#インタビュー

株式会社RooFarm|「屋上苺農園」を通して、都市部での農業生産と地域の循環を生み出す

株式会社RooFarm

株式会社RooFarm 金子 隆大さん インタビュー

金子  隆大 25歳

ビジネスブレークスルー大学4年生2019年にアメリカでの短期インターンで歴代最高評価をいただく。帰国後は働く楽しさを実感し、様々な事業立ち上げに従事。2024年1月に株式会社RooFarmを創業。

introduction

株式会社RooFarmは、「食べる場所で作り、都市の気温を下げる」をミッションに、屋上苺農園事業を展開する会社です。

地方で作りCO2を排出しながら都市部へ輸送する、さらに足りない分は輸入に頼る日本のフードサプライチェーンに課題感を持ち、土地に依存しない形での農業生産を目指しています。また、屋上苺農園を通じた「食育」や「循環」も大切に事業を広げてきました。

今回は、副代表の金子さんに、FooFarmの事業内容や循環を大切にする考え方、今後の展望などをお伺いしました。

日本のフードサプライチェーンに疑問を持ち、屋上農園事業をスタート

ー会社概要と事業内容を教えてください。

金子さん:

弊社は、「食べる場所で作り、都市の気温を下げる」をミッションに掲げ、「屋上苺農園」を軸にさまざまな事業を展開しています。

屋上農園である理由としては、消費のあまりない地方で作物を育て多くのCO2を排出しながら輸送して消費者に届ける。さらには足りない作物を輸入に頼るという日本のフードサプライチェーンに課題を感じているからです。

フードサプライチェーン

生産地から食卓に食材が届くまでのこと

日本は農業大国ではないですし、限られた狭い土地の中で農業生産を行わないといけないので仕方のないことかもしれません。でも「もっとできることがあるのではないか」という想いから、東京などの都市で農業生産をしたいと考えました。その中で僕たちは、「消費者が直接作っている場所へ収穫に行く」という世界を目指して、屋上農園を事業にしています。

ー屋上農園をする作物として、「苺」を選んだ理由をお伺いできますか?

金子さん:

苺にしている理由の1つは、嫌いな方があまりいないと考えたからです。あくまで主観なのですが、苺は子どもからお年寄りまで、好んで食べる方が多いのではないでしょうか。あとは、量に対して比較的卸値が高いので、屋上という小さい面積でも利益がでやすいこと。多年草なので毎年子苗を繁殖させることで資産が増えていくことから、苺を選びました。

品種は「東京おひさまベリー」を使っています。もともと苺の露地栽培種として主流だった宝交早生(ほうこうわせ)を東京都が品種改良したもので、(屋上で育てても)スイーツ店に卸せるクオリティの苺を作れる点が特徴です。

屋上苺農園を通して地域の循環を作る

ー「屋上苺農園」を軸にさまざまな事業を展開されているということでした。どのような事業をされているのか具体的にお伺いできますか?

金子さん:

都市空間の緑化のために、東京の屋上一面を緑と赤に埋める「食べれる屋上緑化事業」を展開しています。具体的には、オフィスビルや商業施設の屋上に苺農園を設置して、収穫した作物を販売しています。

最近では、保育園に屋上苺農園を制作する活動も広がってきました。この活動は、ヒートアイランド現象への対策とあわせて、なかなか野菜作りを体験する機会のない都内の園児たちの「食育」にも繋がります。

苺を作り、実がなったら園児や保護者の方、地域の方と収穫し、みんなで「育てたものを食べる」流れを体験してもらっていますね。

他にも、地元のスイーツ店にその苺を卸して、スイーツとして地域の人にも楽しんでもらうような循環ができた例もあります。

屋上の使われ方には、太陽光パネルや芝などもよく目にされると思いますが、それらは単発で終わることが多いんです。そうではなく、僕たちは「屋上苺農園」を都市のハブにして、人とお金と農作物を循環させることを大切にしています。

ー「屋上苺農園事業」以外にも展開されている事業があれば教えてください。

金子さん:

ビルなどの屋上ではなく、自宅で東京おひさまベリーを育ててもらう「0.1㎡のいちご畑栽培キッド事業」も行っています。この苺栽培キットは、一般的な家庭菜園と違い、スイーツ店にも卸せるほどの「高品質で大ぶりな苺」を自宅で育てられることが特徴です。それを可能にしているのは、苺の品種とRooFarmが独自で開発した木製のプランター、炭素循環農法をベースにした栽培法になります。

※0.1㎡のいちご畑栽培キッドはHP(https://www.itigobatake.com/)から購入可能。楽天市場も対応予定。

国産木材を使うことがCO2削減に繋がる

株式会社RooFarm

ーRooFarmが独自で開発した木製のプランターについて詳しく教えてください。

金子さん:

屋上苺農園でもこのプランターを活用しているのですが、農園を作るためには0.1㎡の正方形のプランターを何個も重ねる必要があります。そこで、下部にかけて少し斜めにすることで、いくつも重ねても密封されず空気が通るようにしています。また、底が抜けるようにしていますので、水はけもよく根が腐りにくいのもポイントですね。

加えて、このプランターを使って炭素循環農法での栽培をしていることも特徴です。炭素循環農法とは、土壌の中の窒素と炭素の比率をできる限り等しくして、土の中の微生物を活性化させる農法です。最近の農法であるためエビデンスを出すことはできないのですが、この農法で育てていると作物が強くなると言われています。

実際に僕たちは基本的に農薬を使わないで苺栽培をしていますが、プロジェクトを開始した4年前から今まで虫の被害などにあったことはありません。ですから、RooFarmが提供する苺栽培は、無農薬で楽しんでいただけるんです。

もう一つの特徴は、プランターに「多摩産材」という「とうきょうの木」を使用していることです。

その理由は、先ほど屋上苺農園のお話でもお伝えした「循環」という考え方からきています。そもそも日本の森林は、基本的に人工林です。だから手入れをせずに木の樹齢だけが伸びてしまうと、根が弱くなって土砂崩れが起きてしまったり、CO2を吸収するどころかCO2をより多く排出してしまったりするんです。

日本ではこのような事実があまり知られていないので、「とにかく木の製品を使うのは環境破壊になる」と言われることもありますよね。ところが、国産の木材を使っていかなければ、逆に環境破壊に繋がりかねないんです。

ですから、僕たちは「国産木材の利活用の1つ」として、多摩産材を使ったプランター作りを始めました。都市部のヒートアイランド現象に対して、市街地は屋上緑化でカバーし、郊外の森林にはプランターを通してアプローチをしているわけです。

多摩産材を中心とした国産木材の利用促進については、一般社団法人kitokitoとの業務提携を締結しました。そして、kitokitoが運営する身体・知的・精神の障がいによって一般の就業が困難な方のための障がい福祉サービス「就労継続支援B型」の木工作業所「Wood Factory」に、プランターの製作をお願いしています。

同世代と将来の可能性を探りたい

ー今後の展望をお聞かせください。

金子さん:

都市農業の流通量を増やすことが、僕たちの一番大切なミッションだと思っています。そのために今後は屋上に限らず、地面でも同じような活動をしていきたいですね。さらに、栽培だけではなく、その先の作物の使われ方まで、もっと多様な形で提供できるようにしたいと考えています。僕たちが今メインにしているのは「屋上苺農園」ですが、建物やそのエリアによってニーズは異なります。農園を製作するのはもちろんですが、その先の出口まで見越した提案をできるように、今後はもっと多くの方と協業しながら進めていければと思います。

また、協業というお話で付け加えますと、僕たちは昨年隈研吾さんが会長を勤めておられる一般社団法人日本ウッドデザイン協会にも加入しました。日本ウッドデザイン協会は、国産木材の利活用する場面を増やしたり、日本の木材のリテラシーを高めたりすることで、木を活用した社会課題の解決を目指しています。ですから、国産木材を使った新しいビジネスなども、もっと展開していけたらと考えています。

ー最後に読者の方へメッセージがあればお願いします。

金子さん:

僕がこの会社を立ち上げたのは、20歳の時です。きっかけは、大学1年目に食生活が荒れて体調を崩しやすくなったことでした。コンビニ弁当ばかり食べていたら、ずっと調子が悪い状態になってしまいまして。でもコロナ禍になり、自宅で家のご飯を食べるようになったのを機に回復したんです。そこでようやく食生活が原因で体調が悪くなっていたのだと気づき、食に対して興味を持つようになりました。それからは、農家さんから規格外野菜を集めて有楽町の駅マルシェに移動販売する活動を始め、そこで出会った方と「屋上農園」のプロジェクトをスタートさせ今に至ります。

つまりお伝えしたいのは、今の時代は、自分が何かに興味を持ってアクションさえ起こせば、何でもできる世の中だということです。みんなで地球のことを考えて、お互いを大切に思い合いながら、将来の新しい発展の仕方を探っていけたら面白いなと思っています。

–貴重なお話をありがとうございました!