NPO法人SDGs HelloWork 岸本 貴久さん インタビュー
岸本 貴久
会社概要NPO法人SDGs HelloWorkは、特定技能の外国人労働者をはじめ、障害者や高齢者などの就職困難者に対する転職支援・就労定着支援を行っています。Jobマッチングサービスでは、特定技能の外国人労働者が安心して転職できる点が特徴です。AI翻訳を用いて求人情報を母国語で検索できるだけでなく、代表の社会保険労務士としての経験を生かし、就労資格の確認や雇用条件に問題はないかのチェックにも対応しています。また、長期間雇用できるよう、きめ細やかなコミュニケーションで定着支援に力を入れており、企業の人手不足対策にも貢献できるサービスです。このように通常のハローワークでは手の届かない人たちを支援し、すべての人に働きがいのある仕事に就ける仕組みを展開しています。
目次
introduction
特定技能でやってきた外国人労働者は、言語も文化も異なる日本での転職に大きなハードルがあります。
その中で、特定技能の外国人労働者にも働きがいを提供し、転職と定着を支援するNPO法人SDGs HelloWork。代表である岸本貴久さんは、社会保険労務士としての豊富な経験を生かし、多様な背景を持つ人々の就労支援に取り組んでいます。
今回、SDGs HelloWorkの事業内容や設立の背景、特定技能に関する課題への取り組みについて詳しくお話を伺いました。
特定技能の外国人労働者にも働きがいを!転職と定着の両面から支援するNPO
–まずはSDGs HelloWorkの事業内容について教えてください。
岸本さん:
NPO法人SDGs HelloWorkは、多様な背景を持つ人々の就労支援を行う組織です。
誰もが働きがいを感じられる社会の実現を目指し、特に、言語や文化の壁、社会的な偏見を乗り越えて、すべての人が平等に就労機会を得られるよう努めています。
具体的には、外国人労働者の中でも特定技能の資格を持つ人々を対象に転職支援を行っています。
私自身、社会保険労務士として、企業の労務管理や従業員の福利厚生、労働法の遵守をサポートしてきました。この経験から、働く人々の権利を守り、より良い労働環境を提供することの重要性を痛感しています。
また、現在、多くの企業は人手不足に悩んでおり、特に中小企業ではこの問題が顕著となっている中で、外国人労働者の力は不可欠です。2019年から特定技能制度が開始されて以降、日本にやってくる外国人労働者は増えましたが、その中には長時間労働や低賃金、ハラスメントなどの問題に直面する方も多くいます。
このような課題や、転職・就労支援の問題を解決し、彼らが安心して働ける環境を提供することが我々の使命です。
労働者の権利を守り適正な労働条件を提供することで、すべての人が安心して働ける社会を実現し、SDGsに貢献したいと考えています。
–NPO法人として設立している理由はあるのでしょうか。
岸本さん:
NPO法人として設立した理由は、利益追求よりも社会貢献を優先したいという思いからです。営利企業として活動する場合、どうしても利益を追求するあまり、社会的な使命を果たすことが難しくなることがあります。特に、外国人労働者や障がい者、高齢者など、就労に課題を抱える人々への支援には、利益追求型のビジネスモデルでは限界があります。
NPO法人として活動することは、紹介料を一切いただかない形でサービスを提供できる点がメリットです。これにより、より多くの求人を集め、求職者と企業のマッチングをスムーズに行うことができます。
今後も、NPO法人として得た収益はすべて事業の改善や新たな支援プログラムの開発に再投資し、より多くの人々に対する支援を拡大・継続することを目指しています。
社会問題になった技能実習制度。「特定技能」に変わるも転職などで課題は残る
–日本で働く外国人が増えていますが、「特定技能」とはどのような仕組みで、また、課題は何がありますか。
岸本さん:
特定技能とは、2019年に入管法の改正により設けられた新しい在留資格です。以前の制度である技能実習では、多くの外国人労働者が長時間労働や低賃金、ハラスメントに直面しており、国際的な社会問題となっていたことから特定技能が設けられた背景があります。
しかし、特定技能にもいくつかの課題があります。まず、言語の壁が大きな障害となることです。多くの外国人労働者は日本語が十分に話せず、日常生活や職場でのコミュニケーションに苦労しています。さらに、転職の自由が保障されているとはいえ、実際には1人で適切な転職先を見つけることは困難です。特に、コロナ禍の影響で転職市場が縮小し、外国人労働者が希望する職種や地域での転職が難しくなっています。
また、技能実習と比較して長時間労働や低賃金の問題は減りましたが、就職先がブラック企業だったという例もいまだに残っています。これらの問題が解決されない限り、彼らの生活や働きがいを向上させることは難しいですよね。
–SDGs HelloWorkはどのように、特定技能における課題と向き合っているのでしょうか。
岸本さん:
SDGs HelloWorkでは、特定技能における課題に対処するため、いくつかの具体的な取り組みを行っています。
まず、外国人労働者が転職しやすい環境を整えるために、AI翻訳を活用しています。これにより、多言語対応の求人情報を提供し、言語の壁を取り除くことが可能となりました。現在、英語・ベトナム語・インドネシア語に対応しており、今後はさらに多くの言語を追加する予定です。
また、社労士の経験を生かして転職支援の過程で、労働条件や企業の信頼性を厳密にチェックするシステムを構築しています。具体的には、求人情報の提供に際して、ブラック企業や悪質ブローカー、違法な労働環境を避けるための審査を行っています。
さらに、外国人労働者の転職支援を円滑に行うために、登録支援機関としての役割を果たしています。具体的には、転職希望者に対するカウンセリングや適切な求人の紹介、転職後のフォローアップなど、手厚い支援を提供中です。また、企業に対しても、外国人労働者の受け入れに必要な手続きやサポートを提供し、労働環境の改善に努めています。
NPO法人だからこそ特定技能の課題に対処できる。大手転職サービスとの差別化とは?
–SDGs HelloWorkと一般的な転職支援サービスの違いを教えてください。
岸本さん:
SDGs HelloWorkと一般的な転職支援サービスとの最大の違いは、先ほど申し上げた紹介料を一切いただいていない点です。これにより、企業側の負担を軽減し、多くの求人情報を集めることが可能となっています。また、求職者にとっても、無料で多くの求人情報にアクセスできるため、より多くの選択肢を提供することができます。
また、SDGs HelloWorkは特定技能の外国人労働者だけでなく、障がい者や高齢者などをターゲットにしている点も大きな違いです。一般的な転職支援サービスではカバーしきれない特定のニーズに特化した支援をするため、AI翻訳を活用した多言語対応や、個別の面談・相談を通じたきめ細やかなサポートを提供しています。
–紹介料をいただいていないとのことですが、継続的なNPO運営のために重視していることを伺えますか。
岸本さん:
SDGs HelloWorkは支援料と寄付を主要な収入としています。
支援料とは、特定技能の外国人労働者を支援する際に、登録支援機関としての役割を果たすことでいただくお金です。この支援料は労働者が転職後に必要な手続きやサポート、生活支援に充てられます。
寄付は、企業様からいただいています。この寄付は、透明性が重要だと考えています。そのため、寄付金の使途を明確にし、支援者が自分の寄付がどのように役立っているかを確認できる仕組みを整えています。例えば、寄付金が特定のプロジェクトや支援活動に使われていることを公開し、支援者にフィードバックを提供することで、信頼関係を築いているんです。
また、NPO法人としての透明性と信頼性を保つため、定期的な報告書の作成や公開は欠かせません。これにより、支援者や利用者に対して信頼を提供し、長期的な支援を受けやすくしています。
言語や文化の壁は丁寧なコミュニケーションで乗り越える
–利用者である外国人労働者からの評判が良いサービスを教えてください。
岸本さん:
特に評判が良いのは、AI翻訳を活用した多言語対応の求人情報提供と、転職支援の手厚さです。多言語対応により、外国人労働者が自分に適した求人情報にアクセスしやすくなり、言語の壁を感じることなく転職活動を行える点が好評です。
また、転職後のフォローアップが丁寧であることも高く評価されています。
具体的には、労働条件の確認や企業とのコミュニケーションのサポート、生活支援などを行っています。例えば、就労資格の変更や生活基盤の確立をサポートするために、役所の手続きや不動産探しを支援することもあります。これにより、外国人労働者が安心して新しい職場で働き始めることができます。
さらに、外国人労働者の悩みや問題を母国語で相談できる窓口を設けている点も喜んでいただいています。労働者が仕事や生活に関する悩みを抱えた際、母国語で相談できることで安心感が生まれ、問題解決のスピードも上がります。このように、きめ細やかな支援が利用者から高く評価されています。
まずは認知度の向上が課題。多くの企業や労働者に使っていただきたいサービス
–今後サービスを拡大するうえで課題や解決すべきことを教えてください。
岸本さん:
サービスを拡大するうえでの課題は、認知度の向上と多文化共生の理解促進です。まず、限られた予算で広報活動を行う必要があり、SNSや口コミを活用して知名度を上げることが重要です。大手企業のように大規模な広告キャンペーンを展開することは難しいため、協力企業やメディアとの連携を強化し、SDGs HelloWorkの活動を広く知ってもらうことが求められます。
多文化共生の理解促進も重要な課題です。国によって異なりますが確かに、外国人労働者には「賃金を重視している」「時間にルーズな面もある」といった一面があります。一方で企業側も働きがいややりがいを訴求しすぎるなど、お互いがミスマッチになっている現状があります。
我々の方で、外国人労働者とはコミュニケーションを取りつつ、日本の商習慣や文化についてお伝えしている状況です。加えて、企業としても、外国人労働者が日本で働く際に直面する文化や習慣の違いを理解して受け入れることが必要です。これには、企業側の教育や啓発活動が欠かせません。
–将来的な事業展開についてお聞きします。現在は特定技能の外国人中心ですが、今後はどのような人の支援を検討していますか。
岸本さん:
将来的には、特定技能の外国人労働者に限らず、障がい者や高齢者、シングルマザー、LGBTQの方々への支援も拡大したいと考えています。これらの方々が直面する就労に関する課題は多岐にわたり、それぞれに対する適切な支援が必要です。
例えば、障がい者の方々には、職場での合理的配慮や必要なサポートを提供することが求められます。また、高齢者に対しては、定年退職後の再就職支援や、シニア向けの職場環境の整備を進める予定です。シニア世代が培ってきた経験や知識を活かせる職場を提供し、彼らの働きがいを創出したいと考えています。
このように将来的には、支援の幅を広げ、多様な人々が活躍できる社会を実現したいと考えています。そのためにも、まずは外国人労働者の支援サービスを拡大し、より多くの人々に支援を提供することが必要です。SDGs HelloWorkは、すべての人が働きがいを感じられる社会の実現を目指し、今後もさまざまな課題に取り組んでまいります。
–特定技能の外国人労働者の支援に関して、興味深いお話をいただきありがとうございました。
特定非営利活動法人SDGs HelloWork公式サイト:https://sdgs-hellowork.com/
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