現在、海ではさまざまな課題を抱えています。
プラスチックが世界中に広がっていたり、
これまでの乱獲により魚が減少していたりと、解決すべき問題が山積みです。
海は、日本人にとってとても身近なもの。自然を守り、食生活を支えるためにも大事にしていきたいと考える人も多いですよね。
今回は海を守るために、事業とどのように関連付けさせれば良いのか考える人に参考となる取り組み事例をご紹介します。きれいな海は私たちの小さな行動ひとつでも守ることができるのです。

目次
ビーチクリーンを主催!海に近い鉄道会社「京急グループ」

神奈川県の沿岸を通る赤い電車が印象的な京急電鉄。京急グループは京急電鉄を中心とし、不動産事業や流通事業(百貨店・スーパー)、ホテルなどのレジャー・サービス事業などを展開しています。
京急電鉄が通る「三浦半島」を楽しんでもらおうと、マグロ切符や三浦丸ごと切符などの企画販売も行っていることでも有名です。
ビーチクリーンで海のプラごみ削減
京急グループでは、逗子や三浦海岸など海へのアクセスが身近にある鉄道会社だからこそ、海を守る活動をしています。そのなかでも特に海のプラごみ削減問題に取り組んでいます。
2019年には、津久井浜海岸・逗子海岸・三浦海岸でビーチクリーンを開催。三浦海岸のビーチクリーンの際には、SDGsブースを設置し環境問題を知ってもらう活動も実施しました。
加えて、ビーチクリーンには、植物由来の生分解性プラスチックのゴミ袋を導入。そのうち10,000枚を「かながわ海岸美化財団」へと寄付しています。
地元の海をきれいにするところから、海の問題を知ってもらおうと活動しているのですね。
傘のシェアリングサービス「アイカサ」の導入
他にも傘のシェアリングサービス「アイカサ」を導入しています。
急な雨に困りビニール傘を購入するものの、どこかに忘れて来たという経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?
使い捨てのビニール傘は安くて便利な商品ですが、気軽に買えるからこそ、忘れるのも簡単です。大量に溜まった傘はもちろん捨てられています。
傘のシェアリングサービスは、このようなビニール傘のごみ問題を解消するために株式会社Nature Innovation Groupが開発。多くの鉄道会社が協賛し導入が始まっているサービスです。
京急電鉄でも試験的導入を経て、東神奈川駅に設置。アイカサによる傘のプラスチックゴミ削減にも取り組んでいます。
京急グループの貢献するSDGs
京急グループの取り組みはSDGsの次の取り組みに関わってきます。
- 11「住み続けられるまちづくりを」
- 12「つくる責任つかう責任」
- 14「海の豊かさを守ろう」
- 15「陸の豊かさを守ろう」
特に目標14については下記のターゲットに貢献しています。
14.01 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
京急グループでは、ビーチクリーン開催時に参加してくれるボランティアを募集しています。最新情報は公式サイトのお知らせをチェックしてください。
日焼け止めから海を守ろう!「エトヴォス」snsキャンペーン
エトヴォスは、2007年に日本で初めて国産のミネラルファンデーションを販売した会社です。肌にとって本当に良いものだけを届けたいと設立されました。ここでは海の豊かさを守るための活動として「日焼け止め」に注目して紹介します。
サンゴ守る活動を展開
エトヴォスの活動を理解しやすいよう、まずはサンゴについて見ていきましょう。
サンゴは、
- 防波堤の役割
- 人間の治療薬の成分を提供
- さまざまな生物の住処
- 二酸化炭素の吸収
と、多くの恵みをもたらす生き物です。
しかし近年、サンゴの白化が進んでいます。サンゴの白化とは簡単に言うと骨格が白く透ける現象。白化の具合によってはサンゴは死滅してしまうのです。
サンゴが死滅してしまえば、先述した役割を失うこととなり特に生態系へ大きな影響を及ぼします。
ではなぜ白化してしまうのか。原因は主に、
- 温暖化による海水温の上昇
- 日焼け止めに含まれる紫外線吸収剤
の2つと言われています。
このことから分かるように、サンゴを守るためには紫外線吸収剤を含む日焼け止めの使用を控えることが必要です。
エトヴォスの日焼け止めは紫外線吸収剤不使用
エトヴォスで展開している日焼け止め「ミネラルUVシリーズ」は、創業以来紫外線吸収剤を使用していません。その代わりに紫外線を反射させる働きを持つ紫外線散乱剤を使用。
紫外線散乱剤はサンゴや海への影響が少ないと言われています。
また、日焼け止めの影響を多くの人に知ってもらえるよう、SNSでのキャンペーンも行っています。
「エトヴォス 」SNSキャンペーンを開催!
エトヴォスではSNS上で誰でも参加ができるキャンペーン「#エトヴォスと海を守ろう」を開催。
参加方法も簡単です。
- ETVOSの「ミネラルUVシリーズ2021」の写真や動画をフィードに投稿
- ETVOS公式アカウントの対象となる投稿をシェア
- ETVOS公式アカウントの対象となる投稿にいいね
上記3つのうち一つを行うことで、キャンペーンに参加となります。
さらに、プレゼントキャンペーンも開催。エトヴォスの「ミネラルUVシリーズ2021」を購入し、写真や動画を撮影。その写真に「サンゴ保護活動」に関連する応援や共感メッセージと共に、
- #エトヴォスと海を守ろう
- #エトヴォス
をつけて発信するだけです。(以下に投稿例を掲載しています。)
参加総数の目標が達成されると、沖縄でサンゴの保護活動を行う「NPO法人美ら海振興会」へとサンゴの株が寄付されます。
エトヴォスが貢献するSDGs
エトヴォス の取り組みはSDGsの次の取り組みに関わってきます。
- 11「住み続けられるまちづくりを」
- 14「海の豊かさを守ろう」
特に目標14については下記のターゲットに貢献しています。
14.02 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.03 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
日焼け止めが海の自然を脅かしていることを知らない人もると思います。住みやすい地球を守るためにも、まずはSNSで発信してみましょう。
森から水を守る!環境マネジメントに取り組む食品メーカー「ニッスイ」
「ニッスイ」は、漁業・養殖生産から加工、販売などを行う食品メーカーで、北米や欧米でも事業を展開。加工食品以外にも水産資源の調査などを行っています。そんな「ニッスイ」は、さまざまな面で海の恵を守る活動を行っています。
例えば、
- 価値を高める高度な技術で、魚をムダなく使い切る
- 「食卓から魚が消える日」を迎えないために漁業管理のできている業者から仕入れること
- 海の水産資源を守るために、”養殖イノベーション”への挑戦
など。
さらに地域と手を組んで環境・社会への貢献も行っているのです。どんな活動をしているのか詳しくみていきましょう。
「おさかなをはぐくむ湧水と海を守る森」での森林保全
「森・川・海」の水を育む環境を守るために、鳥取県琴浦町と協働で、森林の整備を行っています。植樹や下草刈りを行うなど、水の栄養を蓄えてくれる森を守っていく活動です。
海に流れ着く水は、森で生まれ川で栄養を蓄えます。豊かな水があるからこそ、豊かな水産資源が生まれるのです。
海洋プラスチック問題を意識した荒川環境学習
他にも従業員に向けた「荒川環境学習」を実施しています。
荒川は埼玉から東京を流れる大きな河川。川に流れ着くゴミはいつかは海へと到達してしまいます。この現状を知るために、荒川クリーンエイドフォーラムの協力の元、
- ・生物多様性について学ぶ
- ・周辺のゴミ拾い
などの活動を行っています。
参加者はペットボトルの量に衝撃!
荒川の約300㎡の一部エリアに到達したペットボトルは5万本。その実態を改めて目にすることは、参加者は衝撃を受けるようです。学習会をきっかけに、ゴミ問題について何ができるかを考える機会となりそうですね。
※荒川クリーンエイドフォーラムへの活動は、個人や企業、団体で参加できます。イベント情報を確認して、家族や仲間と参加してみるのもおすすめです。参加方法はこちらから。
ニッスイが貢献するSDGs
ニッスイの取り組みはSDGsの次の取り組みに関わってきます。
- 6「安全な水とトイレを世界へ」
- 11「住み続けられるまちづくりを」
- 12「つくる責任つかう責任」
- 14「海の豊かさを守ろう」
- 15「陸の豊かさを守ろう」
- 17「パートナーシップで目標を達成しよう」
特に目標14については下記のターゲットに貢献しています。
14.02 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.04 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.05 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
世界の食卓を楽しませるニッスイだからこそ、真剣に海の問題に取り組んでいます。
海をまもる洗剤で子供たちの未来をまもる 「Save the Ocean(セーブ・ジ・オーシャン)」
2019年に設立された株式会社 Save the Ocean(セーブ・ジ・オーシャン)は、「海をまもる洗剤Save the Ocean」を販売しています。
愛知県で65年続くクリーニング店とコインランドリーの経営者である東本さんが、がんこ本舗のすすぎ0回でも使える洗濯洗剤「海へ…」と出会い、それまでの考えが180度転換。
油を浮かせ海へと汚れを流すのではなく、油を分解し、自然に返す洗剤「海をまもる洗剤」をがんこ本舗と共同開発したのです。
「海をまもる」洗濯洗剤で子供たちの未来をまもる
もともと「海をまもる洗剤」は、業務用洗剤として開発されました。その後、自社のコインランドリーやクリーニング店の洗剤を一新していたところ、お客さんに家でも使いたいと言われて個人向けの販売を始めたそうです。
「海をまもる洗剤」のおすすめポイントは、
- 肌にも優しく敏感肌の方にも安心
- すすぎ0回でもすすぎ1回の洗浄力
- 自然由来のもので作られ、界面活性剤は通常の1/7
- ウールやドライマークのダウンなどなんでも洗える洗剤
- 天然精油で防腐!洗い上がりは無香へ
- 排水パイプの異臭がない
などです。
家庭での洗濯が少なくなれば海も自然ときれいになる。そんな思いで販売をしています。
コインランドリーの洗剤を変えて未来を変える
他にも自社以外のコインランドリーに向けて「海をまもる洗剤」の導入サポートも行っています。
「海をまもる」洗剤を導入することで、アトピーや肌に優しい洗剤を使っていることをアピールし、他社との差別化を計れます。店舗のブランディングやファンづくりのサポートも行います。
Save the Ocean(セーブ・ジ・オーシャン)の貢献するSDGs
株式会社 Save the Ocean(セーブ・ジ・オーシャン)の取り組みはSDGsの次の取り組みに関わってきます。
- 11「住み続けられるまちづくりを」
- 12「つくる責任つかう責任」
- 14「海の豊かさを守ろう」
- 17「パートナーシップで目標を達成しよう」
特に目標14については下記のターゲットに貢献しています。
14.01 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.02 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
株式会社 Save the Ocean(セーブ・ジ・オーシャンのような取り組みが広まれば、きれいな海を間近でみることができる未来も遠くないのかもしれません。
養殖魚「うみとさち」で海の資源をまもる「ウミトロン株式会社」

ウミトロン株式会社は、魚の養殖業にITやAoIなどの新しい技術を取り入れ、水産養殖業を発展させようと働きかけている会社です。
すでに、
- スマート給餌機UMITRON CELL(ウミトロン セル)
- 海洋モニタリングサービスUMITRON PULSE(ウミトロン パルス)
- スマートカメラによる水産養殖保険データサービスUMITRON EYE(ウミトロン アイ)
- 魚群の行動解析UMITRON FAI(Fish Appetite Index)
などを開発し、水産養殖業にテクノロジーを導入しています。
これにより、水産業に関するあらゆるデータを収集し、養殖の管理や技術をデータ化し管理体制を強化。海の持続可能な開発と、安心安全な魚を食卓に届ける取り組みを進めているのです。
サステナブルなシーフード「うみとさち」
ウミトロン株式会社が運営している公式サイト「うみとさち」では、「スマート給餌機UMITRON CELL(ウミトロン セル)」などを使用して、水産養殖業の匠たちに育てられた「美味しさ・安心・サステナブル」にこだわる魚たちを販売しています。
そして販売ページには、
- 世界で初のASC認証を取得した養殖マダイを育てる「ダイニチの霍川さん・内海水産の織田さん」
- 自分でも美味しいと言える安心安全なクエを育てる「本多水産の本多さん」
- 漁を続けている網元が育てた養殖サーモン「津田宇水産の専務・津田侑典さん」
といった、匠たちのストーリーを公開。養殖過程も詳しく知ることができます。
「養殖は美味しいものではない」の認識を変える
消費者の意識調査によれば、養殖水産物のイメージは年々よくなっているものの、「養殖は格別美味しいものではない」と認識している方がほとんどでした。
農林水産省では、毎年水産物の調査を行っています。その中に養殖魚に関するデータが公開されています。
表からも分かる通り、2014年の調査によると、
- 養殖魚が脂っぽい
- 弾力がなく新鮮さが感じられない
- 生臭い
という認識が強かったのです。
養殖魚のくさみは、餌となる魚粉や魚油の匂いが元だと言われています。脂っぽく感じるのは、魚にたくさんの餌を与えすぎてメタボになっているから。
これらの欠点をテクノロジーで補い、育てて開発しているのが「うみとさち」の魚たちなのです。
シーフードアクションで海の資源をまもる
「うみとさち」では、生産者・加工業者・量販店・料理人・消費者・テクノロジー企業など水産に関わる全ての人が考え・行動する「シーフードアクション」も行われています。
海の現状を知り、未来へおいしいシーフードをつなぐためにできることとして、
- ゴミ拾いSNSピリカと協力「オンラインクリーンイベント」
- 料理人とコラボ「うみとさち」のレシピ公開
- 養殖業を画期的に変えるテクノロジーの紹介
などが公式サイトで公開されています
また、私たちにも、消費者としてできるシーフードアクションを紹介してくれています。
例えば、
- 環境に配慮された中で育てられた魚
- 適切な量を捕獲していることがわかる魚
を選び食卓に並べることです。
みんなで協力し、豊かな海を守るためにシーフードアクションに参加してみましょう。
ウミトロンの貢献するSDGs
ウミトロン株式会社の取り組みはSDGsの次の取り組みに関わってきます。
- 11「住み続けられるまちづくりを」
- 14「海の豊かさを守ろう」
- 17「パートナーシップで目標を達成しよう」
特に目標14については下記のターゲットに貢献しています。
14.07 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.a 海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14.b 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する
通販以外でも「うみとさち」は東急ストアやイオンなどと共同し、実証販売などを行っています。普段の買い物で「うみとさち」のシールを貼られたパッケージを見つけたら、手にとってみてくださいね。
まとめ
ここまで見てきたように、海の豊かさを守るために活動を展開している企業は増えています。
海や水産に関わる企業でなくとも、
- 森から水を守る取り組み
- 海のゴミ問題
- 海へ流れる汚染物の見直し
などに取り組むことができます。
今回挙げた取り組み以外にも海の豊かさを守るための活動を行っている企業を調べてみて、自社で何ができるか考えたみてはいかがでしょうか?
参考文献
第3節 養殖水産物と食卓
ミツカン 水の文化センター
save the ocean
ニッスイ
エトヴォス
京急グループ
農林水産省 太平洋クロマグロの資源管理
環境省 海洋プラスチックごみに関する状況
うみとさち
ウミトロン株式会社