#インタビュー

Sustainable.(株式会社スライバル)|暮らしにとけ込む商品を提供し、SDGsを身近に感じる社会を目指す

株式会社スライバル 代表取締役 青木さん インタビュー

青木 愛(あおきめぐみ)

株式会社スライバル代表取締役。サステナビリティを身近にするオンラインプラットフォーム【sustainable.】と、日用品から使い捨てプラスチックのゴミ削減に取り組むオリジナルブランド【S.(エスドット)】運営中。1993年東京都出身。15歳からアメリカに単身留学。テンプル大学国際ビジネス学科卒業。韓国・ソウルの延世大学での1年間の留学から帰国後大学四年次に学生起業。

Introduction

「上質な教育と情報を通して、持続可能な社会づくりに貢献する」をミッションに掲げている株式会社スライバル。

メイン事業として、オンラインサイト「Sustainable.(サスティナブルドット)」と、自社ブランド「S.(エスドット)」を展開し、買い物を通じて環境や社会の課題解決を試みています。

今回は代表取締役の青木さんに、会社での取り組みについてお話を伺ってきました。

海外留学と起業経験が「持続可能な社会」を意識するきっかけに

–はじめに、会社を立ち上げたきっかけをおしえてください。

青木さん:

幼少期から自然が身近にあり、触れながら自然のすばらしさや大切さを感じていました。潜在的に「地球を大切にしたい」という思いがあったんです。

また中学までは日本で過ごしましたが、高校はアメリカに単身留学したり、途中で韓国へ語学留学に行ったりと、グローバルな教育環境の中で過ごしてきたバックグラウンドを持っています。

–若いころに、日本を外から客観的に見る機会があったのですね。

青木さん:

はい、そこで母国への愛国心が生まれ、将来は日本のために何かできないかなと考えるようになりました。

大学でビジネスを学んだあとは就職活動もしてみましたが、なかなかしっくりくる会社がなくて。そこで、自分でやってみようと思い立ち、大学4年生の時に自分で起業しました。

–若い女性の起業家は、最近でも日本だとまだ珍しいといわれるのではないでしょうか。

青木さん:

設立当時もレアケースだったようで、「女性だから」「女性なのにすごいね!」という言葉を何度もかけられました。ですが、多様性を尊重するアメリカで長く暮らした経験からか、その言葉は自分の中でとても違和感があったのです。

なので、「ジェンダー」という切り口からSDGsや持続可能な社会について意識するようになりました。

買い物を通じた社会貢献を事業の柱に

–そこから、環境問題という視点でもサスティナビリティを事業へ取り入れるようになったのは、どうしてでしょうか。

青木さん:

会社を立ち上げてしばらく経った頃、ビジネスカンファレンスに参加したことがきっかけです。

そこには、世界中から若手の起業家や、ファミリービジネスの経営者が集まり、3日間かけてさまざまな議論を行いました。

そこで参加者のみんなが「目の前の売り上げ目標」ではなく、「自分たちの事業が地球規模でどのようなインパクトを与えるのか」を第一に考える姿勢に驚いたのです。

当時の自分は、まだそれほど環境問題・社会貢献を意識できていなかったなと自省し、改めて自分が事業を通して出来ることを真剣に考えるようになりました。

–その結果が、オンラインストア「Sustainable.(サスティナブルドット)」と自主ブランド「S.(エスドット)」だったのですね。なぜそこへ行き着いたのでしょうか。

青木さん:

さまざまな社会問題に思いを巡らせる中で、ふと「買い物を通じた社会貢献ができるオンラインストアはどうか?」というアイディアが思い浮かびました。

そこで、国内外のサスティナブルな商品やブランドを1箇所にまとめてサスティナビリティを身近にするオンラインストアと、使い捨てプラスチックの削減を掲げたブランドを立ち上げました。

自分たちでひとつのプラットフォームを作ったのは、わたし自身がいつも「よい商品を、ひとつの場所で買えたら便利なのに」と思っていたからです。シンプルで魅力があり、かつ実用的な商品を購入できる場所として、「Sustainable.」をオープンしました。

暮らしに役立ち、地球にもやさしいアイテム選び

–オンラインストアを見ていると、全体的に日用品が多い気がしました。商品のセレクトにはどのような基準を設けているのか教えてください。

青木さん:

基本的に、日用品を中心に展開しています。具体的には、洗濯ネットや掃除用たわし、アイフォンケースなどです。素材はオーガニックコットンや木製といった自然由来のものを中心に選び、お客さんの暮らしの中に自然と溶け込み、かつ持続可能な生活をサポートできればいいなという思いを持って選んでいます。

同様に、自社ブランド「S.」でも、竹製の歯ブラシや自然繊維のヴィーガンフロスといった商品を開発しています。

–どれもデザインが洗練されたものが多い印象です。

青木さん:

誰にとっても、おしゃれでかわいいアイテムは目を惹くと思うので、「素敵だなと思って選んだものが社会貢献にもつながっている」というアイテムを理想に掲げています。結果として、持っているだけで自己肯定感が高まるようなおしゃれさと、実用性を兼ね備えたものが集まったオンラインストアになりました。

–もうひとつの印象として、あまり海外ブランドが多くないと感じたのですが、なぜでしょうか?

青木さん:

もちろん、海外ブランドが出している商品はいいものばかりです。

しかし同時に、日本人の文化・習慣には合わないものも多いかなと感じています。例えば都市部で生活する人にとって、いくらプラスチックの代替品といっても持ち運びしづらく重いものは持ち歩きたくないですよね。このように、土地や人に合わせた商品が必要だなと感じるため、自分たちにとってベストなアイテムをセレクト・開発するように心がけています。

–自社ブランド「S.」では、歯ブラシをはじめ、誰にとっても身近な商品が多いですね。

青木さん:

はい。身近なアイテムの方が、社会問題に少しでも当事者意識を持ってもらいやすいかと思い、日用品を作っています。

特に歯ブラシや綿棒は、誰でも使い方が分かるもの。使うことに抵抗が少ないようなアイテムの素材をプラスチックから竹やオーガニックコットンといった素材に変えることを意識しています。

まったく新しい商品に手を出すにはハードルが高いと感じる人もいると思ったからです。そうではなく、誰にとっても環境問題や社会貢献を身近に感じ、解決に向けて実践できるアイテムこそが日用品だと考えています。

数字で見せる「地球へのインパクト」

トップページに表示される数字とアイコン

–「Sustainable.」のトップページには、環境へのインパクトを示す3つのアイコンがありますね。これはあまり日本のウェブサイトでは見られない表現だと感じましたが、あえて設置したのはなぜですか?

青木さん:

3つのアイコンはそれぞれ「植林効果」と「CO2排出量の削減」、「酸素の生成量」をあらわしています。

今の自分たちが取り組んでいることが、どのように地球へのインパクトを与えているのか、お客さんに対して数字で示したかったので設置しました。

インパクトを数値化することで、お客さんの買い物が具体的かつ確実に社会貢献に繋がっているということを表現できると思っています。

–こうした数字に対して、何かお客さんからの反応はありますか?

青木さん:

私たちとしては、数値化によって相手を強く説得したいとは考えていません。あくまでも、数字が環境・社会問題を考えるきっかけになればいいなと思っています。一度でもこの数字を見たことによって、今後の買い物や選択の際に参考にしてもらえたらうれしいです。

大事なのは商品自体に魅力があり、実際に手にとって使ってもらうこと。数字を見て立ち止まる人よりもデザインに惹かれて商品を購入してくれる人が多い気がします。

消耗品だからこそ、法人サービスに最適!

–株式会社スライバルでは、法人向けのサービスにも取り組んでいますね。

青木さん:

「Sustainable.」で取り扱っているアイテムを他社へ卸すほか、企業の社員さんへの福利厚生サービスに使ってもらえる取り組みも行っています。

–具体的にどのような例がありますか?

青木さん:

ある企業では、社員への誕生日プレゼントとして歯ブラシを使ってもらいました。もらう方には、少しサスティナブルな生活に近づけられるメリットがありますし、提供した企業側としてもブランドイメージが上がります。

どちらにとってもWin-Winだと考えているので、今後もこういったサービスを展開していきたいです。

–お菓子などと違って手元に残るものですし、かといって一生持っているものではないので気楽に受け取れますよね。

青木さん:

はい。消耗品という点で、誰にとっても毎日の暮らしの中で気軽に取り入れられます。シンプルなので性別や年齢を問いませんし、もし使わない場合も最後は土に還る素材というのもポイントです。

社会に対して「できること」を企業と一緒に考える

–ほかにも、法人向けに展開している事業はありますか?

青木さん:

中小企業を中心に、SDGsのセミナーやコンサルティング業にも取り組んでいます。

SDGsを意識している企業はたくさんあるのに、事業の中でどう取り入れたらいいのか分からない、というケースをよく耳にするんです。なので、そういった企業向けに、セミナーを開催したり、コンサルティングをしたりする形で、一緒に何ができるかを考えています。

–なぜ中小企業が中心なのでしょうか。

青木さん:

中小企業は、社会の基盤を支える存在でありながら、時代の変化とともに倒産しやすいリスクを抱えています。すでに素晴らしい実績や素材を持っているところも多いので、持続可能な社会をつくるために、今後さらにできることについて、一緒に考えてお伝えしています。

また、自分のバックグラウンドから海外の情報も収集しやすいため、国内外のケーススタディを提示しながら、より持続可能な形で事業をやっていくヒントをお伝えすることもあります。

–実際にコンサルティングやセミナーを受ける企業には、どのようなアドバイスを行うのですか?

青木さん:

現在進行している事例として、研修会場を提供する企業との取り組みがあります。人が集まる研修の場では、ペットボトルや使い捨てアイテムのような、お客様が残していくごみが多いのだそうです。そこで、ごみの量を削減することを目標に一緒に取り組むことになりました。

–具体的には、どのような取り組みをしているのでしょうか。

青木さん:

基本的なごみの分別から始まり、張り紙で注意を呼びかけるといったアイディアも出しました。ごくありふれた対策に思われるかもしれませんが、張り紙によってお客様の注意を惹くことができますし、自分事として意識してもらいやすいので、実はかなり効果があるのです。また、目標数値を設定し、取り組み後の効果測定も大事にしています。

–数字を見れば、行動による効果を目で見て実感できますね。

青木さん:

そうなんです。実際にごみがどれくらい減ったかを知るためには、感覚で増減をはかるのではなく、数値として具体的に何キロ・何円削減できたのかを計る方が分かりやすいし、長期的にごみの削減を目指すために、数値化は重要と考えています。私たちが離れた後も、企業で継続して実践するのに役立ちます。

同じ未来を見据える仲間と、より多様な視点で発展を目指す

–最後に、今後の展望を教えてください。

青木さん:

SDGsは2030年に達成期限を迎えますが、持続可能な社会についてはこれからも考え続けなくてはなりません。

自分たちが展開しているオンラインストアは、買い物という、人々のライフスタイルに関わるものです。今後のメインテーマとしては、衣食住を含めたライフスタイルそのものをデザイン・提案していきたいです。それは今ある商品のような「物」かもしれないし、「物」ではなく情報かもしれません。いずれにしても、より多くの人に向けて、買い物を通した持続可能な社会づくりを考えてもらえる仕組みを構築していきたいです。そのためにも、自分たちのサプライチェーンをさらに透明化していくことにも、平行して取り組みたいと考えています。

また、私が持続可能な社会を考えるきっかけとなった「ジェンダー」についても、もっと多くの人へ発信したいです。人権を守ることは声を上げにくい人を守ることにも繋がるし、人権やジェンダーという視点には自分のルーツがあるとも考えているので、今後は何かしらの形で事業を展開したいです。

こうしたさまざまな目標達成のために、パートナーシップはとても大切だと思っています。自分では成し遂げられないようなことを既にやっている人はたくさんいるので、同じ未来を目指せる仲間をさらに増やしていくことも、重要なテーマのひとつです。

–本日は貴重なお話をありがとうございました!

インタビュー動画

関連リンク

>>株式会社スライバル
>>Sustainable.