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公害とは?種類や原因・現状を知り、問題解決やSDGsの達成に取り組もう

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日本はかつて大規模な環境汚染による深刻な公害問題を経験しました。これらの急激な産業の発展による公害は、住民運動や報道が公害への社会的な問題意識を高め、政府や企業は公害対策を強化しました。

公害の種類や原因を知り、問題解決のためにはどうしたらいいのかを考えてみましょう。後半には公害問題解決とSDGsの達成との関係も解説します!

公害とは

公害とは、事業活動など人の活動によって広い範囲にわたり引き起こされる、人の健康・生活環境や動植物の生育環境への被害を指します。

典型7公害とは?日本の公害の種類

環境省「水質汚濁対策」p.19
【海岸に流れ着いた大量のゴミ】
出典:環境省「水質汚濁対策」p.19

日本の環境基本法では以下の7つを「典型7公害」としています。

「典型7公害」の他にも近年は放射性物質有害物質(※ダイオキシン、※アスベストなど)による被害も公害とされる例もあります。

ダイオキシン

塩素を含む物質の不完全燃焼や薬品生成の際の副産物として生成される。人間に対して発がん性のある毒物

石綿(いしわた・せきめん)を表すオランダ語(asbest)。髪の毛の5,000分の1ほどの細い繊維からなる繊維状の鉱物で、耐久性・耐熱性・対薬性・電気絶縁性に優れる上に安価。建築材料・電気製品・自動車・家庭用品などに広く利用されていたが、空中に飛散したアスベストを長期間大量に吸い込むと肺がんなどを引き起こし「静かな時限爆弾」と呼ばれ、使用が規制されている。

【ダイオキシン類の生態系の中での動き】
【ダイオキシン類の生態系の中での動き】
出典:環境省『日本の野生生物におけるダイオキシン類の蓄積量について 』p.2

典型7公害について詳しく

それでは、「典型7公害」の7つの公害がどのようなものか確認しましょう。

①大気汚染

大気汚染とは、大気中に排出された物質が、自然の拡散機能や浄化機能、人為的な除去機能を上回って大気中に存在し、その量が自然の状態より増加して人間の生活を含む生態系やものなどに影響を及ぼすことです。

自然の空気の組織を変化させる物質は総じて広い意味では大気汚染物質と言えます

【四日市コンビナートと白いスモッグ】
【四日市コンビナートと白いスモッグ】
出典:Wikipedia「四日市コンビナートと白いスモッグ」

大気汚染の代表的な例に、三重県四日市市の地域で発生した四大公害病のひとつ「四日市ぜんそく」の原因となった石油化学コンビナートからの排煙による大気汚染が有名です。この公害による近隣住民への健康への影響は深刻で、咳が出る・たんが出る・ぜんそくなどの閉鎖性肺疾患の症状を訴える人が多発し、症状の辛さから自殺する人まで出る事態となりました。

②水質汚濁

水質汚濁とは、河川・湖沼・港湾・沿岸海域などの水の状態が、産業家庭の日常生活など人間の活動などにより、損なわれることです。水質汚濁には火山噴火や野生動物の活動による物も含まれますが、公害として問題視されるのは人間の産業や生活による廃棄物・排水による汚染です。

【ベトナムの漁村ムイネーの浜辺】
【ベトナムの漁村ムイネーの浜辺】
出典:環境省『ベトナムにおける環境汚染の現状』p.80(2009年)

水質汚濁による公害では、熊本県・鹿児島県に面する海と新潟県で起こった化学工場からの排水に含まれていた有機水銀による汚染が有名です。「水俣病」「新潟水俣病」と呼ばれるこの公害は、有機水銀に汚染された魚を食べた人々が手足のしびれ、体が動かなくなるなどの症状で苦しみ、死に至る人もいました。

また、富山県では岐阜県飛騨市の神岡鉱山からの排水に含まれていたカドミウムにより、農業用水が汚染され、神通川の下流で採れた米などを食べた人々が、骨がもろくなり強い痛みに苦しめられ動けなくなり、死に至る人も出ました。「イタイイタイ病」と呼ばれるこの公害病と、先ほどの「水俣病」「新潟水俣病」「四日市ぜんそく」を加えた4つの公害事件を「四大公害病」と呼びます。

比重の重い金属が土壌や地下水を汚染すること

【1960年代 北九州市洞海湾に堆積したヘドロの標本】
出典:北九州市 環境ミュージアムにて筆者撮影
【1960年代 北九州市洞海湾に堆積したヘドロの標本】
出典:北九州市 環境ミュージアムにて筆者撮影

③土壌汚染

土壌汚染とは人間の活動などにより発生した廃棄物などに含まれる有害物質が土の中に溜まってしまうことです。日本では都道府県などによる土壌汚染調査は年々件数が増えており、土壌汚染が見つかる件数も増えています。

土壌に含まれる有害物質は、大気汚染や水質汚濁の場合と比べて移動性が低いため、拡散されたり希釈されたりしにくい特徴があります。このため土壌汚染の発生は局所的で広範囲に及ぶことはほとんどありませんが、一旦土壌が汚染されると長期にわたり人々の健康や生活環境、野生の生態系に影響を及ぼすおそれがあります。

④騒音

騒音は日常生活に密着した公害であることから、「典型7公害」に関する苦情の中の3分の1を占めるほど多数報告されています。発生源は工場・事業場、深夜営業、建設作業、電車(新幹線・在来線)、航空機、ヘリコプター、一般・高速道路、風力発電施設など多種多様です。

上のグラフは1972年(昭和47年)から2019年(令和1年)までの騒音についての苦情の件数の推移です。近年は横ばいですがやや減少傾向にあります。

【2019年度 騒音にかかる苦情の発生源】
出典:環境省『令和元年度(平成 31 年度)騒音規制法等施行状況調査の結果について 』p.4(2021年3月)
【2019年度 騒音にかかる苦情の発生源】
出典:環境省『令和元年度(平成 31 年度)騒音規制法等施行状況調査の結果について 』p.4(2021年3月)

2019年の騒音についての苦情の発生源は、建設作業が38.5%と最も多く、ついで工場・事業場が28.1%、営業が9.0%、家庭生活が7.2%の順となっています。国土が狭い上に都市部には人口が集中しているため、居住地のそばに道路や鉄道が走るなど、日本には騒音による公害が発生しやすい環境が多いといえます。

⑤振動

振動とは、地面または建物の上下・縦横方向の揺れのことです。人間の感じる振動は周波数で0.1Hz〜500Hzほどとされ、特に公害としての振動で問題視されるのは周波数1Hz〜90Hzの範囲の振動です。

振動による公害は家具・調度品などの破損、耐久期間の短縮、建物のひび割れなど物的被害だけでなく、生活への妨害となる心理的や感覚的な影響の問題も大きいと考えられています。

生活への妨害とは、気分のイライラや不安など情緒的な影響、また睡眠障害や思考・作業の妨げなどです。

【人と物では低周波音に対する感度に違いがある】
【人と物では低周波音に対する感度に違いがある】
出典:資源エネルギー庁『風力発電施設における騒音及び超低周波音について』p.7

例えば家具の低周波音に対する反応は、20Hz以下程度では人よりも感度が良く、家具・窓・戸などの揺れやすい周波数に発生源から伝播してきた低周波が一致すると共振し、揺れることがあります。人には風や地震でもないのに家具や家が揺れたように感じるため、中には「霊的なものの仕業ではないか」など不安と恐怖に苦しむ人もいます。

【新聞に取り上げられた低周波音による振動公害の例】
【新聞に取り上げられた低周波音による振動公害の例】
出典:資源エネルギー庁『風力発電施設における騒音及び超低周波音について』p.6

⑥地盤沈下

地盤沈下は、人間の活動が原因のものと、地盤の乾燥による収縮・地下水の変動・地下空洞の陥没など自然現象によるものがあります。人間の活動による地盤沈下は、地下水の過剰な汲み上げ・天然ガスの汲み上げ・鉱山の坑道掘削などが主な原因です。

【浦安市のマンホールの突出】
【浦安市のマンホールの突出】
出典:国土交通省『地盤沈下による被害』p.147

地盤沈下は一旦起こってしまうと、回復が困難です。地下水の採取量が増大した高度成長期に地盤沈下は大きな社会問題となりましたが、東日本大震災の影響で震源地に近い岩手県・宮城県・福島県の太平洋沿岸地域でも広範囲にわたって地盤沈下が起こりました。

【東日本大震災で起こった地盤沈下】
【東日本大震災で起こった地盤沈下】
出典:国土交通省『地盤沈下による被害』p.139

⑦悪臭

人に不快感を与える悪臭も典型7公害のひとつに入っています。悪臭と言っても、一般的にいいにおいと感じられるパンの焼ける匂いやコーヒーの焙煎のにおいでも苦情が寄せられることがあります。

人工的な匂いによって人体に不調を与える現象を香害(かおりがい、こうがい)と呼びます。

事業者などは、自社からのにおいに慣れてしまっていて、そのにおいに困っている人がいることに気がつかないこともありますが、そのにおいが迷惑だと感じる人がいればそのにおいは悪臭と言えます。悪臭は悪臭防止法により規制されています。

2020年に寄せられた悪臭への苦情の発生源は、野外焼却が35.9%と最も多く、ついでサービス業その他の営業にともなうにおいが13.1%個人住宅・アパート・寮からのにおいが12.5%畜産農業からのにおいが7.6%でした。

【2020年度 都道府県別の悪臭にかかる苦情件数】
【2020年度 都道府県別の悪臭にかかる苦情件数】
出典:環境省『令和2年度悪臭防止法等施行状況調査の結果について』p.3(2022年2月)

悪臭への苦情件数を都道府県別に見ると、最も多いのは千葉県で1,613件、次に東京都の1,344件、愛知県の1,299件、大阪府の939件と続きます。このように、悪臭による苦情は件数別に見ると大都市がある地域に多いことがわかります。*1)

かつては「四大公害病」に代表される大規模・産業型の公害が大きな社会問題でした。しかし近年は近隣からの騒音・悪臭など都市型・生活環境型へと変化しています。

四大公害病とは|公害の歴史を踏まえて紹介

このような公害のなかでも、高度経済成長期に起きた「水俣病」「新潟水俣病」「イタイイタ病」「四日市ぜんそく」は四大公害病と呼ばれ、耳にしたことがある方も多いと思います。

ここでは、それぞれの公害病について簡単に確認しましょう。

水俣病

1953年〜1960年頃に問題となった公害病です。熊本県水俣湾の周辺にある化学工場などから、メチル水銀が川や海に流出。これにより水が汚染され、そこで育った海産物を住民が食べていたことで、手足や口に痺れを訴え、中には死亡する人もいました。

新潟水俣病

1964年頃から問題となった公害病です。熊本の水俣病と同じような症状が見られ、こちらも水銀が原因となっています。

イタイイタイ病

1955年から問題となった公害病で、富山県神通川流域で発生しました。鉱山の排水に含まれている「カドニウム」が原因で、患者が「痛い痛い」と叫んでいたことから、その名前がつけられました。

四日市ぜんそく

1960年頃から問題となった公害病です。三重県四日市市で発生した四日市ぜんそくは、せきやたんが出たり、喘息の症状を訴えたりする人が多発しました。原因は、石油化学コンビナートが稼働したことにより、硫黄酸化物などの大気汚染物質が排出されたことにあります。

かつては「四大公害病」に代表される大規模・産業型の公害が大きな社会問題でした。しかし近年は近隣からの騒音・悪臭など都市型・生活環境型へと変化しています。

日本政府の取り組み・公害対策事例

典型7公害や四大公害病について理解したところで、さまざまな公害問題解決のために、日本政府がどのように取り組んでいるのか確認しましょう。

環境省の設立

日本政府は公害・廃棄物問題・地球環境問題などに立ち向かうために、環境省を設置しています。環境省は1950年代ごろの産業型公害問題の深刻化により、公害規制の官庁として始まりました。

その後の都市型公害・地球環境問題の深刻化を受けて、1971年には「環境庁」として政策を担う官庁となりました。2001年には「環境省」が設立され、政策・環境事業・国際連携・国際協力など、環境問題の国際官庁としてさまざまな課題解決に取り組んでいます。

【環境省の活動例】
【環境省の活動例】
出典:環境省『プラスチック資源循環』

環境省が取り組む課題は下記のように多様です。

  • 脱酸素
  • 気候変動
  • リサイクル・省資源
  • 食品ロス
  • 自然環境
  • 生物多様性
  • 復興

次は具体的な対策について見ていきましょう。

環境犯罪対策

環境犯罪とは環境に害を及ぼし、自然環境を破壊するような犯罪です。例えば日本では以下のような法律があります。

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
  • 大気汚染防止法
  • 水質汚濁防止法
  • 絶滅のおそれのある差例動物種の保存に関する法律

近年、環境犯罪への社会的意識は高まる傾向にあり、そのための対策も強化されつつあります。例えば警視庁では環境汚染につながる不法投棄などの犯罪行為への取り締まりを強化しているとともに、その犯罪行為への罰則も強化されています。

【悪質な不法投棄の現場】
【悪質な不法投棄の現場】
出典:警視庁『環境犯罪』

公害紛争処理制度

日本政府は公害問題による紛争を迅速・適正に対処するため、裁判所による司法的解決とは別に、各都道府県に「公害審査会」などが、国には「公害等調整委員会」を設置しています。さらに、これらの公害紛争処理機関とは別に、都道府県及び市区町村に「公害苦情相談窓口」が設けられています。*2)

【公害紛争処理の流れ】
【公害紛争処理の流れ】
出典:総務省『公害等調整委員会』

日本の公害の現状

このような取り組みにより、近年では四大公害病のような死に至る公害は見られなくなりました。とはいえ、公害が一切なくなったわけではありません。

ここでは、典型7公害の現状について見ていきましょう。

令和2年度の調査では公害苦情受付件数は増加

公害等調整委員会事務局がまとめた「令和2年度 公害苦情調査結果報告書」によると、

  • 全国の公害苦情受付件数→81,557件(前年比11,099件増)
  • 典型7公害→56,123件(前年比1,531増)

となっています。

特に、騒音が4,335件、大気汚染が2,782件増加しているのが特徴です。

このような公害を減らすためには、自治体や企業による対策も不可欠です。次では、公害対策事例を紹介します。

自治体の取り組み・公害対策事例|東京都

公害対策は地方自治体や企業でも行われています。以前の大きな社会問題であった大気汚染対策や水質汚濁対策は、近年広く関心を集めている環境問題として取り上げられる機会が増えています。

日本では、さまざまな機関や企業、多くの人々の努力により、そのような過去の産業型の公害による汚染の状況は改善の傾向にあります。ここでは、「環境問題」のジャンルでは取り上げられることの少ない騒音や振動などの都市型の公害について、世界的な大都市、東京都の事例を紹介します。人口の集中する大都市での振動・騒音対策は取り組みが進んでいるものの、課題もまだ残されています。

生活騒音・振動対策

東京都では建設業者に対し、低騒音型建設機械の導入普及を促進したり、騒音規制法・振動規制法などを管轄する区や市に対し、研修などによる技術的支援を実施したりしてます。

しかし、東京都では在宅勤務の普及で、自宅で過ごす時間が長くなるなど都民の生活の変化により、騒音・振動への苦情件数は増加が懸念されています。

【東京都における建設騒音への苦情件数の推移】
【東京都における建設騒音への苦情件数の推移】
出典:東京都環境審議会『政策の方向性について〜大気・化学物質等〜』p.32

鉄道や航空機の騒音・振動対策

東京都は鉄道や航空機の騒音対策のため、各地で騒音調査を実施しています。この調査に基づき、鉄道事業者や関係省庁、米軍基地に対して防音柵の設置など騒音低減策を要請します。

東京都の調査では鉄道沿線でまだ騒音・振動の環境基準を達成しない地点があり、これらの地域の状況改善が課題です。また、横田基地付近でも環境基準を達成していない地点があります。

羽田空港の発着回数が増加したことによる苦情も発生しており、大都市である東京都はこれからも公害対策への取り組みを強化するとともに、都民への丁寧な情報提供を推進する方針です。

日本企業の取り組み・公害対策事例

続いては、企業の取組事例を紹介します。

近年、企業では※CSRが重要視されています。企業の損益だけを追求していては社会的な評価が下がり、他企業との取引や金融機関や投資家からの資金調達も難しくなりつつあります。

このような風潮の中、かつて大規模で深刻な公害問題を経験してきた日本企業は、どのような公害対策を行なっているのでしょうか。

Corporate Social Responsibilityの略語。企業の社会的責任のこと。

NEXCO東日本|高速道路沿線の生活環境への影響低減

日本では市街地や住宅地のそばに高速道路がある例も珍しくありません。このような人が生活している場所の近くにある高速道路には、騒音などの影響を低減するための対策が必要です。

【外環道(三郷南IC~高谷JCT)に設置した遮音壁】
【外環道(三郷南IC~高谷JCT)に設置した遮音壁】
出典:NEXCO東日本『環境への取り組み』(2021年1月)

NEXCO東日本では、遮音壁を設置したり、高速道路の敷地内に植樹するなどの環境施設帯の整備などを行なっています。これらの樹林によりCO2を吸収し、大気汚染対策にも取り組んでいます。

清水建設株式会社|土壌洗浄プラントでの悪臭対策

清水建設株式会社では、建物の建設だけでなく、最新の技術による土壌洗浄で、土壌汚染を浄化する事業も行なっています。土壌洗浄プラントは、周辺地域への油臭気対策として、掘削地・運搬路・プラントをテントで覆っています。*3)

【清水建設の土壌洗浄プラントの様子】
【清水建設の土壌洗浄プラントの様子】
出典:清水建設『環境浄化』
【清水建設の土壌洗浄システム】
【清水建設の土壌洗浄システム】
出典:清水建設『環境浄化』

公害問題とSDGsの関係

公害問題の改善は環境問題や人々のより良い生活の追求など、SDGsの目標達成への活動と重なる面が多くあります。公害問題の解決がSDGsのどの目標と深いつながりがあるか確認してみましょう。

圧縮済みSDGs画像

SDGsとはSustainable Development Goalsの略称です。「持続可能な開発目標」のことで、2030年までにより良い人々の生活、より良い地球のために世界のすべての人々が達成を目指すべき17の目標・169のターゲットが行動計画として設定されています。

目標3「すべての人に健康と福祉を」

sdgs3

目標3は「すべての人に健康と福祉を」です。あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進します。

公害問題が改善することは人々のより健康な生活に繋がります。

目標6「安全な水とトイレを世界中に」

sdgs6

目標6は「安全な水とトイレを世界中に」です。すべての人々の水と衛生設備の利用を可能にし、その持続可能な管理を確保します。

安全な水の確保は水質汚濁の公害問題解決に深く関わりがあります。また、安全なトイレ(衛生設備)を世界中すべての人に確保することは土壌汚染の公害問題の防止にもなります。

目標11「住み続けられるまちづくりを」

sdgs11

目標11は「住み続けられるまちづくりを」です。包括的で安全・強靭な都市と人々の生活環境を持続可能な仕組みで構築します。

公害問題が解決できなければ実現できない目標と言えます。公害問題を解決する取り組み自体が目標11のなかにあるのです。

目標14「海の豊かさを守ろう」

sdgs14

目標14は「海の豊かさを守ろう」です。持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用します。

水質汚濁の公害問題解決はこの目標達成のためになくてはなりません。

目標15「陸の豊かさも守ろう」

sdgs15

目標15は「陸の豊かさも守ろう」です。陸上の生態系の保護・回復・持続可能な利用を推進し、持続可能な森林の経営、砂漠化・土地の劣化の阻止、生物多様性の損失の阻止、そして劣化した土地や生物多様性の回復を目指します。

この目標達成のためにも、大気汚染・水質汚濁・土壌汚染をはじめとする公害問題を解決しなければなりません。

SDGsは世界中の人々の誰1人取り残さず、持続可能で多様性と包括性のある社会と人々の幸せな生活、ずっと住み続けられる健全な循環の自然環境と地球を実現するために、全世界の人々がこれから進む方向を明確にしたものです。未来のより良い社会、より良い地球のために、SDGsの目標・ターゲットへの理解を深め、あなたの選択・行動の指標にしてください。*4)

公害は日本だけの問題ではない|私たちにできること

日本の公害問題はかつての大規模な大気汚染・水質汚濁・土壌汚染などの産業型公害から、騒音・振動・悪臭などの都市型の公害へと変わってきました。しかし、海外では日本がかつて経験した大規模な産業型の公害に今まさに悩まされている国々があります。

日本にはこれらの公害に対処する高度な技術があります。これらの経験から得た知識と技術で、公害に苦しんでいる地域を支援することも大切です。

大気や海は世界中繋がっているので、日本国内だけ良くなっても解決できないのです。これはSDGsの目標17「パートナーシップで目標を解決しよう」にも貢献します。

公害問題はあなたが知識を持って、必要な場合には適切な機関に報告することで、より早期の解決につながることもあります。もちろん人が生活するからにはある程度の騒音・振動・悪臭が発生することはありますが、それがあなたの平穏な生活を害するほどであれば、適切な対処が必要です。

あなたの行動が誰かの健康や快適な生活を侵害しないように配慮を忘れないようにすることも、都市型の公害問題発生防止につながります。あなたの生活は周囲に、地域に、国に、世界に繋がっていることを自覚して、これからも公害について常に新しい知識を持つよう心がけましょう!

〈参考・引用文献〉

*1)公害とは
北九州市『ばい煙の空、死の海から奇跡の復活』
環境省「水質汚濁対策」p.19
総務省『3分でわかる公害紛争処理制度』
環境省『日本の野生生物におけるダイオキシン類の蓄積量について 』p.2
総務省『3分でわかる公害紛争処理制度』
環境省『大気汚染の定義と汚染物質』
環境省『平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 四日市ぜんそく』
環境省『ベトナムにおける環境汚染の現状』p.80(2009年)
環境省『図で見る環境白書 昭和48年版 四大公害裁判の教訓』(1973年)
環境省『平成26年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 公害健康被害の補償等に関する法律』(2014年)
北九州市 環境ミュージアム
東京都環境審議会『政策の方向性について〜大気・化学物質等〜』p.44
環境省『土壌汚染対策法の仕組み 土壌汚染とは?』p.5,p.6
環境省『土壌汚染の特徴』
環境省『令和元年度(平成 31 年度)騒音規制法等施行状況調査の結果について 』p.3(2021年3月)
環境省『令和元年度(平成 31 年度)騒音規制法等施行状況調査の結果について 』p.4(2021年3月)
環境省『令和元年度(平成 31 年度)騒音規制法等施行状況調査の結果について 』p.3,p.4(2021年3月)
環境省『よくわかる建設作業振動防止の手引き』P.3
環境省『振動公害の現状と対策』
資源エネルギー庁『風力発電施設における騒音及び超低周波音について』p.7
資源エネルギー庁『風力発電施設における騒音及び超低周波音について』p.6
環境省『令和2年度 全国の地盤沈下地域の概要』p.17(2022年4月)
国土交通省『地盤沈下による被害』p.147
国土交通省『地盤沈下による被害』p.132
国土交通省『地盤沈下による被害』p.139
環境省『令和2年度悪臭防止法等施行状況調査の結果について』p.2(2022年2月)
環境省『令和2年度悪臭防止法等施行状況調査の結果について』p.3(2022年2月)
環境省『令和2年度悪臭防止法等施行状況調査の結果について』p.2,p.3(2022年2月)
*2)公害に対する日本政府の取り組み
環境省『令和3年度気候変動アクション環境大臣表彰』(2022年1月)
環境省『プラスチック資源循環』
警視庁『環境犯罪』
環境省_令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 施策第6章第9節 公害紛争処理等及び環境犯罪対策 (env.go.jp)
総務省『公害等調整委員会』
*3)企業や自治体の取り組み
東京都環境審議会『政策の方向性について〜大気・化学物質等〜』p.32
東京都環境審議会『政策の方向性について〜大気・化学物質等〜』p.32〜p.35
NEXCO東日本『環境への取り組み』(2021年1月)
清水建設『環境浄化』
*4)公害問題の改善はSDGsの達成にも貢献する
国連広報センター『SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン』
国連広報センター『持続可能な開発目標(SDGs)とは』

この記事の監修者
阪口 竜也 監修者:フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)