#インタビュー

株式会社ゼンヤクノー|生産者と一体になって作りあげる健康茶で「薬草と健康をつなぐこころの企業」を実現

株式会社ゼンヤクノー 勝部さん インタビュー

株式会社ゼンヤクノー

創業昭和 47年10月1日

設立昭和 48年5月15日

事業内容 各種健康茶及び食品の開発・製造販売、ティーバッグ包装及び食品のOEM製造

1972年 鳥取県鳥取市晩稲にて創業

2000年 鳥取県鳥取市賀露町に本社、工場を建設移転

2002年 品質保証の国際規格ISO9001認証取得

2008年 有機加工食品小分け業者認証取得

2017年 食品安全マネジメントシステムFSSC22000認証取得

2018年 鳥取県男女共同参画推進企業として認定

2019年 有機JAS認証機関「日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)」より有機加工食品工場認証取得

2022年 とっとりSDGs企業認証取得

introduction

1947年、鳥取市で先代が薬草のカミツレ(カモミール)の栽培を始めたことが、現在のゼンヤクノーにつながりました。薬草を健康茶に加工して販売する同社は、先代の時代より、地域の農家の薬草栽培を指導し協働する関わりを続けてきました。現在、同社は、特にはと麦や桑において「収穫されたものはすべて買い取る」など、地域の生産者を守り、共に歩む方針を貫いています。

今回は、同社の営業を担う勝部悠哉さんに、生産者と協働しながら健康茶を作り上げる過程を中心にお話を伺いました。

薬草栽培を始めた75年前から「薬草と共に生き」、生産者と共に歩む

–まずは、御社についてご紹介ください。

勝部さん:

この2022年で創業50周年を迎える、鳥取市で健康茶を製造・販売している会社です。先代が75年前に薬草カミツレ(カモミール)の栽培を始めたことが、株式会社ゼンヤクノーの前身となっています。

早い時期から、弊社は薬草農家さんの栽培に共に関わる協働システムを作り上げてきました。健康茶への加工においては、FSSC22000(注:食品安全システム認証)を取得するなど、鳥取県という一番人口の少ない県にありながら、どこに出しても恥ずかしくない安心安全が保障された商品を製造しています。

社是は、「私たちは薬草と共に生き、常に品質を最優先する。お客様の心に応える行動に徹し、社会に信頼される企業をめざす」です。

–先代の薬草栽培が、健康茶の製造・販売へと展開していった歩みをお聞かせください。

勝部さん:

先代は、薬草栽培を始めてから数年後に、地域の農家さんにも薬草栽培を呼びかけ、組織化しました。その後、鳥取県薬農組合を結成して、薬用植物の系統的研究と集団的栽培に着手しています。

鳥取県農業組合

当時から、地域の農家さんと共に薬草を栽培していたわけですが、薬草自体はよい値で売れなかったそうです。収穫物の価値が低い無念さと、商売として利益をあげる必要性から、薬草を健康茶に加工して販売するアイデアが生まれました。その商売が、のちに株式会社ゼンヤクノーの設立につながりました。

栽培、収穫、全量買い上げにまでいたる生産者へのサポート

–御社は、現在でも、地域の薬草農家の栽培に初めから関わっているとのことですが、その具体的なシステムをお聞かせください。

勝部さん:

弊社のすべての健康茶が地域栽培によるものではなく、南アフリカから輸入するルイボスティーのようなケースもあるのですが、メイン商品のはと麦茶を例としてご紹介させて頂きます。

弊社は、現在、はと麦の生産者と契約をかわし、栽培の段階から深く関わっています。基本的に、皆さんは米作農家でもありますが、近年米価は下がっています。米に代えて売り先のあるはと麦を加えることを弊社としても勧め、新規で栽培を決める方向けには種を播くところからの指導やサポートをさせて頂きます。

ここ数年は栽培技術の向上に力を入れ、従来からの生産者さんに対しても、頻繁に勉強会などを開いています。はと麦につく害虫の種類や流行りの病気などは変わっていきますから、年に2~3回は、全国ハトムギ生産技術協議会の会長さんを九州からお招きして、弊社、生産者さんとともに各自の畑を視察します。会長さんの実地指導に加え、生産者さん同士がたがいの畑を見て、刺激を受けたり学び合ったりできる利点もあります。地域の一つの農作物分野で、弊社との縦の関係のみならず、生産者さんの横の連携も成立している状態です。

現地視察

はと麦については、契約している生産者さん、農協、弊社がしっかりと連携し、数年前から、収穫できたものは弊社が農協を通してすべて買い取る契約を結んでいます。収穫量が増えれば増えるほど売上につながるとなれば、生産者のモチベーションも上がります。

はと麦は、いったん乾燥させれば3年ほど長期保存ができます。数年前に、台風の被害でまったく収穫ができなかった年があり、はと麦茶の出荷もできませんでした。弊社としても、原料の備蓄があることで安定した生産を確保できることになります。また、弊社が保存原料を他県に販売することもあります。

–はと麦以外にも、地域の生産者と栽培から関わる茶葉はあるのでしょうか?

勝部さん:

はい。桑の葉で健康茶を作っています。かつて鳥取でも製糸業が営まれ、蚕の餌となる桑の畑があったのですが、製糸業の衰退とともに桑畑も耕作放棄地となりました。畑としての土壌はよいため、桑の葉が血糖値を下げる効果があることにも着目し、2014年から「鳥取桑プロジェクト」として、生産者さんと協力して耕作放棄地を桑畑として再生しました。

桑畑の再生

栽培へのアドバイスだけではなく、収穫においても、茶刈り機を導入して効率よく茶葉を刈れる体制を整えました。全量買い取りも含め、生産計画、栽培、収穫などへのサポートによって、生産者さんや地域経済の循環に貢献できていると思います。

茶刈り機での収穫

どんな微細な異物混入も見逃さない二重の異物検出検査

–生産者と深い信頼関係を築かれていることがよくわかりました。そのようにして得た茶葉を「どこに出しても恥ずかしくない安心・安全が保障された商品」として加工するにあたり、どのような取り組みをされているのでしょうか?

勝部さん:

工場内は汚染を未然に防ぐために、製造工程ごとに衛生度で4つに区分し、衛生管理を徹底しています。

原料については、食品安全システムとして最もハイレベルな国際規格「FSSC22000」、農林水産省による「有機JAS」の認証を取得しています。

商品品質管理については、残留農薬検出検査や細菌検査などの各種チェックに加え、X線異物検出装置を備えて、金属検出機だけでは検出できない異物の付着を防ぐ体制を整えています。この「異物二重チェック」は、特に自負できるものですね。

–茶葉は、野菜や果実などのように消費者が水洗いできませんから、この徹底チェック体制には安心感を覚えます。そのほかに、SDGsとして配慮されていることはありますか?

勝部さん:

2020年5月、工場屋上に太陽光パネルを設置しました。2021年5月から2022年4月までの期間では、工場で使用する電力全体の42.2%を太陽光エネルギーでまかなえています。

他にもバイオマスインキで印刷されたシールや包装材の使用に加え、まだ一部ではありますが、茶葉に生分解性のティーバッグ素材を使用しており、今後もこれらの割合を増やしていく予定です。また、商品発送に使用する段ボールは、FSC(注:森林管理協議会)の認証取得のものを採用しています。

生分解性ティーバッグ

フードロス対応に関しては、葉以外は廃物扱いだったチコリの根を用い、焙煎してチコリコーヒーとして商品化したことが挙げられます。また、賞味期限をあと三分の一残した商品については、そのような食品をあえて扱う企業に安価で売ったり、フードバンクに無償で提供したりしています。

チコリコーヒー

これらの取り組みをもとに2022年に「第1回とっとりSDGs企業認証」を取得しました。この認証制度は県独自の取り組みで、認証事業者はSDGs経営に対する補助金や、ビジネスマッチング支援などのサポートが受けられます。SDGsに配慮した取り組みを加速させるため、県からもバックアップしてもらいながら進めていきたいと思います。

–職場の労働環境についてはいかがでしょうか?

勝部さん:

女性が50%以上を占める会社であり、子育て中の社員も多く、それぞれの生活環境に合わせて休暇なども取りやすい社内風土があります。建前として各種制度はあっても、実際は空気として使いづらいというケースも見聞きしますが、弊社はストレスなくそのような制度を使うことができます。コロナ禍の昨今は、社員自身の体調が良くない場合も、無理せずに休みやすい環境になっています。

労働環境も他の様々な取り組みについてもいえることなのですが、社長の方針として、何事も「遅ればせ」にならないように心がけています。先ほどご紹介したFSSC22000や有機JAS認証取得をはじめ、各種の徹底した品質検査や環境への配慮なども、出来うる限りであれ、大手さんと同じくらいのタイミングで実施できるように常にアンテナをはっています。

–今後のご展望をお聞かせください。

勝部さん:

今後も、地元の生産者さんへの協力を惜しまずに続けていきます。あとは、作って頂いた良い原料を弊社が加工して、良いお茶として販売するのみです。

現状では、地元の原料をたくさん使っているにも関わらず、地元での商品販売が手薄です。価格面で、弊社商品の付加価値を理解して頂けるとなると、取引先は、成城石井さん、クイーンズ伊勢丹さんなどの高級系スーパーが多くなり、取り扱い店がどうしても都市部中心となってしまいます。

オンラインでの販売も充実してはいますが、今後は、全国のどこにでも直接置いて頂けるような商品も開発し、地元の良い原料を使った安心・安全な健康茶を全国の皆様に楽しんで頂けるよう、営業面でも努力していきたいと思っています。

–健康茶の会社であられるだけに、トータルな安心・安全に配慮されていることを感じました。今日は、貴重なお話をどうもありがとうございました。

関連リンク

ゼンヤクノーHP:https://zenyakuno.jp/