大泉 寛太郎
株式会社大泉工場 代表取締役。「地球を笑顔で満たす」というMISSIONを掲げ「素敵な環境を創造する」ためにKOMBUCHA、コールドプレスジュース、プラントベースを中心としたウェルビーイングな事業を展開。個人としてアメリカからオセアニア、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、北欧など地球上を旅する旅人としての側面も持ち合わせている。
introduction
株式会社大泉工場は、地球環境から腸内環境まで、すべての環境を笑顔溢れるものにすべく、さまざまな事業を展開しています。
その中でもメインプロダクトである_SHIP KOMBCHA(シップ コンブチャ)は、2023年にアメリカ・スペインで開催された世界大会で定番4フレーバーすべてが賞を受賞し、世界でその品質が認められています。
今回は代表の大泉さんに、株式会社大泉工場の活動の原点になる考えや今後の展望などについて伺いました。
地球も腸内もすべて「環境」
–はじめに株式会社大泉工場のご紹介をお願いします。
大泉さん:
株式会社大泉工場は「地球を笑顔で満たす」をミッションに、「素敵な環境を創造する」をビジョンに掲げて事業をおこなっています。
私たちは、精神・身体・社会は、環境要因によってプラスにもマイナスにもなると考えています。そのため、環境要因を素敵にすれば、より良い未来となると信じて取り組みを進めています。
その中でも特に人間が生きていくうえで欠かせない「食」を大切にし、地球上のトレンドを的確に捉えたうえでコンブチャの製造・販売やプラントベースのカフェ、グローサリーストアなどの運営をしています。
さまざまな偶然に導かれるようにして始まったコンブチャ事業
–大泉工場のコンブチャについて詳しくお聞かせください。
大泉さん:
日本で「コンブチャ」というと、一般的に昆布のお茶だと認識されますが、まったくの別物です。我々が展開するコンブチャは、お茶を発酵させて飲む発酵スパークリングティーを指します。今世界では日本以外のすべての国でという表現が正しいくらい、コンブチャというと発酵スパークリングティーを思い浮かべてるような状況なんです。
コンブチャには発酵由来の酢酸菌やポリフェノールなど、腸内環境にポジティブに働く効果があるものが含まれていて、味は、白ブドウのような風味があると話す方が多いように思います。
素材には特にこだわっています。茶葉は京都の永田茶園さんの有機認証を取っているものを、発酵のために加えるきび糖もオーガニックです。きび糖はもともとは純国産のものを使っていたんですが、今はブラジル産のオーガニックのものに変えて、2023年に有機認証も取得できました。
–なぜコンブチャを取り扱おうと思ったのでしょうか?
大泉さん:
私は2012年頃から、ポップコーン関連の事業を行っていて、アメリカに行く機会が多くありました。その時、現地のグローサリーストアなどを巡っている際にコンブチャをみつけたんです。
飲んでみたらこれが美味しくて。しかもなんだか体が疲れにくいような感じもあったので、すごく気に入りました。
その後、たまたまなんですが、自社で運営している西麻布のグローサリーストアーに入店してきた海外からのお客様が、「俺、日本でコンブチャの事業やろうと思ってるんだよね」と話していました。そのタイミングが、ちょうど2016年に日本で開かれたオーガニック関連の展示会で、私がコンブチャに触れた直後のことでもあったんですよ。
そこから、具体的にコンブチャ事業が動き出しました。
大泉工場の「食」の原点
–コンブチャなどさまざまな「食」に関する取り組みをおこなっている株式会社大泉工場ですが、「食」に着目するようになったきっかけを教えてください。
大泉さん:
私が大泉工場に入社して初めての事業でもある、ポップコーンビジネスからの影響は大きいと思います。私が大泉工場に入社したのは2008年ですが、翌年から児童養護施設でポップコーンを作って食べてもらう活動をスタートさせました。
ポップコーンってやっぱり弾いて作る段階から楽しいので、子どもたちはみんなすごく喜んでくれるんですよ。
ただ、食べるフェーズになったときに、アレルギーの問題を持っている子どもたちが食べられないという問題があったんです。
僕自身も子どもたちに悲しい体験をさせてしまったことに、すごく後悔の念が生まれましたね。
そこから、そもそも「なんでアレルギーってあるんだろう」「なんで年々アレルギーを持つ人が増えているんだろう」と考えるようになり、添加物や化学肥料がどこかで関係しているんじゃないかと思うようになったんです。
アレルギーに悩む人が増えているということは、そもそもずっと昔は存在しなかったものなんじゃないかとも考えられますよね。
だからオーガニックとかナチュラルとか、人間がもともと食べていたものを広めていけば何か変化があるのではないかと。
あとは自分の経験として、父親が42歳の若さで亡くなったということもあるかもしれません。父は巨漢というか、体が大きい印象が強かったので、やっぱり食べていたものと健康が強く結びついていたんじゃないかなと感じさせられました。
当時僕は14歳でしたが、そういう幼くして親を亡くすという悲しい思いをする子どもを少しでも減らしていきたいなと考えて食に力を入れています。
環境の創造で「人」も「組織」も変わる
–次に、御社が特に力を入れているサステナブルな取り組みについて教えてください。
大泉さん:
当社の大泉農場という農場を中心に、事業運営でどうしても発生してしまう残渣を再活用する取り組みをしています。
残渣というのは、例えばコンブチャの出涸らしや、コールドプレスジュースを作る際の野菜や果物の搾りカスです。せっかくオーガニックやナチュラルにこだわって選んだ材料を、すぐに捨ててしまうのはもったいないですよね。
なので、そうしたものを捨てずに肥料にし、農場で野菜を作ってお客様に提供していくことで循環させています。
もちろんメインプロダクトであるコンブチャもサステナブルな取り組みのひとつだと考えています。コンブチャの材料はオーガニック認証を取っていますし、世界のコンブチャコンペティションで金賞を受賞するなど、対外的にも認められています。こちらも社会にポジティブなインパクトを与えられているんじゃないかと考えていますね。
–そのような取り組みをする中で、従業員の方の意識や、お客様の反応に何か変化はありましたか?
大泉さん:
環境を守っていかなければならないという意識に関しては、大泉工場社内でもかなりスタッフに浸透したと思います。ゴミを拾うなど、自発的に環境に対する改善活動に取り組むようになりました。
また、キャンパスと呼んでいる埼玉県川口市の本社の敷地内は、お客様や地域の方に自由に出入りしていただける開かれた場所です。
ここにはダイバーフリーのオールジェンダートイレやアップサイクルの家具が設置されているので、少なからずサステナブルを意識する機会を提供できているんじゃないかなと思います。
課題は「いかにハードルを下げるか」
–サステナブルな取り組みをする中で、これからの課題に感じていることがあればお聞かせください。
大泉さん:
食に関するリテラシーの向上は、日本においてすごく重要な課題だと思います。
オーガニックやナチュラルな食材への理解を深めたり、エシカルな選択をするためにはどうすればいいのかを学んだりする機会が必要だと思います。
現在、そうした先進的な取り組みは東京だけでなく地方にも広がりつつはあります。でも、どうしても地方では取り組みが継続していかない印象が強いんです。
その原因のひとつとして、プラントベースとかオーガニックって、とても難しいものに捉えられていている気がするんです。そのため、まずは普通にそのような話題を話せる空気感を作っていくことが大事だと思います。
その点でいうと、やっぱり商品のオシャレさにこだわることも忘れてはいけないんです。オシャレだから手にとってみたら、実はオーガニックだった、となれば入り口のハードルも下げられるはずです。
まずは社内から定期的な勉強会などを行い、そこからどんどん広げていければいいですね。
–オーガニック・ナチュラルな製品は価格面でもハードルが高いと感じていますがいかがでしょうか?
大泉さん:
ちょっと難しい話ですけど、消費者が先を見越して商品を選ぶ意識を醸成していく必要はありますね。少し価格が高くても、「将来の健康を考えた選択がある」ということを多くの人が知ってくれれば、ハードルも低くなっていくのではないでしょうか。
企業側も、儲けるためには値段を下げよう、そのためには安価な材料を使おうという状況から脱出しないといけませんね。
うちのコンブチャも300ccで1本600円というのがメーカー小売最低価格で、都内のスーパーでは150円のペットボトル飲料の隣に並んで売られています。
そのような状況でも、コンブチャが普通に売れていくような環境を作っていくのがすごく重要だと思います。
驚きと多幸感を届ける取り組みを
–これからさらに取り組みたい、サステナブルに関する取り組みがあればお聞かせください。
大泉さん:
今年はアップサイクルが大きなテーマになってくるんじゃないかと思っています。アップサイクルは廃材、わかりやすく言うと捨てられてしまうものから新しい価値のあるものを見出して、それを消費していくというような考え方ですね。
今うちのキャンパス内にある掲示板、本棚、カフェで使っている家具などはアップサイクルにしてるんです。「こんなものからこんな素晴らしいものができるんだ」いうものとか、そういった驚きと共に幸せも届けられるアプローチができたらいいなと考えています。
ただその感情を生み出すためには、繰り返しになりますがデザイン性も大切です。どんなに素材が良くて環境負荷がかかっていないものでも、ダサいものは持ちたくないという思いが僕にはあるので。
実は当社のメインプロダクトになっているコンブチャに関して、失敗体験があるんです。以前のコンブチャのデザインは、現場の社員に任せて決めたものでした。「みんなで作り上げたデザイン」というストーリー性は抜群に良かったんですが、正直僕から見たら全然カッコよくなかったんです。
せっかく社員が考えたものだからってそのまま売り出したんですけど、売れ行きはイマイチでしたね。もちろんデザイン以外の要因もあったかもしれませんが、今のデザインにしてからの方が圧倒的に良いというお声をいただいています。
やはり手に取ってもらうには、デザイン性は譲れないところです。
–では最後に、今後どのように事業を展開していきたいか、展望をお聞かせください。
大泉さん:
事業全体としては、現在高く評価していただいている、当社のプロダクトとお客様との接点を増やすことが重要だと考えています。
コンブチャやプラントベースのカフェで売っている商品を、オンライン・オフラインの両方で知っていただく機会を増やしていきたいです。
まず、オンラインではSNSやブログなど、双方向でコミュニケーションが取れるものをフル活用していきます。
また、まだ確定ではないですが、近いうちにオフラインでも新たな取り組みを考えています。もっとカジュアルにオーガニックやナチュラルなものに触れられる機会を作って、販路を広げていくつもりです。
–今後の取り組みも楽しみです。貴重なお話をありがとうございました。
株式会社 大泉工場ホームページ:https://www.oks-j.com/