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ソーシャルワーカーとは?仕事内容や相談できること、なるために必要なこと

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だれでも困りごとを1つや2つ、あるいはもっとたくさん抱えています。しかし本人や家族だけでは解決が難しいこともあります。そんな時、手だてや相談先を教えてくれ、解決するまで寄り添ってくれる人がいたらどんなに心強いでしょう。

高齢化・核家族化が進む現代、様々な困りごとに専門的スキルで対応してくれるのがソーシャルワーカーです。社会福祉事業に従事する専門家ソーシャルワーカーについて、一緒に学んでいきましょう。

ソーシャルワーカーとは

ソーシャルワーカーとは、社会福祉事業(ソーシャルワーク)に従事する専門職の総称です。社会福祉士のほか、民生委員福祉センターの職員なども含みます。

IFSW(International Federation of Social Workers:国際ソーシャルワーカー連盟)では、ソーシャルワーク

あらゆるレベルで人々の権利を擁護し、人々が互いの幸福に責任を負い、人々の間、および人々と環境の間の相互依存を認識し尊重する結果を促進すること

ソーシャルワークのグローバルな定義–国際ソーシャルワーカー連盟 (ifsw.org)

と定義していて、日本ソーシャルワーカー連盟JFSW)もそれに準じています。

少し固い表現ですね。分かりやすくするために、まず実際にどんな仕事をするのかからみていきましょう。

仕事内容

社会には、生活する上で課題や不安を抱えて困っている人が少なからずいます。そういった人たちを、専門知識と技術をもって解決への援助をしていくのがソーシャルワーカーの仕事です。本人への働きかけばかりでなく、取り巻く環境や関連機関にも働きかけます。

具体的な業務はそのソーシャルワーカーが所属する組織の目的によって異なります。次章で代表的なソーシャルワーカーについてお話ししていきますが、その前に、よく耳にする社会福祉士とケアマネージャーとの違いを抑えておきましょう。

ソーシャルワーカーと社会福祉士との違い

社会福祉士は、ソーシャルワーカーの職種の1つです。

1987年に「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づき国家資格として認定されたもので、専門教育を受け、資格試験に合格した後に得られます。近年大きな病院や福祉施設では、この資格を持っていることを職員の採用条件にしているところが多くなっています。

勝手に社会福祉士を名乗ることはできませんが、この資格がなくても社会福祉の仕事に携わることはできます。

ソーシャルワーカーとケアマネジャーとの違い

ケアマネージャー高齢者などの介護支援を専門とする職業です。

主に自治体の地域包括センターや民間の介護専門事業所などで、介護の必要な方のケアプラン ※ を作ります。ケアマネージャーになるには、介護支援専門員としての試験に合格する必要がありますが、国家資格ではありません。

ソーシャルワーカーは、そのケアプランをもとに関係各所と連絡を取り調整をしていく役を担います。

ケアプラン

利用者一人ひとりが自立した生活がおくるには、どのような介護サービスを受ければよいか考えた、介護サービス計画書

ソーシャルワーカーの種類と相談できること

社会には困りごとを抱えている人がたくさんいます。どんな場面・フィールドに、どのような困りごとに対応するソーシャルワーカーがいるのかみていきましょう。

スクールソーシャルワーカー

スクールソーシャルワーカーは、学校などの教育現場で、家族や教員と協力して生徒に対する相談や支援を行う職業です。

2015年に法令で「スクールソーシャルワーカーは社会福祉士の資格を有する者のうちから行うこと」と改訂されました。他のソーシャルワーク領域と違い、国家資格が必須になったのです。

似た職種にスクールカウンセラーがあります。こちらは主に生徒の心の問題に対応します。必要に応じてその家族や教職員の相談や支援も行います。

スクールソーシャルワーカーはそれを受けて、さらに課題解決に有効と考えられる外部の関連機関との連絡・調整を行います。

スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーとの連携は、課題解決に直結しそうですね。

医療ソーシャルワーカー

医療ソーシャルワーカーは、主に保健医療施設患者やその家族の課題を解決するための支援を行う職業です。メディカルソーシャルワーカー(Medical Social Worker)またはイニシャルでMSWともよばれます。

厚生労働省は、具体的な業務内容を次の6つにまとめています。

  1. 療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
  2. 退院援助
  3. 社会復帰援助
  4. 受診・受療援助
  5. 経済的問題の解決、調整援助
  6. 地域活動

参考:医療ソーシャルワーカーについて(厚生労働省)

患者本人や施設内ばかりでなく、広くその人を取り巻く環境・地域に働きかける業務を行うこととされています。

コミュニティソーシャルワーカー

MSW同様、CSW(Comunity Social Woerker)とも呼ばれるコミュニティソーシャルワーカーは、自治体地域で社会福祉活動を行います。

下の図は、大阪府豊中市の取り組みの一部を表したものです。

出典:豊中市社会福祉協議会の活動概要 CSWの取り組みを通じて

このように、地域で困っている人を支援するために、人材やサービスなど様々なネットワークを組み合わせたり、新しい仕組みのコーディネートを行ったりします。

地域福祉コーディネーターと称している自治体もあります。

エリアは「自治体・地域」と限定されますが、住民の困りごとは規模も種類も多岐にわたり、地方創生や地域共生が急務な現代では、ますます必要とされる職種と言えます。

精神科ソーシャルワーカー

精神科ソーシャルワーカーは、精神障がい者やその家族の相談にのり、社会生活に関する助言や指導を行ったり、社会参加への支援を行ったりします。「精神保健福祉士」やPSW(Psychiaric Social Woerker)とも呼ばれ、1998年に国家資格化されました。

障害があると症状や体調が整わず、安定して社会生活をすることが難しかったり、それに伴う人間関係や経済上での困りごとなどが出てきたりします。そのような時に、医学的な治療は医師が行いますが、PSWによる生活全般のサポートがとても大切になります。

主な職場は、医療機関生活支援機関福祉行政機関です。最近では、矯正施設などの司法機関ハローワークなどにも活躍の場が広がってきています。

高ストレス社会と言われる現代では、医療、保健、福祉にまたがる領域で調整役を担う精神科ソーシャルワーカーは、重要度の高まっている職種です。

この他にもソーシャルワーカーの職種はありますが、どのソーシャルワークも、問題の解決に向けて相談者本人と生活環境の両方に働きかけていく職種と言えます。

なぜ今ソーシャルワーカーが求められている?

これまでお話ししたように、ソーシャルワーカーの仕事は重要度も必要度も増しています。

その起源などにも少し触れながら、現在一層必要とされている背景についてみていきましょう。

ソーシャルワークの起源

18世紀から19世紀の産業革命は、繫栄と共に貧富の差をもたらしました。その状況の中、キリスト教信者とその賛同者により、貧困者に食べ物や衣類を提供することから福祉活動が始まりました。

活動を進めていくにつれて、人々は「個人を救うだけでは問題は解決しない」ことに気付き、不安定な雇用の実態や教育・医療の欠如などの社会問題や、衛生などの環境問題に目を向けていきました。

日本で個人による貧困者個人へのサポートだけでは担いきれない現実に向き合ったのは、第二次世界大戦後です。

日本国憲法で「基本的人権」として「健康で文化的な最低限の生活をする権利」が明記されたことも大きな要因となり、子ども・貧困者・障がい者・高齢者などに対する支援活動が行政の一環として位置付けられました。

現在ソーシャルワーカーが求めらる理由とその背景

日本では、1987年に社会福祉士が、1998年には精神保健福祉士が国家資格と認定されました。それまでの老人介護施設や生活保護施設などでの社会福祉の仕事を、一定の質が保証されたものとしたのです。

その背景には、少子高齢化があげられます。

核家族化は家族の介護力低下につながり、高齢者の増加に対応するには介護分野を中心に多くの福祉人材が必要となりました。つまりソーシャルワーカー養成のシステム化は社会全体の急務となったのです。

妊産婦や子育て世代へのサポートも言われています。しかし児童虐待やいじめ、子どもの貧困、ヤングケアラーの問題が顕在化しているのが現状です。多様化する課題ますますソーシャルワーカーの専門的サポートを必要とするようになってきました。

そして2023年1月、日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)は、文部科学大臣に宛てて次のような要望書を出しています。

  1. すべての小・中学校に社会福祉士または精神保健福祉士をスクールソーシャルワーカーとして常勤設置してほしい。
  2. こども家庭センターに社会福祉士または精神保健福祉士をソーシャルワーカーとして常勤設置してほしい。
  3. 上記2点実現のための財源確保と財政措置

この要望は、2023年4月のこども家庭庁 ※ 発足に向けてだされたものですが、経緯を注視していきたい点です。

参考:http://www.jaswe.jp/doc/20230130_youbousyo_monka.pdf

(JFSWから文部科学大臣への要望書:令和5年1月)

こども家庭庁

従来は内閣府や厚生労働省が担っていた子どもを取り巻く行政分野の事務を一元化を目的に設立された内閣府の外局。

ソーシャルワーカーにはなるためには

ここまでお読みいただいて、ソーシャルワーカーの仕事と必要性についてご理解いただけたと思います。この章では、実際にソーシャルワーカーになる方法について話を進めていきます。

必要な国家資格

国家資格は専門教育を受け、国家試験に合格して得られる資格です。

国家資格には大きく分けて「業務独占資格」と「名称独占資格」があり、文部科学省はそれぞれを次のように定義づけています。

業務独占資格有資格者以外は携わることを禁じられ、業務を独占的に行うことができる資格医師、弁護士、司法書士など
名称独占資格有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格栄養士、保育士、社会福祉士、精神保健福祉士など
引用:国家資格の概要について(文部科学省)

福祉に関わる国家資格は「名称独占資格」なので、資格がない場合は「私は栄養士です。」「私は保育士です。」などと名乗ることは禁じられています。

しかし、資格がなくてもその職業に就くことは可能です。では、苦労して教育を受けたり受験したりしなくても、と考える方もいるかもしれません。しかし国際ソーシャルワーカー連盟(LFSW)の要望書に見られるように、公共団体をはじめとする組織や団体は、多様化する問題に適切に対応できるスキルの高い専門職としてソーシャルワーカーを求めています。

病院でも採用条件に「有国家資格者」を上げるところが増えており、資格手当など収入にも反映されています。

資格を取得するには

下の図は、ソーシャルワークについて最も幅広い知識が必用とされる社会福祉士の資格取得ルートを表したものです。

社会福祉士の資格を取得するためには、大学、短大、専門学校などの養成学校で基礎から学び、心理学や医学も含め国が定めたカリキュラムを修了、最終的には国家試験に合格しなくてはなりません。

精神保健福祉士はソーシャルワークの基礎から精神保健に関することを深く学んでいきますが、ルートは概ね社会福祉士と同じです。

近年は養成コースをつくる大学や短大も増え、夜間コース通信教育コースもできています。

受験者・資格取得者も増加

2000年代に入ると国家試験に挑戦する修了者も増え、2020年(令和2年)の社会福祉士国家試験受験者は35,287人にのぼっています。これは、1989年(平成元年)の受験者数1,617人の20倍以上の数字です。

合格率は30%未満と厳しいものの、国家試験に合格して登録する人の数も増えています。2022年(令和4年)9月末の社会福祉士登録者数は27万1,098人で、ここ20年にわたり増え続けていることが下のグラフからわかります。

精神保健福祉士の登録者数は、2023年11月現在で10万3,891人です。社会福祉には及ばないものの、徐々に増え続けています。

参考:社会福祉士国家試験の受験者数等の推移(厚生労働省)

どんな人が向いている?

福祉の仕事に携わる大変さは多くの人が感じていると思います。ソーシャルワーカーにはどんな資質が向いているのでしょう。

コミュニケーション力のある人

ソーシャルワーカーは本人だけでなく、その人を取り巻く環境に働きかけます。そして多くの関連機関と連絡・調整を図り、本人や家族と何度も相談を重ねます。

つまり、多くの情報を引き出し、それを培った専門知識で精査し、適切な対策を提示して相手の理解を得られるようなコミュニケーションスキルが必要です。

共感力のある人

困っている人を見て「大変だな」と思うことは誰でもできそうです。しかしソーシャルワーカーは、そこから踏み込んで「自分になにかできないだろうか」と考えを進められるかどうかが大切です。

態度・行動としては、まず傾聴できるかが最初のポイントです。聴くこと自体が仕事の第一歩となります。そして課題について相手の立場になって考えられる力が不可欠です。さらに社会を良くしたいという意欲があれば素晴らしいのでなないでしょうか。

俯瞰力のある人

時代や環境は変わっていきます。相談者を囲む状況も変わる可能性は大いにあります。またそれに呼応して本人や家族の気持ちが変わる場合もあります。

そんな時こそ、ソーシャルワーカーは身につけた専門スキルで冷静に対応することが求められます。いつも全体を俯瞰する力が大切です。

これらの力は、生まれつき備わっている人もいるかもしれませんが、学習や経験、努力・研鑚で身につけている人がたくさんいます。ソーシャルワーカーの仕事を進めていくうちにさらに高まっていく力とも言えます。

年収はどのくらい?

気になる収入をみていきましょう。

令和元年の社会福祉士の場合、全体平均年収は403万円となっています。他の職種と比べ高いとは言えませんが、平成27年の377万円に比べて26万円アップしており、今後増えていくと言われています。

年齢や経験年数による違いもありますが、雇用形態や所属組織によっても異なります。

出典:results_02.pdf(社会福祉士就労状況調査実施結果報告書;社会福祉振興・試験センター)

国家資格のある社会福祉士の収入は、福祉関連の他の職種に比べると比較的高くなっていることが下の表からも分かります。専門知識をもつスキルの高い人材が評価されると言えます。

介護職員の平均給与額の状況(月給・常勤の者、保有資格別) 

ソーシャルワーカーとSDGs

sdgsロゴ

SDGsは、環境・社会・経済の問題解決に向けて、2015年に国連総会で採択された17の交際目標です。2030年までの解決を目指し、169のターゲットが設定されています。

ソーシャルワーカーの仕事と特に深い関連のある目標を確認してみましょう。

目標3「すべての人に健康と福祉を」

現代社会には課題が山積していることを多くの人が認識しています。しかしそれをうまく解決することができる人がどれだけいるかを考えると不安になります。

ソーシャルワーカーは、社会福祉の専門家です。福祉を広げたりうまく進めたりするためのコーディネーターになってくれるはずです。

目標8「働きがいも経済成長も」

社会福祉の仕事は、本来やりがいのある仕事です。しかし、奉仕の精神でだけ求められるのではなく、専門性を発揮して対価を得られる仕事として認められてきたことはとても明るい兆しです。

収入面での改善がさらに進めば、これからソーシャルワーカーを目指す人にとって、より働きがいのある職種になっていくのではないでしょうか。

目標10「人や国の不平等をなくそう」

ソーシャルワーカーは人々の多岐にわたる生活課題を解決するために活動します。これは目標10にある「すべての人々に社会的・経済的・政治的に排除されずに参画できる力を与え、その参画を推進する」活動です。

その他にも、コミュニティソーシャルワーカーの仕事は、目標11「住み続けられるまちづくりを」に直結し、世界のソーシャルワーカー連盟が所属するIFSWの存在は、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に深く関連します。

ソーシャルワーカーは多くの人々の協力を得て課題解決に取り組みます。私たちもソーシャルワーカーに協力することでSDGsの目標達成に貢献することができます。

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

ソーシャルワーカーの仕事の内容や種類、さらに資格や資質についてまとめてきました。

国家資格取得についてお話ししたことが、これからソーシャルワーカーになる方の参考になれば幸いです。

すべての人が不安なく暮らしていくために、多くの人が協力できることが望ましいはずです。ソーシャルワーカーはそのために核となって働いてくれる存在です。

ソーシャルワーカーを応援すること、そして課題を抱えている人を見つけたら、専門的スキルを持つソーシャルワーカーに結びつけることも、私たちができる福祉のアクションになるのではないでしょうか。

<参考資料・文献>
We are delighted to launch the 2024 World Social Work Day Poster(国際ソーシャルワーカー連盟;IFSW)
日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)
社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号)
社会福祉士及び介護福祉士法等の 一部を改正する法律案について(2007)
厚生省ホームページ
精神科ソーシャルワーカー / 精神保健福祉士 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
豊中市社会福祉協議会の活動概要 CSWの取り組みを通じて
登録者の資格種類別-年度別の推移(社会福祉振興・試験センター)
https://www.cfa.go.jp/(こども家庭庁)
国家資格の概要について(文部科学省)
社会福祉士国家試験の受験者数等の推移(厚生労働省)
社会福祉振興・試験センター
社会福祉士の現状等 (参考資料) | 厚生労働省
ソーシャルワーカーとは?役割や仕事内容、主な勤務先や必要な資格なども解説|生涯学習のユーキャン
ソーシャルワーカー – Wikipedia
社会福祉士 – Wikipedia
ソーシャルワーカーという仕事:宮本節子(筑摩書房)
ソーシャルワーカー:井手英策他(筑摩書房)
知りたいソーシャルワーカーの仕事:木下大生・藤田孝典(岩波書店)
ソーシャルワーク:久保紘章(相川書房)
思春期のしんどさってなんだろう:鴻巣麻里香(平凡社)