#インタビュー

株式会社鈴木コーヒー | 「クレイジーブランディング」で商品開発とSDGsに本気で取り組む

株式会社鈴木コーヒー 佐藤俊輔さん インタビュー

佐藤俊輔

1980年7月13日、新潟県新潟市生まれ。東京都内の大学卒業後、留学経験(2年)を経て、その後、大手コーヒーメーカー営業に従事。その後、家業である鈴木コーヒーに戻る。雪室珈琲の開発をはじめ、地域のコーヒー産業の活性化に勤しむ中、34歳で同社代表に就任。2020年にはRPA(DX)を主力としたIT会社㈱SUPER FUTUREを設立。

introduction

新潟県を起点に事業展開する鈴木コーヒーは、主に外食産業に対してコーヒーや食材を販売する会社です。「クレイジーブランディング」をコンセプトに、自由な発想で次々とユニークな商品を開発し、鈴木コーヒーならではの商品を打ち出しています。

今回は、鈴木コーヒーの代表取締役・佐藤俊輔さんに、鈴木コーヒーの魅力的な商品やSDGsに関する取り組みについて伺いました。

熱狂的なファンを増やす「クレイジーブランディング」

–本日はよろしくお願いします。早速ですが、鈴木コーヒーの事業内容について教えてください。

佐藤さん:

当社は、主に外食産業にコーヒーや食材を販売している卸売企業です。新潟県内外のカフェやホテルにコーヒーを含む様々な商品を卸したり、企業にオフィスコーヒーを導入してもらったりしています。新潟県内では5軒の直営店舗も運営しているんですよ。現在は、約2,500社のクライアントと取引しています。

–多くの企業に商品・サービスを提供しているんですね!鈴木コーヒーのコンセプトや大切にしていることはなんでしょうか?

佐藤さん:

2016年頃から推進しているコンセプトが「クレイジーブランディング」です。具体的には「1,000人のお客様よりも100人の熱狂的なファンを作ろう」を意識しています。

今は情報化社会なので、みんなと同じようなことをしていても選ばれないんですよね。だからこそ、エッジの効いた尖ったことをどんどんやって、熱狂的なファンを作っていこうと意識しています。

–確かに「鈴木コーヒーといえばコレ!」というものがあると強いですよね。

佐藤さん:

「クレイジーブランディング」の考えは、社内での軸にもなっています。物事を決めるときに、「これはクレイジーかそうでないか」で判断します。後は「わくわくできるかどうか」も非常に重要です。たとえ儲からないとしても、わくわくすることなら挑戦しよう!という考え方ですね。

–そのような考え方だからこそ、ユニークなアイデアが生まれるのですね。

佐藤さん:

基本的に「やりたいことには挑戦したらいい」という考えなので、割と自由な会社だと思います。アイデアや企画の数がとにかく多いんですよね。入社2カ月目の社員に、商品開発を任せたこともありますよ。そして当社のユニークな看板商品としては、「雪室(ゆきむろ)コーヒー」があります。

日本の知恵と文化を融合した「雪室コーヒー」

–雪室コーヒーはどのような商品ですか?

佐藤さん:

もともと新潟を含めた雪国の文化である雪室で、保存・熟成させたコーヒーです。雪室とは、エアコンも冷蔵庫もない時代に、蔵に雪を入れて一年中一定の温度に保つ雪国古来の技術です。

–夏でも蔵の中の雪は溶けないんですね!

佐藤さん:

そうなんですよ。昭和30年頃に冷蔵庫が普及して雪室は廃れていったのですが、近年この技術が見直されていて、雪室を研究している方々がいます。

–雪室で保存するとどんなメリットがあるのでしょうか?

佐藤さん:

雪室は自然エネルギーである雪を利用するため、電気振動や温度の変動がありません。雪室で保存した食品は、でんぷん糖化で甘くなり、熟成時に発生する不快臭(アルデヒド類)が少なくなることが研究でわかっています。さらに、まったく電気を使わないエコなエネルギーでコーヒーの保存と追熟ができるんです。

–そんなすごい技術が昔からあったんですね!

佐藤さん:

当社もこの雪室に注目し、11年ほど前に雪室コーヒーを始めました。現在では雪室を使ったビジネスが新潟県内外で注目を浴びるようになり、一度は途絶えた文化が復興してきています。

–日本の伝統文化が見直されているんですね。これこそが他社と鈴木コーヒーの違いでしょうか?

佐藤さん:

コーヒーは日本で作られるものではなく、他国から輸入して他社と同じようなコーヒー豆を焙煎しているので、商品そのものの違いを打ち出すことは難しいんです。しかし、当社はアプローチ方法を変えて差別化しています。日本ではほとんど栽培されていないコーヒーで地域性を出すのは難しいなか、雪室コーヒーは明確に地域性とストーリー性を見せられます。

–地域性を見せられるのが、鈴木コーヒーならではの強みなんですね。

佐藤さん:

他にも、地域性を打ち出した「佐渡金銀山珈琲」があります。こちらは佐渡金銀山坑内の弱低温高湿度の特殊な環境を利用して、コーヒー豆を保存しています。雪室コーヒーや佐渡金銀山珈琲、他にも地域性のある商品を展開しており、ローカライズした商品開発を得意としています。

–鈴木コーヒーにしかできない商品作りですね!

「コーヒー業界は絶対にSDGsに取り組まなくてはいけない」強い想い

–ここからはSDGsについて聞いていきます。御社がSDGsに力を入れ始めたきっかけはなんでしょうか?

佐藤さん:

当社は、約4年前からSDGsに力を入れ始めました。私がある経済団体にいたときにSDGsを担当していたこともあり、社会的にこれからはSDGsがトレンドになるだろうと感じていました。そして、コーヒー業界がSDGsに取り組むことは絶対だと思っています。

–なぜコーヒー業界は絶対SDGsに取り組むべきなのでしょうか?

佐藤さん:

このまま地球環境の破壊や温暖化が続くと、コーヒー豆が採れなくなってしまう危険性があるからです。最近コーヒー豆の値段が高騰しているのは、異常気象や干ばつが原因です。

私たちは世界中の豊かな環境や、一生懸命コーヒー豆を作ってくれる農園の人がいてはじめてビジネスができます。だからコーヒー業界は絶対に全員がSDGsに取り組まなくてはいけないんです。

–強い想いがあるからこそ、これだけSDGsのことに取り組めるんですね。

佐藤さん:

またSDGsはアイデアを生むためにも、すごくいいものだと感じています。単に「新しい商品を考えなさい」っていうとなかなか発想が生まれないけれど、SDGsに縛ることで多くのアイデアが出てくるんです。SDGsという軸があることで、どうやって商品を開発すればいいのかが明確になるんですよね。

–そのような考えがあったとは意外でした!SDGsを上手に活かしているんですね。

佐藤さん:

単純に世の中をよくしたいという想いも当然ありますが、会社としてSDGsや環境のことに配慮しながらも、しっかりと経済を循環させていくことが根底にあるので。SDGsを軸にして様々な企画が生まれ、新しいビジネスにつながっていくことが増えています。

–SDGsに取り組んでいて、社内で意識の変化はありましたか?

佐藤さん:

すでにSDGsは社内で当たり前の共通認識となっています。「これSDGsじゃないよね」なんて会話もよく聞きますね。一つの例として、毎年出しているギフトカタログで、障害者の方が描いたアートをパッケージに採用する予定です。

障害者の方が作るアートってすごくセンスがいいものばかりなんですが、うまくマネタイズできていない課題があったんです。「じゃあ、うちがパッケージに使って、売り上げの一部をアーティストに渡そうよ」となって。こういったSDGsに関するアイデアが、社員から当たり前のように出てくる環境になっています。

–SDGsを軸に、どんどん素敵なアイデアが出てくるんですね!

SDGs教育で、学生が商品開発に取り組む

–ここからはSDGsに取り組んだ事例について教えてください。

佐藤さん:

AIR(国際外語・観光・エアライン専門学校)の学生たちと、SDGs型の商品開発に取り組みました。最近、学校からSDGsに関する講演会の依頼が多いのですが、この事例も学校側から依頼されて1年間伴走しました。

AIRは航空業界やホテル関係に就職することを目指した専門学校です。航空業界にかかわらず「どこでも通用する教養と人間力を学ばなければいけない」ということで、これからの時代に必要となってくるSDGsを学ぶことにしたそうです。

–SDGsを学べば、どこでも通用すると考えたのですね。

佐藤さん:

SDGsもですが、授業ではマーケティングの考え方についても教えました。どういうターゲットにどんな商品を届けるのか、商品開発のプロセスなど、一つのアイテムが世に出て売れていくところまでをやりました。最終的にできあがったのが、コーヒー豆とシードペーパーを合わせた「BEANS‘N’BLOSSOM」です。

シードペーパーとは

紙ごみとなった古紙を再生し、花の種をすきこんだリサイクルペーパーのこと。一晩水に浸けて土に埋めると数日で発芽し、花を咲かせます。

–取り組んだ学生の様子はいかがでしたか?

佐藤さん:

学生たちはすごく真面目で、一生懸命取り組んでくれました。最後に発表会をしたのですが、涙が出るほど感動しましたね。今までとはまったく異なる分野のマーケティングに取り組んで、本当によく成長したと思います。

–若い世代への教育は、とても意義がありますね!

SDGsに取り組む企業同士が協働していく

–最後に、今後の展望を教えてください。

佐藤さん:

SDGsを経営の最高峰戦略の一つに据えてやっていきたいですね。今後は、他企業とも協力しながら、おもしろい取り組みができたらと考えています。

現在、新潟の有志でサステナブルについて取り組む団体を作り始めたところなんです。若手経営者や大学、学生も交えて様々な取り組みをしていきます。私はSDGsに取り組んできて、一社が100歩歩くのではなく、100人が一歩歩く方が大事だと思っています。そのため、今後は企業との協働にますます力を入れていきたいですね。

–SDGsに取り組む企業同士が手をつなぐことが大事なんですね!

佐藤さん:

また先に述べたとおり、当社は圧倒的なアイデアの数が強みです。社員がそのようなクリエイティブな仕事に専念できるよう、今後はDXにも力を入れていきます。社内の非生産的な業務をいかに自動化していくかが鍵だと思っています。

DXとは

デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略。データとデジタル技術を活用して、商品やビジネス、業務、企業文化などを変革するもの。

–明確なビジョンを持ったDX化の目標ですね。

佐藤さん:

私は世の中で生き残る仕事は3つしかないと思っています。「ディレクション・クリエイティブ・おもてなし」です。これ以外は、他のものに取って代わっていくでしょう。人間にしかできない仕事を最大化していくことで、よりよい企画が生まれ、もっと楽しいことがいっぱいできると思っています。

–鈴木コーヒーから新たな商品や取り組みが生まれることを期待しています!本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

関連リンク

鈴木コーヒー公式サイト:https://suzukicoffee.co.jp/
鈴木コーヒーオンラインストア:https://bellmate.com/