#インタビュー

サステナブル・ラボ株式会社|サステナビリティを数字で見える化。今までにないモノサシで、強くて優しい社会の実現へ

サステナブル・ラボ株式会社 CSO カルソ玲美さん インタビュー

カルソ 玲美

お茶の水女子大学を経て東京工業大学大学院で社会工学を学ぶ。ベルギー留学も経験しながら博士課程に進学し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所にてインターン、東南アジアにてODA(政府開発援助)関連活動に従事。帰国後、外務省やJICA(独立行政法人国際協力機構)などでアフガニスタンやシリア難民支援のプロジェクトマネジメント、フィリピンでの新規事業立ち上げなどに携わる。2018年、サステナブルな資金循環という観点から、ビジネスの立場での社会問題解決に関心が湧き、代表の平瀬と出会ってサステナブル・ラボの創業期にジョイン。途中で産休・育休を挟みながら、現在はCSO(Chief Sustainabilities Officer:最高サステナビリティ責任者)として人材、組織、制度、事業、社会のサステナビリティにコミットしている。プライベートでは2020年に第一子を出産し、ゼロイチ二本立て(スタートアップ&子育て)の日々。

introduction

企業の環境・社会貢献度をデータベース化し、世の中の真に「強く優しい」企業を照らすサステナブル・ラボ社。価値観の多様性が当たり前の今、良い企業、良い社会の判断軸も人それぞれ。同社は、客観的な評価や判断が難しいサステナビリティへの取り組みを様々な切り口で数値化することで、各個人の価値観に合った「良い企業」を照らし出します。その事業背景と詳しい内容についてお伺いしました。

サステナビリティに関する企業のあらゆる取り組みを見える化する

-はじめに、サステナブル・ラボの事業内容を教えてください。

カルソさん:

弊社は、企業のSDGs/ESGの取り組みを数値化し、それをタイムリーで簡単に、かつスピーディーに見ることのできる非財務データプラットフォーム「TERRAST(テラスト) β」を開発、提供しているスタートアップです。

ESGとは

環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉。企業が長期的に成長を続けるためには、ESGの3つの観点が必要だという考え方に基づいています。またESG経営によって、国連サミットにより採択された「持続的な開発目標(Sustainable Development Goals = SDGs)」の達成にも繋がるといわれています。

非財務データとは

企業の財務データ以外のデータのことを指します。例えば、CO2排出量、水の消費量、再生可能エネルギー使用量、管理職における女性の割合、残業時間、取締役会の出席率など。サステナブル・ラボでは1社あたり700-800項目もの非財務データを集め、AIによって解析し、見える化しています。

-少し難しく感じますが、具体的にはどのようなものでしょうか?

カルソさん:

企業の環境・社会貢献度を客観的に見ることができる、平たく言えばサステナビリティに関する健康診断ツールのようなものです。一般的に、企業の財務情報は売上や純利益といった共通指標で表され、簡単に入手できますが、サステナビリティの領域は数値化が難しいとされています。企業によって取り組む課題も様々、企業規模や貢献度の深さでも変わります。複雑な上に、金融工学、データサイエンス、サステナビリティを掛け合わせた高度な専門性が必要なため、それら非財務情報を比較するための共通指標が、これまでは世の中にありませんでした。

-確かに、自然環境保護に注力している会社と、女性の社会進出を頑張っている会社、単純に比較するのは難しいですね。

カルソさん:

そうですね。そこで、「TERRAST β」では、各企業の取り組みを誰もが納得して評価できるように、1社あたり700〜800項目程度のSDGs/ESGに関する非財務データを集め、AIによって解析し、数字で見える化しています。これによって誰でも分かりやすく非財務情報の定量比較ができるようになります。

-各企業の環境・社会貢献度が、「TERRAST β」を見ればひと目でわかるということですね。

カルソさん:

はい、その通りです。例えば、「環境」分野で優れている企業はどこなのかがひと目でわかり、更に同業他社と横比較もできるようなイメージです。扱うテーマは、環境だけではありません。ダイバーシティ、労働者の権利、リスク管理等、様々なテーマに解析結果を落とし込むことによって、企業の環境・社会貢献度を多角的に見ることができます。

これからの社会に必要な「優しさ」の指標

-なぜ「サステナビリティ」の見える化に着目されたのですか?

カルソさん:

従来の資本主義社会では、企業の強さ(=経済性)の評価に偏重していました。一方で、「強さ」だけでは、持続可能な社会を目指せません。これは世界的にも周知の事実です。気候変動、貧富の格差、ジェンダー不平等など、複雑なあらゆる問題が世の中にある以上、「強さ」だけを追い求めていては、地球環境が壊れ、人々が疲弊してしまうことを、私たちは十分に理解していますよね。だからこそ、経済活動に優しさ(=環境・社会貢献度)を組み込むことが求められているんです。
そのため、これまでは数値で表現することが難しかった環境・社会貢献度を数値化し、誰もが客観的に判断することができる地図やモノサシのようなものを作りたいと思い、見える化を始めました。

-そこで「TERRAST β」を開発なさったのですね。

カルソさん:

はい。これからの社会では、経済的な「強さ」と地球環境や人への「優しさ」、両方を兼ね備えた企業がますます求められ、選ばれるようになります。「TERRAST β」によって、世の中のサステナビリティを底上げし、社会の考え方を根本的に変えるようなパラダイムシフトを起こすことができると考えています。

-具体的にはどのようなシーンで活用されているのでしょうか?

カルソさん:

例えば、金融機関をはじめとする機関投資家には、投資先の情報収集のために活用いただいています。最近はESG投資という言葉もよく聞くと思いますが、投資先がESGの取り組みにどのくらい力を入れているか、リソースが適切に投下されているかどうかも、投資判断の一部になります。数値化される事業会社側も、自社のESGの取り組みが正しく評価され、将来の投資に繋がるメリットがあります。
事業会社は、自社の経営判断や戦略、社内のサステナビリティ推進等のために活用されています。例えば、「TERRAST β」で同業他社と横比較をすることで、業界での立ち位置を知ることができます。また、時系列分析も可能なため、自社のサステナビリティ推進は向上しているか、社会にどのようなインパクトを残したのか等、過去から未来の定点観測もできます。
「TERRAST β」によって自社の「なんとなく」の強みを確信に変えるだけではなく、「気づいていなかった」強みの発見にまで繋げます。それは持続可能な経済活動を続けるための大きな一歩なんですよ。
「TERRAST β」を活用した企業が、経済活動とサステナビリティ推進を同時に進めることで、社会全体がより良くなることを目指しています。企業支援を通して社会全体のサステナビリティを底上げすることこそが、弊社の目指す社会貢献でもあるのです。

あなたにとって「いい会社」を見つけるきっかけに

-様々な用途で活用することができるのですね。確かにこれからの社会の動きに必要不可欠なツールだと感じました!

カルソさん:

ありがとうございます。今までは企業の経済的な「強さ」にスポットライトが当たることが多かったですが、「優しさ」にも着目してもらえるきっかけになれば嬉しいです。

-就職活動の際にも、見る方が増えてくるかもしれませんね。

カルソさん:

そうですね。良い社会・良い企業の定義は、人によって様々です。私たち皆んな、それぞれ違う人間なのですから、当たり前ですよね。様々な価値観が認められるようになってきた今、強さと優しさをはかる共通のモノサシを作ることで、個々人それぞれが理想とする「良い企業」に出逢う架け橋になれたらいいですね。

-強さだけじゃなく、優しさを持ち合わせた企業に光を当てる。素晴らしい想いですね。

カルソさん:

実は「TERRAST(テラスト) β」の名前やロゴもその想いに由来しているんですよ。「照らす人」という意味と、ラテン語の「TERRA」の2つの言葉を組み合わせています。「TERRA」はラテン語で「地球、大地」という意味があり、地球や企業の様々な側面を照らしたいという想いが元になっています。ロゴの右側が黄色くなっているのは、ライトの光をイメージしていて、こちらも今まで光が当たっていなかった部分を「照らす」という意味を含んでいます。

-細かなところまで、理念を徹底なさっているのですね!

まずは自社の働き方から!強さと優しさの両立を

-社内の風土や働き方の面でもそのような想いに通ずるものはありますか?

カルソさん:

はい。弊社の組織づくりも同じ考えで、強さだけではなく優しさの側面も大切にしています。

-具体的にはどんな取り組みをなさっていますか?

カルソさん:

例えば人事評価の仕組みとして「強さ優しさレビュー」というバリュー評価を作りました。

  • 〈Add Value / 日々の業務で自分なりのバリューを付加出来たか〉や
  • 〈Ownership / 当事者意識や責任感を持って仕事が出来たか〉

など、仕事のアウトプットに関する「強さ」の項目以外に、

  • 〈Membership / お互い気持ちよく業務が出来るような良い空気づくりをしたか〉、
  • 〈One for all / 業務で助け合ったか。仲間を笑顔にしたか〉
  • 〈Social Impact / 人として、ビジネスパーソンとして、社会を良くしているか〉

など、「優しさ」の項目も取り入れています。

〈Social Impact〉については、例えば会社で高い業績を上げていても、家庭を放ったらかしにしているような状態だとしたら、家庭内の他の誰かにしわ寄せが行く可能性もあります。それは、自分、家庭、社会と輪を広げていったら決してサステナブルではない、という考え方が根底にあります。一面で切り取らず、本質的にサステナブルであるかどうか、を考えた結果です。私自身が幼い子供を育てながら働いているためにこの発想になったのが大きいです。

-カルソさんは、貴社内で初めて産休育休を取られたと伺いました。取得前後の働き方についてはいかがですか?

カルソさん:

そうですね、今は全社的にフルリモートワークなのですが、私が産休に入る前の2019年は決してリモートワーク文化が社会全体に広まっていたわけではありませんでした。ですが、大きなお腹を抱えながらの通勤が辛く、リスクもあることから、社長に相談したところ、リモートワークでの業務を許可していただきました。1日中オフィスにいることが偉いというのではなく、仕事で成果を出すことが重要であり、形にはこだわらないという本質的な考え方をする組織なので、有難かったですね。同様の考え方から、フルフレックスタイム制も導入しています。子どもの予定や体調に合わせて時間も調整できるので、育休後に仕事復帰してからも、心地よく仕事と家庭の両立ができています。

-リモートワークでフルフレックス、かなり自由度の高い働き方ですね。

カルソさん:

本当に助かっています。また、ベビーシッターの割引制度を導入するなど、これから産休育休を取る社員たちにとっても働きやすい会社になるよう、積極的に仕組みを作っています。

-とても柔軟さを感じます。自ら提案し、制度を変えていくこともできるのですね!

カルソさん:

はい、スタートアップ企業なのでとても柔軟な考えを持っていて、新しいことはどんどん取り入れていく社風です。限られた時間内で成果を出すことや、会社、社会への貢献に繋がることであれば、誰もが手を挙げ、常識にとらわれない制度を作っていくことができます。

-貴社のような会社で働きたい方も多いと思います。

カルソさん:

私たちも、一緒に働いてくださる方を絶賛募集中なので、興味のある方はぜひ応募していただければうれしいです!!

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強くて優しい会社として、社会のお手本に

-未来を見据え、先進的な取り組みにどんどんチャレンジされているのですね。最後に、今後の展望をお聞かせください。

カルソさん:

まずは、「TERRAST β」をさらに世の中に浸透させ、「強く優しい」企業を照らすミッションを推進していきたいです。現在は新たに、財務(強さ)と非財務(優しさ)の因果関係の研究なども進めています。サステナビリティが社会にとって良いことはわかった、しかし、お金になるのですか?という問いもあるなか、この研究によって社会全体にインパクトを与えられる結果をお届けできるといいなと思っています。また、グローバル展開も進めています。現在、約7ヵ国からメンバーがジョインしていて、今後も益々規模が拡大していくと思います。多様なメンバーと、世界全体のサステナビリティに貢献していきたいですね。
自社としても、収益を上げつつ社員やその家族を大切にする働き方を実現することで、強くて優しい組織のお手本となれるよう邁進してまいります。

-本日は貴重なお話をありがとうございました!

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