#インタビュー

パーソナライズ石鹸ブランド9.kyuu|石鹸づくりを通して環境問題に向き合う機会を

石鹸ブランド9.kyuu プロデューサー 菅野さん インタビュー

菅野 沙織

明治大学農学部農芸化学科卒。大学時代に学んだ発酵学、微生物学、環境学をきっかけに当時オーガニックの先駆けであった株式会社ナチュラルハウスに入社。自然化粧品・健康食品の開発を行い、その後独立。インド・モロッコなど旅をしながら世界の自然療法を学び、美容家としてこれまで500アイテム以上の商品を開発。現在はエシカルで循環できる化粧品開発の傍ら、大学や高校でビューティービジネスやSDGsについての講義を行なっている。

introduction

「自分だけの、自分らしい石鹸づくり」をコンセプトに、エシカルでサスティナブルなものづくりにこだわるパーソナライズ石鹸ブランド「9.kyuu(キュウ)」。今回はプロデューサーの菅野沙織さんに、事業内容やものづくりに対する思い、SDGsへの取り組み、今後の展望などをお伺いしました。

コミュニティと協業するサスティナブルなパーソナライズ石鹸ブランド「9.kyuu(キュウ)」

-はじめに事業内容を教えてください。

菅野さん:

9.kyuuは、その日の気分やコンディションに合わせて、色、香り、成分、形などを選んでパーソナライズできる美容石鹸ブランドです。

石鹸の開発・販売だけでなく、アトリエでの石鹸づくり体験やパートナー企業様、団体様とともに行う石鹸づくりのワークショップの開催を通して、人と人とが触れ合う「体験の場」の提供も行っています。

最近では、一般社団法人green4様と一緒に私立姫路女学院高等学校様にて「SDGs教育特別プロジェクト」を行うなど、石鹸を使った環境教育活動にも力を入れています。

-教育活動にも取り組まれているというのは驚きです。9.kyuuさんがつくる石鹸には、どういった特徴があるのですか?

菅野さん:

9.kyuuの石鹸には、3つの特徴があります。

1つ目は、シンプルなパッケージにすることで容器包装プラスチックの削減に貢献している点です。一般的なボディソープはプラスチックボトルに入っていることが多いのですが、石鹸の場合プラスチック容器が必要ありません。また、使い切ることで最終的に商品自体がなくなるという点も、石鹸ならではの魅力だと感じています。

-石鹸は環境に優しいアイテムと言えますね。

菅野さん:

2つ目は、自分だけのパーソナライズ石鹸が簡単に作れる点です。

一般的に石鹸は苛性ソーダとオイルを鹸化(けんか)させて作ることが多いのですが、お子様にとっては危険な作業です。9.kyuuでは、より多くの方に「つくる」という体験を楽しんでいただけるよう、危険な作業を出来るだけ減らす形で開発しました。
そのためチョコレートをつくるのと同じように、熱で溶かして固めるだけのシンプルな工程で石鹸をつくることができ、小さなお子様にも体験いただけるアイテムに仕上がりました。

-お子様も体験できるというのは、嬉しいポイントですね。

菅野さん:

3つ目は、成分へのこだわりです。9.kyuuは、イギリスの老舗石鹸原料メーカーであるSTEPHENSON (スティーブンソン)社の製品を原料として使用しています。STEPHENSON社は、古くから持続可能な化学技術の革新に力を入れており、そのものづくりの考え方に共感しました。「石鹸を自分でつくる文化」を共に築いていきたいとの思いから採用にいたりました。

>>「9.kyuuがスティーブンソンを選んだ理由」について詳しく

石鹸を通して永続可能な文化を作る

-ブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。

菅野さん:

これまでオーガニックコスメを中心に300種類以上の美容関連商品の開発に携わってきた経験の中で、「もっと社会とのつながりの深いブランドを作りたい」と考えるようになったからです。
私が化粧品の開発を始めた当時は、「オーガニック」という言葉自体が珍しい状況でしたが、最近では「オーガニック」や「エシカル」であることが当たり前。そんな中で、さらにもう一歩踏み込んだものづくりが必要なのではないか?と感じたんです。

-「もう一歩踏み込んだ」とは、具体的にはどういったことでしょうか?

菅野さん:

例えば、商品を通じて人と人の関わりを作ったり、地域課題や教育問題の解決に発展するような取り組みです。
今後はものはあまり買わず、なるべくシンプルに、という時代になると思います。だからこそ、9.kyuuを通して人と人とが触れ合うコミュニティの形成や、五感で感じる体験の場の創出、さらには文化を残していけるような活動を行っていきたいと考えています。

-「9.kyuu」という珍しいブランド名には、どういった思いが込められているのですか?

菅野さん:

数字の9が、永久の「久」を表しています。「永続可能な文化を作りたい」という思いのもと、9.kyuuと名付けました。

SDGsとの関連が、事業を進める後押しに

-菅野さんがSDGsを意識されるようになったのは、いつ頃からですか?

菅野さん:

正直に言うと、2019年の冬にブランドを立ち上げた当初はあまり意識していませんでした。

SDGsに取り組むためにブランドを作ったということではなく、長年やってきたことと新たに始めようと思ったことが、たまたまSDGsのいくつかの項目に当てはまっていたという感じです。

-そうだったんですね。9.kyuuさんの活動は、SDGs12の「つくる責任 つかう責任」という項目にマッチしていると感じています。

菅野さん:

そうですね。このことを教えてくださったのは、知り合いの外務省の方でした。9.kyuuのコンセプトをお話しした際、「9.kyuuさんがやろうとしていることはSDGsへの取り組みだね」と教えてくださったんです。そこからSDGsを意識するようになりました。

9.kyuuの事業がSDGsに貢献できると気づけたことで、「自信を持ってこの事業を進めていこう!」と思えた瞬間でもありました。

>>SDGs12「つくる責任つかう責任」についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

石鹸から生まれる新しい社会貢献

-9kyuuさんは、石鹸づくりを行うワークショップの開催など、体験の場の提供にも力を入れていらっしゃいますよね。具体的な取り組みの内容を教えてください。

菅野さん:

活動の内容としては、大きく2つあります。

1つは、学校様向けの環境教育活動です。私立姫路女学院高等学校様では、1年間に渡り石鹸作りのワークショップを開催させていただきました。他にも、美容のビジネスを学びながらSDGsについて考える「ビューティービジネス」といった授業を大学で行うなど、SDGsを通した社会貢献活動への支援を行っています。

-石鹸づくりを通してSDGsを学ぶことができるのですね!学生さんも楽しみながら学ぶことができそうです。

菅野さん:

2つ目が、企業様や団体様とともに行う石鹸づくりのワークショップです。最近では、百貨店様やアパレルショップ様からも「会社としてSDGsに取り組みたいので、ワークショップを開催してみたい」といったご相談をいただく機会が増えています。石鹸づくりを通して9.kyuuのコンセプトに触れ、同時にSDGsが学べ、さらにお客様との交流の場にもなると大変好評をいただいております。

-素晴らしいですね!様々な活動を通してどういった効果を実感されていますか?

菅野さん:

私たちが想像していなかった業種の方たちが、その業界や地域ごとにアレンジを加えながらワークショップを開催してくださっている状況に、大変驚いています。

例えばとある美術館様は、ワークショップの参加費を美術館の建物の修復費に充てるという取り組みを行ってくださっています。環境について考えることはもちろんですが、ワークショップの収益を社会貢献活動に充ててくださるというのは素晴らしいなと感じています。

-石鹸という一つのアイテムを通して、一人一人が「自分たちは何ができるかな?」と想像し、自由な発想で取り組んでくださっているのですね!

菅野さん:

はい。ワークショップの様子をインスタに上げてくださる方も多く、「香りが良かった」、「とても癒された」などの感想をいただき、大変嬉しく思います。楽しみながら学び、地域貢献にも繋がるワークショップが実現できていることは皆様のご協力のおかげですので、感謝の気持ちでいっぱいです。

体験を通じて共感の輪を広げたい

-最後に9.kyuuさんの今後の展望を教えてください。

菅野さん:

ただ「ものを買う」だけでなく、その体験から生まれる共感や、人と人とが触れ合える機会を提供することに力を入れていきたいです。
コロナの影響もあり、五感を使って体感できる機会や、誰かと一緒にものづくりをするといったイベントなどが極端に減ってしまいました。だからこそ、今は「体験することの価値」がより重視されるようになったのではないかと感じています。

今後も、9.kyuuの商品をきっかけに、そこから生まれる社会貢献の輪を広げていきたいですね。

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