#インタビュー

あきざくら | 着物のアップサイクルで、日本の豊かな心と文化をつなぐ

あきざくら代表 山村さん インタビュー

山村沙世子

1983年長野県生まれ。信州大学人文学部人間情報学科日本中世史専攻卒。株式会社すかいらーくで店長を経験後、株式会社リクルートで、ホットペッパーの営業に従事。2013年独立し、ビジネスコンサルタントやコーチング、講師業を担う。2017年着物アップサイクルブランド【あきざくら】を立ち上げる。現在、「あきざくら」の代表として、着物を通じて、日本文化・日本の精神性を未来へ継承していくことに寄与。その取り組みが注目を集め、メディア掲載実績は多数に上る。

【あきざくらの主なあゆみ】

2017年12月 大田区ビジネスプランコンテスト「優秀賞」受賞

2018年2月 ソーシャルプロダクツアワード受賞

2019年2月 香港展示会『BE STANDARD PROJECT』出展

2019年3月 Sakura Masturi 2019  in Singapore 出展

2021年10月 日経新聞 (紙面・電子版掲載)にて特集

introduction

着物アップサイクルの日傘や扇子を取り扱うブランド「あきざくら」は2017年に誕生しました。お客様から使わなくなった着物を預かり、リメイクする形も要望を伺いながら1点ずつ職人によって丁寧に製作しています。

捨てるしかなかった着物が蘇るこの取り組み。代表の山村さんに、事業を始めたきっかけや想いについて伺いました。

使わなくなった着物を日傘に蘇らせるアップサイクル

–本日はよろしくお願いします。まずは、あきざくらの事業内容を教えてください。

山村さん:

あきざくらではヴィンテージの着物をお預かりして、日傘や扇子などにアップサイクルしてお渡しする事業を行っています。

お母様、お祖母様の着物を持っている方が多く、各家庭のタンスには日本中で8億点以上の着物が眠っていると言われているんです。そういった着物を捨てずに、新たな価値あるものに仕立て直すことで、お客様に喜んでいただければと思っています。

アップサイクルとは

廃棄物や不用品に、デザインやアイディアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせること。

傘になる前の着物
完成した傘

–日本で、そんなに多くの着物が眠っているんですね。何もしなければ捨てられてしまっていた着物を再利用するという価値のある事業ですね。

山村さん:

はい。また、日傘は職人の手によって一つひとつ手作業で丁寧に作られています。お客様の思い出が詰まった大切なお着物から制作するので、職人による確かな技術で加工しています。着物はクリーニングを施し、撥水加工などをして長く使っていただけるよう工夫しているんです。

–依頼されたお客様の反応はいかがですか?

山村さん:

あきざくらにご依頼いただくお客様は、機能性よりも「思い出が形になる」ことに価値を感じて選んでいただいていると思います。「この傘を差して歩いていると、お母さんに見守られているような気がする」といった感想もいただくんですよ。

着物を再利用するという点で、もちろん環境的にもいいものではありますが、人の想いがこもった商品を提供できている点にも意義を感じます。

–素敵ですね。日傘と扇子以外にも商品はあるのでしょうか?

山村さん:

はい。お客様の要望に合わせて、オーダーメイドで作ることもあります。今までにバッグやドレスなども作りました。ご依頼に合わせて加工できる職人を探し、どうしたら形になるかいつも考えています。私はなるべくお客様の要望にお応えしたいので、どんなわがままもウェルカムです(笑)ゼロからつくり上げる過程も楽しいんですよね。

着物をアップサイクルして作ったバッグ

–一人ひとりの要望に応えるために、職人を探すところからやるなんてすごいですね!

日本に元々あった「Re」の文化を広めたい

–この事業を始めようと思ったきっかけは何ですか?

山村さん:

日本全体がなんだか殺伐としているというか、みんな心に余裕がないな、と感じていたんです。こういう空気を変えるにはどうしたらいいかと考えていたときに、大学時代に日本の中世史を学んでいたことを思い出しました。

昔の日本人は調和を大切にしたり、相手のためになることを考えたりしていた民族だったんですよね。そういった昔の日本人に学ぶことで、豊かな心を取り戻せるんじゃないかと思い、調べていくなかで着物にたどり着いたんです。

–日本人にとっての着物とは、どのようなものだったのでしょうか。

山村さん:

昔、着物は何度も洗い張りして、仕立て直して繰り返し着られていました。それも着られなくなったら、鼻緒にしたり、子どもの遊び着にしたりして、最大限に活用されていたんです。私はこれを「Re」の文化と呼んでいるんですけど、サステナブルやリサイクルなどの言葉よりもずっと前から日本の文化にあったものなんですよね。

着物を通して、この文化を再現できないかと考えたんです。

–なるほど。では、その着物を日傘にしようというアイディアはどうやって思いついたんですか?

山村さん:

それは完全に私の直感です(笑)最初は、「着物でアオザイを作ってベトナムで売ろう」と考えていたんですけど、そのためにいろいろ調べていくなかで、たまたま着物を使った傘を見かけて。その瞬間「これだ!」って思ったんですよね。

あきざくらの商品

–ビビッと来たんですね(笑)傘にしようというアイディアから、実際に加工できる職人さんを探すのは大変ではなかったですか?

山村さん:

はい。まず職人さんを探すときに洋傘協会というところに問い合わせたんですが、引き受けてくれるところはなかなか見つかりませんでした。どの工房も100本単位で作られているので、うちみたいに1本ずつ作るのは難しいのと、生地はこの世に1枚しかない着物なのでミスは許されず、リスクが高いのも原因でした。

ですが、探し回っているうちに運よく一人の職人さんが見つかり、現在もその方に製作していただいています。

作業する傘職人

–若い女性の職人さんで驚きました。

山村さん:

はい。彼女はまだ若いのですが、国内トップクラスの腕を持っているんです。また、着物のどの部分を使って、どのようなデザインにするかは、お客様の希望を聞きながら決めるのですが、生地の状態を見て最終的に裁断するのは職人の仕事です。うちは華やかな柄を扱うことが多いので、女性のセンスで素晴らしいものを作ってくれてありがたいですね。

–傘の職人は日本でも数少ないそうですね。

山村さん:

はい。国産の傘は、流通しているうちの1%未満です。あきざくらの事業を通して、職人さん達の仕事を守りたいという想いもあります。傘だけではなく扇子など他の商品も同様です。伝統を絶やさないよう、これからも事業を広めていきたいですね。

海外進出で日本文化を世界に

–あきざくらの今後の展望を教えてください。

山村さん:

今後は海外に向けて、日本の文化を広めていきたいです。以前シンガポールで販売をしていたのですが、コロナ禍で現在はストップしてしまっています。もう少し世の中が落ち着いたら、また海外に向けて挑戦していきたいですね。

シンガポールでの販売の様子

–海外のお客様の反応はいかがですか?

山村さん:

海外の方は単純に「かわいい」というだけではなく、着物の柄の意味や日本の文化についても関心が高く、いろいろと質問されます。以前も「傘になる前はどんな状態だったの?」と聞かれ着物の状態をお見せしたら、とても喜んでいただけました。着物アップサイクルの商品を通して、日本文化を知ってもらう機会になると思っています。

–海外進出に向けて情報発信もされるのでしょうか?

山村さん:

はい。英語のホームページやブログなどを作って、海外の方にも説明できるように整えていきます。

美しい着物の柄だけではなく、昔の日本にあった「Re」の豊かな文化も同時にお伝えしていきたいですね。そういった想いのこもったものを長く大切に使うことで、人の心はやさしくなると思うんです。そんな豊かな心や文化をもっと広めていけるよう、これからも精力的に活動していきます。

–本日は、ありがとうございました。

インタビュー動画

関連リンク

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