#インタビュー

仲吉商事株式会社 | 天然素材の伝統工芸品をより身近なものにしたい

仲吉商事株式会社 屋田さん インタビュー

屋田 高路

1979年生まれ幼少期より中国・日本・オーストラリアで過ごし、

2002年、オーストラリア国立グリフィス大学国際経営学部を卒業

上海交通大学への語学留学を経て大手医療機器メーカーの台湾支社の立ち上げにかかわる。

2007年に帰国し、仲吉商事に入社。

仲吉商事では竹木製テーブルウェア・雑貨の新事業・ブランドの展開を進めながら

2011年〜2017年の間には海外経験を活かして日本貿易振興機構(ジェトロ)にて

輸出有望案件支援専門家として日本メーカーの海外進出を支援してきた。

現在は「本質を見極め、革新を楽しむ」を会社のミッションステートメントとして

竹・木製テーブルウェア・雑貨品の開発、国産の木を使った新製品開発を進めている。

Introduction 

業務用のテーブルウェアや雑貨などを展開している仲吉商事株式会社。サステナブルな素材として注目を集める「孟宗竹(もうそうちく)」を使った製品にも力を入れています。今回、代表である屋田さんに、製品に込められた想いや商品開発の背景についてお伺いました。

持続可能な天然素材の素晴らしさを多くの方に届けたい

まずは事業内容をお教えください。

屋田さん:

弊社は、竹や木を使用した食器やテーブルウェア、雑貨などの製造販売を軸に事業を展開しており、業務用竹木事業、家庭用竹木事業、素材開発事業の3部門があります。

それぞれの事業は、どのような特徴があるのでしょうか?

屋田さん:

業務用竹木事業では、主にコンビニのお箸やステーキの鉄板に敷く板などを取り扱っています。家庭用竹木事業は、ベビー・こども食器のブランド「agney(アグニー)」や、大人のこだわり竹製食器ブランド「RIVERET(リヴェレット)」、木製食器ブランド「taffeta(タフタ)」といった、家庭向けの製品を展開。素材開発事業では、持続可能な素材を日々開発しています。

さまざまな事業を展開されているんですね。

屋田さん:

そうですね。とはいえ最初からこの3部門があったわけではなく、1988年の創業当初は日用品や雑貨の問屋、輸入業を営んでいました。その後1993年に、それまでに培った海外販路の開拓や物流などのノウハウを活かして業務用製品を取り扱うようになり、自社ブランドは2013年から展開しています。

自社ブランドを立ち上げたきっかけは何かあったのでしょうか?

屋田さん:

天然素材の魅力をより多くの方に知ってもらいたいと思ったことがきっかけです。業務用の箸、ステーキの下に敷く板などの決まった形だけではなく、もっと自由な形で表現してお客様にお届けしたいと考えました。

素敵ですね。特にグラスは、竹で作ったとは思えない薄さで驚きました。

良質なのに手頃な価格。支えるのは最新技術


屋田さん:

グラスの厚さは2ミリです。業務用であればこの薄さで生産されることはありませんが、自社ブランドだからこそ攻めたものを追及できました。職人さんにはわがままを言いましたが(笑)

すごいこだわりですね!ただ、そのレベルを追求すると価格も高くなってしまうのではないでしょうか?

屋田さん:

そうですね。ここまでのレベルを追求した場合、通常であれば1つ数万円はすると思います。ただ、私たちは①自社が保有する竹を使って材料調達し、自社工場で製造、アフターフォローまで自分たちで行っている②職人さんの技術に加えて、加工機器をカスタマイズするなどの工業的なエッセンスも取り入れ、ある程度まとまった数を生産できる体制を整えているため、現在の価格で提供できるんです。

「伝統工芸×最新技術」で製品数を確保されているのですね。

屋田さん:

はい。私は以前、電子機器や医療機器を取り扱うメーカーに勤務していたので、機械に関するノウハウがあり得意分野です。現在の業界の現状を目の当たりにしたとき、これまで培った作業効率化の経験を活かす出番だと思いました。

業界の現状というのはどのようなものだったのでしょう?

屋田さん:

例えば先ほどの話にもあるように、まとまった数を作れないところですね。職人さんによって作られた伝統工芸品は、きめ細やかで美しく本当に素晴らしいものです。しかし、その分コストがかかったり、完成までに期間を要したりと、量産するのが難しく販売価格が上がってしまうという課題があります。

確かに良い物でも値段が高くては消費者は手を出しにくいですよね。

屋田さん:

そして売れなければ職人さんの生活も苦しくなってしまいます。

そこで伝統の良いところと工業の力を掛け合わせて、低価格で良いものを生み出せるようにするために、体制を整えてきました。まだまだ問題はありますが、今後も効率と品質の両方を高めつつ、天然素材を活かした製品作りに励みたいですね。

竹は環境破壊を食い止める有効性のある素材


素材に竹を採用している理由はありますか?

屋田さん:

サステナブルな素材であることが理由の1つです。私たちが使用している竹は「孟宗竹(もうそうちく)」という種類ですが、成長スピードがとても早い。

スギやヒノキなどの木は育つまで30年~50年かかるのに対し、孟宗竹は3年~5年で成長します。この世に、ここまでの成長力を誇る木はありません。

そんなに早いサイクルで成長することに驚きました。

屋田さん:

加えて、茎が地中を這うように広がる「地下茎」により、新たに竹を植えずとも勝手に生えてきます。このような特性から、最小限の土地の広さがあれば竹を育てられるんです。

地球規模で問題となっている森林伐採の抑止にもつながりそうです。

屋田さん:

はい。森林伐採によってCO2を吸収する木が減ってしまい、地球温暖化などの環境問題が起きています。竹は、これを食い止める有効な手段だと考えています。また、農薬や化学肥料がなくても成長するため、土壌汚染の心配もないんです。

竹を活用されている背景には、環境への配慮があるんですね。環境に対する思いもあるのでしょうか?

自然環境を「自分ごと化」するように受け止める


屋田さん:

学生時代を、自然豊かなオーストラリアで過ごしたことが大きく影響しています。当時からオーストラリアでは、「動物を守ろう」「環境を大切にしよう」という考えや、サスティナビリティの視点が浸透しており、多くの学生が美しい地球を残したいと一致団結する雰囲気がありました。それまで暮らしていた日本にはない光景だったので、当時の私は衝撃を受けましたね。

オーストラリアは種の持ち込みも禁止されているほど自然環境を守るルールが厳しいですよね。

屋田さん:

そうですね。そういった環境の中で生活すると、自分も自然環境について考えることが当たり前になりました。この時の経験で得た考え方が今の事業の根底にあります。

だからこそサステナブルな素材を用いてものづくりをされているんですね。

屋田さん:

はい。天然素材を使うことは、自然の力を借りることです。借りるということは、私たちは責任を持って素材選定から製品作り、アフターフォローまで責任を持って取り組まなければならないと思っています。

林業の将来を明るく活気溢れるものへ

ここまでお話を聞いて屋田さんの考えが非常によくわかりました。最後に、今後の展望を教えていただけますか。

屋田さん:

今取り扱っているのは、テーブルウェアや雑貨が中心ですが、消費者の方々の声に耳を傾けながら色々なものを作っていきたいですね。そのためにも、「日本の伝統技術」と「工業の良いところ」を掛け合わせる手法をさらに進めていく必要があると思うので、どんどん挑戦していきます。

他にも林業従事者の高齢化、減少を解決したい。林業従事者の高齢化や減少により、国内で使われる木材の7割は輸入に頼っていたり、国内産木材の値段が高騰し続けたりしている現状があります。輸入に頼ると輸送する際のCO2が発生してしまうので、環境への負荷も大きくなってしまいます。

この課題解決に向けても、ITや機械を導入することが重要だと考えており、自分たちに何ができるかを模索し、行動していきたいですね。

貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

仲吉商事株式会社 https://www.nakayo-shi.jp/