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パラスポーツの人気競技を紹介!世界や日本の現状も

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身体に障がいを抱えた人によるパラスポーツ。近年、日本の選手たちの活躍により、オリンピックに劣らないほどの注目度を集めるようになってきました。

とはいえ、パラリンピック以外で私たちがパラスポーツと接する機会はさほど多いとは言えません。

もう一つのスポーツの姿と、それがもたらす新しい可能性を見せてくれるパラスポーツの世界とは、どのようなものなのでしょうか。

パラスポーツとは

パラスポーツとは、一言で説明すると、身体的・知的・精神的に障がいのある人でも競技を行えるようにした障がい者スポーツ全般のことです。その方法としては

  • 従来の競技の方法やルールを、障がいの内容に応じて変えたもの
  • 従来の競技の方法やルールは同じまたは近く、道具による補助で競技を行うもの
  • 障がいのある人向けに作られた、まったく新しい競技

などがあります。

ユニバーサルスポーツ

パラスポーツを行うのは基本的に障がいのある方ですが、負担を減らし、楽に取り組めるように考えられてあるため、障がいの有無を問わずに行える競技が多いことも特徴です。

こうした健常者も障がい者も一緒に楽しめるスポーツのことを「ユニバーサルスポーツ」、または「アダプテッド・スポーツ」などと呼ぶこともあります。

パラスポーツの歴史

パラスポーツはもともと、怪我人や障がい者の治療、訓練の一環として行われていました。

始まりは紀元前からとされていますが、障がい者が自発的にスポーツを行うようになったのは19世紀以降になってからです。第一次大戦後には、イギリスで身体障がい者自転車クラブや片上肢ゴルフ協会ができています。

1944年にはロンドンのストーク・マンデビル病院に、傷痍軍人の治療と社会復帰を目的とした脊髄損傷科が開設されました。ここでは、治療の一環としてスポーツが取り入れられました。1948年に患者が参加して行われた車椅子アーチェリー大会は、ストーク・マンデビル大会として障がい者スポーツの原点になっていきます。

1952年オランダが参加し、国際ストーク・マンデビル大会となる。以後継続して開催
1960年ローマでの開催が後に第1回パラリンピックとなる
1964年東京オリンピック直後に国際ストーク・マンデビル大会開催。後に第2回パラリンピックに
1976年トロント大会で初めて視覚障がい者や切断の選手も出場
1985年パラリンピックが正式名称に
1989年国際パラリンピック委員会設立
2000年オリンピックとパラリンピックの同時開催を規定

こうした歩みによって、障がい者の治療やリハビリのためのスポーツは、純粋な競技やレクリエーションとしてのパラスポーツへと進化してきたのです。

【世界】パラスポーツの現状

2021年に行われた東京パラリンピックでは、162の国・地域から4,393人のパラアスリートが参加しました。参加者数やメダル獲得順位などは、中国やアメリカ、イギリス、オーストラリアなどの大国が多かったものの、夏季ではウクライナやオランダ、冬季ではスロバキアやオーストリアなどの国も存在感を見せています。

では、世界のパラスポーツの現状はどうなっているのでしょう。ここでは、パラスポーツ先進国と呼ばれる3つの国を例に紹介していきます。

イギリス

イギリスはストーク・マンデビル大会が行われた国であり、障がい者スポーツにも積極的に取り組んできた「パラスポーツ発祥の地」です。

とはいえ、2001年時点では資金や指導者の数も不十分で、パラスポーツへの認知度も高くはありませんでした。契機となったのはトップアスリートへの支援を目指した公的機関「UKスポーツ」の設立で、ここからパラスポーツへの支援も拡充していきます。

具体的には、国営の宝くじを財源にした財政的な支援のほか、最先端の施設での練習や海外遠征のサポートなどが積極的に行われるようになりました。

こうした取り組みにより、2012年のロンドンパラリンピックでは34個の金メダルを獲得。障がい者スポーツへの関心も、開幕前の34%から64%へと向上しています。

ドイツ

約50万人の車椅子使用者のうち、約1万人がスポーツをしているというドイツは、世界屈指の「パラスポーツ大国」です。

それを支えているのが障がい者に対する国をあげての手厚いサポートや、充実したリハビリテーションの施設です。ドイツの医療では、リハビリの一環としてスポーツを取り入れ、医療保険も適用できるため、安心して競技に取り組むことができます。

それを象徴するのが車椅子バスケットボールです。4部まである車椅子バスケットボールリーグ・ブンデスリーガのほか、国内には約180のチームが存在し、2,500人の競技人口を数えています。

カナダ

移民大国カナダでは昔から社会的包摂という考え方が強く、健常者と障がい者の隔たりも少ないという背景があります。同時に、幼少期のフィジカルリテラシーの獲得も必要不可欠とされていることから、障がいスポーツ振興やバリアフリー化も進んでいます。

2015年の調査では、障がい者は人口の14.3%ですが、うち子どもの約63%がスポーツまたは身体活動に参加しています。

カナダでは、1976年のトロント競技大会をきっかけにパラスポーツへの予算計上や政策整備が進み、世界をリードするパラリンピック国家をビジョンとして掲げました。

具体的な取り組みは

  • CSIというトップ選手育成施設の拡充
  • アスリートへの競技内外での直接的な資金援助
  • 地域活動拠点アヴィリティ・センターでのパラスポーツプログラムの提供

などがあります。

その結果、2010年バンクーバー、 2014年ソチでの冬季パラリンピックではメダル獲得数は3位、2018年の平昌大会では金8個を含む28個のメダルを獲得しています。

【日本】パラスポーツの現状

一方日本でのパラスポーツは、これら先進国の後塵を拝してはいるものの、少しずつ改善はされているのが現状です。

まず障がいのある成人の週1日以上の運動やスポーツの実施率を見ると

  • 平成25年度調査=18.2%
  • 平成27年度調査=19.2%
  • 平成30年度調査=20.8%

と、わずかではあるものの増えてきています。ただし、これは健常者の半分以下の数字であり、取り組みとしては十分とはいえません。一方、若年層ではこの割合が低下傾向にあることも指摘されており、特に視覚障がいのある子どもの減少が目立ちます。

施設面では、障がい者専用または優先的に利用できる施設の数は年々増えており、2021年の調査では過去最多の150施設となっています。

パラスポーツの国内競技人口はどれくらい?

日本のパラスポーツ競技人口は、2018年度の調査では39団体、70,334人とされています。

そのうちパラリンピック競技団体登録選手は4,406人で、国際大会を目指す選手は796人です。

パラリンピック競技以外では65,928人が登録していますが、国際大会を目指すのは555人にとどまります。いずれの場合でも、本格的に競技に取り組む選手の全体数がまだまだ少ないことがわかります。

その中で、東京2020大会で日本は過去最多の13個の金メダルを獲得し、パラスポーツへの注目度が高まりました。この機会を活かし、今後更なるスポーツ参加への関心を高められるかがカギになります。

パラスポーツの種類と競技内容

パラスポーツで行われる競技は、健常者スポーツに勝るとも劣らないほどたくさんの種類があります。ここではそのすべてを紹介していくことはできませんので、最初にあげた3つの方法による、代表的ないくつかの競技を紹介していきます。

障がいに合わせルールを変えた競技

これらの競技は、基本的には健常者用と同じ競技ですが、障がいに合わせたルールが適応されています。主な競技としては

水泳/セーリング/卓球/テコンドー/柔道/馬術/ボート/グランドソフトボール/視覚障がい者ボウリング/自転車(脳性麻痺)

などがあります。

代表的な競技:サッカー

世界でも競技人口が多いサッカーはパラスポーツでも盛んです。障がい者サッカーは障がいの内容やレベルに応じて

  • CPサッカー(脳性麻痺者7人制):ルールは通常のサッカーと同じだが、麻痺や障がいの程度により一部に変更がある
  • 知的障がい者サッカー:ルールは通常のサッカーと同じ。発達障がいの程度で試合時間が変わる
  • ブラインドサッカー:アイマスクを着け、音が鳴るボールを使って行う

があります。

道具による補助で行う競技

パラスポーツでは、車椅子や義肢など、道具による身体の不利を補うことで参加できる競技が多数あります。

主な競技は

  • 車椅子を使用:テニス/バスケットボール/フェンシング/ラグビー/射撃/電動車椅子サッカー/バドミントン/ダンスなど
  • 義手・義足、そりなどを使用:自転車/スキー/アイスホッケー

などです。

代表的な競技:アーチェリー

パラスポーツでのアーチェリーは、車椅子のほか、障がいに応じて工夫されたコンパウンドボウなどの弓を使うこともあります。体幹が効かない、上肢にも障がいがあるなど、障がいの程度によって道具を使い分けて競技を行います。

代表的な競技:デフスポーツ

デフスポーツは聴覚障がいのある人が行うスポーツの総称です。

陸上やバスケットボール、サッカーやゴルフ、自転車、空手、アルペンスキーなど、夏季21、冬季6の競技があり、旗やランプなど視覚的な効果で聴覚の不利を補います。

パラスポーツオリジナル競技

パラスポーツでは、障がいのある人に合わせて作られた、まったく新しい競技があります。その多くは障がいの程度や有無を問わないものが多く、健常者も参加して一緒に楽しめることが特徴です。

主な競技

サウンドテーブルテニス/スルーネットピンポン/ふうせんバレーボール/ローンボールズ/ゴールボール

代表的な競技:ボッチャ

東京2020で注目を集め、人気が高まっている競技がこのボッチャです。

赤、青それぞれのボールを投げ、コート上にあるジャックボールと呼ばれる白い球にどれだけ近づけられるかを競います。ボールを投げる位置も決められており、戦略や技術、集中力が問われます。

パラスポーツに関してよくある疑問

健常者の方や、障がいのある方が身近にいない方にとっては、パラスポーツに日常的に接する機会は今でもそう多くはありません。ここでは、パラスポーツに関するいくつかの疑問に答えてみましょう。

体験イベントはある?

実際にパラスポーツを体験してみたいけど、どんなイベントがあるのかわからない方も多いと思います。東京都では数多くの体験イベントが開催されており、

  • スポーツTOKYOインフォメーション
  • パラスポーツ体験プログラム – TEAM BEYOND
  • 地域イベント|チャレスポTOKYO – 東京都障害者スポーツ協会

などのサイトから探すことができます。

また地方でも、各都道府県の障害者スポーツ協会や、各種競技団体などが定期的に開催を行っていますので、興味がある方は探してみると良いでしょう。

また、日本財団パラスポーツサポートセンターでは、「あすチャレ!」というプロジェクトを展開しており、小・中・高・特別支援学校等の授業や、企業・団体・自治体・大学向けの研修プログラムの一環として導入を進めています。

パラスポーツに関する動画を見たい

実際にパラスポーツを見てみたくても、テレビでは放送されていなかったり、近くで試合や体験イベントが行われないこともあります。パラスポーツに関する動画は、以下のサイトで見ることができます。

また、日本ブラインドサッカー協会や日本車いすラグビー連盟のように、独自の動画サイトを開設している競技団体もあり、リーグ戦の様子などを見ることもできます。

一番人気のパラスポーツは?

東京パラリンピックでは、多種多様な競技と選手たちの活躍が私たちを魅了しました。

一般の方を対象にした調査で、最も人気が高かった競技としてあげられたのは

  • 車椅子バスケットボール
  • ボッチャ
  • シッティングバレーボール
  • 陸上競技

などでした。中でも車椅子バスケットボールは、同競技を題材にした井上雄彦氏の漫画『リアル』がヒットしたこと、バスケットボール愛好者が多いことなどから、どの調査でも必ず上位に来ています。

一方、障がい者の方たちが実際に行う競技で人気が高かったのは、卓球と水泳でした。

どちらも障がいの程度に関わらず取り組みやすく、運動強度も自分の体に合わせることができるのが魅力です。特に水泳は多くのクラブで障がい者・児を受け入れやすい体制が整っていること、水の浮力で身体的負担が少なく、リハビリ効果が高いことも人気の要因となっています。

パラスポーツとSDGs

パラスポーツの普及は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献します。17の目標のうち、パラスポーツと関連してくるのは、以下の2つです。

目標3「すべての人に健康と福祉を」

スポーツや運動を行うことは、心身にさまざまな良い効果をもたらし、健康の増進に寄与します。しかし、現状では日本をはじめ多くの国で、障がい者の大多数はスポーツに触れる経験がないままで、結果的に、より健康を阻害する環境に置かれ続けています。

障がいを抱えた人たちも、あまねくスポーツを楽しめるようになることは、より良い健康と福祉の向上にとっては必要な取り組みと言えるでしょう。

また、障がいがあっても「できる」「わかる」「人とつながれる」という自信や希望を得ることは、新たな可能性の発見と生活の質の向上をもたらすことにもなります。

【関連記事】SDGs3「すべての人に健康と福祉を」私たちにできること・日本の取り組み事例

目標10「人や国の不平等をなくそう」

パラスポーツを推進することで得られる最大の価値は、包摂性多様性です。

包摂性とはいろいろな人が個性・特徴を認めあい、一緒に活動することです。パラスポーツの体験や参加によって、障がい者と健常者が共に楽しみ協働することは、共生社会の実現につながります。

同時に、障がい者の特性に対する正しい理解とコミュニケーションを深めることは、学校や職場、地域などのあらゆる場面で、さまざまな特性を持った人々を受け入れる、多様性に満ちた社会を実現することになるのです。

【関連記事】SDGs10「人や国の不平等をなくそう」の問題や解決策を徹底解説

まとめ

障がい者の治療や訓練から始まったパラスポーツは、長い時間をかけて、健常者と同様に、アスリートの限界と可能性を追い求めるスポーツへと進化してきました。さらにパラスポーツは、障がいに対する理解を深め、誰もが共生できる社会を実現する手段としても注目されています。

日本は東京パラリンピックで大きな成果をあげましたが、その後のパラスポーツの盛り上がりは十分とは言えません。障がいの有無を超えてあらゆる人がスポーツを楽しめる社会を目指すには、私たちが意識と関心を高めていくことが大事なことなのです。

<参考資料>
障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究 – 文部科学省
公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPSA) (parasports.or.jp)
競技紹介 | パラスポーツスタートガイド (parasports-start.tokyo)
日本パラリンピック委員会|パラリンピックとは|パラリンピックの歴史 (parasports.or.jp)
Paralympic Games – Summer and Winter Paralympics
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山口志郎,高松祥平,石澤伸弘,山口泰雄;カナダにおける障害者スポーツの可能性: メガ・スポーツイベント開催に向けて|生涯スポーツ学研究 vol.11 No.2 2015
ポスト2020、日本の障がい者スポーツの在り方とは? カナダからの提言|パラサポWEB
『諸外国における 障害者のスポーツ環境に関する調査 [カナダ …
地域イベント|チャレスポTOKYO – 東京都障害者スポーツ協会
パラスポーツ体験プログラム – TEAM BEYOND
あすチャレ! | パラアスリート講師による教育・研修プログラム
障害者スポーツ競技団体の実態調査.pdf
社会人約320名に聞いた! 東京パラリンピックで観戦したい競技ベスト5 | パラサポWEB (parasapo.tokyo)
パラスポーツがもたらす共生社会 ~スポーツを通じた協働・共生~ | 後藤 博 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)
障害者スポーツ環境と障害者スポーツの日常化 – 調査・研究 – 笹川スポーツ財団 (ssf.or.jp)