#インタビュー

株式会社Perma Future|環境・経済・幸せが循環する豊かな社会を目指しつつ、エコビレッジとの協働で発信する「健康茶」

株式会社Perma Future

株式会社Perma Future 池田航介さん インタビュー

池田航介

1997年6月29日静岡県沼津市で生まれる。2018年明治大学農学部に進学し、スリランカやオランダ、全国の農家を見て回り経済と環境の循環をこころざし任意団体Perma Futureを設立する。エコビレッジで行う教育プログラム「地球散歩」やオンラインコミュニティ「ヴァーチャルエコビレッジ」などを開発し、4年次にクラウドファンディングで約250万集め、幻の健康茶「EARTH MIND」をプロデュースしPerma Futureを株式会社として登記。その後北海道大学環境科学院に進学。EARTH MINDをまるいや松屋銀座などPOPUPで出店しつつ、企業向けの農業研修プログラム「No 農 No Life」を創り企業向けに展開している。環境や農、エコビレッジをキーワードに多くのメディアやイベントで啓蒙活動を行っている。

introduction

より良い社会のために、自分は何ができるのか?そんな模索のなか、大学時代にエコビレッジと出会った池田さん。自給自足をしながら身近な人や自然に寄り添うライフスタイルに、自分の理想を見つけました。学びを重ね、学生ながら健康茶ブランド「EARTH MIND」をプロデュース。「株式会社Perma Future」を起業し、エコビレッジというコンセプトの魅力も伝え続けています。

今回は、池田さんに、資本主義における価値観が反転してしまうような「真の豊かさ」について、また「半農半X」という新しいライフスタイルのことなども語っていただきました。

社名「Perma Future」にこめた「永続可能な未来をつくる」決意

–まずは御社についてご紹介ください。

池田さん:

株式会社Perma Futureは、2022年1月創業の健康茶を販売する会社です。現在は、富士山山麓にあるエコビレッジと一緒に、EARTH MINDというブランドの、栽培期間中農薬・化学肥料無使用健康茶「女神茶」「福み茶」を展開しています。

エコビレッジとは、ごくシンプルに言えば、自給自足をはじめ限りなく環境負荷の低い暮らしを実践しているコミュニティです。

弊社は、エコビレッジを広く知らせることもミッションと捉え、学生対象のエコビレッジ体験・教育プログラム「地球散歩」も運営しています。また、農業研修プログラム、NO農NO LIFE「ののの」では、おもに社会人を対象に半農半Xの体験を提供しています。半農半Xとは、具体例に言えば、午前中に農業、午後には塾講師、などのように、農業と他の仕事を組み合わせた働き方のことです。兼業農家との違いは、利益を出すためではなく、食の自給を目的とする農業である点ですので、基本的に農業規模は小さなものになります。

弊社の名「Perma Future」は、協働のエコビレッジが農法や暮らし方として取り入れているコンセプト「パーマカルチャー」に由来しています。「パーマカルチャー」は、パーマネント(永続性)、農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)の3語を組み合わせて造られた言葉です。1970年にオーストラリアの二人の教師が提唱した「農業、暮らし方への提案」であり、世界中で実践されています。定義は「永続可能な農業をもとに永続可能な文化、すなわち、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法(持続可能な暮らし方)」です。

この「パーマカルチャー」をもじり、「持続可能な未来をつくる」という意味をこめて、社名を「パーマフューチャー」としました。パーマカルチャーの3つの倫理、①Care of the earth(地球に寄り添う)②Care of the people(人に寄り添う)③Fare share(資源は貯めずに循環)を継承し、社会に広めていく活動をしています。

運命的な「エコビレッジ」との出会い

–起業のきっかけ、背景をお聞かせください。

池田さん:

きっかけは、子ども時代の体験にまでさかのぼります。ターニングポイントは、中一の時に母が病気で亡くなったことでした。辛く落ち込みましたが、家族やまわりの人々に支えられ、世話もしてもらい、立ち直ることができました。

その経験で、人間が一人では生きていけないこと、他者と支え合いながら生きていることを実感したんです。社会に恩返ししたいという気持ちがあり、大学一年生の時に「子ども食堂」を始めました。フードロス削減も兼ねて、廃棄予定の野菜や食品を使って食事を提供し、貧困問題に取り組もうと思ったんです。でも、一食300円で売ったとしても、根本的な貧困問題の解決になどならず、自分の経済も赤字になるという結果に終わりました。

どうすれば自分なりの社会貢献ができるのかを模索するために、農家さんめぐりを始めました。実は、実家は青果物卸売の会社で、私はいずれ8代目として家業を継ぐ身であり、もともと農業に関心があったんです。

農学部で学ぶかたわら様々な農家さんを視察するなかで、あるエコビレッジに出会いました。そこで実践されているパーマカルチャーに感動し、これからの農業は、その土地や人間の健康を考えた持続可能なものでなければならない、と確信しました。

お金や利益をひたすら追い続けるのではなく、自給自足を基本としながら身近な人や自然に寄り添う暮らしに理想を見て、それを多くの人に広げたいと思ったんです。その手段として、大学3年のときに任意団体「Perma Future」を設立し、エコビレッジへの4泊5日宿泊体験を含む教育プログラム「地球散歩」やオンラインコミュニティ「ヴァーチャルエコビレッジ」などの活動に取り組みました。

その後、エコビレッジの人々と協働開発で「EARTH MIND」という地球目線をもった健康茶ブランドを作りました。クラウドファンディングで250万円ほど集め、それをきっかけに「株式会社Perma Future」としてやっていくことを決意し、2022年1月、大学4年次に起業しました。

–エコビレッジでの基本的な生活を紹介していただけますか?

池田さん:

エコビレッジは現在、世界に小さいものまで数えれば1万箇所以上あるといわれています。日本でも様々なエコビレッジが存在し、それぞれに特色があります。弊社が協働しているエコビレッジでは、0才から80才までの100人ほどが共同生活を送っています。「一人のものはみんなのもの」という考えで、全員が「ひとつの財布」で、助け合って生活しています。

可能な限り自給自足で、農産物は完全無農薬・無化学肥料。畑作業、家事などの労働は、住民それぞれの個性や能力に応じて割り振られています。共同体であるこの村では、子どもも基本的に「社会の子ども」として捉えられ、親以外の大人たちもかかわり、みんなで育てている感じです。

食事は食堂で一緒に食べ、料理は原則すべて自給自足の食材を使い、調味料も手作りです。食生活は環境と健康に配慮して菜食、1日2食の食事法が採用されています。村内のカフェ

では一般の人々にも同様の食事が提供されていて、評判がいいようです。

健康茶の販売は「地球からのおすそわけ」

–健康茶の栽培を始めた理由と、販売までのプロセスを教えてください。

池田さん:

最初のきっかけは、エコビレッジに生えている桑や蓬の葉っぱを見ながら、生命力に溢れ、栄養価も高く、しかも二酸化炭素を吸収する葉っぱってすごいよね!というところから始まりました。すぐ成長するし、食糧難も予想される時代に、この葉っぱをなんとか使えないかと話し合い、行き着いたのが健康茶です。

「EARTH MIND」のコンセプトとしては、販売はあくまで「地球からのおすそわけ」です。従来の農業は利益を得るためなので、大量生産となり、そのために農薬が必要になることもあります。対してパーマカルチャーは売ることを目的としません。自分たちのため、暮らしのために作るとなれば、健康と土地のことを一番に考えますから、結果として本当に良いものができるんです。

農薬、化学肥料を使わないのはもちろんですが、土地と生産性という観点からも、持続可能なかたちで、その土地の出来る範囲で作るというのが考え方の主幹にあります。

生産をエコビレッジに委託して弊社が販売するかたちですが、企画や方向性を常に話し合いながらの協働です。製品は、蓮、クマザサ、シモン、ヨモギ、ほうじ茶、桑などの葉や茎を用いた「福み茶」と、柿、蓮、イチジク、桑、ローゼル、ビワ、マコモなどの葉を用いた「女神茶」の2種類(ティーバッグタイプ)で、どちらも環境にも身体にもよい健康茶です。葉の栄養をまるごと摂取できるパウダータイプも開発中で、近々販売となる予定です。

使用するエネルギーは極力再生可能なもので二酸化炭素が出ないようにしますし、マイクロプラスチックが排出されるというナイロン製のティーバッグは採用せず、生分解性のとうもろこしから出来ている製品を使用しています。現在、販売のメインはオンラインですが、商業施設などでのポップアップ出店もしています。

資本主義では当たり前の価値観を一回ひっくり返す

–続いては、エコビレッジ体験の教育プログラム「地球散歩」の内容を教えてください。

池田さん:

学生を対象として、協働しているエコビレッジで4泊5日の体験をしてもらいます。お金にとらわれず自給自足しているエコビレッジのコミュニティで、それぞれがどんな役割を担ってどんなことをしているのか、農的な暮らしとはどんなものか、などを実体験します。資本主義では当たり前の価値観を一回ひっくり返す、というようなプログラムです。

100人の村民がひとつの財布で生きている状況などを伝え、資本主義のなかで生きていくしかないという人たちに、それがすべてではないと、思考の柔軟性を与えることができれば嬉しいですね。

–農業研修プログラム、NO農NO LIFE「ののの」の目的と内容をお聞かせください。

池田さん:

農業×ワーケーションを「農ケーション」と称し、例えば、ちょっと地方に行って、午前中は農業をして、午後はテレワークで仕事をする。そんな半農半Xの疑似体験を目的として、農業研修プログラム「ののの」を始めました。

具体的には長野のリンゴ農家さんなど、契約しているところで宿泊しながらの体験プログラムとなります。期間は、数日から1か月と、多様な選択肢がありますが、朝に農業、午後に自分の仕事、が基本のスタイルです。

朝に太陽を浴びて農作業をすることで生活や身体のリズムが整い、心身の健康を取り戻す人が多いですね。感想として、人間的な生活を実感、きわめて満足度が高い、幸福度が爆上がり、などの声が寄せられています。

弊社の「理想の社会像」は、半農半Xのような、「農」が身近にある社会です。自分たちの食を完全に農家さんに任せるのではなく、1割でも2割でも自給すること、少しでも農との距離を縮めることが、これからの社会には大切だと考えます。たとえ小さな家庭菜園、ベランダ菜園であっても、その一歩になることでしょう。

環境問題というと難しく聞こえますが、もっとシンプルなものだと思っています。単純に身近な人や自然との繋がりを増やしていくうちに、気づけば環境問題は解決していた…そんなものかもしれません。そのきっかけが「暮らしのなかの農の存在」だと感じるので、それを広げることがミッションですし、弊社がひとつのロールモデルになればいいと思っています。

学生時代は、失敗を恐れずやりたいことをやれる時期

–池田さんは多様な取り組みや起業を大学生の時に始め、現在も大学院在学中です。そんな池田さんの在り方も、若者へのひとつのロールモデルになると感じます。志や若者へのメッセージをお聞かせください。

池田さん:

学生の方にお伝えしたいのは、学生時代は、失敗を恐れずにやりたいことをやれる時期だ、ということです。基本的に時間もありますし、情熱と行動力さえあればなんでもいける、と思っています。

学生時代での挑戦は、失敗しても成功しても、早いうちの体験として身に付きます。私も、大学一年次の子ども食堂から始まり、納得いかないことや失敗もありましたが、そのような体験を早くから重ねたからこそ、大学4年次での起業が実現したのだと思っています。

個人的には、自分はエコビレッジという存在と出会えて、いっそう失敗を恐れなくなりました。挑戦して失敗し、たとえお金を失ってもエコビレッジという存在があるから死にはしないだろう、という自信があります。逃げ場所があると挑戦しやすいですね。失敗しないために何かをするのではなく、失敗することを前提にしてやってもいいんじゃないか、と思っています。

自分の気持ちを見つめ、感性を磨くには、学生時代が一番好機だと思います。やりたいことがあるのなら、臆せずに挑戦してほしいですね。

–今後への展望をお聞かせください。

池田さん:

私は現在、北海道大学の環境科学院で、エコビレッジの幸福度について研究しています。エコビレッジの何がどのようによくて、なぜその住人たちは幸せなのか、ということを根拠立てて説明できるようになりたいんです。そんな学びも反映させながら、今後は身近な人や自然との繋がりを大切にできる空間を増やしていきたいですね。

EARTH MINDのブランドやサービスを広げることを通じて、温かな社会を広げていきたいと思っています。

–若者が学生時代から社会参加を始めれば、世界はもっと早く変わるかもしれませんね。今日はありがとうございました。

関連リンク

株式会社Perma Future公式サイト:https://permafuture2050.wixsite.com/official

健康茶ブランドEARTH MIND:https://earthmindofficial.com/collections/megami