#インタビュー

GG.SUPPLY株式会社|「都会の畑」を世界的インフラに!理想の農業のかたち「近所産近所消」とは

國村 隼太

1996年6月27日、福岡県春日市生まれ。福岡大学 教育・臨床心理学科卒業。「今、食卓に並んでいる野菜は本当に安全なのか?」という疑問から24歳でGG.SUPPLYを設立。
2021年12月、都会のHATAKE『GG.SUPPLY』1号店をOPEN。多数メディアに注目され、国内外から問い合わせが殺到。「野菜物流を変え、本当の健康があたりまえに届く世の中に」という想いを胸に、海外進出に向け準備を進めている。

introduction:

都会の真ん中に畑があり、そこで収穫された新鮮で美味しい野菜が30分以内に直接家まで届く。しかも無菌栽培・無農薬で洗わずに食べられ、冷蔵庫で1ヶ月保存できる―。そんな野菜を食卓に届けるため、新しい農業の形を実現し広めようとしているのがGG.SUPPLY(ジージーサプライ)株式会社です。

コンセプトは「野菜のあたりまえを変える」。物流で多くの人の手を介することで、食卓に届くまでに傷んでしまうことも多い野菜を何とかしたいと、新しい畑の形を展開しています。

今回はGG.SUPPLY株式会社代表取締役の國村隼太さんに、事業運営への思いや今後の農業のあり方などについてお話をうかがいました。

「都会の畑」で美味しくて健康に良い「常備野菜」を作り、野菜の当たり前を変えたい!

–はじめにGG.SUPPLY株式会社のご紹介と事業についてお聞かせください。

國村さん:

GG.SUPPLY株式会社は「都会の畑」を事業展開している会社です。

通常、畑は郊外にありますが、その畑を都会(消費者の近く)に持ってきて野菜を作り、対面やUber Eatsなどのデリバリーで販売しています。

GG.SUPPLY株式会社

私達が生産しているのは葉物野菜で、その種類は年間2〜300種類に及びます。完全に密閉された室内での栽培のため、一切農薬を使うこと無く、徹底的に雑菌を排除した状態で栽培しており、「採れたて、農薬不使用、無菌栽培」の野菜であることが特徴です。

そのため洗わずに食卓に出すことができるうえに、ドレッシングも必要ないくらい美味しく食べられるんです。さらに私達の野菜は、冷蔵庫で約1ヶ月日持ちします。しっかり日持ちして、いつもの料理にすぐに添えられることから、「常備野菜」と呼んでいます。

このような「採れたて、農薬不使用、無菌栽培」で一ヶ月日持ちする葉物野菜を、「収穫から最短30分以内に食卓へお届け」するというのがこのビジネスモデルの最大の特徴で、世界初のモデルとなります。現在国際特許も出願中です。

–では「都会の畑」について詳しく教えていただけますか。

國村さん:

私達の事業は「植物工場ですか?」と言われることもあるのですが、「畑」であり「農業」であり、私達は「農家」です。一般的な農業とやっていることは変わりありません。

都会の真ん中の水耕栽培の畑で育てています。土が水に変わっただけであり、一粒一粒人間が種を蒔き、栽培しています。

水耕栽培は昔からある栽培方法ですが、「植物工場」と呼ばれているモノと私達が大きく違うのは「作る場所」「作り手」「規模」です。

まず「作る場所」ですが、郊外にある一般的な植物工場と違い、都会の真ん中(消費者の近く)で育てています。その分、物流がカットされるため、より新鮮なお野菜がお届けできます。

次に「作り手」。植物工場では大人数の従業員が従事し、物流過程も含めると不特定多数の人間が野菜に触れています。私達は種の状態から皆様のご自宅に届くまで、一人しか野菜に触れません。

最後に「規模」。郊外の広大な敷地で大量に同品種の栽培を行い、小売店に卸している植物工場と違って、私達は「近所の野菜のコンビニ」です。必要な量だけ小規模で近所に配ります。ロスも出ませんし、地域のニーズに合わせて多種多様な品種をお客様に直接お渡しできます。

このように説明すると、「AIを使ってスマート農業をしているのでは?」と思われがちなのですが、私達はAIを一切利用していません。あえて使っていないんです。

私達が考える農業とは、「生き物」を育てることです。人間の子どもを育てるのと同じだと思っています。

農業において、AIは数値を読むことはできても、味見はできません。野菜は「生き物」です。いくら見た目をスマートにして、数値上の変化だけを見ても、美味しい野菜はできません。出来た野菜を最終的に判断するのは消費者。人間です。ですから私達は「愛情をかけて、人間の手で育てること」にこだわっているんです。これは外せないコンセプトの一つでもあります。

AIなどは美味しいものを作るための補助程度であるべきで、メインで使うものではないと考えています。

そのため、スタッフの栽培研修には最も力を入れています。「誰が」「どのように」育てるかが最も重要です。「一粒の種まきから愛情をかけてあげること。」というような事から教えているくらいです(笑)

現在扱っている商品は、年間2〜300種類栽培している葉物野菜のうち、毎月変わる5品種を詰め合わせにしたもので、単品、定期便、贈答用などの種類を用意しています。

お客様は40〜50代の主婦の方が中心で、「食」にこだわりのある方が多いです。リピーターの方だけで売り切れてしまうことも多いんです。

私達の野菜は出荷して終わりということでなく、品質と味が良い野菜を届け、消費者に「美味しい」と思ってもらうこと、「また食べたい」と思ってもらうことを大切にしています。

世界初のビジネスモデルは、もとをただせば昔からある農業本来の姿

–では御社がこの事業を始めたきっかけと経緯をお聞かせいただけますか。

國村さん:

私はもともと身体が丈夫ではなく、子どもの頃は病気がちでした。今思えば、母は私が食べる物にはかなり気を遣ってくれていたと思います。

そんな経験から、学生の時に、農薬が体の健康や神経系に及ぼす影響などを調べるようになりました。そして「人間は食べた物でできている」ということに気づき、「はたして自分が食べているこの野菜は、安全なのだろうか?」と疑問に思ったのがこの事業を始めたきっかけです。

野菜は皆毎日食べますが、「味が美味しい」そして「本当に健康に良い野菜」はほとんど手に入れることができないのが現状ではないでしょうか。

例えば、野菜が生産者に収穫されてから食卓に届くまで、約7〜10日かかると言われます。その物流工程で生産者から卸売業者、小売業者、消費者などと実にたくさんの人々の手で触られ雑菌がついてしまい、輸送の際の温度変化も影響して、葉物などは2~3日しか日持ちしないくらいに根元から傷んでしまいます。

そこで、途中の物流工程をなくすために「無農薬野菜が安定的に作れる畑を都会の真ん中に持ってこよう」と思ったんです。

自分達で作ったものは、自分達で消費者に届ける。そうすれば、生産者は利益を出しながら消費者の声を直接聞いて農作物をアップデートしやすいし、消費者も新鮮な野菜が手に入れば嬉しいですよね。

この方法は今の時代では世界初の新しい試みですが、実は「自分の家の近くに畑がある」という、昔からの農業本来の姿だと思うんです。今は良くも悪くも、遠くまで物を運べるようになったからこそ、問題が生じているんです。本来のあるべき姿に戻すためにこの事業に取り組んでいます。

–世界初のビジネスモデルとのことですが、創業の際にはご苦労などがありましたか。

國村さん:

一番大変だったのは資金調達ですね。

金融機関や国の資金援助を受ける際に「若いね?前例は?実績はあるの?」と聞かれるんです。創業資金の融資のはずなのに前例と実績を問われるんですね。

さらに、このビジネスモデルは現在の産業分類のどこにもあてはまらないんです。種を蒔くところから収穫、販売をして食卓に届けるまで一連の作業をすべて行い完結させる。「これは農業ではない」と言われました。この事業は今の時代には早すぎたのかもしれないとも感じました。

現在は自分達の売った野菜の利益だけで経営できるようになりました。まずは目の前の一株一株を心を込めて育てて、お客様に届けることを心がけています。

「近所産近所消」の農業が多くの社会問題の解決や未来に貢献できること

–SDGsの観点からはどのような貢献ができると考えていらっしゃいますか。

國村さん:

まずはフードロスの問題解決に貢献できます。

フードロスが一番多い食品は野菜で、実は家庭で一番多く廃棄されています。日持ちせずに冷蔵庫で腐ってしまうんですね。

これは生産者や消費者が悪いというわけでなく、今の物流の仕組みの問題なんです。大量に生産し、その在庫を売るのが当たり前なので、家庭だけでなく物流途中でダメになった野菜はどんどん廃棄されていきます。

しかし私達の「都会の畑」ならば必要な分だけ収穫して売ることができ、収穫後約1ヶ月保存できるので生産段階でも家庭でもロスが出ないんです。これは大きな貢献になると思います。

また、物流工程を減らすことができればCO2の削減にもつながります。

現在はほとんどの野菜は郊外で作られて都心へ運ばれ、売られています。その物流の度にトラックから大量のCO2が発生しますから、近所で作って近所で消費すればCO2の大幅な削減になります。

さらに食糧不足の解決にもなりますね。

室内で生産するので、異常気象や気候変動の影響を受けません。砂漠、北極南極、海の上、宇宙でもどこでも栽培できるので食糧不足の問題にも貢献できます。

私達の栽培方法はマニュアルとシステムが整っているので、農業の知識が無い方でもチャレンジできます。ですから、この方法を世界中に広げれば新たな雇用を生むこともできますし、正直、持続可能な社会のために貢献できる点は無限にあると思います。

–では農業の現状と問題点、今後の解決策をどのように考えていらっしゃいますか。

國村さん:

私がこの事業を始めるきっかけの1つになった農薬の問題ですが、もう「国産のものは安心で美味しい」という時代ではなくなっています。海外で使用が禁止されている農薬が、日本では規制が緩いため多く使われているんです。今、日本で流通している野菜のほとんどには農薬が使われています。

日本は気候の問題などで虫や病気が発生しやすく、無農薬の野菜は栽培が難しかったり、そもそも日本人は「農薬って何?」と聞かれて明確に答えられる人が少ないと思うんですが、そういう消費者意識も関係していると思います。

安全で美味しい野菜を食べるために、消費者が明日からでもできることは、野菜を選ぶ基準を変えることです。

現在は綺麗に形がそろった安い野菜を選ぶ人がほとんどです。「虫食いがなく、形が綺麗なのはなぜでしょうか。」今、手に取っている野菜が本当に美味しくて安全かどうかを考えずに買うことは、農薬のリスクを考えず将来の健康を切り売りしているようなものです。

今の日本では、農家が無農薬野菜を作るのは所謂博打のようなものなんです。本当に苦しいんです。このままではいつまでたっても無農薬の野菜がスーパーに並ぶことがあたりまえの光景にはなりません。ですから消費者が野菜を手に取るときに、「1円でも安いものを買う」よりも「健康に良い、美味しいものを買う」ことを意識してもらえたら、野菜の生産基準を変えられると思います。

また、将来野菜の生産は2つの軸に分かれていくと思っています。

1つは自分が生産者となる方法。自宅で家庭用の水耕栽培キットで、自分が育てた信頼できる野菜を食べる方法です。

もう1つは、近所で信頼できるプロが作ったものを買う方法です。私達は、水耕栽培におけるプロフェッショナルの総合メーカーです。水耕栽培キットや光、液肥や作り方のコンサルなども全て自社で取り扱っており、最近は事業用だけでなく、家庭への導入の相談も増えてきています。

「自分達で育てた野菜を食べる」「直接生産者と会って信頼できる野菜を買う」、私達はこの方法を広めていく先駆者になりたいと考えています。

–最後にこれからの展望をお聞かせください。

國村さん:

「健康に良い、そして美味しい野菜を食卓に届け、野菜のあたりまえを変える」という思いを変えずに、さらに事業を広めていくことが重要だと考えています。

大変ありがたいことに、現在沢山の企業様からお声掛けを頂いております。私達のコンセプトに共感していただけるかどうかが、一緒にお仕事をさせていただくうえで特に重要だと考えています。そのような企業に私達のビジネスモデルをたくさん知ってもらい声をかけていただけるようにしたいです。

現在は、無印良品や百貨店などとコラボレーションをしています。

無印良品は「時短」というキーワードが一致したことがコラボのきっかけです。

無印良品とのコラボの様子
《無印良品とのコラボの様子》

無印良品の、忙しくても美味しいものを食べられる冷凍食品やレトルト食品と、私達のすぐに食べられる野菜で「時短」でもワンランク上の食卓が作れるということがお客様に支持され大変好評でした。

また、百貨店では普段使いの野菜の他に、贈答品としての商品を提供しています。

今まで野菜は、日持ちがしないことから贈答品にはふさわしくありませんでした。

ギフトは気持ちを送るものですから、相手のライフスタイルや、健康を考えたものが良いということで需要が増えています。

これからホテル、カフェやレストランなど、コラボレーションの幅を広げていければと考えています。

最終的な展望としては、私達のビジネスモデルを世界中に展開してインフラにすることです。

コンビニエンスストアの数以上に店舗を増やしていけば、「近所産近所消」で物流をカットし、美味しくて安心安全な野菜が食べられる生活が日常になります。

すでにヨーロッパや東南アジアなどから「一緒にビジネスをしたい」と声をかけてもらっていますので、まずは海外に店舗を作って展開したいと思っています。

また「葉物野菜ならGG.SUPPLY」と言ってもらえるように、私達の葉物野菜を1つのブランドにしたいと思っています。

葉物野菜以外も栽培は可能なので、時期が来たら取り組もうと思っています。しかし、葉物野菜の物流問題を解決することが最優先です。まずは葉物野菜のスペシャリストになりたいと考えています。

「近所産近所消」の美味しい野菜が食べられるようになるのを楽しみにしています。本日は貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

GG.SUPPLY株式会社:https://gg-supply.com/

GG.SUPPLY株式会社オンラインショップ:https://ggsupply.official.ec/