#インタビュー

宮城県仙台市|防災を軸とした街づくりとは?SDGsとの連携も

宮城県仙台市 佐藤さん 中島さん インタビュー

佐藤 陽介(写真 左)

仙台市まちづくり政策局防災環境都市推進室 防災環境都市企画担当係長。1980年9月20日、宮城県仙台市生まれ。国家公務員としての勤務を経て、2015年度に仙台市役所入庁。危機管理室(当時)で地域防災計画の改定などを担当した後、2019年度から環境局で地球温暖化対策を担当。2021年度からは現職において、快適で防災力の高い「防災環境都市・仙台」としてのブランド形成の促進に携わる。

中島 敏(写真 右)

仙台市まちづくり政策局政策企画課主事。1985年5月8日、宮城県仙台市生まれ。大学卒業後、民間企業での勤務を経て2013年10月に仙台市役所に入庁。区役所にて戸籍事務を担当した後、水道局で経営計画の策定等を担当。2019年より現在のまちづくり政策局政策企画課で勤務し、2021年よりSDGsに関する業務に携わる。

introduction

1978年に起きた宮城県沖地震や2011年の東日本大震災の教訓をもとに、防災や復興事業に力を注ぎ世界から一目を置かれる都市・仙台市。2012年には、国連防災機関(UNDRR)が実施する「世界防災キャンペーン『災害に強い都市の構築』」において、ロール・モデル(模範)都市に認定されました。

今回の取材では、防災に関する取り組みやSDGsとの連携、さらに今後の展望などについてお伺いします。

過去の教訓を活かす、防災を「軸」とした街づくり

–仙台市はどのような街ですか?

中島さん:

宮城県の中央部に位置する、人口109万人の東北唯一の政令指定都市です。「杜の都(もりのみやこ)」と呼ばれ、都市と豊かな自然が調和した街として全国的に知られています。このような土地柄に加え、過去2回の震災の経験から、「防災」という視点を加えた街づくりを推進しているところが特徴だといえます。

–具体的にどのような指針で取り組みをおこなっているのですか?

佐藤さん:

「防災環境都市・仙台」をテーマに、「まちづくり・ひとづくり・伝承」の3本柱で、安心安全で暮らしやすい都市・仙台の実現を目指しています。

–それぞれどういった取り組みなのでしょうか?

佐藤さん:

まずはインフラやエネルギー供給の強靭性を高めるまちづくりという観点です。沿岸部に海岸堤防を設置したり、道路と堤防の役割を同時に果たすかさ上げ道路を整備しています。

人づくりに関しては、地域全体での防災意識を高める取り組みを行っています。その一つとして、学校での防災教育があります。小学校の低学年用、高学年用、中学生用など発達段階に合わせた「防災教育副読本」を独自で制作し、全児童に配布しています。地域の防災マップをつくって街歩きをしたり、地域の防災組織の方と一緒に危ない場所を見て回るなど体験型学習にも力を入れています。

–小さいころから防災意識を持つことは非常に大切ですね。

佐藤さん:

仙台市が「人づくり」などに力を入れるようになったきっかけは、1978年に起きた「宮城県沖地震」に遡ります。マグニチュード7.4を記録し、死者16人、住家の全半壊が4,385戸など甚大な被害が出ました。この時の経験を教訓とし、全国に先駆けて「防災都市宣言」を行い、様々な地震防災対策を講じつつ、防災意識の啓発なども進めてきました。

–伝承に関してはいかがですか?

佐藤さん:

未来を担う世代や世界に向けた経験と教訓の伝承です。

震災当時、津波で校舎2階まで浸水した荒浜小学校を震災遺構として整備し、小学校児童などの見学を受け入れたり、仙台市を訪れた人々に経験や教訓をお伝えするといった取り組みをしています。

仙台防災枠組をきっかけに、防災環境都市としての取り組みやSDGsとの連携が始まった

–防災環境都市として、明確な取り組みを行っていることがわかりました。仙台市は、震災の2ヵ月後に「国連防災世界会議」の誘致を発表しています。

佐藤さん:

震災の経験と被災地の再生を世界に発信するためです。2013年の国連総会にて仙台での開催が決まり、2015年の3月に第3回国連防災世界会議が開催されました。そこで、世界の防災・減災に向けた枠組みである「仙台防災枠組2015-2030」が採択されました。

–この「仙台防災枠組2015-2030」をきっかけに、防災環境都市・仙台の取り組みが始まったのですね。SDGsとの関連はいかがでしょうか?

中島さん:

本格的にSDGsに取り組み始めたのは、2019年です。それまで行ってきたまちづくりにSDGsのエッセンスを取り入れることで、さらに取り組みを加速させられると考えました。当時、まちづくりの指針となる「仙台市基本計画」を策定中だったので、そこにどのようにSDGsを盛り込めるかを考えました。その後、2020年3月に仙台市SDGs推進方針を策定し、7月にはSDGs未来都市に選定されました。

–基本計画でも防災環境都市づくりが重要なテーマの一つになったのですね。

佐藤さん:

はい。SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」や目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標13「気候変動に具体的な対策を」は仙台防災枠組と近しいものがあります。

–SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」はいかがでしょうか?

佐藤さん:

東日本大震災で、古くからあった海岸近くの松林がほとんど失われるなど、仙台の豊かな自然への被害も甚大でした。そこで、地域や企業の方と共に昔の景観を取り戻しつつ守っていく取り組み「ふるさとの杜再生プロジェクト」を実施しています。あらゆる方法を用いて、持続可能な形を積み重ねていこうと工夫しています。

「仙台防災未来フォーラム」で、防災を自分事化してもらいたい

–仙台市さんは、過去の経験や教訓を活かしながら新たな未来に向けた取り組みをされているということが分かりました。防災とSDGsを掛け合わせたイベントや取り組みがあれば教えてください。

佐藤さん:

2016年以降毎年、「仙台防災未来フォーラム」というイベントをおこなっています。これは「防災」と「環境」をテーマにしたもので、仙台市の未来を担う若者や地域の方と一緒に、防災に対する取り組みを盛り上げていきたいと考えています。

–誰でも参加できるのでしょうか?

佐藤さん:

はい、仙台市以外で暮らす方も参加いただけます。今年は90団体近くにご参加いただく予定で、兵庫の学生ボランティアの方もいらっしゃいます。若い方にも気軽に足を運んでいただけるような企画も用意しています。

–どのような企画ですか?

佐藤さん:

市内の専門学校とコラボレーションし、地球環境や人、社会に対する配慮、また防災の要素を取り入れた「エシカルサスティナブルファッションショー」という企画があります。また、仙台防災枠組のゴールの年でもある2030年に向けて防災環境都市としてどのような都市になっていると良いか、というテーマでのワークショップも予定しています。

–お子様向けの企画はありますか?

<段ボールを使った工作体験:写真は2021年開催時>

佐藤さん:

キャラクターを交えて楽しみながら防災を学べるミュージカルショーや、防災とサイエンスを掛け合わせた「防災エンスショー」を企画しています。また段ボールを使った、避難所で活用できるパーテーションやベッドなど、防災と掛け合わせた工作体験をおこなう予定です。

<サイエンスショー:写真は2021年開催時>

仙台防災未来フォーラムでは、子どもから大人まで、幅広い世代に防災意識を高めていただける企画を用意しています。「仙台防災未来フォーラム2022」は、3月5日(土)に開催予定です。

>>仙台防災未来フォーラム2022の詳細はこちらから

仙台から広げる「安心して暮らせるまちづくり」

–仙台防災未来フォーラムを実施してからの変化などあれば、お教えください。

佐藤さん:

昨年は震災から10年という節目でしたので大きなイベントを行いました。また防災や環境、SDGsの要素を組み合わせ、幅広いテーマでの企画を実施してきたこともあり、今年の参加団体数は過去最多になりました。じわじわと広がってきていることを実感し、嬉しい限りです。活動が皆様の行動のきっかけになればと思います。

–最後に今後の展望をお聞かせください。

佐藤さん:

仙台防災未来フォーラムなどを通し、市民の皆様にも「仙台防災枠組」の理念が徐々に浸透しつつあります。今後は日本全国に、仙台市がいかに「快適で安心、住みやすい場所」なのかを伝えていきたいです。今はコロナ禍で移動が難しいですが、まちづくり・人づくり・伝承の3本柱をアップグレードさせつつ、プロモーションの要素を強めていきたいと思っております。

–ありがとうございました。

取材 大越 / 執筆 かりんとう

インタビュー動画

関連リンク

>>宮城県仙台市ホームページ

>>「仙台防災枠組」推進に向けた取り組み

>>仙台市SDGs未来都市計画(PDF)