岡 春庭
愛媛県新居浜市生まれ。大学卒業後、(株)東芝に入社して、10年間重電部門の営業に従事してきたが、大企業での業務に飽き足らず中小企業診断士の取得を機に税理士事務所に転職。税理士の取得の後、税理士事務所を開設。中小企業の成長と発展に貢献することをミッションとして、各種ニーズに総合的に支援する部門を組織化して展開。税務監査・経営支援・資産税・FP・社会保険労務士・ITの専門家を擁してサービスを提供。著書に『これで勝つ!経営改革』『会社を黒字にするとっておきの経営革新述』『ここが間違いやすい!相続・贈与』。大企業だけでなく、むしろ中小企業こそSDGsに取り組まなければならないという信念のもと、税理士業界に先鞭をつけてSDGsの啓発に取組み中。業界で初めて神奈川県の「SDGsパートナー」と横浜市の「Y-SDGs」に登録。SDGs経営診断レーダーチャートを開発し、診断結果を基にクライアントのサステナブル経営の推進を進めている。
introduction
税理士は、税理士法に基づいて顧客に代わって確定申告したり、税務調査に立ち会ったりする税のスペシャリストです。税理士法人とは、税理士が税理士業務を組織的に行うことを目的にして設立する法人。いわば税のプロ集団です。そのひとつであるベイヒルズ税理士法人は、1988年に創業しました。ベイヒルズ税理士法人は税の専門家として、どのようにSDGsに貢献しているのでしょうか?今回は、代表社員の岡春庭さんにお話を伺いました。
税のスペシャリスト集団!税理士法人の事業とは
-本日はよろしくお願いします!お恥ずかしながら税金のことは苦手で、毎年、確定申告の時期になると右往左往しています。税理士法人はどのような業務を担っているのですか?
岡さん:
私たちは、クライアントであるお客様に代わって、税に関する仕事全般を行っています。具体的には、税務申告や税務相談、税務代理という仕事の種類があります。
-複雑な税務を代行してくれる頼もしい組織なんですね。
岡さん:
税金にまつわる業務は複雑なものが多いですからね。
個人のお客様も、法人のお客様も、それぞれ必要な手続きを、スペシャリストである税理士がお手伝いさせていただいています。
–個人と法人、2通りのクライアントがいるんですね。法人というと、企業がお客様になるということでしょうか。
岡さん:
そうですね。法人のお客様については、法人税申告書を税務署に提出したり、税務調査の立ち合いをしたりするのがメインです。助成金や補助金を受け取るためのサポートもします。
会社のお金に関わる部分なので、会社経営の重要な部分に関わる職業と言えますね。
-個人のお客様については、どのようなサポートをするのでしょうか。
岡さん:
個人のお客様には、確定申告や、相続税についての相談をよく受けます。
特に確定申告においては、困っていらっしゃる方が多く、年間700件以上お手伝いをさせていただいています。
-税に関する業務は、本当に多岐にわたっているんですね。
岡さん:
一言で税といっても、私たちの生活の様々な面で関わってきますからね。
お客様の様々なニーズに対応できるよう、各方面に精通した税理士たちが所属しています。
-まさに税のプロ集団なのですね!
ウミガメの涙に心打たれてー「SDGsって何だろう?」が出発点ー
-税理士法人が行うSDGsへの取り組み、どのような活動なのかとても気になります。
岡さん:
私たちの行っている社会貢献は、顧客である企業の経営戦略の1つとして、SDGsを盛り込んでもらえるように啓発・提案することです。
最近は、SDGsへの取り組みの有無が企業の価値をも左右するようになりましたからね。
-岡さんは、なぜ会社に対してSDGsを啓発しようと考えたんですか?
岡さん:
3年ほど前だったでしょうか。のちにSDGsに関する書籍『社長のためのSDGs実践経営』を共同出版することになる中島達朗さんのお話に感銘を受けたのが始まりです。
当時、SDGsについては、言葉を知ってる程度で、内容についてはよく知りませんでした。正直、ボランティアのようなものかと思っていたんです。
-SDGsがボランティアのイメージ、ちょっとわかる気がします。
岡さん:
そうですよね。その頃からSDGsについてよく耳にするようになったので、勉強のため、中島さんをお招きして事務所でセミナーを開催しました。そのセミナーで流れた動画の一場面がとても印象的で、SDGsって大事なことなんだなと感銘を受けたんです。
-どのようなシーンが印象に残ったのですか?
岡さん:
ウミガメの鼻に刺さったプラスチックのストローがなかなか抜けず、それを抜こうとしているときに、ウミガメの目から涙が出たシーンでした。
-海洋ゴミの問題ですね。海に捨てられたレジ袋を食べたり、釣り糸が絡まったりして命を落とす生き物が、今でもたくさんいるんですよね。
岡さん:
はい、そのような現実を知り、「なんて痛ましいことだろうか」と、ウミガメの涙が忘れられなくなりました。
私たち人間が作った経済至上主義社会がこういった弊害を生んだんでしょうね。食べ物も着る物もどんどん豊かになっていく一方で、遠いところで環境が破壊されたり生き物が傷ついているなんて、普段の生活では気づきませんからね。
-今でも「SDGsは大きすぎる話だ」とか「幅広くて焦点が定まらない」と言う人もいるようです。遠い海の生物の痛みを自分事に感じられた岡さんの感性が素晴らしいです。
岡さん:
SDGsは、理屈だけだと概念的なものですが、実行するためには、いかに「自分ごと」として考えられるかがポイントですよね。私も、その映像で気づいて初めて、鈍感ではダメなんだと思えるようになりましたから。
常に感性のアンテナを張り、心で物事を見るのはとても大切なことではないでしょうか。
-おっしゃる通りだと思います。SDGsの大切さに気づくきっかけは、理屈ではなく感性かもしれませんね。
中小企業の生き残りをかけ、SDGsを経営戦略に!
-では、岡代表がSDGsをビジネスに活かそうと思ったきっかけは何でしょうか?
岡さん:
2年位前に、トヨタの社長がSDGsに取り組むと大々的に宣言したんです。トヨタのような大企業は、下請けが20数次あると思います。親会社がSDGsに取り組んでいるのに、下請けとなる中小企業が何もしないわけには行きませんよね。
私たちのクライアントは中小企業が多いので、必ずSDGsに取り組むためのサポートが必要になる時が来ると考えたんです。
-なるほど。日本を牽引する大企業の一挙手一投足は、日本の経済界に影響を与えますよね。
岡さん:
クライアントが健康的な経営を続けてくれることが、我々税理士法人の存在価値に直結し、存続にも繋がっていきますからね。
SDGsの取り組みを推奨することは、中小企業のみでなく、当法人が生き残る術でもあるかもしれません。
経営者に向けた著書「社長のためのSDGs実践経営」を出版
-岡さんがSDGsの必要性を感じてから、どのような活動をしたのでしょうか?
岡さん:
株式会社ふるサポの代表取締役であり、SDGsコンサルタントである中島達朗さんと、SDGsに先端的に取り組んできた株式会社大川印刷の大川哲郎社長と一緒にセミナーを開いて啓発活動を始めました。それがスタートですね。
>> 大川印刷 SDGsインタビューは こちら
-岡さんはSDGsの著書を出版されていますね。
岡さん:
はい。『社長のためのSDGs実践経営』という書籍で、私と中島達朗さん、社会保険労務士の岡真裕美さんの3人で共著しました。これは自分が知りたかったことをまとめた本でもあります。
<書籍情報 はこちら >
岡さん:
SDGsに関する本を読んで、理論的な部分は理解できたのですが、「ではSDGsに取り組むにはどうすればいいの?」というところがわからなかったんですね。
-確かに、具体的な取り組み方法がイメージしにくいために、「SDGsは抽象的でとっつきにくい」と言われているのかもしれませんね。
岡さん:
そうですよね。同じような悩みを抱えた経営者の方もいるのではないかと思い、中小企業が取り組めるものを集めた本をつくってみようと思い立ったんです。
-経営者としては、まさに「それが知りたかった!」という点を書籍にまとめていますよね。着眼点や行動力が素晴らしいです。執筆のご苦労はありませんでしたか?
岡さん:
完成まで本当に苦労しました。一時は、出版を諦めようと思ったこともありました。しかし「SDGsを経営に役立てる方法を具体的に示した本を世に出したい」という気持ちも強かったし、出版社も決まっていましたしね。試行錯誤しながら、なんとかやり遂げました。
-読者の反応はどうでしたか?
岡さん:
横浜市立大学の影山教授に献本したのですが、「これは非常にいい本です。分かりやすいし、具体的だ」という感想をいただきました。学生や企業にすすめたい、とまで言っていただけたんです。
それを聞いて、執筆の苦労が報われたと感じました。レビューにも「SDGsにどう取り組んだらいいか分かった」などのコメントがあり、とても嬉しく思っています。
-反響が大きかったんですね。読者から、実際にコンサルを受けたいという依頼もあったんではないでしょうか?
岡さん:
はい。つい最近ですが、私たちの本を読んでくださった年商1000億円くらいの企業から、「SDGsのコンサルをやってくれないだろうか」というお話も頂きました。
好評!ベイヒルズ税理士法人独自のSDGs可視化ツール
-ベイヒルズ税理士法人では、具体的にどのようにSDGs活動を支援なさっているのですか?
岡さん:
まず、クライアント企業のSDGs経営診断を行います。
岡さん:
このチェックリストには、大項目として、CSR(社会的責任)、イノベーション(価値創造・将来性)、レジリエント(強靭性、復元性)、サステナブル(持続可能性)、ディーセントワーク(働きがい)という5つの項目があります。
-SDGsを網羅した項目になっているんですね。
岡さん:
それぞれの大項目の下に現在の取り組み状況についての細かい質問事項があるので、クライアントに回答してもらい、その結果を私たちがレーダーチャートにしてお渡しします。
-レーダーチャートで可視化できるのは、とてもわかりやすいですね。
岡さん:
このチャートはクライアントにも好評なんですよ。レーダーチャートにすることで、今現在、どれだけSDGsに貢献できているのか、ひと目でわかるのがいいですよね。
企業として改善すべきポイントもセットでクライアントに提案します。希望があれば、改善する過程もサポートしています。
-今までに改善された事例はありますか?
岡さん:
例えば、SDGs宣言書を作成してホームページに掲載することで、対外的に活動内容をアピールしたことがありますよ。
また、横浜市は未来都市に選ばれているので、クライアントが神奈川県内の企業なら「かながわSDGsパートナー」への登録や、横浜市のSDGs認証制度「Y‐SDGs」への登録支援を行うこともあります。
-認証登録の支援もしているんですね。
岡さん:
はい。他には、会社として「働き方改革をしよう」とか、「ペーパーレスにしてコストカットに力を入れよう」など、経営状況を総合的に判断しながら提案をしています。
-SDGsにどのように取り組んだらよいかわからないときに、とても頼りになりますね
岡さん:
ありがとうございます。私たちの取り組みは、中小企業の成長を後押しし、持続可能なビジネスを増やしていくことです。
中小企業が元気になれば、日本経済も元気になると言われていますから、社会全体の底上げにも繋がっていくと信じています。
-本日は、貴重なお話をありがとうございました。
ベイヒルズ税理士法人HP:https://www.bayhills.co.jp/