#インタビュー

【SDGs未来都市】おだわらSDGs実行委員会 |人と人とのつながりを大切に、地域で進めるSDGs

神奈川県小田原市 府川さん・廣田さん インタビュー 

introduction

神奈川県の西部に位置し、観光客が訪れる玄関口にもなっている小田原市。温暖で暮らしやすいからか、近年移住する人が増えています。そんな本市は2019年7月にSDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業に選定されました。人と人とのつながりを大切にした取り組みについて、小田原市役所企画部未来創造・若者課の府川一彦さん・廣田周作さんにお話を伺いました。

経済・社会・環境すべての面からSDGsにアプローチ

まずはSDGs未来都市に選定されるまでの経緯を教えてください。

府川さん:

小田原市は、国連が「持続可能な開発目標」を掲げる前からずっと、SDGsにつながる取り組みを進めてきました。初年度にSDGs未来都市に選定された都市の取り組みを見て、小田原市でも同様の取り組みを行っていたので、2回目の募集で手を挙げました。

結果、令和2年7月に、SDGs未来都市と、その中から10都市が指定される「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。

具体的には、どのような取り組みを進めているのでしょうか。

府川さん:

市役所の業務はほぼSDGsに関連しており、環境・福祉・教育など、どの目標に対してもゴールにつながる取り組みを進めています。

特徴的なものをピックアップすると、経済面では、寄木・漆器など地域に根付いている地場産業の後継者育成に注力してきました。社会面では、高齢者、障がい者、子育て家庭など支援を必要としている方々を、地域全体で支え合う「ケアタウン構想」を進めています。また、山を抱えた地域ですので森林の再生や里地里山の再生など、環境面にも力を入れてきました。

人と人とのつながりによる「いのちを守り育てる地域自給圏」の創造を目指しています。

「おだわら市民学校」で地域課題を解決する担い手を育成

経済面・社会面・環境面の取り組みをつなぐのが「おだわら市民学校」とのことですが、どのような活動をしているのでしょうか。

府川さん:

「おだわら市民学校」は、2年間で学ぶ大人の学校です。1年目の基礎課程では歴史を含めた市全体のことを学び郷土愛を育み、2年目は各分野で活躍する市民の方の講座を受けていただきます。卒業した方には、自分が興味をもった地域課題を解決する担い手として取り組んでもらうことを期待してつくりました。

少子高齢化や環境保全など、地域が抱える課題は複雑で難しくなっています。これまでのように行政主体のみでは解決が難しいので、市民協働・公民連携でみなさんで解決していくのが理想の形です。

卒業した方はどのような活動をしているのですか?

府川さん:

現在4年目なのですが、最初の卒業生たちは興味をもった環境保全の団体を立ち上げました。ゴミを減らす運動や河川清掃などを定期的に行っています。農業分野では、耕作放棄地の対策をする団体に卒業生が加わっています。

今後も、卒業生が市の課題解決の担い手になってくれるような、学びの循環をつくりたいですね。

人と人がつながるコミュニティ通貨「おだちん」でSDGsを普及

小田原市では人と人とのつながりを大切にしていらっしゃるとのことですが、SDGsにつながる取り組みもあるのでしょうか。

府川さん:

SDGs体感事業「おだちん」があります。

加盟しているお店に行って海岸のゴミ拾い活動をするなど、登録スポットでお店の方が独自に出したチケットでSDGsに関わる体験をすると、専用アプリに小田原市のコミュニティ通貨「おだちん」がもらえます。それぞれの体験チケットがSDGs上のどのゴールに近づいているかを表示するので、市民の方がおだちん集めを楽しみながらSDGsを意識できるようになっています。

廣田さん:

地域の社会的課題の解決を図る活動にポイントを利用し「地域活性化」と「SDGsの自分ごと化」を目指すもので、神奈川県のSDGsつながりポイント事業に乗る形ではじめました。

「おだちん」、つい集めたくなるネーミングですね。

廣田さん:

SDGsと聞くとハードルが高いと感じ、何をしたらいいか分からないという方がいます。そういう方に向けてのきっかけとして、普段の生活がSDGsにつながっていると感じてもらえるのがこのアプリの特徴です。2022年1月現在ユーザーは3,600人超、スポットは107か所あります。人と人がつながるしくみなので、アプリのユーザーを増やすことで市民のSDGsへの関心を高めることにもなると考えています。

市民と協力してSDGs認知度を高める取り組み

「おだちん」事業の他には、どのような方法で市民にSDGsを広めているのでしょうか。

府川さん:

市のSDGs関連の取り組みをまとめた冊子を配布しています。コミュニティFMの「おだわらSDGsユース・レイディオ」では、大学生パーソナリティがSDGsに関わるゲストとトークする番組があります。大学生からのするどい目線での質疑応答が繰り広げられていて、興味深い内容です。

また、地域のマスコミの方に取り組みを取材してもらうなどしています。発信の機会は今後も増やしていきたいですね。

おだわらSDGs実行委員会のお二人からみて、市民の方のSDGs認知度はいかがでしょうか。

廣田さん:

私自身SDGs担当になったのは2021年9月からで、SDGsについて詳しくはなかったのです。学びながら取り組みを進める中で、市民の皆さんの認知度は上がってきていると感じています。

府川さん:

市がSDGs未来都市に選定された当初はまだまだ知名度が低かったですからね。活動を続ける中で認知度が上がってきた印象です。最近は学校からの講演依頼が多くなっています。

学校ではどんな内容をお話しされるのですか。

府川さん:

先日はSDGsに取り組んでいる民間企業(おだわらSDGsパートナー)の中から8社に協力いただき、一緒に高校に行ってきました。生徒が関心に合わせて話を聞けるようパビリオン形式で各社の取り組みを説明していただきました。

おだわらSDGsパートナーとは

「持続可能な地域社会」と「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けて小田原市と共に取り組む企業・大学・法人等のこと。2022年1月現在192者が登録している。

SDGsに取り組んでいる企業のお話をお子さんたちが聞ける機会は貴重です。

府川さん:

学校の先生たちからも、「SDGsを授業で扱うようになったけれど、事例を学ぼうにもどこに相談したらよいか分からない」という声がありました。逆に企業側には、自分たちの取り組みを次世代に伝えていきたいという思いをもっている方も多くいらっしゃいます。

我々おだわらSDGs実行委員会が、学校と企業のニーズをつなげる役割を果たしたいですね。

小田原市が目指すのは「人と人のつながりを大切に、みんなで進めるSDGs」

今後の展望をお聞かせください。

府川さん:

認知度は高まってきましたが、普及啓発活動はさらに進めていきたいですね。

SDGsパートナー企業が増えたので、学校での講演などにも協力いただけるようになりました。パートナー企業の数を増やし、協力を得ながらSDGsをさらに広めたいです。

小田原市のテーマは「次世代」。SDGs達成期限の2030年には今の子どもたちが中心の世代になっているので、さまざまな方法で若い世代にSDGsを意識してもらうようなことを行いたいですね。

廣田さん:

人と人のつながりを大切にしてきた小田原市は地域コミュニティを活性化しており、全国的にも先進的な取り組みとなっています。地域コミュニティも絡めながら、SDGsをもっと幅広く理解していただく活動をしていきます。

府川さん:

SDGsは、詳しい人や関心の高い人がどんどん進むより、みんなで一歩ずつ進むことが大事だと思っています。多くの市民の賛同を得て、自分ごと化していただき、日々の生活で意識できる状態に近づけていきたいですね。

小田原市の取り組みに今後も期待しております。本日はありがとうございました。

関連リンク

小田原市HP
小田原市SDGs体感事業(おだちん)
おだわら市民学校