サステナブル・ビジネス・ハブ| 日本の文化と歴史からサステナビリティを学ぶ

一般財団法人サステナブル・ビジネス・ハブ 沼野さんインタビュー

一般社団法人サステナブル・ビジネス・ハブ代表理事 沼野利和
グロービス経営大学院 准教授
公益財団法小笠原流煎茶道教授・評議委員
大学院卒業後、日本ヒューレット・パッカード電子計測機器事業部(現、キーサイト・テクノロジー(株))マーケティング部門カスタマサポート・グループマネジャー、グロービス大阪校スクール統括マネジャーを歴任後独立。2007年から現職のグロービス経営大学院准教授に就任。 経営戦略・マーケティング領域で講師を務めつつ、企業の経営計画立案等に関わるコンサルティングを行っている。また、日本文化普及にも積極的に関わり、2005年小笠原流煎茶道教授取得、家元と共に国内外で活動するとともに自ら煎茶道教場を開いている。2014年公益財団法人小笠原流煎茶道評議委員就任。2019年に日本の歴史・文化を活かした持続・循環可能なビジネスと人材を生み出す目的に一般社団法人サステナブル・ビジネス・ハブを共同設立(https://www.sbh.or.jp)。2021年代表理事に就任。サステナブル・ビジネス・カレッジを2021年に創設。また、「日本文化の「道」から学ぶ価値観の持続的な継承の仕組み(https://globis.jp/article/7547)」「伝統は革新によって守られる。京都に学ぶ、持続可能なものづくり(https://ideasforgood.jp/2020/07/28/tradition-update-1/)」など、日本がこれまで培ってきた持続・循環する仕組みを現代社会に応用する記事を発信し、教育事業と合わせてサステナブル人材育成を進めている。同志社大学大学院博士課程前期修了。工学修士。

introduction

日本がこれまで培ってきた歴史や文化から、サステナブル・ビジネスにつながる知見を研究・発信する、サステナブル・ビジネス・ハブ。2019年に設立し以来、次世代のサステナブル人材を育成すべく、セミナーや教育プログラムを提供しています。

今回は設立者でもある代表理事の沼野利和さんにお話を伺いました。

日本の文化・歴史からサステナビリティを学ぶ

–まず、サステナブル・ビジネス・ハブの事業内容を教えてください。

沼野さん:サステナブル・ビジネス・ハブは、設立3年目の一般社団法人です。

日本の文化や歴史を現代のサステナブルビジネスに活かしていくための調査研究事業と、これに関する情報発信・教育事業および事業創出支援事業の三本柱で活動しています。

情報発信は、WEBメディアへの情報掲載が主です。掲載メディアは、国内向けのものはもちろん、海外向けのメディアまであります。そしてメインの活動としているのが、セミナーや教育プログラム、社内セミナーの開催による人材育成です。

さらに私たちの取組内容に興味を持っている企業や個人に対して、事業創出の支援を行っています。

–なぜ、日本文化・歴史に着目したのでしょうか?

沼野さん:日本には、創業200年を超える企業が約1,300社以上あり、これは世界の創業200年超の企業のうちの65%を占めています。持続可能な企業の最たる例で、大企業ばかりでなく中小企業も多いことも特徴です。

また私たちはエドノミー®と呼んでいるのですが、これは理事の北林功が提唱したもので、江戸時代、鎖国している中で100万人もの人口を抱えていた江戸の生産・消費のサイクルは、循環型モデルとしてとても優れていました。

これらはほんの一例ですが、日本の文化・歴史から学べることは多くあるため、着目しています。歴史的なものに限らず日常の風景にも、現代のサステナビリティにつながる知見が隠れていると考えています。

ちなみに私たちは、日本が一番優れていると主張しているわけではありません。世界各地でそれぞれの地域の文化や歴史から、持続可能な社会づくりのヒントを見つけることができるはずです。

世界に通用するサステナブル人材を育てたい

–教育プログラムは具体的にどのような内容なのでしょう?

沼野さん:大きなものとして“サステナブル・ビジネス・カレッジ”(以下、SBC)という約半年にわたるプログラムを、年に1回開催しています。

日本の文化や歴史の中で培ってきた仕組みを、現代のサステナブルな取組に発展させることができるような、世界に通用するサステナブル人材を育てることを目的としており、講義とフィールドワークを通して、どのようにアクションを起こしていけばいいかを学びます。今年は合宿とオンライン講義のハイブリッド形式で運営中です。

今年のキックオフ合宿は、京都市の北側に位置する京北町で行いました。

この京北町は里山に囲まれており、林業と暮らしが密接にかかわりあう地域だったのですが、時代の変化や少子高齢化により継承が困難になってきています。

その京北町で活動しているソーシャルデザインファーム「ROOTS」が運営する古民家をリノベーションした施設tehenを使わせてもらいました。里山に根付く文化をサステナブルな社会づくりにどう生かしていくか、といったことも参加者みんなで学ぶことができました。

現在は年1回の開催ですが、将来的には頻繁を上げて開催できればと考えています。

志ある若者を継続的に支援

–SBCにはどのような方が参加されていますか?

沼野さん:大学生から社会人まで、幅広い年齢層の方に参加していただいています。

日本文化が好きで、「サステナビリティに繋がることで起業してみたい」と模索している若者や、企業に勤める中で個人として何ができるのか迷っている人などがいますね。海外から参加する人もいるんですよ。

–サステナブル分野で起業したいという学生や若者は増えてきていますよね。一方で起業したもののなかなか持続できず、道半ばで終わってしまうという話も聞きます。こういった若者に対する支援は何かありますか?

沼野さん:たしかに若者は感度が高い人も多く、様々なアイディアを持っています。これをどのようにビジネスに昇華するのかといった点でサポートする仕組みが、不十分なのではないでしょうか。

利益重視型のベンチャー企業をサポートする仕組みは増えてきていますが、社会問題解決型の起業支援はまだまだだと感じています。

また、資金繰りに困ってしまう学生起業家も多いと思います。持続可能な企業にするためには、ニーズがあって利益が出るビジネスを考えないといけませんよね。

サステナブル・ビジネス・ハブの理事には起業経験のある者もいるので、こういった面もサポートしていければと考えています。

–それはプログラムが終了してからもサポートしてくれるということですか?

沼野さん:はい。プログラムは6ヶ月間で終了ですが、終わってからの「繋がり」を維持するのもSBCの特徴です。

参加者に対して、団体の理事がメンターとして近況報告的に話を聞いたり、必要に応じて連絡を取ったり。ゆるい繋がりを続けていくことを目指しています。

「お祭り」から学ぶ、サステナブル・ビジネスの意義

–なぜ今、企業にサステナブルな人材が求められているのでしょうか。

沼野さん企業にとってサステナブルな視点で意思決定をすることは、もはや社会の“ルール”となっています。サステナブルな事業を行う企業が社会から求められていて、そうでないと投資されなくなってきています。このように、合理的に進めていくことも大事なことです。

一方で、企業でサステナビリティを担当している人や経営陣がどれだけ納得感を持っているかは別問題です。なんとなく義務感で動いている空気感もあるのではないでしょうか。こういった点に対して自分なりの答えを持っている人材が、企業や社会に求められていると思います。

特に中小企業や個人レベルでのサステナブルな活動は、グローバルな大企業と比べると意味を見出しづらい部分もありますよね。

そういったモヤモヤ感に対する答えにつながることも、日本の文化や歴史にはあると思うんです。

例えば「お祭り」って、利益を追求するための行事では無いですけど、人が集まって何十年・何百年と続いていますよね。

金銭的な利益はないけど、無くなることは大きな喪失感がある。こういった感覚があるから、文化が脈々と続いていくわけです。

このようなことも、今のビジネスに示唆することは沢山あると考えています。

サステナブルな社会づくりは、人々の幸せのためにある

–サステナブルな社会づくりが広がっていくにつれて、「合理化」が叫ばれ過ぎているように感じています。

沼野さん:持続可能な社会づくりって、そもそも人々の幸せのためにやるものですよね。やることでつまらなくなったら、それは幸せではないんです。

例えば、日本のお土産などの「包装」。欧米の人たちから見ると過剰で、資源の無駄であると言われてしまいます。でも包装をなくしてしまうと、日本人としてはどことなくさびしく感じませんか?つまり、包装って一つの文化なんです。

そこで、例えば包装紙を捨てずに再利用できる工夫を考えてみる、といった発想ができます。ゼロかイチかで考えるのでなく、知恵を出し合って、幸せを感じられる持続可能な社会づくりをしていきたいと考えています。

最後に、今後の展望やビジョンをお聞かせください。

沼野さん:情報発信についてはwebメディアに限らず、これまで以上に幅広く展開していきたいと考えています。

SBCに関しては、来年以降も様々な地域でのショートステイを盛り込んだプログラムを展開していきたいですね。それぞれの地域における文化資産をどう生かしていくのかといったことを、参加者の皆さんとディスカッションできれば有意義だと思います。

そして我々の活動を通して人と人とのつながりが生まれ、その結果として私たちの考えが有機的に広がっていくと良いなと思います。

–貴重なお話ありがとうございました!

取材:大越
執筆:カナタ

関連リンク

一般財団法人サステナブル・ビジネス・ハブ https://www.sbh.or.jp/