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Öffen|耐久性に優れた「プラスチックをリサイクルした糸」から誕生!オシャレでサステナブルな靴

Öffen日坂 さんインタビュー

日坂 さとみ

関西在住。20代から10年以上にわたり人気セレクトショップのバイヤー/デザイナー/VMDを手掛けるクリエイティブディレクターとして活動していたが、現在では1児の母として育児と仕事をしながら、自然と触れ合う事を大切にゼロウェイストの生活を送っている。2020年 一般社団法人エシカル協会が主宰する「エシカル・コンシェルジュ・オンライン講座」修了。

introduction

「普段履けるちょっとオシャレな靴」、「環境に優しい」をテーマに再生ポリエステル糸を使用した靴を製造するÖffen(オッフェン)

靴のパーツや製造工程を減らして効率化とゴミの削減を図りつつ、長く愛される靴作りを実現しました。その製法や靴作りに適した再生ポリエステル糸の特性についてÖffenの日坂さんにお話を伺いました。

再生ポリエステル糸からできたサステナブルな靴

-本日はよろしくお願いします。まずは、御社の事業概要を教えてください。

日坂さん:

Öffen(オッフェン)は2019年9月に設立したシューズブランドです。環境にしっかりと配慮しつつも、普段から履けるちょっとオシャレな靴をテーマにしています。軽量で優しい履き心地が特長です。

-環境に配慮した靴とは、一体どのような靴なのでしょうか?

日坂さん:

Öffenの靴は使用済みのペットボトルを回収・リサイクルして、糸に変えたもの(再生ポリエステル糸)をアッパー素材として使っています。

アッパー

靴のパーツのうち靴底を除く、足の甲を覆っている部分

-プラスチックから糸を作ることができるのですね!驚きです。どのような工程で糸を作っていくのでしょうか?

日坂さん:

家庭から回収したペットボトルを洗浄・裁断し、細かくしたものがペレットというチップになります。そのペレットを水と熱を使って細い糸に加工しています。私達はアメリカの専用工場で作られた再生ポリエステル糸を使用しているのですが、その工場には世界中の家庭から出てくるペットボトルが集まってきているそうですよ。

<ペットボトルのペレット>
<ペットボトル糸>

買った時の履き心地を、普通の糸よりも長くキープできる

-プラスチックからリサイクルした糸と普通の靴作りに使う糸の違いは何ですか?

日坂さん:

大きな違いは伸縮性や耐久性です。普通の糸で編まれた靴は履いているうちに履き口のところが伸びて広がり、足に沿わなくなることがあります。でも再生ポリエステル糸は伸びることがありません。だから買った時の足のホールド感をずっとキープできます。

-再生ポリエステル糸の方が伸びにくいんですね。つまり、糸自体が少し硬いということでしょうか?

日坂さん:

そうですね。通常のものよりちょっと硬い感じがします。逆にそういう素材でないと、足を包み込むことができないので、再生ポリエステル糸は靴作りに適していますね。また、靴を処分する理由のひとつに素材の劣化があると思いますが、再生ポリエステル糸はほとんど劣化しません。なので汚れたら水で洗って汚れを落とせば、綺麗な状態に戻してまた使えます。

-プラスチックが原料なので、水にも強そうですね。その他のこだわりを教えてください。

日坂さん:

Öffenは靴底もオリジナルで作っていて、素材にはシリコンを使用しています。シリコンも丈夫で、摩擦にすごく強いです。靴の形をキープするための、植物性由来のシューキーパーもお付けしています。アッパーや靴底の素材に耐久性の高いものを使うことによって、より長く履いていただける靴を目指しているんですよ。

-原料はもちろん、長く履けるという点も、とてもサステナブルだと思いました!

パーツも製造工程も半分に。効率的でエコな靴作り

-原料以外に、靴づくりで意識していることはありますか?

日坂さん:

Öffenの靴は必要最低限のパーツだけを使って作られています。中敷を取って靴を見るとわかるのですが、間に入ってるパーツをだいぶ減らしてシンプルにしてます。

-余分な事を削ぎ落とした製法で作っているのですね。

日坂さん:

はい。靴や洋服はパターン(型紙)に合わせて生地を裁断すると、裁断した周りは全部ゴミになってしまいます。けれど、Öffenの靴は機械で編まれて成型された状態のものを縫い合わせるため、生地のゴミが出ないんです。

-全てのパーツにおいて、配慮がなされているのですね。素晴らしいです!

日坂さん:

そうですね。製造工場からは、通常の靴に比べて作業時間が約半分になっているという嬉しい声も届いています。裏地やそのほかの様々なパーツもありませんし、生地を裁断したり糊付けしたりすることもないので、大幅に工程を減らせているのだと思います。

日坂さん:

細かいデータはありませんが、パーツや製造工程、作業時間を約半分に減らしているので、その分の二酸化炭素の排出量も減らせているはずです。

履き心地も、見た目も、サステナブルさも、全部叶える

-お客様からの反応はいかがでしょうか?

日坂さん:

実際に履いてくださったお客様はよく、「靴を履いてないような感じ」とおっしゃってくださいます。再生ポリエステル糸のニット素材は足にフィットするように織り上げられていますし、中敷の素材も衝撃を吸収するものを使用しています。その両方が相まって、裸足のような心地よさが生まれているのだと思います。

-お客様はどういった属性の方が多いですか?

日坂さん:

結構幅が広いですね。買ってくださってるお客様は多分30代後半、40代の方が多いですが、属性や目的は様々です。ベビーカーを引いたママさんや、通勤で履きたいという会社員の方、娘さんがÖffenの靴を履いていて紹介されたというお母様など、とても多くのお客様に手に取っていただいています。

-ご紹介で購入なさる方もいらっしゃるのですね。もともと、環境やサステナブルに興味のあるお客様も多いのでしょうか?

日坂さん:

そういう方もいらっしゃいます。普段からエシカルな生活を心掛けているお客様の中には、「靴の部門で選択するならÖffenを」と、指名買いしてくださる方もいます。もちろん知らずに買われていくお客様もいらっしゃいますが、SNSの投稿を拝見していると、『ペットボトルをリサイクルして作られている靴』というコメントを一緒に投稿されていますね。

-環境意識の高い方はもちろん、知らずに買った方も環境についてちょっと意識できるきっかけになっているのですね。

日坂さん:

そうなってくれると嬉しいですね。ただ、靴といってもファッションのアイテムのひとつです。真面目に作っていてもデザインがいまいちだと、買う側もテンションが上がらないと思うんですよね。そのため、デザイン性にもとことんこだわっているんです。

<ときめくデザインの靴たち>

-いくら環境にいいものでも、履いてもらえなければもったいないですものね。

日坂さん:

せっかくご購入いただいても、使わなかったら結局は無駄な買い物だったということになります。ですから靴を作る時には、ファッションが好きな方にも認めてもらえるデザインで、毎日でも履きたくなるような履き心地にしたい、という思いがあるんです。

アパレル業界や靴作りの「当たり前」を変えたい

-サステナブルな素材で靴を作ろうと思ったきっかけについて教えてください。

日坂さん:

一番最初は、環境問題について学ぶために受講した『エシカル・コンシェルジュ・オンライン講座』という勉強会がきっかけでした。もともと、新しい資源をなるべく使わないものづくりに興味はあったのですが、ゼロウェイストアカデミーの元理事長の坂野 晶さんのお話に衝撃を受けたんです。

-環境問題に対して何か行動を起こすために、勉強していらっしゃったのですね。

日坂さん:

はい。ただ、25年程ものづくりに携わってきましたが、流行り廃(すた)りの激しいファッション業界は課題も多く、一気に変えることは難しいとも感じていました。

-ファッション業界の課題ですか。例えばどのようなものでしょうか?

日坂さん:

例えば、大量生産して余った沢山の在庫をそのまま処分したり、流行に合わせてすごく短いスパンの中で商品を作って売ったりすることですね。新しいブランドを作るとなったときには、こういった課題に繋がる既存のやり方を、一旦全て白紙にしてから考えてみようと思ったんです。

-そこで、原材料や製造工程をゼロから見直すことにしたのですね。

日坂さん:

そうですね。どうやったら環境に優しいものづくりができるんだろうと考えていく中で、ペットボトルの再生糸が靴の特性に適していると分かりました。そこから、先ほどお話ししたような、ムダの少ない製造工程の開拓や、なるべく長く愛用していただけるような履き心地やデザインにこだわって、現在に至ります。

-靴がお客様の手元に届いたその先まで想像して、ものづくりをなさっているのですね。

「作るとき・買うとき・処分するとき」のすべてに配慮する

日坂さん:

Öffenのものづくりの基準として、「作るとき・買うとき・処分するとき」という3つの工程で、なるべくゴミを出さず、環境に寄り添うようにしています。

-「作るとき」に意識していらっしゃることは、すでにお話しくださいましたね。「買うとき」「処分するとき」についてはいかがでしょうか。

日坂さん:

「買うとき」については、梱包の工夫があります。購入いただいた靴をお渡しする際には、再生紙を利用した紙袋に入れています。私自身、靴を買ったときに靴箱は受け取らないタイプで、他にも同じように受け取らない方が多い印象だったので。持ち帰った後に結局廃棄されるのならば、最初からお渡ししない方が良いと考えたのです。

<梱包用の紙袋>

日坂さん:

水で洗えるぐらい丈夫な再生紙の袋で、お家の観葉植物のカバーとしてご使用頂いたり、お野菜を保存して頂いたり、お持ち帰り後の用途は様々です。リボンとして結んであるのは靴紐で、2本揃ったときにお手持ちのスニーカーに通してお使い頂けるようになっています。

-リボンにも次の道を用意していらっしゃるのですね。

日坂さん:

細部まで気を抜かないようにしています。さらに、最終的に靴を「処分するとき」には、燃やす際にできるだけ有害物質が出ない素材を選定しているんですよ。

自然と寄り添い、模索しながらゆっくりと進んでいく

-最後に、今後の展望をお聞かせください。

日坂さん:

本当の持続可能でサステナブルとは、業績の脱成長かもしれません。急がずにゆっくり呼吸をしている地球、その呼吸に合わせられるブランドであり続けることスローに生き続けていくことかなと考えています。

-じっくりとブランドを育てていこうとなさっているのですね。

日坂さん:

そうですね。自然との寄り添いの中に、スピードは必要ないのではと思っています。「これをする」という目標から入るのではなく、「どうやったら環境に寄り添いながらたどり着けるんだろう」と模索していく感じです。今は一番いい売り方をゆっくりと形にしていこうかなと思っています。

-ファッション業界の波に飲まれずに、新しいものづくりを体現されているÖffenの魅力がとてもよく伝わってきました。本日はありがとうございました!

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