長谷川 真之 ( I GEDE MASAYUKI H.)
1988年 埼玉県さいたま市生まれ。日本大学芸術学部にてプロダクトデザインを学んだ後、新卒にてPC・スマートフォン周辺機器メーカーに入社。商品開発部にて商品企画とプロダクトデザインを担当する。2年後の2014年に退職し、バリ島で語学留学をしながら現地の職人と共同でモノづくりを開始。2015年にバリ島にて環境をテーマにしたインテリアブランド「BALIISM」を立ち上げる。現地で取れる環境に優しい天然素材であるラタンや竹を使ったサステナブル製品の製造を開始する。現在は、サステナブルな暮らしをテーマにした商品開発を行いながら、日本支社 BALIISM Japan株式会社の代表を務める。
齋藤 克希
1998年4月21日生まれ湘南育ち。高校卒業後、日本にある2年生の語学学校に入学。卒業間際にNYに渡航。そこで海外と日本の社会問題の意識の差に直面する。日本に戻りマリンスポーツのインストラクターをしながら、環境活動団体NAMIMATIを立ち上げる。今は関東、関西、東海、アメリカに支部を持ち100人を超えるメンバーとともにNAMIMATIの代表として、世界に社会問題を発信し続けている。社会課題に関心のあるZ世代が起こす斬新なイベントやプロジェクトを作り上げるとともに、これからはCSV(社会活動×経済)の形を実現すべく、様々な社会課題とともに経済へのアプローチをかけ、社会の新たな仕組みの提案を行っている。
目次
Introduction
4/24(日) 、自然を体験しながら環境/社会問題を楽しく学ぶ、Z世代主体の環境保護団体 NAMIMATIとバリ島発 サステナブルブランド BALIISMが、鎌倉・材木座海岸にてビーチクリーンイベントを共同開催しました。今回、NAMIMATIの齋藤さんとBALIISMの長谷川さんに、Z世代を巻き込むビーチクリーンの活動や今後の展望について伺いました。
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Z世代を巻き込むためのビーチクリーンの活動
–まず始めに、ビーチクリーンの活動について教えてください。
齋藤さん:
NAMIMATIでは、毎月1回ビーチクリーンの活動をしており、2か月に1度は一般参加者の募集をしています。ビーチクリーンというと、軍手をはめてビニール製のゴミ袋とトングを持ち、砂浜に落ちているゴミを拾うイメージを持つ人が多いと思います。
対して私たちのビーチクリーンは、ビニール製のゴミ袋の代わりにスタイリッシュでかっこいいコーヒー豆の麻袋やビールのモルト袋を使ったり、SDGsカラーのバンダナをマスクがわりに巻いたりと、SNSにあげやすいコンテンツにして、Z世代が参加したくなる仕組みを作っています。もちろん、袋は不要になったものを再利用するなど環境に配慮しています。
–ビーチクリーンの活動の経緯を教えてください。
齋藤さん:
私は湘南で育ち、SUPやサーフィンを行うなど海は身近なものでした。そんなこともあって、様々なビーチクリーン活動に参加してきましたが、高齢者や30〜40代の参加者がほとんどで、自分と同じZ世代の若者は1人もいませんでした。
これからの社会を担うはずの世代が社会問題に関心がないことに課題を感じ、Z世代が参加できるコミュニティやプラットフォームをつくりたいという想いでNAMIMATIを立ち上げました。
その後、2020年7月にビーチクリーン活動をスタートし、第2回の10月にBALIISMと合同でビーチクリーンを行いました。
–合同で行うきっかけは何かあったのでしょうか?
長谷川さん:
BALIISMは、SDGsやサステナビリティに対してアプローチするような商品を取り扱っています。これまで、我々に関心をもってもらうきっかけづくりの一環として、環境問題に取り組んでいる団体や専門家と一緒にビーチクリーン活動を行ってきました。
NAMIMATIは、単純にゴミを拾って終わりの活動ではなく、写真を撮るなど楽しみながら環境についても学べて、ビーチクリーンがコミュニケーションの場になっていると感じたので、2年前にも声を掛けさせてもらい合同で実施しています。今回の合同ビーチクリーンは2回目の実施となります。
–合同で行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
齋藤さん:
「BALIISMの商品もらえてうれしかった」「もらった商品をSNS投稿したい」という声も多く、参加者がより増えていると感じます。
–長谷川さんはいかがでしょう?
長谷川さん:
環境にいいものは、通常の商品と比べて少々値が張りますよね。Z世代と呼ばれる若い世代の多くの方にとっては、まだまだ気軽に手を出しにくい価格帯だと思うんです。
「買いたいけれど、今は手に届きにくい」という人たちにプレゼントすることで、ブランドを覚えてもらうことができます。そして、将来お金に余裕が出てきたら、弊社の商品購入につながるかもしれないと考えているので、長期的に見るとメリットがあります。
–2022年4月24日には、鎌倉の材木座海岸で合同のビーチクリーンイベントが開催され、多くの方々が参加されたと伺いました。
齋藤さん:
はい。一般募集の定員20人のところ25人が集まりました。NAMIMATIとBALISMメンバー含め総勢53人でゴミを拾いました。
長谷川さん:
前回のイベント開催時も87人ほど集まりました。NAMIMATIのイベントは参加したい人が多く、すぐに定員がいっぱいになってしまいます。
–どのような方が参加されているのでしょうか?
齋藤さん:
海周辺に住んでいる方だけでなく、都内在住の方にも参加してもらっています。Z世代関心を持ってもらいやすいようにしているということもあり、若い方が多いですね。
若い方々は、活動中に撮った写真をインスタグラムのストーリーにタグをつけて投稿してくれています。そのフォロワーも環境問題に関心がある方が多いので、参加希望者がどんどん増えているんです。
海に来ない人は知らない深刻なゴミ問題。実はポイ捨てより流れ着いたゴミの方が多い。
–多くの若い方が参加しているとは素晴らしいですね!1つ疑問に感じたのが、それだけの参加者が必要なほど、ゴミ問題は深刻なのでしょうか?
齋藤さん:
材木座の海岸では普段、かながわ海岸美化財団が定期的に大きなゴミ回収してくれています。それでも回収しきれない、小さなマイクロプラスチックが膨大に落ちています。
マイクロプラスチックとは
海に漂うプラスチックは、波と紫外線の影響を受けて5㎜以下の小さなマイクロプラスチックになります。石油からできている(マイクロ)プラスチックは油に溶けやすく有害物質が付きやすい性質を持っていて、魚が誤って食べると、有害物質を体内に取り込むことになります。食物連鎖の過程でこれが繰り返されると、有害物質の濃度が高くなりこれを食べた人間にも影響を及ぼす恐れがあると言われています。
引用:NAMIMATI「日本が海を汚している!?「プラスチックごみ」の何がいけないのか?」
–海に遊びに来た人たちが捨ててしまうのでしょうか?
齋藤さん:
あるデータによると、海にあるゴミの7〜8割が街から流れ着いているらしいんです。つまり、その場のポイ捨てというより、内陸で生活している我々が原因だと言われています。
この事実はあまり知られていないので、ビーチクリーンの参加者には、内陸にもっと興味を持ってもらえるような企画を提案したり、SNSで発信したりする必要がありますね。
長谷川さん:
海岸を歩いていると、人がたくさん来るところは意外とゴミが少ないんです。むしろ人があまり来ない、アクセスしにくいマイナーな場所のほうがゴミが落ちていると感じます。
また、そこに捨てられているペットボトルやプラスチックのパッケージをよく見ると、海外から流れ着いたゴミが多いことにも気付きます。想像もつかないような遠い場所から流れ着いているんです。
ビーチクリーンに参加している人は、日頃から環境のことを考えていると思いますが、海に行かない人はそういった現実を知りません。拾う側だけでなく捨てる側にも、自分が捨てたものが海に流れ着いているということを上手く伝えて、意識を変えてもらう必要があります。
五感で海に触れることで心が軽くなる、そしてその後の生活が変わる気付きになるはず。
–今後の展望を教えてください。
齋藤さん:
NAMIMATIは、ビーチクリーンに限らず、食の廃棄や差別問題をなくすためのプロジェクトなど、Z世代の社会問題に取り組んでいる人たちが集まれる「リジェネレーションフェスタ」をつくっています。
今後も幅広い活動を学生ベースで行いながら、BALIISMのような大人からのサポートも受けつつ、どんどん若者を巻き込み、大きなムーブメントを社会に起こしていきたいです。
長谷川さん:
我々としては、「プラスチックゴミがかなり遠くから流れてきているという問題を解決するために何をするべきなのか」を考えるようなイベントや勉強会を実施していこうと思っています。
また、現在は関東近郊での開催が主であるビーチクリーンを全国に展開していきたいですね。
–ビーチクリーンが気になった方のために、参加することの良さを改めて教えてください。
齋藤さん:
ビーチクリーンは、ただゴミを拾うだけではなく、五感を使って潮風のにおい、ゴミの感触、嗅覚、海の匂いを感じ取って、自然を好きになりながら社会問題にアプローチをかけられるのが良さです。
1回参加しただけでは社会問題は何も変わらないかもしれません。でも、その後の自分の生活は確実に変わります。こんなゴミが落ちてる、日頃使ってる歯ブラシや歯磨き粉からマイクロプラスチックが出てる、といったように、家に帰ったときに気付きがあるはずです。
長谷川さん:
手や足を動かすことで体は疲れますが、同時に体が軽くなって健康的になる感覚があります。体験すると分かるのですが、ヨガのように心のデトックスになっているのでしょうね。もしかしたら、行き詰まっていたりモヤモヤする人が参加すると、心が晴れるきっかけになるかもしれません。
–ボランティアに参加するだけでなく、コミュニケーションを楽しみ、その後の生活にも気付きを与えてくれるビーチクリーンは、とても素晴らしい活動ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。
環境保護団体NAMIMATI:https://www.shonan-namimati.com/
BALIISM Japan株式会社:https://www.jp.baliism.asia/