#インタビュー

株式会社wash-plus|コインランドリー業界の異端児が先駆者になるまで。妥協せずに貫いた信念とは

株式会社wash-plus 代表取締役 高梨健太郎さん インタビュー

高梨 健太郎

平成3年   市川商工会議所入社記帳専任職員に従事。その後、経営指導員として主に公的融資制度の申請指導及び斡旋、経営困難な会社を支援する経営安定特別相談を担当

平成12年  中小零細企業にITを普及させるためNTTと連携し、普及事業「ミレニアムプロジェクト」を促進平成15年  株式会社いちかわケーブルネットワーク入社 経営企画 

平成16年  株式会社協同住宅入社

平成19年  株式会社協同住宅 代表取締役就任

平成25年   公益社団法人浦安青年会議所 理事長就任

平成25年   株式会社wash-plus 代表取締役就任

introduction:

「洗剤を使わないコインランドリー」を展開しているのが株式会社wash-plusです。

今までは自動販売機のように設置してお客様を待つだけだったコインランドリーに、付加価値を付け差別化をはかることで、積極的な経営ができる事業として確立することに成功しています。

洗剤を使わない洗濯に込めた「どんな人でも安心して使える」というキーワードは、まさにSDGsの理念「誰一人取り残さない」に通じる思いです。

今回は「洗剤を使わないコインランドリー」の開発の苦労やSDGsへの取り組みにかける熱い思いを高梨健太郎代表取締役にお聞きしました。

洗剤を使わないコインランドリー。開発のキーワードは「どんな人でも安心して使える」こと

–はじめに御社がコインランドリーの事業を始めた経緯をお聞かせください。

高梨社長:

弊社は2013年にコインランドリー事業を始めましたが、それまでは千葉県浦安市で不動産業を32年営んできた会社で、私はそこの二代目社長でした。

コインランドリー事業を始めた大きな転機は、2011年の東日本大震災です。

浦安市は震災により液状化がおき、地盤沈下の問題が発生しました。不動産の価値はそれまでの1/3になり、3ヶ月で2,000人以上の人が浦安から引っ越してしまいました。

「このまま不動産の仕事だけしていてはダメなのではないか」と考え、新しい事業をいろいろ模索し始めたとき、コインランドリー経営が注目されていると聞きました。これが、コインランドリー事業を考え始めたきっかけで、そこから「洗剤を使わないコインランドリー」を目指し、開発をすることになります。

<<震災当時の液状化した浦安市内>>

–御社の展開する「洗剤を使わないコインランドリー」はどのようにして開発されたのでしょうか。

高梨社長:

私は常々、「付加価値と差別化の出来ない事業は発展の見込みはない」と考えているのですが、これまでのコインランドリーは、どれも変わりばえのない同じようなものばかりでした。

そんな時、当時1歳だった娘をお風呂に入れたことがきっかけで「洗剤を使わないコインランドリー」を思いつくことになります。

お風呂の後、妻は娘がアトピー性皮膚炎になることを心配して毎回保湿クリームを塗っていましたが、私は毎日やらなくても大丈夫だろうと思っていたんです。しかしアトピー性皮膚炎は、乾燥などにより後天的に起こる場合もあると妻から聞かされ、自分の認識が違っていたことに驚きました。

そこから「アトピーに悩んでいる人はどうやって洗濯をしているのだろう」と興味を持ったんです。すると、肌が弱い人は普通の洗濯洗剤ではなく、刺激の少ない粉のせっけん洗剤を使っている方が多いと分かったんですね。

その頃のコインランドリーはというと、あらかじめ備え付けられた液体洗剤が自動投入される方法が主流で、お客様はどんな洗剤が使われているか知る術がありませんでした。

市販の洗剤はもちろん、あらゆるものに成分表示があるのに、どうしてコインランドリーの洗剤は何も表示しないのか疑問に思い、人にも環境にも優しく「どんな人でも安心して使えるコインランドリー」をつくることができたらなと考えたんです。

それが「付加価値と差別化」にもなるはずだと、妥協せず徹底的に取り組みたいと思いました。

どんなに苦労しても、「人・環境に優しいこと」「事業として成立すること」を最優先で開発する

<<開店したばかりの1号店>>

「洗剤を使わないコインランドリー」の開発ではどんなご苦労がありましたか。

高梨社長:

ずいぶんいろいろな検証実験をしました。

まず洗濯に粉せっけんを使うところから始めたのですが、溶かして投入しても洗濯機の下の方に溜まってしまい、洗剤を洗濯物全体になじませるのが難しかったんです。

そんな時、過去に見た「水であぶらは落ちる」というポスターを思い出しました。

人が出す汚れは皮脂汚れ、脂です。「水であぶらは落ちる」ということは、ひょっとするとその水を使えば皮脂汚れが落ちるのではないかと思いついたんです。

早速、そのポスターを見たビルで連絡先を聞きました。

その会社の水の生成装置では、あぶらを落とせる水「アルカリイオン電解水」をつくっていました。

当時「アルカリイオン電解水」は、工場のネジなどについた機械油を落とすために使われていたんです。社長さんに事情を話して「アルカリイオン電解水」を20リットルもらって帰り、広島のコインランドリーのメーカーに持ち込んで実証実験をさせてもらいました。

実際に汚れがきちんと落ちていることが確認でき、事業化することにしたんです。

しかし、「アルカリイオン電解水」は1度に生成できる量がとても少ないので、洗剤と比べて値段が高いという問題点がありました。生成された水は、普通のコインランドリーでの1回の洗濯代の3〜4倍のコストにもなるんです。

ですから、wash+(ウォッシュプラス)1号店~4号店では「アルカリイオン電解水」の生成装置をおいて、コインランドリーが使われていない時間帯を利用して自分達で生成・貯蔵しながら営業しました。

各店舗に生成装置を設置した営業で次にぶつかった壁は、装置のメンテナンスの課題でした。機械が壊れたときは修理が終わるまで使えず、メンテナンスがすごく大変だったのです。

そこで「アルカリイオン電解水」を生成する工場を作り、タンクで各店舗に輸送してランドリーに注入できるシステムをつくりました。ここにたどり着くまでは本当に長かったですね。

しかし、「どんな人でも安心して使えるコインランドリー」をめざすため、途中で妥協しようと思ったことはありませんでした。

こうして、アルカリイオン電解水「wash+ Water(ウォッシュプラス・ウォーター)」を使った、洗剤を使わない洗濯システム「wash+ Technology(ウォッシュプラス・テクノロジー)」を確立することができました。

–御社のコインランドリーにはその他にどんな特徴があるのでしょうか。

高梨社長:

もう一つの大きな特徴は、コインランドリーにIoTを取り入れたことです。

今までのコインランドリーは、洗濯機が稼働していない時間があっても人を呼び込むシステムがなく、集客に課題があったんです。

ですから最初は自分でQRコードをつくりました。そして、かざすと100円引きになる仕組みにして近所の人にQRコードを配ったんです。地道な集客施策だったので、「アプリがあったら便利なのに…」と感じていました。

そのころコインランドリー業界はどの企業も、店舗に置いてある洗濯機を一括管理する「集中精算機」を店舗の中につくろうとしていました。それでも、私はお客様が直接使えるアプリにこだわり、お世話になっている洗濯機メーカーに作らせてくれと頼み試行錯誤の末、2年後の2018年5月にアプリが完成しました。

–アプリにはどんな機能があるのでしょうか。

高梨社長:

アプリを導入したコインランドリーシステムを「Smart Laundry( スマートランドリー)」と呼んでいます。

お客様のメリットとしては、

  • 空き状況の確認
  • 洗濯・乾燥完了のお知らせ
  • 支払いがアプリで可能
  • 洗濯機・乾燥機のロック機能や窓のブラインド機能で防犯
  • ステイタス機能で利用ポイントをためられる

などがあります。

特にドアロックなど防犯機能、空き状況を確認できる機能は評判がいいですね。

   

オーナー側のメリットとしては

  • ステイタス機能でリピート客を誘導
  • オープンセールや限定セールも自在に設定可能
  • 多言語対応
  • 遠隔操作でトラブルに即時対応
  • システムを一元管理して業務の効率化
  • 洗濯物放置対策

などです。

参考:スマートランドリーについて | smart laundry

「スマートランドリー」を使うことで、金額の設定など個別に変更でき、お店ごとの自由度がぐんとアップしました。例えば、利用が多い顧客とは法人契約をし、値段を下げることもできますし、スーパーの隣にある店舗では、そこで働くパートさんを値引き設定するなどして大変喜ばれています。

また洗濯物放置の問題も、終了後短時間でピックアップするとステイタスが上がりやすくなる特典を付け、平均で10分以上洗濯物の回収時間が短縮しています。

このように「スマートランドリー」は、お客様だけでなくオーナーにとってもメリットがあり、コインランドリーをきちんと事業として経営できる、今までと全く違ったシステムです。

弊社のコインランドリーだけでなく他社のランドリーでも使用できるので、現在は約280店舗、20万人以上の方に使っていただいています。

「必ず最後に選ばれるのは、人や環境に優しいこと」という信念を貫く

–人にも環境にも優しい御社のコインランドリーはSDGsの考え方にのっとったものと感じます。御社は、SDGsの取り組みに関してはいつから興味を持たれていましたか。

高梨社長:

私の母は教師で、障がいのある方や子ども達などいろいろな人達と接していました。そのため、私も実際に触れ合う機会が多くありました。

また、30代には青年会議所に所属してたくさんのボランティア活動に参加する機会があり、そこで自分達が世の中をまわしているのではなく、世の中の一部であると気づかされたんです。

さらに東日本大震災後、いろいろ見聞きしたことで何とか世の中の役にたちたいという気持ちが大きくなりました。

まだSDGsという言葉はありませんでしたが、早いうちからSDGsにつながる思いはありました。

コインランドリーの事業を始めるときも、「人・環境に優しい洗濯」という信念は決して曲げないと決めていました。「必ず最終的に選ばれるのは人や環境に優しいことである」と。

「どんな人でも安心して使える」というキーワードは絶対に外してはいけないと頑固に貫きましたね。

《wash-plus コインランドリー》

–御社のコインランドリーはSDGsの観点から見てどのようなことで貢献しているのでしょうか。

高梨社長:

まずは水問題です。

大学との実証実験をしたときに「こんなきれいな洗濯排水は見たことがない」と言われました。排水がきれいなら環境には良いですよね。

そして今、もう一歩先のソリューション「排水のない洗濯」を実現したいと思っています。

世界的に水不足が懸念されていますが、日本では生活用水の約20%は洗濯で使われます。洗剤を使わないということは、水をろ過し循環させながら使い続けることができるはずだと思い、実現を目指しています。

洗濯排水からマイクロプラスチックがでているという指摘もありますので、排水しなければマイクロプラスチックも減らせます。

現在は実証実験の段階で、実際にお客様40人に継続して使ってもらい、トラブルなどのノウハウを集めているところです。

もう一つは電力問題への貢献です。

洗濯で一番電力を使うのは「絞る工程」なのですが、洗剤を使用しなければすすぐ回数を減らせるので、絞りの工程が少なくなります。

時短になるし、節電にもつながります。

また、「ダイナミックプライシング」システムを使ったピークシフトによる節電をこの夏に実施しました。

「ダイナミックプライシング」は、過去の売り上げや、天気など様々なデータを分析し、時間帯や天気などにより価格を変動させるシステムです。お客様の多く来る時間は価格を高めに、来ないときは低めに設定し、提供側は繁忙期と閑散期を平均化でき、お客様は自分の意志でサービスを受けるタイミングと金額を決めることができます。

2022年中にシステム導入を予定していたもので、夏に政府から節電要請を受けたタイミングで運用を前倒ししました。具体的には、電力があまり使われない夜間の料金を30%以上値引きしました。

結果的に約7%のお客様が夜の洗濯にシフトしてくれ、本当なら売り上げが落ちるところ、使用人数が増え増益になりました。

これは「スマートランドリー」があるからこそできることです。

2022年〜2023年の冬も同じようにピークシフトの節電に協力しています。

「ダイナミックプライシング」にもこれからさらに注力し、アプリを介しお客様をいかに誘導していくかを考えていきたいですね。

異端児から先駆者へ 信念を貫いたのは間違いではなかった 

–SDGsにも素晴らしい貢献をしている「洗剤を使わないコインランドリー」ですが、日本で受け入れられるかどうか心配ではありませんでしたか。

高梨社長:

1号店を開くときはものすごく心配でした。

しかし、事業を展開していくにつれ「アトピーの家族がいるからすごく助かる」などのお客様の声が届くようになり、自信を持ちました。

一番嬉しかった意見は「隣の人が洗剤を入れていたのでやめさせて欲しい」でしたね。

クレームなのですが、洗剤を使わない洗濯が受け入れられ、信頼されてきたと思えました。もちろんちゃんと注意を促す対策は取っています。

また現在コインランドリーだけでなく、星野リゾート様運営のホテル7店舗にも洗剤を使わないランドリーを導入いただいています。

これも弊社の「洗剤を使わない洗濯」が認められたからだと、ありがたく思っています。

コインランドリー業界の中では「洗剤を使わないなんて何を考えているんだろう」と異端児扱いされて、多くの人に反対されてきました。

しかし、つい最近開催された「国際コインランドリーEXPO」に参加してみると、ほとんどの会社がエコな事業を掲げているんです。

異端児だった自分がいつの間にか先駆者になっている。ブースも弊社に一番多くの人が集まり大盛況でした。

これを見て、「世の中が変わったんだ。自分が信念を貫いてしてきたことは間違いではなかったんだ。」と実感しました。

–最後に、これからの展望をお聞かせください。

高梨社長:

一つ考えているのはインバウンド対策です。

旅行者はコインランドリーを利用する際にアプリは使わないので、店舗でクレジットカード決済を使えるようにしたいと考えています。

これは他の企業はまだどこも対応していないですね。

現在直営店20店舗、フランチャイズ21店舗、大手名の出店が3店舗ですが、店舗数をもっと増やしていくのも目標です。

アプリは改良を重ね、やりたいことはほぼ実現していますし、会社の体制も整ってきています。

ですので次は「洗剤を使わない洗濯」をより多くの人に知ってもらうのが大切だと思っています。

弊社を知っていただき、洗濯の体験をしてもらうことに重きを置き「洗剤を使わない洗濯」自体を広げていきたいです。

–日本中、世界中に「洗剤を使わない洗濯」が広まることを願っています。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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