#SDGsに取り組む

世界で3番目に古い航空会社!歴史あるカンタス航空が取り組むエコ活動に着目

オーストラリアを代表する航空会社・カンタス航空をご存知ですか?

空飛ぶカンガルーのロゴが目印のカンタス航空は、脱炭素化を目指してさまざまな取り組みを行っています。

二酸化炭素の排出量が多い飛行機を使ったビジネスが、一体どのようなエコ活動に力を入れているのか。

この記事では、カンタス航空が脱炭素化、プラスチック問題、エコツーリズムなどに対して実施している取り組みを徹底解説していきます。

カンタス航空とは?

Queensland and Northern Territory Aerial Servicesの頭文字を取ったカンタス航空(Qantas Airways)は、オーストラリアのフラッグキャリアです。

1920年11月にクイーンズランド州で設立され、世界で3番目に古い航空会社として知られています。

世界23か国56路線に就航しているほか、日本でも羽田空港や成田空港との路線を結んでおり、7大陸全てに就航する唯一の航空会社です。

2023年のオーストラリアでのマーケットシェアは60.8%で、LCC・ジェットスター(Jetstar Airways)の出資会社でもあります。

カンタス航空が抱える環境への懸念

カンタス航空は、フライトサービスを提供する企業です。

しかし、飛行機は大量の二酸化炭素を排出する乗り物であり、わずか1キロの飛行で1人あたり102g、電車で移動する場合の6倍の二酸化炭素を排出していることになります。

国土が広いオーストラリアを拠点としているカンタス航空では、国内線・国際線の両方において数多くの長距離フライトを提供しています。

自社が排出する二酸化炭素量を懸念しており、脱炭素化への道を模索しているのです。

実際、カンタス航空はClimate Action100+のエンゲージメント対象である166社の1社で、気候変動への影響が大きい企業としてカーボンニュートラルの実現を要求されています。
そこで、脱炭素化を促進するための具体的な目標として、カンタス航空では2030年までに2019年と比較して25%の二酸化炭素の排出量削減を掲げています。

カンタス航空が行うエコ活動の事例

ここでは、カンタス航空が実際に行っているエコ活動に着目していきましょう。

SAFへの取り組み

脱炭素化への促進としてカンタス航空が注目したのが、Sustainable Aviation Fuel、通称SAFと呼ばれる循環型の航空燃料です。

Sustainable Aviation Fuelは持続可能な航空燃料という意味で、バイオ燃料のことを指します。

バイオ燃料には廃食用油で作るタイプと、サトウキビ、トウモロコシなどの農産物などを由来とするタイプの2種類があり、バイオ燃料に切り替えることで65%程度の二酸化炭素を削減できると考えられています。

ただし、コストが高いというデメリットもあるため、普及に時間がかかっているのが現実です。

そんな中、カンタス航空は2030 年までにSAFの10%導入を目指しています。

西オーストラリア州にて再生可能バイオ燃料ビジネスに関する調査契約を締結し、自生植林プロセスの開発や在来バイオマスと農業廃棄物残渣の統合などを行う予定です。

低炭素強度バイオ燃料の生産に役立つ調査として期待されており、より効果的なSAFの導入方法の実現に向けて試行錯誤しています。

また、カンタス航空はオーストラリア国内でのSAF供給促進を目的に、カンタス気候基金を設立しました。

基金には4億ドルが集められており、そのうちの2億ドルはカンタスグループから、残りの2億はカンタス航空とエアバスからの共同出資となっています。

基金はSAFを普及させるためのプロジェクトや研究に使われる予定で、オーストラリア全体がSAFにアクセスしやすい環境づくりに貢献しています。

機体のデザイン変更によるCO2削減

燃料効率の向上を目指して、カンタス航空では機体デザインの変更を実施しています。

スプリット シミター ウィングレット(Split Scimitar Winglet System)と呼ばれるシステムを採用しており、翼に設置することで航空機の空気抵抗の低減による二酸化炭素排出量削減を実現できます。

クイーンズランド州ブリスベンにあるメンテナンス拠点にて、2023年12月~2026年末にかけて国内線と国際線の両方の機体に導入する予定です。

設置が完了すれば、二酸化炭素排出量を年間で8,000トン(約57万本のスギの木が1年間に吸収する量)を削減できると予想されています。

地元に密着したリーフオフセットの購入

フライトサービスを提供するカンタス航空では、温室効果ガスを100%削減するのは非常に困難です。

そこで、カーボンオフセットを購入し、不足分の温室効果ガス排出量を相殺するよう努めています。

さまざまなカーボンオフセットを購入しているカンタス航空ですが、特に大きな投資として挙げられるのがグレートバリアリーフを対象としているリーフオフセットです。

世界の約25%もの海洋生物が生息すると言われているグレートバリアリーフでは、地球温暖化によるサンゴの白化が懸念されています。

リーフオフセットはグレートバリアリーフが位置するクイーンズランド州政府がサポートしており、水質改善や気候変動への対応に特化しています。

カンタス航空もクイーンズランド州で設立された企業であることから、地元の環境保全を目指してリーフオフセットを投資先に選んでいるのです。

機内でのプラスチック製品の削減

カンタス航空は、プラスチック問題への解決に向けても対策を徹底しています。

ほかの多くの航空会社と同様に機内食サービスを実施していますが、プラスチック製品の削減を推進しています。

従来は使い捨てペットボトルの水を配布していたものの、紙コップで必要な分量だけその都度提供するなど、プラスチック製品の使用に対する見直しを行いました。

また、カンタス航空は2027年までに使い捨てプラスチックをゼロにするという目標を掲げています。

2022年の1年間には300万本のペットボトルを節約しており、2019年からカウントすると合計940万本分のペットボトルの削減に成功しました。

さらに、ペットボトルだけでなく、カトラリーをエコ素材に切り替えるという取り組みも行っています。

機内食と共に配布されていたスプーン、フォーク、ナイフなどをプラスチック製品から木製に変更することで、環境への負荷を最小限に抑えています。

サスティナブルな観光に関するビデオ

カンタス航空を利用する顧客の中には、観光客も多く含まれます。

持続可能な観光を目指すべく、2022年7月にカンタス航空が開始したのが教育ビデオの作成と提供です。

教育ビデオ内では、環境専門家による質疑応答、SAF、カーボン オフセット、廃棄物などにおける情報提供などが行われており、観光客が機内や空港で視聴することによって手軽にエコツーリズムについて学べる点がポイントです。

Green Tierシステム

顧客がエコ活動に参加できるシステムを構築するため、カンタス航空は2022年3月にGreen Tierシステムを導入しました。

Green Tierとは、ステータスシステムと特典を上手く環境保全に組み合わせたシステムのことです。

Green Tierメンバーに加入した顧客は、航空、旅行、ライフスタイル、持続可能な購入、影響の軽減、還元の6つの分野の中から自身が行いたいアクティビティを選べる仕様になっています。

それぞれの分野には環境保全に関連したミッションがあり、1年間で6つのうち5つをクリアしたメンバーにはカンタスポイント、ステータスクレジット、限定イベントへの招待などの特典が付与される仕組みです。

環境保全に参加しながらポイントやクレジットを効率良く貯められることから、2023年時点で既に47万人のメンバーが1つ以上のアクティビティをクリアしています。

まとめ

飛行機は、環境への負荷が大きい乗り物です。

しかし、大陸国かつ日本の約20倍の国土を誇るオーストラリアは、飛行機なしで生活するのが難しい国です。

カンタス航空ではさまざまな取り組みを通して脱炭素化を促進しており、環境に優しいビジネスへの階段を着実に登っています。

脱炭素化以外にも、プラスチック問題やエコツーリズムなど、顧客を対象としたエコ活動にも力を入れているカンタス航空。

環境保全とフライトが両立する未来のために、私たちも航空会社選びにこだわることからはじめてみましょう。