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「みんなでみらいを」代表 阪口竜也さん|「環境保全と経済発展を同時に叶えるビジネスモデル」

「みんなでみらいを」代表  阪口竜也さん SDGsインタビュー

阪口 竜也
フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。環境や貧困といった社会問題をビジネスで解決することに挑戦している。

【略歴】
2009年 世界50カ国が参加する起業家の表彰制度アントレプレナーオブザイヤーでセミファイナル受賞
2015年 経済産業省 収益指向型 BOP ビジネス推進事業に係る有識者研究会のメンバーとなる
2014年よりカンボジアで持続型の植林、森の叡智プロジェクトを開始
2015年 パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表
2017年 SDGsビジネスアワード大賞受賞
2018年 石川県白山市SDGsアドバイザリーボード委員就任
2019年 サスティナブルコスメアワード受賞

環境保全を目的としたビジネス

-今日は、環境保全活動に関するビジネスを幅広く展開されておられる、「みんなでみらいを」代表の阪口竜也さんにお話を伺います。
阪口さんは、日本国内においてはSDGsの第一人者と言われており、企業向けのセミナーを多数開催するSDGsのコンサルタントとしても活躍されています。
早速ですが、阪口さんのお仕事内容について詳しく教えてください。

阪口さん:

はい。今から100年後の地球が、人間や他の生物にとって住みやすいものであるよう、環境を改善することを目的とした事業を展開しています。その一環として、現在は「みんなでみらいを」というコスメブランドを立ち上げ、オーガニックな化粧品等の開発・販売を行っています。

編集部のポイント

阪口さんの手がけるナチュラルコスメショップ「みんなでみらいを

子どもが生まれたことで、100年後の地球環境について考えるようになった

-阪口さんが、今から100年後の地球について考えるようになったきっかけはありますか?

阪口さん:

私事で恐縮ですが、16年前に子どもが生まれたんです。それまで自分の寿命あたりまでしか想像したことはなかったのですが、子どもが生まれてから、急にリアルになりましたね。

この子がおよそ100年くらいまで生きるということを考えた時に、自分の想像する時間軸がそこまで続いていくようになりました。

それで、「100年後の地球環境は、この子や他の人間、他の生き物にとって暮らしやすい状態だろうか?」と考えたら、環境破壊が続いている今の状況では無理だろうと思ったんです。

仕事として、地球環境が良くなる仕組みを作る

-お子様の誕生がきっかけで、地球環境保全について考えるようになったんですね。
阪口さんは、もともと環境問題には詳しかったんですか?

阪口さん:

いえ、元々は、環境問題について知識があったわけではないんです。
ただ、100年後の地球を想像するようになってから、人と話したり、自分で勉強したり、様々なメディアに触れたりすることで、知識は積もっていったと思います。

そうして、人間が今のまま消費する生活を続けていけば、100年後には地球環境が破壊されるのでは?このまま住めなくなってしまうのでは?と思いました。

それで、自分が仕事で手掛けている事業で、地球環境を良くする仕組みができないかと思って、今の仕事まで続いています。

-みんなが「環境を良くしよう」って思っていても、なかなか行動に起こすのは難しいですものね。

使うことで環境保全に繋がる商品を開発する

阪口さん:

そうなんですよ。でも、何もしなければ環境は悪くなっていく一方です。だったら、何も特別なことをしなくても、勝手に環境が良くなっていくっていうビジネスを作りたい。

人間が、突然ライフスタイルを変える、というのは難しいです。なので、無理をせず、日常的に使う商品で、環境に良い影響を与えたいと考えました。

例えば、使用後に水に流しても、環境に負荷をかけないシャンプーやメイク落とし等ですね。使うことで、地球環境を守ることに繋がる商品を作って、それを消費してもらおうと考えたんです。

-それが、阪口さんが展開している「みんなでみらいを」の化粧品なんですね。

価値の逆転1:都市部より貧困地域の方が価値が高い

阪口さん:

はい。今は、東南アジアで一番森林の減少幅が大きいとされるカンボジアで、化粧品の原料となる植物を植えて、育てて、収穫するということを行っています。

カンボジアの、電気もなければ水道もない、今まで開発されたことのない、荒野のようなところで植林活動を行って化粧品の原料を育てると、すごくクオリティの高いものが収穫できるんです。

農薬や化学肥料が撒かれたことがない土地なので、土も水もきれいなんですね。

-都会で育てるより、よっぽどいいものが採れそうですね。

阪口さん:

はい。これが価値の逆転です。化粧品の原料を育てるという点においては、開発された都市部よりも、今まで貧困地域と呼ばれてきたような土地の方が、圧倒的に価値が高いんですよ。

貧困問題と環境問題を同時に解決するビジネスモデル

阪口さん:

さらに、貧困地域と呼ばれるところでビジネスをすることで、現地の方の収入を生み出すことができます。そこで暮らす人たちは、それまでは木を切ってお金に替えていました。

でも、森林を伐採して売るよりも、植林して化粧品の原料となる植物を栽培した方が、多くの収入を得られるとなると、そこに暮らす人は木を伐採するのを止めて、森林を育てるようになります。

-現地の方の収入は増えて、森の木々は守られて豊かに育つ。貧困問題と環境問題が同時に解決できる、素晴らしい取り組みですね。

編集部のポイント

阪口さんの、このカンボジアでの植林活動は「森の叡智プロジェクト」と呼ばれています。
ここで栽培された植物の葉や実や種が全てコスメの原料になることで、現地の仕事を生み、さらに森が増えていくことに繫がっています。​

※参考:「活動について | minnademiraio」

阪口さん:

ありがとうございます。これが、SDGs10「人や国の不平等をなくそう」の具体的な事例です。これは「国内及び各国間の不平等を是正する」ために掲げられたSDGs10番目の目標です。

COP21で「森の叡智プロジェクト」について発表

-このビジネスモデルが評価されて、2015年にパリで行われたCOP21で、「森の叡智プロジェクト」について発表することになったんですね。

阪口さん:

はい。この仕事について、2015年のパリのCOP21で発表しました。その後、パリ協定でSDGsができました。SDGsについてはここで初めて知りましたし、ここから僕はSDGs事業をやっているということになりました。

COP21とは?

COPはConference of Partiesの略で、「締約国会議」のこと。COP21は第21回気候変動枠組条約締約国会議を指す。フランス・パリ近郊のル・ブルジェ特設会場で開催された。2020年で失効する京都議定書以降の新たな枠組みにおいて、全196ヶ国が参加するパリ協定採択された。

引用:Wikipediaより

価値の逆転2:都市部より地方で高い価値を生み出す

阪口さん:

価値の逆転のところまで話を戻しますけど、これからの価値観では、やり方によっては、今まで価値がないとされていたような土地でも、大都会より高い価値を見出すことができるんです。

日本で、過疎化が問題とされている地域でも、この価値の逆転を利用することで、地域経済に貢献できます。

-何か具体的な例はありますか?

環境負荷が少ない「米ぬか酵素洗顔クレンジング」などを展開

阪口さん:

具体的には、「みんなでみらいを」の化粧品には、米ぬかや小麦ふすまを使ったものがあります。

これは、農産物を加工する時に出てくる副産物で、従来は捨てられていたものも含まれています。

私たちはこれらを購入して化粧品を作るので、環境負荷が少ない。しかも自然由来のものなので、使用後に水に流しても、やはり環境負荷がかからない。

-化粧品を作る時にも、使い終わった後にも、環境が良くなるという仕組みですね。

阪口さん:

そうなんです。さらに、地域の農家の方にとっても、今まで捨てていたものがお金に変わるので、地域経済にも貢献できます。これが価値の逆転を活かしたビジネスです。

ただ、いくら環境負荷が低いものを開発したとしても、それを欲しい、使いたいと思ってくれるお客様がいないと何のインパクトもないんですよね。

なので、みんなが買いやすい値段で、みんなが買いやすい場所で販売していく予定です。

-「みんなでみらいを」ですものね。それでは今後の目標を教えてください。

地球環境を守りたい

阪口さん:

「地球環境の改善」これに尽きます。まだまだ手探りでやっている途中です。
というのも、地球環境の改善に繋がる商品を買いたいというニーズがまだ少ないですね。

サステナブルやSDGsをテーマにした市場は、これから伸びていくとは思いますが、現段階ではまだまだ小さい市場です。だから大手の化粧品メーカーがまだ参入してこない。

大手メーカーが、大規模にSDGsに取り組んだ方が、社会全体に与えるインパクトは大きいわけですよ。

今後、どこかのタイミングで、大手メーカーがSDGsに関するビジネスに参入してくるとは思いますが、それまでは「みんなでみらいを」が、地球環境の改善に繋がる商品を提供する役目を果たすと思っています。

サステナブル/サスティナブル とは

持続可能。環境を破壊せずに継続、維持できるさま。

-競合他社がどんどんSDGs市場に参入してきた方がいいってことですか?

阪口さん:

はい。どんどんSDGs市場に参入してきてほしいと思っています。僕は突き詰めると、化粧品が作りたいのではなくて、地球の環境を守りたいんです。

100年後の地球環境が、人間や他の生き物にとって暮らしやすいものであって欲しい。そして100年後もその先もずっと、暮らしやすい状態が続いていけばいいと思っています。

-「地球の環境を守りたい」、「100年後の地球環境が、人間や他の生き物にとって暮らしやすいものであって欲しい」。阪口さんが仰っていることって、最初から一貫してますよね。

SDGs市場に参入するなら、壁なんてない

阪口さん:

それしかないです。今までは経済が発展するにつれ、環境が破壊されてきました。そこで世界共通の課題であるSDGsです。これは転換点です。

今後は、環境を守ることで、経済が発展するという方向に向かっていきます。SDGsという世界共通課題を通じて、SDGsビジネスの市場規模を拡大していくチャンスなんです。

だから僕としては、SDGsに関するビジネスを、企業も個人もみんなもっとやったらいいと思っています。

-なるほど。でもそれは実績豊富な阪口さんだからそう仰いますけど、やはりSDGsに関するビジネスの参入障壁は、一般的にはまだまだ高いように感じます…。

阪口さん:

SDGs市場に参入するなら、壁なんてないですよ。

今までは、大規模な設備で大量に商品を生産して、1つあたりの単価を安くして、大量に消費していくというビジネスモデルが主流でした。

でも今は、インターネットの普及によって、顧客のニーズが多様化している。顧客は1人1人違う人間なので、みんな欲しいものが違うんですよ。

だから「匠の職人が作った一点モノ」や「限定〇個」が売れる時代です。

-確かにそうですね。大量に流通しているものより、「限定〇点」「限定デザイン」「期間限定」のような物のほうが魅力的だったりしますね。

少量生産をしていたプレーヤーが活躍する未来へ

阪口さん:

そうでしょう?SDGsに関するビジネスは、大規模な設備を持っていなくてもいいんです。小さな工房1つでも、高い技術を持った職人さん1人でも、価値の高いものを丁寧に作る技術さえあれば、SDGs市場に参入できます。

ノウハウも、あるならあった方がいいですが、必須ではないと思いますね。
インターネットを使えば、全てを調べることは無理でも、かなりの知識が手に入ります。自分1人で何でもできる必要はないですし、その道のスペシャリスト何人かと協力することで、全員で始められます。

繰り返しますが、実は参入障壁なんてないんですよ。SDGsという全人類共通の課題があって、インターネットがあって。「これからも、住みやすい地球環境であってほしい」っていうのは地球に住んでるみんなが思ってることなんです。

僕にとってのSDGsとは、地球環境保護と経済発展を同時に叶えるための共通認識

阪口さん:

今までは、「地球の環境を保護すること」と、「経済を発展させること」は、全く反対の矢印を向いていた。けれど、SDGsという世界の共通認識を通せば、地球環境保護と経済発展は相反しないんです。地球環境保護と経済発展を同じ矢印で繋げたのがSDGsだと、僕は思いますね。

-本日は貴重なお話を聞かせて頂いて、ありがとうございました。

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