#インタビュー

株式会社JSフードシステム|「食」を通して地元の文化を伝える。それが私たちなりの地域貢献

株式会社JSフードシステム 田川明宏さん インタビュー

田川 明宏

1972年、神奈川県生まれ。22歳から東京の色々な飲食店で働き、2003年に独立し日本酒専門居酒屋を経営。2018年に現在の会社「JSフードシステム」に加入、会社とともにSDGsを意識する様になる。

introduction

神奈川県の小田原・箱根を中心に、三人兄弟で飲食業を展開する株式会社JSフードシステム。

社名にある「JS」には「Japan Spirits(大和魂)」という意味がこめられ、高級牛なべ店や、海鮮丼専門店、自然薯専門店など日本料理にこだわったブランドを展開しています。

SDGsに関連した取り組みは多数あるものの、どれも元々はSDGsを意識してはいなかったと言います。

本日は、田川家の次男である常務取締役の田川明宏(あきひろ)さんに、同社のSDGsへの取り組みやその原点にある、「地元小田原・箱根を盛り上げたい」という思いを伺いました。

建設業から飲食業へ転換。地元の食材にこだわった店舗を展開

ー早速ですが、御社の事業内容を教えてください。

田川さん:

当社は、神奈川県の小田原・箱根エリアを中心に飲食業を展開しています。会社は私の兄の順也が社長、弟の修三が専務を務め、兄弟3人で経営しています。

元々は建設業を営んでいた順也が個人で始めた「つけ麺処くっちゃいな鴨宮(かものみや)店」をきっかけに、現在では地元小田原の海の幸や箱根の山の幸を味わえる飲食店を多数出店しています。飲食店のほかにも、「農業法人 小田原箱根ファーム」「JSフードシステム水産事業部」というグループ事業を展開して、実際に店舗で使用する材料の栽培・仕入れから加工・調理までに関わっているんです。

スポーツ振興から外国人実習生の受け入れまで、意識せず始めた事業がSDGsに繋がっていた

ー兄弟3人でさまざまな事業展開をされているのですね。会社としてSDGsに取り組みはじめたきっかけや背景はあったのでしょうか?

田川さん:

事業展開するうえで、あまりSDGsについて意識してきたことはなかったのですが、会社の歩みを改めて振り返ってみると「SDGsにつながっていることが多いな」ということに気づきました。

たとえば、地元高校である新名学園 旭丘高等学校・相撲部への食事サポートの事例があります。元々、弊社社長の順也の後輩がこの相撲部の監督という縁があり「モンゴルからの留学生のために食事を作ってほしい」と相談を受けたのがきっかけでした。

初めは「1人のサポートなら私たちにもできそうだ」と引き受けたものが、翌年には3人になり、5人になり・・・いつの間にか相撲部全体へのサポートに広がっていったんです。

お正月には、私たちのお店の前で相撲部員たちと餅つき大会を実施し、お客様へお餅を振る舞うようなイベントも実施しました。

たまたま縁あって始めた取り組みでしたが、改めて振り返ってみると「地域スポーツ振興への貢献」という意味でSDGsに繋がる取り組みだったなと感じています。

実は今年、この相撲部からスターが誕生したんです。第100回 全国学生相撲選手権大会(2022年)で、旭丘高校出身のチョイジルスレン君が優勝し、第100代 学生横綱となりました。うちが提供したご飯を食べて育った選手がこのように活躍してくれたことが本当に嬉しいです。

また、当社では2015年からベトナム人の技能実習生を受け入れていますが、これも初めからSDGsを意識した取り組みというわけではなかったんです。

飲食店の拡大に伴って人手をどう確保していくかということを議論した時に、目を向けたのが「外国人技能実習制度」でした。今では毎月のように新しい実習生を受け入れ、グループ全体で50名ほどに働いてもらっています。

外国人従業員を雇うことは、人手不足解消というメリットだけでなく、国による文化や風習の違いを肌で感じることができる貴重な経験にも繋がっているんです。

例えば日本では「1週間のうち5日働いて2日休む」というのが基本のペースだと思いますが、ベトナム人は「3日勤務して1日休む」というペースを望むことや、給与に対する考え方も日本人とは少し異なり、最初は彼らの考えを理解するまで苦労しました。何年も受け入れを繰り返していくうちにお互いの意思疎通がとれてきて、今では貴重な戦力になってくれています。

このように、たまたまSDGsとリンクした取り組みがいくつもあったことから、改めてSDGsの観点から当社の事業をとらえ直し、社会に発信していこうと考え「かながわSDGsパートナー」や「おだわらSDGsパートナー」の登録に至りました。

現在では県や市と協力して、持続可能な社会をめざして企業活動をしています。

―他にもSDGsにつながる取り組みを行っているのでしょうか?

田川さん:

飲食店で提供しているストローを「紙ストロー」に変更しています。しかし、これは臨機応変に対応していて、たとえば「小さなお子様がストローを噛んでしまって大変」というお客様には、プラスチックのストローをご提供しています。

以前、プラスチックのスプーンやナイフを削減しようと、木のスプーンとナイフを提供したことがあります。しかし、これは上手くいきませんでした。木のカトラリーでは使い勝手や口当たりがよくなかったんです。そこで、プラスチックの削減と使い勝手を両立するために、アルミのスプーンとフォークを提供する形になりました。

大切なのは「持続可能かどうか」ということ。

SDGsへつながることでも無理をしていたら、いつかほころびが生まれてしまいます。

長くみんなが続けられることでないとだめなんですよね。意識せずにやれていることで、SDGsに実はつながっていたということが一番いいなと考えています。

他の取り組みでは、「値段のつかない魚」をなんとか活用できないかといろいろな施策を練っているところです。当社にとって、小田原の海の恵みはとても大切ですので、どんな魚も無駄にしたくありません。

現在は地元の協議会と共同企画開発をして、小田原土産になるような商品などを考案しています。

ここは弟の修三がキーマンになっていて、地元のあらゆる協議会と密に連携し漁港関係のお祭りやイベントを盛り上げて地域に貢献すべく奮闘しているんです。小田原漁港周辺エリアの活性化をめざす「小田原地魚大作戦協議会」の初代会長としても活躍していますよ。

「食」から日本や地元文化の面白みを感じてもらいたい

―SDGsへの取り組みも飲食店の店舗展開も、地元である小田原・箱根に根差したものになっていると感じますが、そこにはこだわりがあるのでしょうか。

田川さん:

はい。地元を盛り上げたいという気持ちは強いですね。

そもそも小田原・箱根という土地そのものに地力があり、魅力があるんですよね。だからこそ私たちの飲食店にもお客様が足を運んでくれているんだと感じています。

それを保つために、お店を通してイベントや祭りなどを積極的にやって地元を盛り上げるのが会社の使命の一つと考えているんです。

「食を通じて日本文化や地元の文化を感じてもらいたい」というのが当社のテーマでもあります。展開している飲食店ブランドはどれも日本料理に特化しているのですが、その中でたとえば「牛なべ 右近」では、店舗入口の通り沿いに200個の「小田原風鈴」を飾り付けた「箱根風鈴まつり」や「箱根ちょうちん祭り」などのイベントを開催して地元を盛り上げました。

他にも、古くからの風習である「五節句」をテーマにした料理を提供しています。五節句にはそれぞれその季節の旬の食べ物を食べる風習がありますが、それを料理に取り入れることで、食事を通して日本の伝統文化に触れてもらえたらと考えメニューを開発しています。

これが当社ならではのこだわりで、私自身、面白みを感じているところでもあります。

実は、私がJSフードシステムに入社したのは最近なんです。元々は東京で大好きな日本酒が楽しめる和風居酒屋を経営していました。社長の順也からは会社を立ち上げた当時から「地元で一緒にやらないか」と誘ってもらっていたのですが、自分のお店が軌道に乗っていたこともあり、地元に戻ることはあまり考えていなかったんです。

ですが、2019年に大磯プリンスホテル内での出店と「牛なべ 右近」の2店舗オープンの話が決まったことをきっかけに改めてじっくり話をすると、お店や地元にかける想いと、そのアイデアに「おもしろいな」と共感し、入社することに決めたという経緯があります。

―社長が率いるJSフードシステムの取り組みの面白さに純粋に惹かれて、地元に戻る決意をされたんですね。従業員の方にもその魅力は伝わっているのではないですか?

田川さん:

そうですね。従業員の方にとっても居心地の良い会社になっているのではないかと思います。親子2世代で働いてくださっている方も何人もいるんですよ。

もちろん親御さんが働いていて、その繋がりでお子さんがアルバイトとして入社される例もあるのですが、面接時には全く気づかず、入社後「実は○○さんのお子さんだった」と分かって驚くこともあります。

そういう意味では、地元中心の店舗展開や、イベントの開催を通じて地域貢献をしてきたことで、会社が地元に根づいてきたということなのかなと感じて嬉しく思っています。

現在私は人事部長の役割もさせてもらっていますが、会社で得た利益をできるだけ従業員へ還元し、成果をしっかりと評価することを大切にしていきたいと思っています。

地元を盛り上げるのが会社の使命。「食文化」で地域に貢献していきたい

―最後に今後の展望について教えてください。

田川さん:

今考えているのは、現在やっている五節句のメニューからさらに掘り下げた、「二十四節気(にじゅうしせっき)」のイベントメニューです。二十四節気は春分や秋分など1年を2週間ごと、24の時期に分けるという農家の考え方に基づいた暦の数え方です。「その時々の旬の食材をいただくことによって、地球から健康によい恵みをもらおう」というテーマで料理メニューを考案しています。

また2023年度には、小田原市が所有している登録有形文化財・歴史的建造物の2件の古い邸宅を使ってお店をオープンさせる予定です。そこでも旬な食材を使った食文化の継承ができる施策を考案していて、地域に貢献できたらいいなと思っています。

このように地元や日本の風習を楽しんいただくことから、文化継承をしていければいいなと思います。メニュー開発やイベントを定着させるのは苦労もありますが、その分やりがいのある仕事なので、今後も地元小田原や箱根を盛り上げるために貢献していきたいと思っています。

ー今後は外国人観光客のインバウンド効果も期待できる中、さらに小田原・箱根エリアに貢献できそうですね。本日はありがとうございました!

関連リンク

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