#インタビュー

株式会社トヨコン|2030年に向けてのトランスフォーム。SDGsへの取り組みで物流業界の未来を切り拓く 

株式会社トヨコン 明石耕作社長 インタビュー

明石 耕作

株式会社トヨコン 代表取締役社長、ナゴヤ芯材工業株式会社 代表取締役社長、トヨコンロジスティクス株式会社 取締役。

愛知県岡崎市出身。創業者で父である明石忠男の意思を継ぎ2003年に社長就任。

2014年に設立50周年を迎えた際には、グループ会社の統合など新トヨコングループとして新たにスタート。

2021年に「トランスフォームトヨコン」を2030年ビジョンとして掲げ、DX推進・SDGs推進・地域社会との連携の3本柱をおいて変革に取り組むことに注力している。

introduction

オンラインショッピングなどで届く宅配便の包みは、開けて商品を取り出せばほとんどがゴミになってしまいます。「『自分達はゴミを売っているのではないか』と思い悩んだこともある」と話してくださったのは、包装資材から物流事業まで総合的に手がける株式会社トヨコンの明石社長です。

環境に配慮することを重要視する時代になり、「物流業界は黒子のような立場だと思っていた自分達も、SDGsを意識した商品を扱うことで、明るい未来に貢献できると確信している」と言います。

今回は株式会社トヨコンの明石社長に、物流業界の中で果敢にSDGsに取り組む苦労や努力について伺いました。

新たな事業に挑戦し続け、物流業界に新しい価値を作る

–最初に、株式会社トヨコンの事業内容をお聞かせください。

明石社長:

株式会社トヨコンは愛知県豊川市に本社を置く総合物流会社です。愛知、関東を中心に営業拠点を置き、愛知県内に数千坪の倉庫スペースを有しています。

事業内容は包装資材及び物流機器販売、包装設計、システム開発、倉庫管理業務、梱包業務、組み立て事業、またグループ会社にて百台ほどの自社トラックの操業なども手掛ける総合物流サービス業です。

1963年の創業当時は、大手精密機器メーカー専用の梱包を請け負う会社でした。しかしその後はバブル崩壊での不況、アメリカの同時多発テロ事件などの影響、さらにメーカーは海外との取引に力を入れていましたので、創業当初からのお客様がいなくなるという危機感がありました。そこで新しい事業を拡充し、物流のノウハウを販売するなど新規顧客の開拓をしてきました。

現在は物流の枠にとどまらず、周辺サービスまで事業展開を考えています。

–SDGsへの取り組みを本格的に始めた経緯と現状をお聞かせください。

明石社長:

物流業界が環境問題の解決に取り組むのは、現在の最大のミッションだと思います。

幣社は、創業後早い時期から省資源を考えていました。お客様からの「梱包資材や包装資材の処理などにかかる費用を抑えたい」という要望も多くありましたから、それにお応えするために環境負荷の少ない物を使いたいと考えてきました。

私達が扱うのは物流に関わる商品で、目的地に届けばいらなくなるもの。エンドユーザーに無事にお届けするのが最大の使命です。しかし、梱包資材は環境負荷がとても大きいと言われ始め、「ひょっとしたら自分達はゴミを売っているんじゃないか」と思う時期もありました。

そんな中、今から5年くらい前ではなかったでしょうか?大手電機メーカーから「欧州向けの包装材はプラスチックを使わずに作ってほしい」という要望がありました。その頃欧州ではすでに環境対策が始まっていたんです。

プラスチックは値段も安く、軽くて扱いやすい素材商品です。それに代わるものを探すのは相当大変そうだなと思いながらも、そこからプラスチックに代わる素材を探し始めました。

5年くらい前だとSDGsという言葉はあまり聞き馴染みがない頃だったと思いますが、その商品開発がSDGsに繋がる最初の取り組みでした。

SDGsが社会で認知される前、お客様の一番の関心ごとはやはり「使用済みの梱包材などの回収・廃棄のコスト」でした。環境にやさしくても高い費用では使ってもらえないという時代でもありました。

しかし現在は、地球環境へ配慮した商品でないとエンドユーザーから認めてもらえない時代だということをお客様も認識されています。そのため、コストだけでなく環境への配慮も兼ね備えた商品を提供するようになってきています。

会社全体としても、2020年8月に組織改変を行い「新トヨコングループ」として新たなスタートを切りました。その時に、今後10年で弊社がどう変わっていきたいかを示す「2030年ビジョン」を作りました。

その中の「3ヵ年方針」には、「SDGs」・「DX(デジタルトランスフォーメーション)」・「地域社会への貢献」の3つのビジョンを柱として立てています。

この3本柱に基づいて、SDGsにつながる商品を作ったり、他社と協業したり、地域にSDGsを広めたりする取り組みに注力しています。

さらに、2021年8月には「トヨコンSDGs宣言」を行いました。

不必要になってしまう梱包材などをリサイクルできるものにする、素材を変えるなど、できる限りのことをするのが現在の課題だと考えています。

環境に配慮した素材を使いつつ、最大の使命はお客様の商品を守り・届けること

–ではSDGsに取り組むにあたり、御社の強みはどんなところだと思いますか。

明石社長:

物流業界は輸送業を主体としている企業が多いかと思いますが、弊社は包装・梱包から始まっています。ですから商品に合わせて梱包材の素材を選び設計する設計部門があり、お客様の物流の課題を解決するためのノウハウを持っています。

また、弊社は段ボールメーカーでもプラスチックメーカーでもありませんから、多くの仕入れ先からのいろいろな素材を自由に組み合わせて使えますし、どんな新素材が開発されたかなどの有益な最新情報も各取引先から入ってきます。

エンドユーザーが商品を購入したときに最初に手にするのは包装材です。それが環境に配慮されたものであったら、弊社のお客様のブランドイメージを上げることもできます。仕入れ先の企業・弊社・お客様・エンドユーザー全体とつながり、SDGsに貢献できていると考えています。

–たくさんの取引先とのネットワークがあるとのことですが、各社の方々と一緒に仕事をするうえで大事にされていることはなんでしょうか。

明石社長:

現在約数百社とのネットワークがあります。

業種は様々なので、要望も実にいろいろなものがあり、扱っているものも多種多様です。SDGsに対する取り組み状況も様々です。

その中で、とにかくいちばん大切なのはお客様が作っている商品なんです。お客様にとっては宝物も同然ですから、それを輸送するうえで、環境に良いからと言って商品が壊れてしまうような梱包材では意味がありません。

環境に配慮でき、大切なものをきちんと守って届けられるというのが大事なんですが、とても難しいところでもあります。

それ故に、お客様や取引先の企業とのコミュニケーションは大切にしています。

お客様のご要望に応えられるように、先にいるエンドユーザーのことまでいかに細かく話を聞けるかがポイントです。そのためにお客様専任のスタッフがあらゆる業務についておうかがいしています。

それぞれのお客様の事情に合わせてどれだけ寄り添った提案ができるか。その提案をできる限り満足のいく形で実現するために、仕入れ先の企業とどれだけ思いを共有できるかが大事だと思います。

もちろん、全てのご希望を叶えることができない場合もありますが、なるべくお客様のご要望を叶えるため必死にやりますので、関わっている企業も「こんな新素材が出ましたよ」などと協力をしてくれる機運が高まってきたなと感じています。

「物流業界だからこそできるもの」を信じて取り組んで来たからこその今、そして未来

–では現在扱われている、注目すべきSDGs商品をご紹介いただけますか。

明石社長:

弊社が登録商標を取得している商品に「ワッフルパッド」という梱包材があります。この商品に現在一番力を入れています。

《ワッフルパッド》

「ワッフルパッド」は梱包するときに使う衝撃緩衝材で、電気製品などを買うと箱の中に商品を守るために入っている梱包材です。もともとは発泡プラスチックなどの石油由来のもので作られることが多かったんですが、それをダンボール素材で作ったものが「ワッフルパッド」です。

プラスチック製のものに比べて環境への負荷がとても少ないのが特徴で、ワッフルのように凸凹しているというところから命名しました。

お客様からも緩衝材を改善してほしいという要望も多くあり、幣社で開発しました。プラスチック製品の規制の厳しいヨーロッパや、海外向けの商品などにも使われています。

「ワッフルパッド」は、お客様の商品の形や大きさなどを細かくお聞きして弊社で企画・設計します。そしてお客様との細かい調整を経て製造業者に規格通りに作ってもらいますので、その形はお客様の商品によって本当に様々なんです。

例えば、テレビの形は四角ではないですが、輸送するときには箱を並べたり、積み上げたりもしますから四角い箱を使います。

その箱に入れて輸送してもテレビが壊れず、安全に輸送できるような緩衝材をデザイン・設計するには包装設計という技術が必要です。

また集合梱包と言って、ひとつの箱に商品を複数個まとめて入れるようなものもあります。

このような条件を満たしたうえで、材料はできるだけ減らし、コストも抑えながら、なんとかご要望にお応えしようと日々頑張っています。

いちばん苦労するのは、「緩衝材にはクリアしなければならない規格があること」です。発泡プラスチック素材は反発力が高く、計算である程度の緩衝力が計算できるんです。

しかしダンボールは一度つぶれてしまうと元に戻らないので計算も非常に難しくなります。そこをどうクリアするかが難しいところです。

エンジニア達は、何度も複雑な計算をしたり、落下実験をしたりして、設計に取り組みますが、ダンボールは生き物なので、湿気が多いところなど環境次第で全然別の反応になるんです。

船で赤道直下を通らないといけないこともありますから、本当に大変ですね。

《落下試験の様子》

しかし、これからの時代はますます脱プラスチックに拍車がかかると考えています。

先日、ある大手総合電機メーカーが、プラスチックの包装材料を全廃すると宣言したんです。いきなり全廃は無理ですから、小さな商品から徐々に取り組んでいくそうです。

現在は、大型の商品向けの包装材はコストなどの面からもまだプラスチック素材が優位ですが、これからはどんどん環境に配慮したものに取って代わっていくと考えています。

それを思うと、今まで努力してきたことが報われる時代になったなと感じます。

–「ワッフルパッド」はたくさんの可能性を秘めた商品なのですね。それ以外にも力を入れている商品はありますか。

明石社長:

はい。省人化商品にも力を入れています。

省人化商品は、人が行う単純作業や力仕事を代わりにしてくれる工業用ロボットです。

これからの日本は少子高齢化が進み、労働者人口が減っていきます。お客様の企業でも人手不足が深刻になってきていると聞きます。

弊社では、お客様企業での仕事や作業を伺い、取引先メーカーの扱うロボットを使ってどのように省人化できるかご提案させていただき、メーカーとお客様の橋渡しをさせていただいています。

最近特に、AGVという搬送機器のニーズが高まっています。

今まで工場などでは重い荷物を人が運んでいましたが、AGVは自動で代わりに運んでくれるんです。

これは、省人化だけでなく省力化にもなりますので、例えば重い物を扱う現場でも女性が働きやすくなることにつながります。まさにSDGs商品です。

《AGV稼働の様子》

この先のお客様・商品の変化を見据え、社員の意識改革にも注力

–社員の方々のSDGsに対する意識や取り組みなどはどのように変わりましたか。

明石社長:

弊社は、豊橋市のSDGsパートナーに登録していますが、先日は小学校で出前授業をしました。

弊社のSDGsの取り組みを地元の小学生に知ってもらうための授業でした。

子どもたちには、「自分達の家に届いた段ボールは開けた後は捨ててしまうけれど、その段ボールを再利用できたらどうだろう?」という事を考えてもらいました。今新しく取り組んでいる「トランスフォーム  段ボール(トラダン※商標登録出願中)」というものを実際に見てもらって授業をしました。

《豊橋市立二川小学校での出前授業》

このような対外的な活動もしていますし、社内では女性中心の取り組みもしています。

SDGsの取り組みの一つとして社員がいろいろなプロジェクトに参加していますが、その中に「女性だけのワークショップの開催」があります。

現在弊社では20代の社員の半数は女性ですので、育児と両立しながら働く方がどんどん増えています。このワークショップでは、キャリア・働き甲斐・会社の制度などいろいろな話題を女性社員同士で議論しているんです。

このような取り組みを続けてきたことで、女性の活躍促進に向け、ワーク・ライフ・バランスの推進や働きながら育児・介護ができる環境づくりなどの取組を行っている企業が受けられる「あいち女性輝きカンパニー」の認定を受けました。

明石社長:

以前は社員の中でも「SDGsなんて自分たちの事業には関係ない」という雰囲気がありましたが、若い社員中心に行政と関わりをもったり、SDGsカードゲームの研修を受けたりと積極的に取り組みをする中で、一体感が生まれてきたなと感じています。

私も、これからの時代は扱う商品も変わっていくし、お客様も変わっていくと社員に伝えています。

そして今では「SDGsは自分たちの仕事にも大いに関係している」と考えてくれるようになったことを、とても嬉しく思っています。

《社内研修 SDGsカードゲームの様子》

2030年にはビジョン通りの会社へ!お客様・社員・社会と共に歩み、拓く!

–それでは最後に、これからの展望をお聞かせください。

明石社長:

今まで物流サービス業は、世の中の中心ではなくサポーターのような黒子の役割だと思っていました。しかし今、SDGsの取り組みによって社会課題解決の役に立てるとわかってきました。

弊社の経営理念は「価値の共創」で、お客様・社員・社会と共に価値を作っていくことを目指しています。SDGsの取り組みを続けていくことで、この理念に合致する会社を作ることができると確信しています。そのくらい価値のある取り組みだと感じていますし、今後も注力していきたいです。

2030年ビジョンの通り、会社を”チェンジ”ではなく”トランスフォーム”させることも可能だと思います。

”チェンジ”は、夏服を冬服に変えるぐらいの変化ですが、”トランスフォーム”は幼虫がさなぎになりカブトムシになるくらいの変容です。大変なことですが、SDGsの取り組みがその原動力になり、社会貢献ができ、社員のモチベーションやエンゲージメント向上にも繋がっていくのではないかと期待しています。

これからは、若い世代のSDGsの取り組みなどに関心のある方々にも入社していただき、社員一丸となり盛り上げて頑張っていきたいと思っています。

–今後の変革が楽しみですね!本日はありがとうございました。

関連リンク

株式会社トヨコン:https://www.toyocongroup.co.jp/