポリッジという、とうもろこしを砕いてお湯で戻したお粥に少し砂糖を入れたものです。子どもたちが学校にカップを持っていくと、ボランティアやお母さんたちがそこにお粥を入れてくれる。これが朝の給食時の光景ですね。

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<給食を食べている子どもたち>

–給食支援の他に取り組んでいることはありますか?

山田さん:

赤十字と協力して、家庭での子どもたちの体調管理や衛生管理の仕方を教えるワークショップも行っています。また、日本ではマラウイ支援を広めるための講演会やイベントなども開催しています。

–日本とマラウイの両方で活動・発信をしているのですね。

きっかけは2015年のマラウイ洪水。乳幼児を救うため事業をスタート

–マラウイの給食支援を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

山田さん:

2015年にマラウイで大きな洪水があり、深刻な食糧不足に陥りました。そのときに5歳以下の乳幼児の死亡率がすごく上がってしまいました。学校給食なら子どもたちが安定して食事を摂れて、教育も受けられるため、その状況を救うために、現地では強く求められていました。現地のニーズもあり、一番良いソリューションとして学校給食支援が始まりました。

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<2015年洪水災害当時>

–もともとマラウイには給食制度はあったのでしょうか?

山田さん:

2011〜2015年に日本のあるプロジェクトが、給食制度を提供していました。実はアフリカの中でもマラウイは日本からのボランティアが多い国なんです。

–支援に際してコーヒー販売を選んだのはなぜでしょうか?

山田さん:

給食支援を始めるときにサポートしてくれた企業がコーヒー関連会社だったからです。コーヒーがすごく好きだったとか、コーヒーにこだわりがあって始めたわけではなく、マラウイ支援を広めていくための方法としてコーヒー販売を選びました。もちろん、その後マラウイのコーヒーは、スタッフやボランティアも好きになりました。

マラウイの人々の生活を変えた給食支援

–給食支援によって、マラウイに住む人たちの生活にどんな影響がありましたか?

山田さん:

まず、去年・一昨年はコロナの蔓延でマラウイではロックダウンがありました。子どもが学校に行けなくなってしまったのですが、学校給食をやっていたおかげで、各家庭の状況を把握しているスタッフが多くいました。ですから、学校には来なくても、家庭訪問をして各家庭に食事を届けるということができました。

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<コロナ禍での支援の様子>

–学校給食支援がコロナ禍の支援にも繋げられたと。

山田さん:

はい。大変な時期が続きましたが、臨機応変に対応してうまく支援ができたのは、学校給食を通して、マラウイの人たちと繋がっていられたおかげだと思います。

–なるほど。他にも何か変化はありましたか?

山田さん:

身近なことでは、マラウイのお母さんたちの生活が変わりました。マラウイでは、大体ひとつの家庭に子どもが4人くらいいます。日中、旦那さんは出稼ぎで都市部に行ってしまい、家にはお母さんしかいないことも多いので、家で子どもの面倒をみたり、子どもがお母さんの仕事を手伝っていたりします。

–子どもを見つつ仕事もしなくてはいけないとなるとお母さんは大変ですね。

山田さん:

はい。ですから、お母さんにとって子どもを預かってくれる学校という場所はすごく重要なんです。「給食が食べられるから学校に行こうね」って子どもに言うわけです。

–食事もあって教育も受けられる。学校給食が安定して供給されるようになったことが、子どもたちが学校に通うきっかけになったのですね。

山田さん:

子どもを学校に預けている間、お母さんは自分で仕事を見つけたり、農作物を売ったりして収入を得ることもできます。そういう環境を作り出せたのは学校給食の力だなと思います。

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<マラウイ家庭のお母さんと子供達>

–子どもだけではなくて、お母さんの生活も助かる。良いことづくしですね。では実際にコーヒーを購入しているユーザーさんの反応はいかがでしょうか?

山田さん:

コーヒー通の方はもちろん、そうでない方も毎朝飲むコーヒーとして楽しんでいただいている印象です。買った人の記憶に残りやすいコーヒーかもしれません。

–どういうことでしょうか。

山田さん:

例えばリビングで梱包のダンボールを開けてコーヒーを開封すると、一日中リビングがコーヒーの香りで充満するぐらいに香りが強いんですよ。香りの印象が強いというのはユーザーさんの声の中でも多いです。

–他にはどんな反響がありますか?

山田さん:

ユーザーさんの中にはもちろん、コーヒーをきっかけにマラウイに興味を持ったという方もいますが、実際にどうやって焙煎しているのかとか、マラウイ豆そのものについて知りたいという声はTwitterやInstagramから多く寄せられています。

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<コーヒー焙煎の様子>

–マラウイ産コーヒーというのは珍しいですものね。

山田さん:

それに応える形で、最近、焙煎してくださっているLIVE COFFEEの取材を行うなどしています。

マラウイの給食支援の輪をさらに広げていきたい

–今後の展望をお聞かせください。

山田さん:

マラウイ支援にはまだまだ広がりが必要です。給食のネットワークをもっと広めていきたいなと思ってます。

–具体的にはどのようなことでしょうか。

山田さん:

まずは給食のネットワークをもっと沢山の学校に広げたいと考えています。また、コーヒーによってマラウイのことを日本の皆さんに知ってもらう機会が増えたので、「現地・マラウイから始まった日本のNPO活動」という特徴を生かして、途上国支援に関心を持っている学校や企業に対する発信もより一層行っていきたいです。

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<日本で行っている講演会>

–活動そのものも、発信という意味でも広げていくということですね。

山田さん:

はい。学校でしたら良い学びの場にもなりますし、支援を検討している企業に対しても私達の給食支援は透明性のある活動として担保できます。情報交換をしたり、協力できる関係を日本に作ることで、日本にもチャリティーの文化を広げていけたら良いなと思います。

–活動の軸はマラウイに置いたままで、日本・マラウイ両国で支援の輪を今以上に広げていきたいということですね。本日は貴重なお話ありがとうございました。

関連リンク

HP:https://www.charity-coffee.jp/