1990年入社。オリジナルキャラクター(ご当地ヒーロー)の企画や、自社主催イベント「スマイルフェスティバル」など、テレビと視聴者を繋げる事業を数多く経験。
introduction
皆さんがお住まいの地域には、どんなテレビ放送局があるか知っていますか?
千葉テレビ放送株式会社(以下、チバテレ)は、千葉県を放送エリアとした地上波放送局です。メインチャンネル以外に「チバテレミライチャンネル」という名のサブチャンネルを持ち、教育や福祉に関連する番組を多く放送しています。
今回はチバテレの榊原さんに、「チバテレミライチャンネル」やSDGs推進キャンペーン、さらに今後の展望についてお伺いします。
独立放送局として地元の問題に取り組んできたことがSDGsに結びつく
–まずはチバテレについて教えてください。放送はメインチャンネルとサブチャンネルで放送しているとのことですが、どのような違いがあるのでしょうか?
榊原さん:
みなさんが、いわゆる民放(民間放送局)でイメージされるのはキー局と言われる全国ネットのテレビ局や、ローカル局と言われる全国各地のテレビ局(キー局と連携している局)だと思います。チバテレはそれらとは違い、独立放送局という分類の放送局です。千葉県を放送エリアとした地上波放送局で、開局は昭和46年。2021年で開局50周年を迎えました。
独立放送局は、基本的には「地域に根ざした放送局」というのが大前提ですが、ケーブルテレビや他の独立放送局と連携し、千葉発で全国へバラエティやスポーツ中継なども発信しています。
地デジ化してからは、サブチャンネルを作り1局で2波放送できるようにしています。
メインチャンネルでは、ニュースや生活情報、バラエティなどの番組を流し、サブチャンネルでは、これまで競馬中継やナイター中継、高校野球の延長部分など、コアなターゲットがいるようなコンテンツを放送していました。
のちほどお話しますが、このサブチャンネルが今では弊社のSDGsと大きな関わりを持っています。
–SDGsに取り組むようになった背景やきっかけを教えてください。
榊原さん:
元々わたしたちは地元企業として、事業承継や教育の問題などをテレビ番組を通して発信していました。これって総合するとSDGsの範囲ですよね。なので、昨今のSDGsの潮流にのって新たに何か始めたというよりは、「今までやっていたことをSDGsの名のもとに再度深堀りしてみようか」というのが背景です。
今では、サブチャンネルで「チバテレミライチャンネル」を立ち上げ、県内各地のSDGsに関わる取り組みを発信しています。
また、昨年「SDG メディア・コンパクト」(2018年9月に国連が立ち上げた、SDGs達成に向けた世界の主要な報道機関とエンターテインメント企業の協力推進の枠組み)に加盟しました。
そこから本格的にSDGsと名のついたイベントも開催するようになりました。
「チバテレミライチャンネル」で豊かな教育と活動の場を
–サブチャンネル「チバテレミライチャンネル」について詳しく教えてください。
榊原さん:
2年前、新型コロナが流行り始めたころに小学校の一斉休校がありました。その期間に、「テレビ授業をできないか」という打診が千葉県と千葉市からあったんです。
そこで、サブチャンネルで、朝から夕方まで学校の授業を放送することになりました。この放送は、先生が授業の組み立てを行い、実際に出演して進めていくもので、我々はカメラを持って行ってその風景を撮影しました。
パソコンはなくても、テレビはある家庭がほとんどなので、現場の先生方からも非常に好評でしたね。
このテレビ授業をきっかけに、サブチャンネルの活用法を考えるようになり、メインチャンネルではお金をかけてまでは作れない番組を放送する場として活用していくことになりました。
たとえば子どもたちが作った映像などを、我々の電波を通して皆さんの前で発表するといったイメージです。
そして50周年を迎えた年に、このサブチャンネルを広く活用してもらえるチャンネルにしましょうと、「チバテレミライチャンネル」という名前を付けました。
サブチャンネル自体は多くの局で使っていますが、メインでなくサブチャンネル側に名称をつけたのは我々が初めてです。
「チバテレミライチャンネル」では、我々が製作チームを組んで番組を作るというよりかは、子どもたちが作ったものや、農福連携の施策でWEB用に作られた動画を積極的にコンテンツとして盛り込んでいます。これは、WEBに精通していない年齢の人にも見てもらえるようにする狙いがあります。
中でも、今年から立ち上げた「密着!チバテレミライ少年」は好評です。
こちらは千葉県出身のYouTuberが、千葉県の学校などで活躍している子どもたちをとり上げ、動画としてまとめてもらい、それを彼らのYouTubeチャンネルとチバテレで放送するという内容です。
スポーツ・音楽・文化などのあらゆる分野で、将来の活躍が期待される学生を定期的に紹介しています。
ただテレビ制作は、カメラの光の調整具合や音声など、ネットの世界の動画制作と求められるクオリティが異なります。そのため、放送できるレベルのものにするための試行錯誤には少し苦労していますね。
他にも「部活動や委員会で製作した映像コンテストに出品する作品」、「学生たちで作ったオリジナルストーリー」、「地域の課題解決を追うようなドキュメンタリー作品」、「吹奏楽コンサートの記録映像」などもチバテレミライチャンネルの中で放送しています。
この放送を通して、投稿者や先生方からは「こういう機会を与えていただいてよかったです」というお声をいただいています。
ただ、地域一般の方にはまだまだサブチャンネルの周知が行き渡っていない部分もあるので、今後についてはそこが課題です。
–その他にも農福連携・デザイン思考・手話ダンスなどの番組が放送されていますが、その内容と背景について教えてください。
榊原さん:
「農福連携」に関しては、県の公式PRチャンネルだけでアップされていた動画コンテンツを「テレビでも流してみませんか?」と声をかけ、提供してもらいました。
「デザイン思考」に関しては、チバテレミライチャンネルに協賛してもらっている千葉工業大学とタッグを組んで番組を作っています。元々は「なにか教育コンテンツを開発しましょう」ということで作った15分番組です。デザイン思考の前には、プログラミング教育の15分番組もやっていました。
「手話ダンス」に関しては、「ちゅばちゅばワンダーランド」というチバテレオリジナルのキャラクター番組があります。この番組のPVを作るにあたって、四街道北高校の手話部の生徒さんに手話ダンスの振り付けを考えてもらいました。
–どの番組をとっても、教育への意識が高いと感じます。
榊原さん:
我々は民放なので、テレビで何かを放送してその分の対価を得ています。CMを流して広告料をいただくということですね。
ただ、チバテレミライチャンネルは、「企業の宣伝をしてお金をもらう」というビジネスではなく、「広くみんなの役に立つような、子どもたちの未来に残せるようなものに企業の協賛をもらう」という想いのもと取り組んでいます。
そういった背景があるので、番組としてはおのずと子どもたちメインのもの、教育的なものが増えていますね。あとは障がい者などへの福祉的な要素が多い番組も増えていると感じています。
–視聴者の方々の反応はいかがですか?
榊原さん:
テレビは双方向での媒体ではないので、視聴者の反響を伺うのは簡単ではないのですが、他局の方からは興味を持ってもらっていて、問い合わせをもらうことが多くなりました。中には「利益は出ているの?」という問い合わせもありますが「まだまだそこは厳しいですね。」と正直にお答えしています(笑)。
ただ、利益は出ていないものの、チバテレミライチャンネルをきっかけにチバテレを見てもらえるようにしたいんです。最近「テレビ離れ」という言葉がよく使われますが、テレビに「クラスメイトが出てる」とか「自分の子どもが出てる」とかだと楽しみに見てくれるんですよね。
その一環でサブチャンネルでは高校野球の中継にも力を入れています。1回戦から決勝まで生中継をしていますし、準々決勝からは全試合見れるんです。2015年までは準々決勝は千葉マリンスタジアムで行われる2試合のみしか放送できませんでした。でもこれってもう1つの球場で試合をしている高校球児の親や友達からしたらガッカリしますよね。なので、2016年から今の形にしていますが、皆さんに喜んでいただいています。
このような反応を見ると、基本的にテレビに出るのって子どもたちにとっては嬉しいことなんだなと感じます。できれば、トップクラスで活躍している選手でなくても、身近な子どもたちをどんどんとり上げていきたいという思いは強いですね。そういう子たちがチバテレを見てチバテレを好きになってくれたらいいな、と思っています。
メディアの力でSDGsを推進
–現在、チバテレSDGs推進キャンペーンも展開されています。こちらも詳しく教えてください。
榊原さん:
開局50周年を機に、”チバテレミライチャンネルプロジェクト”と称して、ミライに貢献できる取り組みにチャレンジしています。その一環で、各企業・団体のSDGsの取り組みを取り上げ、PR面でサポートする「チバテレSDGs推進キャンペーン」を企画しました。
具体的には、各番組で出演者にSDGsに関するコメントをもらう、自身の取り組みや視聴者ができることなどを紹介するといった内容を発信しています。
他にはチャリティ的な要素を入れた番組も作りました。県内企業のSDGsについての取り組みを紹介し、それでいただいた制作協力金の一部を千葉県に寄付するというものです。
また、ニュース番組に字幕を付けていく実証実験を行いました。
通常の字幕放送は、話し言葉をAIや人間が変換して画面の下に表示しています。何秒か遅れて文字が出てきますよね。
今回はサブチャンネルを利用して、メインのチャンネルの横に字幕付きのサブチャンネル画面を出した2画面表示にしました。
通常1行か2行の文字が表示されては消えるのを繰り返しますが、今回は10行ほどスクロールして文字が出てくる形式で実験しました。
字幕の実験についてモニターアンケートをとったら、「2画面が横に並んでいると見づらい」「首を左右に振りながら見るのが大変」という意見があって、実験後半では画面を上下配置にしてみました。
将来的には聴覚障がい者の方にもテレビを見てもらえるようにしたいですし、総務省からも、文字情報を付与することについては努力義務が課されているので、この実証実験の結果を踏まえてやり方を検討していかなければと思っています。
千葉の人に愛されるテレビ局でいたい
–今後の展望を教えてください。
榊原さん:
千葉のテレビ局なので、千葉の人に愛されるテレビ局でいたい。そこに存在意義があると思っています。
そのためにも、千葉のために頑張っている地域の方々と連携をとって、一緒に成長していきたいですね。
共に成長していきたいという思いをこめて、弊社のキャッチコピーを「ぐんぐんチバテレ」にしてるんです。これからどう成長していくか、一丸となって考えていきます。
-本日は貴重なお話をありがとうございました!