令和６年10月から、児童手当が改正されることを知っていますか？

児童手当とは、子ども手当とも呼ばれ、少子高齢化が急速に進む日本において、子育て世代を経済的に支援するための制度です。これまでは所得制限などがありましたが、今回の制度改正で原則すべての世帯が、所得に関わらず児童手当を受け取れるようになります。

児童手当の現行と改正後の支給額や対象年齢、申請方法、児童扶養手当との違いをわかりやすく解説します。

児童手当について

少子高齢化が進む現代日本において、子どもを産み育てることは、多くの家庭にとって大きな決断となっています。教育費の高騰、働き方改革による長時間労働の是正など、子育てを取り巻く環境は日々変化しており、経済的な負担はますます増大しています。

このような状況下で、児童手当は、子育て世代を経済的に支援し、子どもたちが健やかに成長できる環境を整備するという重要な役割を担っています。児童手当は、単なる経済的な支援にとどまらず、少子化対策の一環として、子どもを産み育てやすい社会を実現するための基盤となる制度と言えます。

児童手当とは

児童手当は、子どもを育てる家庭を支援するための制度であり、「子ども手当」とも呼ばれています。この制度は、子どもを養育するにあたっての経済的な負担を軽減することを目的としています。

児童手当は、主にひとり親家庭を対象とした支援制度である「児童扶養手当」とは異なる制度です。児童手当ての現行制度と改正後はどうなるか、児童扶養手当との違いを順を追って確認していきましょう。

児童手当の支給額と支給時期（令和６年10月以前）

児童手当の支給額は、子どもの年齢や人数によって異なります。具体的には、

が支給されます。また、支給は原則として毎年６月、10月、２月の年３回に分けて行われます。

【児童手当の支給額（令和６年10月以前）】

児童手当の受給対象者は、原則として日本国内に住む子どもの保護者です。具体的には、子どもが生まれた日から18歳の誕生日を迎えるまでの間に、保護者が申請を行うことで受給資格が得られます。ただし、子どもが特別支援学校に通っている場合は、20歳まで支給されることがあります。

児童手当の受給対象者（令和６年10月以前）

【児童手当の所得制限限度額・所得上限限度額】

児童手当の支給対象年齢

児童手当（令和６年10月以前）の支給対象年齢は、基本的に０歳から中学校卒業まで（15歳の誕生日後の最初の３月31日まで）の子どもです。つまり、令和６年10月以前では、子どもが高校生になったら、児童手当の支給は終了します。

このように、児童手当は、子育ての経済的な負担を軽減することで、より多くの若い世代が子どもを育てられる環境を整えることを目的としています。また、親が子どもにかける時間と心の余裕を増やし、質の高い子育てを促進する効果も期待されています。*1）

令和６年10月から改正：新しい児童手当制度

長く日本の深刻な問題となっている少子化を背景に、子育て支援の一環として注目されてきた児童手当ですが、令和６年10月より大きく変わります。これまでの制度では、所得制限や支給期間など、様々な課題が指摘されてきました。

例えば、「所得制限があるため、手当を受けられない世帯がある」「中学生までしか支給されないため、高校生のいる家庭は支援を受けられない」といった声は、これまで多く聞かれてきました。その中で今回の改正は、より多くの世帯に手当が行き届き、子どもたちが安心して学び、成長できる環境を整備することを目的としています。

所得制限の撤廃：手当がより多くの人に

最も大きな変更点は、所得制限の撤廃です。これまで、所得が高い世帯は児童手当を受けられませんでした。しかし改正後は、すべての世帯が所得に関わらず児童手当を受け取れるようになります。

これは、子育て世帯の経済的な負担を軽減し、子どもを持つことを検討する際のハードルを下げることを目指したものです。

支給期間の延長：高校生のいる家庭も対象に

従来の中学生までの支給期間が、高校生のいる家庭までに延長されます。これは、高等教育の進学率が高まる中で、高校生のいる家庭の経済的な負担が増大している現状を踏まえたものです。

より長い期間、子どもたちの成長を経済的に支えることで、子どもたちの将来の可能性を広げることを目指しています。

第３子以降の支給額増額：多子世帯への支援強化

令和６年10月からは、３人目以降の子どもがいる世帯に対しては、１人あたり月３万円の児童手当が支給されます。これは、子供が多い世帯の経済的な負担が大きいことを考慮し、より手厚い支援を行うことで、少子化問題の具体的な対策となることを目的としています。

支給回数の増加：より安定した収入に

児童手当の支給回数が、年３回から年６回に増えます。これにより、児童手当をより安定した収入として活用できるようになり、子育て家庭の経済的な計画性を高めることができます。

特に、児童扶養手当を受給するひとり親家庭にとってはこれまで、

だったので、４月、８月、12月の特に子供のいる家庭にとって出費の多い月に、公的な支援が得られないという深刻な問題がありました。貯蓄が十分になく、低所得のひとり親家庭にとって、この状況は苦しいものだったのです。

「第３子以降」のカウント方法についても変更に！

令和６年10月からの児童手当制度の改正では、「第３子以降」のカウント方法にも大きな変更点があります。この変更によって、より多くの子どもが「第３子以降」としてカウントされるようになります。

【「第３子以降」のカウント方法の変更点】

「第３子以降」の子どもの兄弟児（児童手当の支給対象となる第１子・第２子）としてカウントされる年齢が、これまでの18歳年度末から22歳年度末まで延長されます。「児童」としての定義はこれまで通り18歳年度末（高校卒業の年度末）までとなりますが、第１子は22歳年度末まで兄弟児としてカウントされるので、第２子・第３子以降の子どもは、より長い期間、児童手当が受給できるようになります。

これまでは、18歳年度末を過ぎると、「児童」と見なされなくなり第一子としてカウントされていませんでした。

申請手続きの変更点

今回の制度改正に伴い、申請手続きも一部変更になります。特に、高校生を養育している人や、所得制限を超えていた人は、新たに申請を行う必要があります。

令和６年10月からの児童手当制度の改正は、子育て世帯への支援をより充実させ、少子化対策を加速させることを目指したものです。今回の改正により、より多くの世帯が児童手当を受け取れるようになり、子どもたちが安心して成長できる環境が整っていくことが期待されます。*2）

児童手当の申請方法

児童手当の申請は、子どもの誕生や転入など、人生の節目で必要となる手続きです。初めての人にとっては、どのような手続きが必要か、どこへ申請すれば良いのかなど、戸惑う点も多いかもしれません。

この章では、児童手当の申請に必要な手続きを確認していきましょう。

申請の準備：必要な書類と情報

児童手当の申請には、いくつかの書類が必要になります。

 必要な書類は、市区町村によって多少異なる場合があります。必ず事前に確認しましょう。

申請窓口

児童手当の申請は、原則として居住地の市区町村の窓口で行います。ただし、近年では、オンラインでの申請も可能になっている自治体が増えています。

現況届の提出

令和４年６月以降、原則として現況届の提出は不要です。しかし、特定の条件に該当する方は引き続き提出が必要です。例えば、住民基本台帳上で住所を把握できない場合や、離婚協議中の場合、家族構成が変わった場合などが該当します。

詳しくは、各市町村の指示に従い必要な手続きを行ってください。

申請の注意点

申請には期限はありませんが、

から、子どもが生まれたら速やかに申請しましょう。また、住所が変わったり、出産、死亡、里子の受け入れなどで子どもの数が変わったりした場合には、変更の手続きが必要です。

児童手当の申請は、適切な手続きを踏むことでスムーズに行えます。特に新制度が施行される令和６年10月以降は、より多くの家庭が支援を受けられるようになります。

申請に関する情報は各市区町村のホームページや窓口で確認し、必要な手続きを忘れずに行いましょう。*3）

児童手当と児童扶養手当の違い

児童手当とよく混乱しやすい制度に、児童扶養手当があります。この「児童手当」と「児童扶養手当」は、どちらも子どもを育てる家庭を経済的に支援する制度ですが、対象となる家庭や支給される目的が異なります。

２つの制度の特徴を比較してみましょう。

児童扶養手当とは

児童扶養手当は、ひとり親家庭が、経済的な困窮に陥ることなく、子どもを健やかに育てられるよう、生活を安定させることを目的としています。

などの要件に当てはまる、18歳に達する日以後の最初の３月31日までの間にある児童（障害児の場合は20歳未満）を監護する保護者を対象に支給されます。

また、支給額は所得に応じて異なり、全額支給と一部支給が存在します。

児童扶養手当の支給額

児童扶養手当の支給額は、生活の安定を図るために設定されています。令和６年４月からは、全額支給の場合、月額45,500円が支給されます。また、第二子以降には加算額が設けられており、家庭の状況に応じた支援が行われています。

【令和６年４月から10月分までの児童扶養手当支給額】

所得制限

児童扶養手当を受けるためには、前年の所得が一定額を下回る必要があります。例えば、全額支給を受けるためには、令和６年10月までは２人世帯で160万円未満であることが求められます。（詳しくは後述「所得制限の緩和」で解説しています）

申請手続き・現況届

申請は、住んでいる市区町村の子育て支援課で行います。受給者は毎年８月に前年の所得や、児童の養育状況を確認するための現況届を提出しなければなりません。

この届出がないと、11月以降の手当を受けられなくなるため、忘れずに手続きを行うことが重要です。

児童手当と児童扶養手当の比較

【児童手当と児童扶養手当の比較】

児童扶養手当も令和６年11月から一部改正

児童扶養手当制度は、令和６年11月より一部改正され、より多くのひとり親家庭が、より手厚い支援を受けられるようになります。今回の改正は、主に以下の内容が中心です。

第３子以降の加算額の引き上げ

最も大きな変更点の一つが、第３子以降の加算額の引き上げです。これまでは、第３子以降の加算額は第２子よりも少額でしたが、今回の改正により、第３子以降の加算額が第２子と同額となりました。

【令和６年11月からの第3子以降の加算額の引上げ】

所得制限の緩和

児童扶養手当の支給には、所得制限が設けられていましたが、今回の改正で所得制限が引き上げられました。

【令和６年11月からの所得限度額の引上げ】

まとめると、

といった違いがあると覚えておきましょう。*4）

児童手当に関してよくある疑問

近年、児童手当の制度が改正されることが発表され、出産を控えている人や子供が高校を卒業する人など、児童手当に対する関心が高まっています。

この制度は、家庭の経済的負担を軽減し、子供の成長を支援するための重要な手当です。そこで、児童手当に関するよくある疑問について、わかりやすく回答していきます。

児童手当はいつからもらえますか？

原則として、申請した月の翌月分から支給されます。

例えば、10月に申請した場合、11月分から児童手当が支給されます。ただし、出生日や転入日など、申請時期によっては、申請月分から支給される場合もあります。

申請を忘れてしまったら、どうすればいいですか？

申請を忘れてしまった場合は、お住まいの市区町村に相談してください。

児童手当の申請に関しては、自治体によって方針が異なることがあります。多くの自治体では、申請を忘れた場合でも、遡って支給することができる期間を設けていますが、その期間は通常１年以内です。

しかし、具体的な取り扱いは各自治体の判断によって違います。例えば東京板橋区のホームページでは、申請日の翌月から支給され、過去に遡っての支給はしないことが明記されています。

児童手当はどのように支払われますか？

児童手当は、指定された金融機関の口座に振り込まれます。

申請時に、児童手当を受け取る口座を指定します。原則として、保護者のうちの所得が高い方（生計中心者）が申請者となります。しかし、家庭の状況によっては生計中心者でなくても申請できる場合があるので、各市区町村の子育て支援課に相談してみましょう。

児童手当の申請者（受給者）は父と母どちらでも可能ですか？

児童手当の申請は父母どちらでも可能です。

一般的には生計中心者が申請者となりますが、父母どちらかが主に子供を養育している場合、その人が申請者となります。

また、養育状況や家庭の事情によって、父母以外の養育者でも申請ができる場合があります。申請時には、必要な書類を揃えることが求められますので、事前に確認しておくことが必要です。*5）

児童手当とSDGs

児童手当は、実はSDGs（持続可能な開発目標）とも深く関わっています。児童手当は、

などの目標に直接貢献しています。以前は「豊かな国」として知られていた日本ですが、現在では、少子高齢化や子どもの貧困といった深刻な社会問題を抱えています。

日本の社会問題とこれらのSDGs目標とを、照らし合わせて考えてみましょう。

SDGs目標1：貧困をなくそう

現在、日本の子どもの貧困率は他の先進国と比較して高い水準にあります。経済的な理由により、大学進学を断念する子どもや、卒業後も長い期間奨学金の返済に苦しむ若い社会人が増え、高度な教育を受ける機会や、結婚の機会が制限される可能性があります。

児童手当は、特に低所得家庭にとっては生活費や教育費の助けとなり、子どもたちが貧困状態に陥るリスクを減少させる役割を果たします。これは、全ての子どもが基本的な生活条件を満たすことができ、貧困の連鎖を断ち切る助けになります。

SDGs目標3：すべての人に健康と福祉を

貧困状態にある子どもは、栄養不足や医療へのアクセスが制限されることで、健康状態が悪化する可能性が高まります。また、少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少すると、高齢者の介護を担う人が不足します。その結果、高齢者の健康状態も悪化する可能性があります。

児童手当を受け取る家庭では、子どもたちの健康や福祉に対する投資が増える傾向があります。経済的な余裕が生まれることで、必要な医療や栄養を確保しやすくなります。

SDGs目標4：質の高い教育をみんなに

教育費の高騰により、経済的に余裕のない家庭の子どもは、高等教育を受けられない可能性が高まっています。さらに、少子化により、教員不足が深刻化し、教育の質が低下する可能性があります。

教育は、子どもたちの未来を切り開く重要な要素です。児童手当があることで、家庭は教育に必要な資金を確保しやすくなります。

例えば、塾や習い事、学校行事への参加が可能になり、子どもたちが質の高い教育を受ける機会が増えます。このように、児童手当は教育格差の是正にも貢献します。

SDGs目標5：ジェンダー平等を実現しよう

女性が家事・育児に多くの時間を費やすことで、働く機会から遠ざかり、経済的な自立が難しくなる場合があります。これは、少子化の一因と指摘されており、少子高齢化を加速させる可能性があります。

また、女性が家事・育児を担うべきという伝統的な価値観が根強く残っていることで、ジェンダーロールが固定化され、女性の社会進出が阻まれます。

児童手当は、特にひとり親家庭において、経済的な支援を通じて女性の社会進出を促進する役割も果たします。また、女性が働きやすい環境を整えることで、家庭内での役割分担が見直され、男女平等の実現に向けた一歩となります。

SDGs目標10：人々の不平等をなくそう

日本の少子高齢化、ひとり親家庭の増加、子どもの貧困は、SDGs目標10と密接に関連しています。貧困家庭の子どもは、教育の機会が制限され、社会的地位が低い層に属する可能性が高くなります。

これは、世代間の所得格差を固定化し、社会においての機会の不平等をまねく要因となります。さらに、格差の拡大は、社会不安や不満を生み出し、社会全体の安定を脅かす可能性があります。

児童手当は、経済的に困難な状況にある家庭への支援を通じて、社会的な不平等を軽減する効果があります。特に、子どもたちが教育や健康の機会を平等に享受できるようになることで、将来的な格差が縮小する可能性があるのです。

このように、児童手当は、SDGsの複数の目標達成に貢献し、日本の社会問題解決に重要な役割を果たしています。しかし、制度の課題も残されており、さらなる充実が求められています。

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

児童手当は、子どもを育てる家庭の経済的な負担を軽減し、子どもたちの健やかな成長を支援するための制度です。従来の児童手当は、所得制限があり、支給期間も中学校卒業までと限定的でした。しかし、令和６年10月の改正により、以下の点が大きく変わります。

これらの改正により、より多くの世帯が児童手当の恩恵を受けられるようになり、子どもたちの成長を経済的に支えることができるようになります。

日本の社会問題解決への期待

児童手当は、日本の抱える深刻な社会問題、特に少子化、子どもの貧困、そして社会の不平等を解消するための重要な政策手段の１つです。具体的には、以下の効果が期待されます。

このように、児童手当制度は、子どもを育てる家庭への経済的な支援だけでなく、社会全体の活性化にもつながる重要な政策です。今回の改正により、より多くの世帯が児童手当の恩恵を受けられるようになり、子どもたちが安心して成長できる環境が整備されることが期待されます。

持続可能でより良い社会を目指すにあたって、幸せで力強い次世代を育てることはとても重要です。多くの若者が「希望が持てない」と嘆く現在の日本を、このまま次の世代に残していいものでしょうか？

私たち日本人は気づかないうちに、教育を他人任せにしがちです。しかし、この習慣が今の日本の現状を招いた要因の１つと考えられています。

教育を他人任せにしない第一歩は、私たち大人も学びを続けることです。学び続ける大人が、子どもに尊厳を持って接し、その姿勢が当たり前のものとして子どもたちに引き継がれていくことが、強い基盤を持つ社会の構築には重要です。子供を学校や塾へ行かせれば、勝手に常識のある大人に成長してくれると思わず、あなた自身が学習を続け、子ども達と一緒に成長し続けましょう。

児童手当のような社会的な支援について知ることも、その一環です。常に自分の生活とそれを取り巻く社会について把握し、将来のリスクに備えるとともに、より不安の少ない安心して過ごせる日々を守っていきましょう。

＜参考・引用文献＞
*1）児童手当について
こども家庭庁『児童手当制度のご案内』
*2）令和６年10月から改正：新しい児童手当制度
こども家庭庁『もっと子育て応援！児童手当』
こども家庭庁『児童手当制度のご案内』
こども家庭庁『「第３子以降」のカウント方法について』
*3）児童手当の申請方法
こども家庭庁『児童手当制度のご案内』
*4）児童手当と児童扶養手当の違い
こども家庭庁『「児童扶養手当」に関する大切なお知らせ』
こども家庭庁『児童扶養手当について』
*5）児童手当に関してよくある疑問
板橋区『児童手当よくある質問と回答』（2024年8月）
福岡市『児童手当について』
名古屋市『Q. 児童手当の受給者は夫婦のどちらになるのか知りたい。【児童手当】』
*6）児童手当とSDGs
国際連合広報センター『SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン』