#インタビュー

WAcKA|Tシャツのアップサイクルで新たな価値を創造する

WAcKA 梶原 誠さん インタビュー

梶原 誠(かじはら まこと)

縫製業を営む両親の元に生まれる。繊維業界で約20年従事した後、2017年にWAcKAを設立。繊維廃棄問題に取り組んでいる。バングラデシュやベトナムで駐在経験を積み、大量生産に対する違和感を抱いたことがきっかけで、アップサイクル事業に進むことを決意。WAcKAでは、廃棄される運命にあったTシャツを手芸糸にアップサイクルし、福祉施設と連携してウェルフェアトレードを実現するなど、環境と社会に貢献。「グッドライフアワード」や「ソーシャルプロダクツアワード」などで評価されている​。単に物のアップサイクルに留まらず、物づくりの喜びを多くの人々と共有し、持続可能な社会づくりを目指している。

introduction 

日常生活では、環境問題や福祉支援について深く考える機会は少ないかもしれないですよね。

「WAcKA」は、繊維産業がもたらす環境問題、特に新品衣料の廃棄に注目し、アップサイクル事業を展開する企業です。Tシャツを手芸糸にアップサイクルし、廃棄されるはずだった衣料品に新たな命を吹き込むことを目指しています。さらに、その生産プロセスにおいて、福祉施設との連携を行い、フェアトレードと就労支援を実現しています。

繊維廃棄問題を解決するアップサイクル活動

–まず始めに、WAcKAでどのような活動を行っているかご紹介をお願いします。

梶原さん:

WAcKAでは、繊維産業が抱える環境問題、とりわけ新品衣料品の廃棄問題に注目し、Tシャツを手芸糸にアップサイクルする活動を行っています。

その生産工程において心身障害者福祉施設様との取り組みの元、我々ができるフェア―トレードとして適正価格での発注を行い、様々な理由で職に就けない方々への就労移行支援として生産工程の一部を依頼しています。 また『楽しく環境貢献』と言う参加型の形態を作るべく、アップサイクル糸を使った編み物ワークショップを開催し、3世代が集う場の提供、特に編み物を得意とする世代の高齢者の方々が生き生きと活躍できる場の提供を目指しています。

『Tシャツとしての価値を失いゴミとなるものに新たな命を吹き込み、その命を参加するみんなで育て、新たな価値を創造する』

この活動を通して、物の大切さを学び、根本的な解決を目指しています。

国内では認知度の低いアップサイクルを日常に落とし込んで貰えるきっかけ作りを目的に小学校から大学、そして企業様に向けた授業や講義などにも積極的に取り組んでいます。

Tシャツの回収・仕分け作業

–それでは、梶原さんがこの活動を始めたきっかけについて教えてください。

梶原さん:

2013年、バングラデシュで発生した「ラナプラザ事件」に衝撃を受け、繊維工場で働く人々の劣悪な環境を目の当たりにしました。この事件を期に欧米企業がサステナブルにシフトチェンジしていく姿を見て、自分たち日本の企業も変わらなければならないと実感した事がきっかけです。 

便利に、簡単に、安価に、何でも手に入る時代だからこそ失われた本当の価値、物の価値が失われれば、その物つくりに携わる人の価値も低下します。

私たちの商品は、完成品でなく、手芸糸という半製品です。最後はご購入下さった方々が、手を加える事により、完成します。その目的は、自ら手を加える事で、廃棄ゴミの削減と就労支援に参画するという目的と物づくりを体験する事により感じる苦労を体験することで、本当の物の価値を感じて貰うことにあります。 使えば減らせる繊維廃棄ゴミ、使えば増やせる福祉雇用。それが事業への想いです。 使い捨てからの意識変革を私たちの商品を手に取ることで体験してもらうことを願っています。 

6万枚以上のTシャツをアップサイクルし、雇用支援も実現

–この活動により、どのような社会問題が解決されているのでしょうか?

梶原さん:

表面的には、衣料品廃棄ゴミ削減と福祉雇用増加が見込まれます。WAcKAでは、これまでに6万枚以上のTシャツをアップサイクルし、数名が福祉施設から一般就労へ移行する成果を挙げています。

根本的には、消費マインドの変革が実現可能です。 安さや快適さだけではなく、適切な消費選択と必要な時に必要な量を消費し、大切に長く活用するエシカルマインドを取り入れる方が増加しています。

–活動を通じて、新たな課題や問題は生まれなかったのでしょうか?

梶原さん:

サステナブルそのものが、ファッションやトレンドになりつつある事で、一過性のブームとして捉えられることが問題となっています。

本質的な社会課題解決を目指したものではなく、見せかけのサステナブルが乱立しています。 

社会課題である以上、できるだけ早く解決するべきではありますが、一過性のブームでは本質が見えなくなり、課題が置き去りにされがちです。 

見せかけではない本質的な社会課題解決に向けて、商品を通して本質を伝える。その本質を伝える協力と共感の輪を広げる事で課題を克服しようとしています。

持続可能な活動を継続し、より多くの人々にその意義を伝えることを目指しています。

–今後の事業やサービス展開に関する展望をお聞かせください。

梶原さん:

今後、日本国内だけでなく、世界中で持続可能な社会を実現するための一翼を担っていくため、衣料品に限らず、さまざまな企業や団体が抱える廃棄品のアップサイクルに挑戦し、物づくりの文化を守るための基盤作りを進めていく所存です。

WAcKAでは、イベント等でアップサイクルワークショップを開催しております。編み物ができない方でもモノづくりに参加し、衣料品廃棄減と福祉雇用増という社会貢献活動に気軽に参加できます。楽しく社会貢献しませんか!

–単なる環境問題の解決にとどまらず、社会全体の意識変革についても考えさせられました。貴重なお話をいただきありがとうございました!

関連リンク

WAcKA:https://wacka.jp/