#インタビュー

東陽電気工事株式会社|親子3代で「電気」を守り、みんなで地球の未来を考えて成長する会社

東陽電気工事株式会社 代表取締役社長 石川さん インタビュー

石川 格子

昭和58年 福島県白河市生まれ

平成18年 東洋英和女学院大学 卒

平成18年~22年 東日本学院 英語講師

平成22年 東陽電気工事株式会社 入社

平成25年 代表取締役社長 就任

平成27年 名古屋商科大学 大学院 修了(MBA)
現在に至る

introduction

昭和8年の創業から、欠かすことのできないインフラである「電気」を守り続ける東陽電気工事株式会社。半世紀にわたり、地域だけでなく関東近郊の「電気」まで福島県からサポートしています。

そんな東陽電気工事株式会社が現在直面している課題の一つは、若年層の人口減少による若手技術者不足。今後も安定したインフラを届けられるよう、様々な施策を通し立ち向かっています。

今回は、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を中心に持続可能な社会をめざす、東陽電気工事株式会社の代表取締役社長である石川さんにお話を伺いました。

欠かすことのできないインフラである「電気」を守り続ける

ーまずは、会社の紹介をお願いします。

石川さん:

東陽電気工事は、電気工事を請け負う会社で、昭和の初期に祖父が立ち上げました。電気の普及をきっかけに、関東を中心に発電所事業が次々と始まったタイミングで、その中の1つである東光電気工事株式会社が白河に出張所を開設しました。この白河出張所の所長が私の祖父だったんです。その後父の代で、東陽電気工事株式会社へと社名を変更し、この会社を継続させるため平成25年から、孫である私が代表を引き継ぎました。

現在の事業は主に、電気工事や電気通信関連、消防設備工事などです。日々の業務は、工場などの大きな施設の請け負いや、学校や公共施設の維持修繕を担当したりと様々です。新築の段階からサポートにはいることもありますし、信号機関連や太陽光発電システムの設置といった特殊な工事に関するものもありますね。

ー歴史のある会社なのですね。その間には東日本大震災もありました。何か前後での変化は感じられていますか?

石川さん:

震災直後は、インフラである電気関連のお仕事の需要が高まりました。当社は永続企業を目指しているため、浮き沈みのある大規模な工事は請け負わない方針でした。しかし、原子力関係や工場の修復など、復旧作業には人手が必要ですので、そのような仕事を受注する機会も増え、あわただしく日々が過ぎていったことを覚えています。電気のある幸せな生活を送っていただくため、みんなで協力して活動しました。

震災後の変化としては、蓄電システムの普及です。今では大企業はもちろん、個人のご家庭でも蓄電システムを利用しているので、当社としても普及活動には力を入れています。

ほかにも震災をきっかけに、子どもたちが安心して集まれる公園や広場の整備ボランティアを始めました。当時、放射線の問題により外で遊ぶ子どもが激減し、その影響で震災の3〜4年後に行われた国勢調査で福島県は「メタボリック症候群の子どもの数」が、日本一になってしまったんです。これは深刻な問題だと感じました。

当社でもすぐにできることはないかと考え、公園や広場の草刈りやゴミ拾いなどの整備をするに至ったんです。

深刻な技術者不足の解消を目指して

ーここからはSDGsへの取り組みについて伺います。具体的にどのような取り組みを行っていますか?

石川さん:

目標4「質の高い教育をみんなに」に力を入れて取り組んでいます。

近年の子どもたちは多様な職業に触れる機会が少なく、世の中にどのような仕事があるのか気付きづらいといった現状があると思います。あって当たり前と思われがちな建設・電気工事といったインフラ業界はこの影響を顕著に受けており、若手技術者不足が深刻な課題となっています。

この状況を打破する一つの方法として、私たちのほうから「こんな職業があるよ」「本物に触れてみよう」とアプローチすることが大切なのではと考えています。

ちょうどその時、地域の中学校から職業講話のお話をいただきました。私たちの職業について具体的なイメージを持っていただけるよう、分かりやすく伝えることを意識して活動しています。

さらに、工業高校への資格取得支援も行っています。課外授業にお伺いし、先生と一緒に個々に対応しながらポイントを伝えたり、やり方を教えたりといった活動です。

最近になって少しずつこの取り組みの成果が見えるようになってきました。来年度は、サポートをしてきた学生の中の4名が当社に入社する予定です。このように職業講話や工業高校への支援を通して技術者が誕生することは、とてもうれしく感じます。

「本物に触れる」という点については、当社敷地内に電気工事の実地訓練やOJT研修を行うための2階建研修棟の建設が挙げられます。

施設の中には、信号機や電柱といった公共の設備を凝縮したようなものを設け、より実践的な勉強ができるようにしています。

これは業界でもめずらしい施設のため、同業他社の研修にもご利用いただいています。他社の新入社員の研修で、当社の社員がサポートしながら学んでいただく形です。この業界は、競合他社に手の内(技術)を知られたくないものですが、みんなで業界を盛り上げるため、オープンにしています。

研修棟の1階は貸しスペースにもなっていて、地域の人がお弁当販売をすることもあります。子ども連れの家族が来ることもあり、「電柱や信号機って、こんな風になっているんだね。」という会話も聞こえてきますね。このようなきっかけで、電気工事を知り興味を持ってもらえたら、将来の選択のひとつにこの業界が入ってくるのかなと思っています。

リサイクルの難しい太陽光発電を安易に広めない。SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」についての活動

ー教育以外にもエネルギー関連に力を入れられていますよね。具体的な取り組みを教えてください。

石川さん:

エネルギー関連では、太陽光発電や蓄電システムの設置業務、LEDへの切り替えといった、いわゆる省エネ事業を展開しています。当社の特徴としては、お客さまへ太陽光発電システムに関する長期的な視点からのデメリット・リスクもしっかり説明するようにしていることです。

日本の太陽光発電は、2012年7月に始まったFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)により飛躍的に伸びた分野ですが、廃棄後のリサイクルに関して課題もあります。

太陽光発電システムの寿命は、家庭用では10年〜20年、業務用では長くて30年です。FIT制度での発電事業が終了する2040年頃には、約78万トンの発電設備の大量廃棄が見込まれているんです。これは、産業廃棄物の最終処分量の6%にものぼります。

そこで当社は、このリサイクルの課題も包み隠さずお伝えしたうえで、検討いただくようにしています。

みんなが健康で楽しく働ける環境づくりで、持続可能な社会の実現を

続いて、従業員の方への取り組みについても教えてください。

石川さん:

当社では、女性も男性も働きやすい職場づくりを進めることや、福利厚生の充実を目指しています。

働きやすい職場づくりの例としては、小さな子どもがいる従業員が時間通りに帰宅できるように、社内システムを整えています。時間短縮の仕組み化をみんなで考え、一丸となって働きやすさを追求しているんです。

他にも、子育てがひと段落した従業員の中にはキャリアアップを望むケースも多いので、資格取得の支援もしています。加えて、従業員一人ひとりとの対話の中からニーズを聞き出し、その人に合わせた働き方ができるようにサポートしています。若い方だけでなく、更年期障害に苦しむ年代に対しても、会社としてどんなフォローができるか模索中です。

福利厚生の面では、以前はライザップさんやカゴメさんと連携して、従業員の運動や食事についてのサポートをしたり、冷蔵食品を社内冷蔵庫に保管しておき、安くて健康的なおかずの提供を行っていました。取り組みがマンネリ化しないよう、従業員の反応を見ながら臨機応変に福利厚生のメニューを変えています。

これらの取り組みにより、2021年には、経済産業省の健康経営優良法人ブライト500に認定されました。ブライト500に選ばれたことは、より広く当社が知ってもらえるきっかけにつながったと思います。

子どもたちと共にSDGsについて考え学ぶことで、サステナブルな社会の実現を目指す

ーSDGsに積極的に取り組む御社ですが、11月には会社の敷地内でイベントが開催されるんですよね。どのような内容なのでしょうか。

石川さん:

「みんなで楽しくSDGsについて学ぼう」をコンセプトに掲げた、SDGsを身近に感じられるようなイベントです。

SDGsに取り組む白河地域の会社があつまり、達成を目指す目標に沿ったブースをそれぞれが出店します。来場者はブースをまわって、食べ物を買ったり体験コーナーに参加したりすることができ、SDGsを実際に体験できるような仕組みになっています。

具体的には、目標3「すべての人に健康と福祉を」のブースでは、和菓子の大黒屋さんが、砂糖を60%削減したおいしい羊羹を販売します。健康を考え、大好きな甘いものをなかなか食べられないという人向けに開発された商品です。好きなものを我慢するとストレスがたまることもありますが、この羊羹なら罪悪感を減らしつつおいしく食べることができるので、心の健康にもつながります。

また、目標16「平和と公正をすべての人に」では警察と消防のブースを、目標4「質の高い教育をみんなに」のブースでは、本来なら捨ててしまう「えごまの油かす」を使ったぬか床や甘酒を振る舞う予定です。LEDライトや苔玉を作る体験コーナーも用意しているので、飽きることなく、多くの目標に触れられるのではと考えています。

このイベントは娘との会話がきっかけで生まれました。小学校1年生の娘の教科書にはSDGsについての記載があり、今は小学生〜高校生までSDGsを学ぶ機会があることを知りました。ただSDGsは少し難しいですし、「大企業じゃないと取り組めない」「SDGsって環境を守ることだよね」と曖昧な理解に終わってしまう現状もあります。そこで思いついたのがこのイベントだったんです。

「食」や「あそび」、「まなび」を通してSDGsを楽しく感じていただき、多くの子どもたちに「SDGsって身近にもあるんだ」ということに加えて「白河にもSDGsに取り組む企業があるんだ」と知ってもらえるイベントになったらうれしいですね。

ー子どもたちや電気業界のみなさんと一緒に、将来を見据えてSDGsについて考える東陽電気工事株式会社のこれからの取り組みに注目しながら、私たちにもできることを考えていきたいと思います。

関連リンク

東陽電気工事株式会社ホームページ:http://www.toyodenkikouji.jp/