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立命館大学|地域と一体となって取り組む衣笠キャンパスのSDGs

立命館大学 大場さん・櫻井さん・田中さんインタビュー

大場 茂生

1989年3月立命館大学法学部卒業。同年4月小野薬品工業株式会社に就職。1998年4月から学校法人立命館に入職。研究部、社会連携部、総合企画部等を経て、2017年4月から総務部衣笠キャンパス地域連携課。その他1995年から2006年まで体育会準硬式野球部監督、2012年からは体育会硬式野球部副部長。

櫻井 稔也

1987立命館大学に入職。それ以来、学部事務室等の教学畑の職場を中心に経験を積んだ。
2014年から現在の課に異動。

田中 真也

金融機関での勤務を経て、1999年1月に学校法人立命館に就職。東京オフィス、一貫教育部、人事部などでの勤務を経て、2020年6月から総務部衣笠キャンパス地域連携課に勤務。

introduction

全国各地、世界各地から約33,000人の学生が集まる立命館大学。

学園全体として2030年に向け「挑戦をもっと自由に」というビジョンを掲げ、多様な学生たちが多岐に渡る分野で最先端の研究を行っています。

SDGsに関しても様々な団体が活動しており、中でも積極的に取り組みを進めているのが衣笠キャンパス。地域と一体となってSDGsに関する取り組みを進めてきた結果、徐々に関係を築くことができ近所の方から学生への注意・苦情等のネガティブな連絡が減少したと言います。キャンパス内で完結させることなく地域と協働するSDGsをどのように進めているのか、SDGsでいわゆるクレームの連絡が減少したのはなぜなのか。今回は、衣笠キャンパス地域連携課の大場さん・櫻井さん・田中さんにお話を伺いました。

キャンパス内だけで終わらせないのが立命館大学

–立命館大学のSDGsへの取り組みについて教えて下さい。

大場さん:

私達は「地域に在する大学のキャンパス」として、地域と一体になって進めるSDGs活動を目指してきました。キャンパス内だけで活動を完結させるのではなく、活動拠点を地域の中につくることで、地域の方々と積極的に関わろうと考えてきました。

–具体的には、どのような活動をされてきましたか。

大場さん:

衣笠キャンパス内の落ち葉を再利用する活動がきっかけで、SDGsの活動を本格的に始めるようになりました。活動はどんどん広がっています。大学・企業・地域が一丸となって進めた「嵐電沿線フジバカマプロジェクト」も心に残っています。

–どのような取り組みなのか、ぜひ詳しく教えてください。

はじまりは、学生の「もったいない」という言葉

–まず、キャンパス内の落ち葉を再利用する取り組みについて教えてください。

大場さん:

私達は、以前からキャンパス内のごみの分別と減量に取り組んできましたが、ごみを減らすのにも限界を感じていました。

田中さん:

ちょうどその頃、キャンパス内の落ち葉に着目した学生がいました。

清掃員の方が落ち葉を集めてごみ袋に入れる姿を何度も見て、落ち葉を捨ててしまうのはもったいない!と思ったそうです。学内のどこに訴えたらいいか分からず、いろいろな課に意見を伝えて回って、私達地域連携課まで来た際に「もったいない」の声を櫻井が受け止めました。

櫻井さん:

衣笠キャンパスは山のふもとにあり、落ち葉が非常に多いんです。

私達のごみを減らしたい思いと、学生の落ち葉を捨てるのはもったいないという思いが合致し、活動がスタート。落ち葉で腐葉土をつくることになりました。

大場さん:

やってみて分かったのですが、クヌギ・コナラ・ケヤキなど、キャンパス内にあるのはどれも腐葉土に向いている葉ばかりだったんですよ。

–これまで捨てていた落ち葉が、みごとに有効活用されたんですね。

遊休地を活かし地域を巻き込む

–できた腐葉土はどうしているのですか?

大場さん:

キャンパスの近くに遊休地があったので、そこを「きぬがさ農園」として整備し、野菜をつくることにしました。腐葉土は、その農園で活用しています。

田中さん:

春と秋の年2回植え付けをして、野菜や花を育てています。毎週金曜日に学生と地域の方がお世話をしているのですが、植えるものもその際に相談して決めています。

知っている方にお声掛けをしていき、地域の方々が徐々に口コミで集まってくださるようになりました。

最初は「落ち葉がもったいない」と言った学生と、その友人の3人で始まったプロジェクトですが、今では毎週地域の方々約10名、学生と職員約20名が参加してくださっています。

櫻井さん:

コロナ禍で学生がキャンパスに来られない時期も、地域の皆さんが協力してくださって農園の運営が軌道にのりました。

なかなか外出できない状況でしたから、高齢の方は特に、週に1回の楽しみになっていたようでした。

大場さん:

農作業は、人に合わせた活躍の場があるのがいいですね。

学生は、力仕事はできるけれど素人です。そこに農家出身の地域の方が経験知を提供してくださったり、力仕事ができないお年寄りが、草引きなどをしてくださっています。

野菜ができる一連の流れの中で、自分のできることを生かして役割を担えます。それで、できた美味しい野菜を一緒に食べられる。最高です。

田中さん:

収穫した野菜は、農園に携わっている学生と地域の方だけで消費するるのではなく、農園に携わっていない学生や教職員にも「きぬがさ農園」で採れた地産地消の野菜を食べてもらうことを通じて、SDGsを身近に感じてもらえるようにするために生活協同組合の食堂でメニューとして提供してもらっています。

–以前は捨てていた落ち葉が、美味しい野菜になって皆さんの口に入るのがすばらしいですね!

2,000km離れた台湾から蝶がきた

–続いて、「嵐電沿線フジバカマプロジェクト」について教えてください。

大場さん:

「嵐電沿線フジバカマプロジェクト」は京都府の絶滅寸前種であるフジバカマという花の保全を目指したプロジェクトで、2020年7月からスタートしました。

夏の終わりから秋の始めにかけてきれいな花を咲かせるフジバカマは、古くから日本人に愛されてきました。しかし近年では自生に適した環境が少なくなり、絶滅寸前種に指定されるほど減少してしまったんです。そこで私達にも何かできることはないかと始めた活動です。

フジバカマにはアサギマダラという渡り蝶が好んで訪れます。みんなで協力してフジバカマを増やし、いつか学生や地域の方たちと一緒に、日本と台湾約2,000kmを行き来するアサギマダラを衣笠キャンパスの中で見られたらと思っていたんです。

–素敵ですね! どのように進めたのですか?

大場さん:

はじめは、公益財団法人京都市都市緑化協会より提供していただいた苗を、職員が育てていました。

その後2021年からは、職員と学生で育てた花を京福電気鉄道(嵐電)の駅に設置してもらい、駅緑化につなげる活動を始めました。これはもともと2020年3月に本学と京福電気鉄道が、地域社会の発展・人材育成への貢献を目指して連携・協力協定を結んでいたことで実現したものです。

–大学・地域の方・企業が三位一体となって進めているんですね。ちなみにアサギマダラはきたのでしょうか?

大場さん:

2020年の初年度は50株と花が少なかったからか、蝶はきませんでした。

ただ、地域の団体(嵐電沿線協働緑化プロジェクト、源氏藤袴会、深草藤袴の会)にも協力してもらい、2021年7月には925株まで増えました。夏休み中も学生たちが交代で水やりするなど地道に活動した結果、奇跡が起きたんです。

9月下旬になって上空を飛んでいたアサギマダラが、本校のフジバカマを見つけたようで急降下してきて。そこから頻繁にアサギマダラが訪れるようになりました。

–みなさんの努力が実ったんですね!

活動の輪を広げた学生のアイディア

大場さん:

嵐電の駅にも運ぶなどして皆さんと1か月ほど花を楽しんだあともこのプロジェクトは続きました。

学生の希望で葉を利用した匂い袋と、入浴剤を作ることになったんです。

匂い袋の袋は地域に住む梅染師の方がボランティアで草木染を指導してくださり、袋も中身もフジバカマを使ったものが完成しました。

–京都ならではの地域の方とのご縁ですね。

大場さん:

その梅染師・山本晃さんが「みんなで大事にしてきたフジバカマの花は終わったけれど、染物をすることで永遠の命になるんだ」と教えてくださいました。染料を取り終えたあとの葉も、捨てるのではなく土に返すようにと。活動を通して、私達も学生も、SDGsの真髄を学んだ気がします。

SDGsの活動で、学生・教職員・地域みんなが変化していく

–地域の方とも密に関わりながら取り組みを進めていることが分かりました。

活動してきて変化を感じていることはありますか?

櫻井さん:

地域への貢献という点では、交流を通した福祉の向上を感じています。

例えば「きぬがさ農園」に来てくださるおばあさんは、はじめのうちは杖がないと歩けない状態だったのに、今では杖を置き忘れたまま帰ろうとしてしまうくらい元気になられました。

田中さん:

学生たちも、そのおばあさんの家でクリスマスやお正月を祝うなど、交流を楽しんでいるようです。

始めは地域の方に学校に来ていただいていましたが、今は学生が地域の中に入り込めるようになり、本当の意味で地域交流ができていると感じます。

–学生の方も変わっていったのですね。

大場さん:

そうですね。交流することで地域への愛着が沸いて、ふるまいも変わっていったように思います。農園やフジバカマの活動が交流のきっかけとなって、地域の方たちから「大学だけでは学べないこと」を教えていただけたことも財産になったのではないでしょうか。

–梅染師の方のお話を聞けるなど、貴重な経験ですよね。

櫻井さん:

さらに、大学全体の価値観も変わってきています。

以前なら植物は造園業者に、ごみなら清掃業者に委託すればいいという感じでした。それが、自分ごと化されてきていて、職員自身が手を動かして、汗をかくようになっています。新しい文化がキャンパス内で市民権を得る途上にあるように思います。

地域と共に歩む大学として、さらに影響の輪を広げたい

–衣笠キャンパスとしての今後の展望をお聞かせください。

大場さん:

これまでの取り組みをさらに進めたいですね。腐葉土活用のプロジェクトと合わせて、農園で使うべく食品廃棄物のたい肥化に挑戦中です。これまで生ごみとして捨てていた食品廃棄物を削減していきたいと考えています。

フジバカマのプロジェクトは、衣笠キャンパスのみでなく、広く連携して京都の町全体で協力して進めたいです。地域一丸となって京都のまちづくりをしていけたら、きっと良い町になるはずです。

田中さん:

今後も実践を進めていきます。「理論だけじゃなく、実践・実装せなあかん」というのが大場の口癖なので。

継続しなければ意味がない

大場さん:

私達は大学の職員なので、地域連携を進めて、学生たちが教育研究活動を自由にできるフィールドをつくりたいですね。

赴任した当時、近くのお寺のご住職に「ここに住んでいると思って働きなさい」と言われたのが忘れられません。そう思うと近隣に迷惑はかけられないし、自分たちの強みを地域のために活かさなければ。「地域に存する大学のキャンパス」として活動を広めていくのがSDGsにもつながると思います。

田中さん:

そういう思いでいると、もしキャンパスの近くで火事があったら自分たちの問題として協力しますよね。形だけでなく、有事のときには自然と連携できる関係をつくりたいですね。

櫻井さん:

今行っている取り組みは体力勝負なところもありますが、続けなければ意味がないですから。持続可能な方法で、これからずっと続けていきたいです。

大場さん:

農園でみんなでつくったものをたくさんの人が食べて「おいしい」と言ってくれたり、良い関係が広まったり。そういう快感があるから続けられますね。

SDGsは、なんだか心地良いですよ。

–本当の意味での地域連携を学ぶことができました。衣笠キャンパスの心地良くて持続可能なSDGsの取り組み、今後も注目しています。今回はありがとうございました。

インタビュー動画

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