#インタビュー

学校法人上智学院 サステナビリティ推進本部|「学生職員」が企画・運営を行う、上智大学のSDGs活動

上智大学 森下副学長 / 学校法人上智学院 サステナビリティ推進本部学生職員 インタビュー 

森下 哲朗

上智大学 グローバル化推進担当副学長 森下哲朗(モリシタテツオ)1966年生まれ。出身大学および大学院は東京大学法学部(1989年卒業)・東京大学大学院法学政治学研究科。株式会社住友銀行(1989年-1999年)を経て、現在は上智大学法学部国際関係法学科教授。

2018年-2020年には法科大学院長を務めた。研究テーマは、国際取引法・金融法・交渉学。

<学生職員>

上智大学 総合グローバル学部 総合グローバル学科 ビヤンビラ キララ (企画実施チーム)

上智大学 外国語学部 英語学科  庄司 萌瑠(キャンパス改善チーム)

上智大学 文学部 新聞学科  オ ミニョン (情報発信チーム)

Introduction

学校法人上智学院 サステナビリティ推進本部は、上智大学全体のサステナビリティ活動を連携・統括する役割を担い、学生や教職員のサステナビリティ意識の向上を目的とした企画・運営や、情報発信を行っています。

今回は、上智大学副学長の森下先生および推進本部の学生職員の皆様に、上智大学ならではのサステナビリティの取り組み事例や、大学でのサステナビリティ活動への想いについて伺いました。

バラバラに動いていた活動をまとめ、舵を取る

–本日はよろしくお願いします。早速ですが、サステナビリティ推進本部とはどのような部門か教えてください。

森下副学長:

サステナビリティ推進本部では、上智学院・上智大学におけるSDGs活動を把握し、統括する役割を担っております。学内外への情報発信や、外部組織と既存の活動の連携強化、新しい活動の促進が主な活動内容です。

–どのような経緯で推進本部を立ち上げることになったのでしょうか。

森下副学長:

SDGsやサステナビリティに対する国連の考え方は、私たちが元々目指してきた「世界の人々が希望に満ちた未来を生きる」というミッションと共通している部分が多いです。

そのため、国連でSDGsが制定されるよりも前から、サステナビリティに関連する研究や社会活動を行っていたのですが、当時は各々の部署や研究室、課外活動団体が、それぞれの取り組みをしていて、他の人や組織が何をしているか分からない状態でした。

–単体では活動していたけれども、まだ連携はしていなかったのですね。

森下副学長:

そうですね。ですが、SDGsが世界中で注目されるようになるにつれ、大学としてさらに高いレベルで取り組みを進める必要性を感じました。そこで、今まではバラバラに動いていた活動を取りまとめ、全体として舵を取る部門が必要だと考え、サステナビリティ推進本部を設置することになりました。

現在では、学生に職員として参画してもらうなど、様々な工夫に挑戦しています。

–ぜひ、詳しくお聞かせください!

学生職員が企画・運営を行う、上智大学のSDGs活動

–サステナビリティ推進本部では、なぜ学生を職員として登用なさっているのですか?

森下副学長:

SDGsやサステナビリティというのは、今の学生たちの将来に直接関わってくるため、課題に対しても当事者意識をとても強く持ってくれています。学生たち自身がどう考えているか、学生の目線で生まれる発想がより尊重されるべきだと考えています。

実際に、我々の世代では気づかない、新しい視点や発想でアイディアをくれるため、大学全体としてSDGsへの取り組みを深めていくためにとても頼りになる存在です。

–確かに、SDGsの達成期限である2030年は、今の学生さんたちがちょうど社会人として活躍する時期でもありますよね。

森下副学長:

その通りです。そこで、企画実施チーム・キャンパス改善チーム・情報発信チームの3つの部門に分かれてイベントや新しい制度の導入に携わってもらっています。

他の学生たちへの働きかけなど、学生だからこその価値というのも大きいので、思う存分活躍してほしいなと期待しています。

–ではここから、学生職員の皆さんも交えて、それぞれのチームでの活動についてより詳しくお伺いしていこうと思います。どうぞよろしくお願いします!

①企画実施チーム:SDGsを知るためのイベントを実施、小盛りボタンの導入

–ではまず、企画実施チームの取り組みについてお伺いします。ビヤンビラさん、お願いします。

ビヤンビラさん

はい。企画実施チームでは、サステナビリティ推進関連のイベントを企画運営しています。学生主導でサステナビリティを推進するイベントを企画実施することはもちろん、上智大学の課外活動団体との連携や、上智大学と縁のある企業や地域と連携協働しながら、産学連携・地域連携と言われているところにも力を入れて活動しています。

–これまでにどんなイベントを開催なさいましたか?

ビヤンビラさん

昨年の大学創立記念イベントでは、小島よしおさんをゲストにお招きして、学生や教職員の方々にSDGsについて学んでもらえる内容を企画運営しました。

このイベントは、SDGsという言葉を知ってはいるものの、なぜ大切なのかや、具体的な内容までは理解していないという教職員や学生を主な対象として設定しました。

クイズやレクチャー、ワークショップを通して、SDGsを基礎から学んでもらいました。イベントの最後には、参加者たちから大学で取り組んでほしいアイディアを募集しました。

–参加型のイベントで、とても面白そうですね!実際に採用されたアイディアはありますか。

ビヤンビラさん

採用されたアイディアは3つで、SDGs活動におけるポイント制度、余った食品のタイムセール、そして学食でのフードロス削減のための「小盛りボタン」の導入です。

今日は少なめでいいかな、という日はボタンを押すと、通常より少ない量のご飯が提供されますので、ご飯を残してしまって廃棄されるのを防ぐことができます。

–確かに、学食で小盛りができると嬉しいですね。イベントに参加した学生からの反応はいかがでしたか?

ビヤンビラさん

学生からは「サステナブルってすごく難しそうだったり、言葉だけが一人歩きしてる感覚があったけれど、イベントに参加をしてみると自分に身近なところにあることだと気づいた。」など、イベントや企画をきっかけに当事者意識を持つことができたという声をもらえています。

–大学で実施してほしいアイディアを集めるなど、様々な工夫をなさった結果ですね。素晴らしいです。

②キャンパス改善チーム:1日4,000人の学生がウォーターサーバーを使うように

–続いて庄司さん、キャンパス改善チームの取り組みについて教えてください。

庄司さん

キャンパス改善チームでは、学内の環境に関わることについて取り組んでいます。学生だけではなく、上智大学に訪れる全ての方に対して安心快適なキャンパス作りを行うことを目標としています。

–例えば、どんな施策を実施なさいましたか?

庄司さん

ペットボトルの消費量を減らすため、ウォーターサーバーとマイボトルの利用を促進する活動をしています。これらの活動が学生たちから好評で、調査の結果1日に4,000人(延べ人数)もの学生がウォーターサーバーを利用していることが分かりました。(近日に増設予定)

–凄い反響ですね。ペットボトルのゴミの削減にも大きく貢献できているのではないでしょうか。

庄司さん

はい。現在はさらに、マイ容器の利用促進も実施しているところです。学内にはキッチンカーが来ているのですが、そこにマイ容器を持ち込むとご飯が大盛りになったり、値引きされたりという特典をつけられないか、各店と交渉をしています。今のところ、17店舗でマイ容器の特典が受けられるようになっています。

–ペットボトル飲料のみでなく、キッチンカーで使われる容器まで削減しようとしているのですね。こちらの施策も、学生たちに広く利用してもらえるといいですね!

③情報発信チーム:WebサイトやInstagramで身近なSDGs情報を発信

–最後に、オさん、情報発信チームの取り組みはいかがでしょうか。

オさん

情報発信チームは、SDGs に関する活動について発信していく仕事がメインです。大学のSDGs特設サイト作りに携わりました。SDGs特設サイトでは、学内の課外活動団体の取り組みを取材・執筆をしており、今後は教職員にもインタビューして研究内容などを盛り込んでいく予定です。

–皆さんが自ら、取り組みについて取材や執筆をなさっているのですか?すごいですね!

オさん

ありがとうございます。この他にも、「SDGs & Sustainability レポート」という上智大学のサステナビリティ活動についてまとめたレポートも作成しました。また、「THEインパクトランキング」という世界の大学のSDGsの取り組みを評価するランキングの対応として、大学のSDGsに関連する活動のエビデンス収集や、海外大学の取り組み調査なども行ってきました。

–海外も視野に入れながら活動なさっているのですね。これから力を入れたいなと考えていることはありますか?

オさん

学内外に対してもっと発信をしていきたいと思い、Instagramのアカウントを開設しました。学内でのSDGsの取り組みやイベント告知など、学生に興味を持ってもらえるような内容発信をしていきたいと思っています。

–SNSの情報発信ではどんな反応がありましたか。

オさん

Instagramでの反応が良かったのは、ウォーターサーバーやマイボトルを取り上げたときです。学生は身近にできる活動に興味を持っているのだと気づきました。

キャンパスライフを送る学生の目線に立って、身近なサステナブル活動について情報を発信することで、学生のSDGsに対する意識を高めていくことができるといいなと思っています。

学生と一緒に「上智らしさ」を築いていく

–実際に学生職員として活動してみて、気づいたことはありますか?

ビヤンビラさん

上智の学生に限らず、社会全体としてSDGsへの注目度がかなり高まっているのを感じました。私自身、サステナビリティやSDGsについて興味のあるほうだと思っていたのですが、私の想像以上に多くの人が社会問題について考えているし、ものすごいスピードで世の中が変わっているんだと実感しました。

オさん

確かに、SDGsの活動って本当に多岐にわたっているんだなと感じましたね。

いろんな活動があるからこそ、自分の興味がある分野でちょっとした行動を起こすだけでも、持続可能な社会に貢献できるんだと気づくことができました。

–マイボトルを持ち歩いたり、学食の「小盛りボタン」を押すだけでも、充分環境問題に貢献できますよね。庄司さんはいかがですか?

庄司さん

私は、学力や偏差値だけではなく、サステナビリティやSDGsへの活動内容も踏まえて、大学の魅力度を評価する時代が、近い将来にやって来るのではないかと感じました。

特に今の世代は、新型コロナウイルスの影響を受けて、キャンパスに入れない学生生活にもどかしさを感じていた時期がありました。ですので、大学でどんなキャンパスライフを送るのか、に対して貪欲なところがあるかもしれません(笑)。

上智大学には、学生の声を反a映してくれる環境が整っていると実感しています。今後はさらに、世界中の大学事例を参考にしながら、もっと上智カラーを押し出した取り組みを行っていきたいですね。

ビヤンビラさん

その通りですね。私も学生職員の経験を通して、サステナビリティとは、誰かが知識と権力を握ってトップダウン形式で進めていくようなものではなくて、オープンな場所でお互いが知っているサステナビリティを共有しながら作り上げていくものなんだな、と学ぶことができたと思います。

–皆さん、それぞれの視点で深い学びを得られたのですね。森下副学長、頼もしい学生さんたちと一緒に活動なさっているのですね。

森下副学長

本当に、いつも助けられています。

教員や職員が思っている以上に、学生職員は新しい発想でリーダーシップをとって活動してくれていますので、今後も彼らのような学生職員を増やしていけたら嬉しいですね。

<森下副学長 インタビュー動画より>

社会の在り方がどんどん変化していく中で、私たちも進化しなければならない。だからこそ、学生職員たちが思う存分活躍してもらえるように、その背中を押してあげて、計画を実行に移せる環境を整えていくことが、大学としての役割だと考えています。

–今後も、サステナビリティ推進本部と学生職員の皆様のご活躍に注目したいですね。

森下副学長、学生職員の皆さま、本日は貴重なお話をいただきありがとうございました。

関連リンク

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