SDGs8「働きがいも経済成長も」の現状と取り組み、私たちにできること

SDGsという言葉は聞いたことがあるけれど、それぞれの目標内容についてはよくわからないという方も多いと思います。

この記事では、私たちが人生で最も多くの時間を費やす仕事や、豊かに暮らしていく上で欠かせない経済の発展についての目標「働きがいも経済成長も」を詳しく紹介していきます。

世界と日本の現状や取り組み事例私たちにできることは何かも見ていきましょう。

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)

目標8「働きがいも経済成長も」とは?

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」では、社会に生きる全ての人にとって無理のない持続可能な経済成長と十分な雇用機会を確保することと、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進することをゴールに定めていて、さらに具体的な12個のターゲットが設定されています。

目標8では、「経済成長」「働きがい」の両方が重要と考えられています。経済が停滞してしまうと、人間らしい最低限の生活ができなくなってしまいますし、経済成長ばかりを目指して働きがいがなくなってしまうのも豊かな暮らしとは言えません。

この2点をバランスよく伸ばしていくことによって、より良い社会を目指していこうというのが、「働きがいも経済成長も」という目標です。

ディーセント・ワークとは?

ディーセント・ワーク(Decent work)は、1999年の国際労働機関(ILO)の総会で初めて使われた言葉です。

「ディーセント」とは英語で「まともな」「きちんとした」という意味。

誰もが性別などで差別されることなく平等に働く機会が得られ、さらに安心できる職場環境で公正な賃金が受け取れる、つまり、人としての権利をまっとうに受け取れる仕事を意味しています。

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の中で重要な考え方である「ディーセント・ワーク」ですが、ILOではその定義を明確に定めていて、以下4つの目標を掲げています。

ディーセント・ワーク4つの戦略目標

1,仕事の創出:必要な技能を身につけ、働いて生計が立てられるように、国や企業が仕事を作り出すことを支援

2,社会的保護の拡充:安全で健康的に働ける職場を確保し、生産性も向上するような環境の整備。社会保障の充実

3,社会対話の推進:職場での問題や紛争を平和的に解決できるように、政・労・使の話し合いの促進

4,仕事における権利の保障:不利な立場に置かれて働く人々をなくすため、労働者の権利の保障、尊重

国際労働機関(ILO)

世界では、失業、危険な労働、不当な賃金、男女不平等、移民労働力の搾取、十分な社会保障の欠如など、安心して働くことのできない環境に置かれている人が多くいるのが現状です。ILOは世界の労働環境を改善するための具体的な目標を掲げ、問題を解決していくことに取り組んでいます。

ディーセント・ワークとは?企業の取り組み事例やSDGsとの関わりも

目標8を構成する12個のターゲット

SDGs 目標8のターゲットは、どの課題に対してどういう解決をしていったらいいのか、より具体的な1〜10の達成目標とa〜bの実現方法、合計12個のターゲットで定義されています。

8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。

”日本の実質GDP(2021年1月~3月)は、-5.1%なんだって!”

8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。

”フレックスタイム制度を導入したり、IT化・オンライン化で生産性をアップさせようとする企業が増えているんだって!”

8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。

”みんなが働きやすい環境を整えたり、短時間でも効率良く働ける仕組み作りを応援しよう!”

8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。

”2030年までに、環境を悪化させることなく、世界が効率よく資源を使えるようにしていくことが目標!”

8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。

”若者も、障害がある人も、同じ内容の労働には、公正な賃金が得られるようにしよう!”

8.6 2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。

”国による2020年の調査では、15~24歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない人が37万人いるんだって!”

8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。

”今の時代に、まだ人身売買の被害に合っている子ども達がいるなんて…一刻も早くやめさせるべきだよね!”

8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。

”移住して働く人を含め、すべての労働者の権利は守られるべき!!”

8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

”地域の雇用を生み出したり、活性化につながったりする観光サービスが必要だよね!”

8.10 国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。

”全ての人がお金に関するサービスを使えるようにしよう!”

8.a 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。

”後発開発途上国の暮らしを豊かにし、貧困をなくすために貿易を使って支援をしよう!”

8.b 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。

”若者の仕事の機会を増やすための世界的な戦略を作って実行しよう!”

なぜ、目標8「働きがいも経済成長も」が必要なのか?

このようにSGDsで「働きがいも経済成長も」という目標が掲げられているのには、理由があります。

それは、世界にはまだまだ貧困と不平等がはびこっており、満足に働けない人や仕事はあっても貧困から抜け出せない人、学校に行けず働かなければならない子どもがたくさんいる、といった問題があるからです。

貧困や労働問題について、世界と日本の状況を見ていきましょう。

世界の10人に1人は、1日1.9ドル未満で生活している

世界銀行(World Bank)によると、2015年の統計では世界人口の約10%、7億人以上の人が1日「1.9ドル(1ドル108円として約205円)」未満での生活を強いられているといいます。つまり世界の10人に1人が、極度の貧困状態にあるのです。

「1.9ドル」というのは、世界銀行による貧困の目安(国際貧困ライン)です。

国際貧困ラインは、2015年までは1.25ドルでしたが、この数字は物価など世界の状況に合わせて、都度修正されています。

1990年の段階ではこの貧困率は36%(18億9,500万人)だったので、10%(7億人)というとかなり改善されてきたようにも見えます。しかし、実態は、中国など経済成長が著しい国の中での貧困率が改善したことによって数字だけは押し上げられましたが、最貧国では状況があまり改善しておらず、数字だけで楽観することはできません。

世界銀行は、この「1.9ドル」未満で生活する人の割合を、2030年までに3%に減らすことを目標に掲げています。

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増える労働者と足りない雇用機会

世界では増え続ける人口に対して、早急な雇用機会の創出が求められています。雇用は、目標8の「働きがい」と「経済成長」には欠かせない重要なテーマだからです。

以下のグラフは、世界各地の生産年齢人口(15~64歳)の推移を予測したものです。

世界の生産年齢人口は、1950年に15.3億人だったものが、2010年には45.2億人と約3倍になり、2100年には60.5億人となることが見込まれています。特に、アフリカの伸び率が高く、人口に対する雇用機会が足りなくなることが考えられます。

出典:内閣府

このような増え続ける生産年齢人口をカバーするためには、さらなる雇用機会の創出が必要です。国際連合広報センターによると、2030年までに世界で毎年約3000万件もの雇用創出が必要だといいます。

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世界の若者や途上国の失業率の現状

国際労働機関(ILO)によると、2018年の失業者数は世界中で1億7,200万人、失業率は5%でした。

失業率は年々改善傾向にあったものの、新型コロナウイルスの影響により、世界中で失業者が増加し、今後ますます深刻な問題になることが予想されています。

世界では、15~24歳の5人に1人の若者が教育も職業訓練も受けられず、仕事にもつけていない状態にあります。この年代は、仕事の技術を身につけ、人生の生活基盤を作る大事な時期です。
にもかかわらず、働きたくても働けない若者が数多くいます。

【教育も職業訓練も受けておらず、仕事につけていない若者の割合、性別、2018年(割合)】

中央・南・西アジア、北アフリカは、教育も職業訓練も受けておらず、仕事につけていない若者の割合世界で最も深刻な地域であり、男女差も大きくなっています。

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【地域別・年齢別・性別の失業率(2018年)】

2018年、若者の失業率が最も高かったのは北アフリカと西アジアの9.9%。次にラテンアメリカとカリブ海の8.0%でした。働き盛りの若者が仕事につけないことは社会不安の増大治安の悪化へとつながり、貧困から抜け出せない悪循環が生まれます。

これからの社会を築いていく若者の誰もが仕事を得られるように、国や地域で取り組んでいく必要があります。

雇用機会が足りないとどうなるの?

雇用の機会が足りないということは、仕事につけず、お金が手に入らず、貧困に陥ってしまう人が増えるということです。SDGsでは目標1で「貧困をなくそう」を定めていますが、働く場所がなければ貧困問題の解決も難しくなってしまいますよね。

雇用問題と貧困問題はセットです。

貧困をなくすためにも、持続可能で働きがいのある雇用を創出することが重要です。

SDGs1「貧困をなくそう」の現状と取り組み事例、私たちにできること

学校に行けずに働く、児童労働

「児童労働」とは、義務教育を妨げる労働や法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のことを意味します。

ユニセフによると世界には児童労働の子ども(5~17歳)が1億5,200万人いると言われており、そのうち約7,300万人は危険を伴う劣悪な環境で仕事をしている状況にあります。

児童労働の問題はそれだけにとどまらず、長時間労働、人身売買による性産業、戦争で「子ども兵士」につかされるなど、様々な問題が伴います。

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これらは子どもの健全な成長を妨げるだけでなく、読み書きが覚えられないため将来的にも良い条件の仕事につくことができず、慢性的な貧困状態に陥る原因となってしまいます。

子どもを働かせるのではなく、きちんと教育を受けられるような環境作りが求められています。

世界の経済成長率の現状と課題

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」では、世界各国の経済が発展していくことも目標としており、特に後発開発途上国(特に開発が遅れている国々)では、年7%の経済成長を目標としています。

【特に開発が遅れている国々の経済成長(GDP成長率)の割合】

このグラフを見ると、2009年は経済成長率7.1%と好調で目標を達成していました。しかし、その後減退し、2017年には3.8%と下がってきています。

前述のように世界の経済状況は新型コロナウイルスによって大きな打撃を受けており、失業率と同様、経済成長率も悪化することが予測されています。

日本の労働環境の現状と課題

日本は途上国のような絶対的貧困の状態にはないですが、SDGs目標8で掲げている「働きがい」の方に問題があります。

「働きがい」を損なう要因として、「長時間労働」の問題が挙げられます。なぜなら、長時間労働は、健康障害や過労死といった原因になる可能性があるためです。健康を害してしまっては、働きがいは感じられませんよね。

日本では長時間労働が以前から問題として挙げられていましたが、なかなか改善していないのが現状です。2013年には、国連からも「多くの労働者が長時間労働に従事し、過労死や自殺が発生し続けている」と是正勧告されています。

【諸外国における「週労働時間が 49 時間以上の者」の割合(2019年)】

厚生労働省の令和2年版「過労死等防止対策白書」によると、週労働時間が49時間以上の日本人労働者の割合は18.3%(男性26.3%、女性8.3%)でした。この数字は、アメリカやイギリス、フランス、ドイツといった先進国の中では最も多く、特に日本人男性は4人に1人が働きすぎています。

長時間働くことで、ストレスが増加したり、体調を崩したり、家族との時間が持てなかったりといった問題が発生します。ワーク・ライフ・バランスを見直すことが、日本の大きな課題と言えるでしょう。

世界には貧困、失業、児童労働などの問題が未だに多く残り、日本では長時間労働で働きがいを感じにくいことなどが問題となっていることがわかりましたね。問題の中には、貧困など経済成長率を上げることで改善できることもあります。

目標8の「働きがいも経済成長も」では、経済成長率も上げて、誰もが安心してやりがいを持って働き、十分なお金を得ることができる環境を早急に整えることを目指しています。

労働市場の抱えるジェンダー格差問題

雇用問題や長時間労働以外にも、私たちの労働環境には「働きがい」を妨げる問題点が数多くあります。その1つに社会的な性別による不平等、「ジェンダー格差」が挙げられます。

世界と日本のジェンダー格差の状況を見ていきましょう。

世界的なジェンダー格差問題

世界では古くから男女平等が叫ばれていましたが、ジェンダー問題は今も根強く残っています。国際労働機関(ILO)によると、2019年の世界の労働力参加率は、男性が74%、女性が47%で、女性は男性より27%も下回っています。

このジェンダー格差には地域差があり、女性の役割は家事や育児で、外に働きに行くのは男性の役割だという考えが未だ根強い国や地域が数多くあります。このような考え方は、特に北アフリカやアラブ諸国で強く、女性の労働力の約40%が十分に活用できていないと言われています。

また、女性は雇用の機会に恵まれないばかりでなく、仮に仕事があったとしても、その仕事の質や賃金において男性との格差が生じているという問題もあります。

また、昨今ではジェンダー格差に加えて、LGBT(性的マイノリティ)を理由に差別されるケースもあり、社会問題となっています。

性別など個人の特徴で差別されることなく、誰もが平等に雇用の機会を得られ、希望する仕事ができ、公正な収入を得られるようにすることも、SDGs8の目標である「働きがい」に大きく影響するのです。

SDGs5 「ジェンダー平等を実現しよう」の現状と取り組み、私たちにできること

日本のジェンダー格差問題

日本でも、男女間の雇用にジェンダー格差問題が残っており、日本社会が解決すべき課題の1つとなっています。

日本では、戦後からの長期的なデフレで、経済成長率は低い水準が続いています。

その理由の1つとして少子高齢化があり、若い労働力を確保することへの課題があります。そこで、女性の雇用創出は急務と言えます。

そのような状況にありながら、日本でも女性の雇用はあまり進んでいるとは言えません。2015年の労働力調査によると、無職の就業希望者413万人のうち301万人、実に7割が女性です。

働きたいと希望する女性が多いのに、「女性だから」という理由で雇用の機会が少ないのだとしたら大きな問題です。

また、女性が仕事につくことができたとしても、男女の年間収入の差「ジェンダー・ギャップ」があることも問題です。2015年の日本のジェンダーギャップは57.7%であり、OECDの24.7%からだいぶ遅れを取っています。

2014年のG20首脳会議では、日本は男女のジェンダー・ギャップを25%縮めるという目標を発表しました。これが実現すれば労働力人口は1.4%増加し、GDPは0.7%押し上げられると試算されています。

女性は就職しても、出産や育児で退職せざるを得ない場合が多いのが現状です。しかし、企業や国が制度を整え、女性が働きやすい環境を作ることが、ひいては誰もが働きやすい環境を作ることになるのではないでしょうか。

ジェンダーギャップ指数とは?日本の順位や取り組みを紹介

目標8「働きがいも経済成長も」取り組み事例や対策

ここまでは、雇用や労働環境、貧困等について世界と日本の現状と課題を見てきました。では、それらの問題を解決するにはどうしたら良いのでしょうか。

ここでは、具体的な対策や取り組みの事例を紹介します。

ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現するには?

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」を実現するためには、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進することが欠かせません。

長期的な経済成長を継続していくためには、生産性を高めた産業の拡大が必要となります。同時に、経済成長に欠かすことのできない労働者の収入や健康、教育、就業機会などを平等にし、不利な立場に置かれる人をなくすこと、そして人々が安心して生活できる環境を作ることが重要です。

日本労働組合総連合会では、自分の仕事がディーセント・ワークに当てはまっているかを確認する8つのチェックポイントを挙げています。あなたの仕事はすべてにあてはまっていますか?もし1つでも「No」があれが、あなたの仕事は働きがいのある人間らしい仕事ではないかもしれません。

ディーセント・ワーク8つのチェックポイント

1,安定して働く機会がある

2,収入は十分(生活し、今後に備えて貯蓄ができる賃金)である

3,仕事とプライベート(家庭生活)のバランスが取れている(長時間労働に苦しんでいない)

4,雇用保険、医療・年金制度に加入している

5,仕事で性別 (女性だから、男性だから)や性的指向・性自認による不当な扱いを受けたことはない

6,仕事で身体的、精神的危険を感じることはない

7,働く人の権利が保障されていて(組合に入れる、作れる、会社と交渉できる)、職場での相談先がある

8,自己の成長、働きがいを感じることができる

日本労働組合総同連合会
ディーセント・ワークとは

長時間労働に苦しむことなく、保障された安全な環境で、やりがいを感じながら働くことを目指すための指標

日本では2019年に「働き方改革関連法」が施行されました。同一労働同一賃金によって立場の違いによる収入の格差をなくし、非正規雇用労働者の待遇改善を目指しています。長時間労働の問題にも取り組み、近年ではますます「ワーク・ライフ・バランス」を整えようとする動きが盛んになってきました。

国や企業が制度を整え、私たちはそれを実践できるよう、ディーセント・ワークの実現に向けてみんなで努力していく必要があります。

>>働きやすい職場づくり関連ワード…「ダイバーシティ」とは

日本の団体/企業の取り組み事例

最近では、SDGsに沿った目標を掲げる企業が増えてきました。その中でも、目標8に関わる具体的な事例を紹介します。

日本郵政株式会社

日本郵政株式会社では、従業員一人ひとりがいきいきと能力を十分に発揮し活躍できることを目標に、人材の育成と働き方改革に取り組んでいます。具体的には以下の項目を挙げています。

  • キャリアパスに応じた研修
  • グループ合同研修
  • 女性活躍推進
  • 障害者雇用の推進
  • 性の多様性(LGBT)の理解促進
  • 育児休業・介護休業取得推進
  • 働き方改革(労働時間削減等)
  • 従業員の健康保持・増進

女性活躍推進の具体的目標として、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険では女性管理者の比率を14%以上にすることとしています。

ヤクルトグループ

ヤクルトグループでは、事業分野別にSDGsの取り組み目標を掲げています。中でも目標8に該当するものを紹介します。

調達分野
  • 持続可能な「調達」に取り組む
  • 労働環境にも配慮した「調達」を行う
生産分野
  • 持続可能な「生産」に取り組む
  • 生産工場等の適正な雇用を確保する
販売分野
  • 健康に貢献する商品の「販売」・お届けを行う
  • ヤクルトレディの就労環境の整備を図る
  • 女性の能力向上を図る

また、従業員にSDGsを自分ごととして考えてもらうために、自分とかかわりが深いものを選択し、『My 「SDGs」行動宣言』を考え、発表してもらう取り組みも行っています。自分にできることで貢献しようという社内での啓発活動です。

IDEC株式会社

制御機器メーカーIDEC(アイデック)株式会社では、事業分野、主要製品を通じてSDGsに貢献する取り組みを行っています。

例えば、センサや自動認識機器を開発することで、人手不足や生産性向上のための自動化を図ります。安全関連機器を開発することは、産業事故を撲滅することへつながります。

IDECは事業活動を通じて、経済的・社会的価値を生み出し、目標8に貢献することを目指しているのです。

また、SDGsに対する従業員の認知度と理解を高めるため、社内研修ワークショップなどを積極的に行っています。

日本から開発途上国への援助「ODA」

目標8で欠かせない「経済成長」のために、日本政府は世界の開発途上国援助に積極的です。途上国への開発協力を、ODA(Official Development Assistance:政府開発援助)と言い、毎年資金援助を行っています。

途上国の経済成長を向上させるためには、インフラ整備が不可欠です。インフラを整備することが中長期的に貧困を解決し、人々の暮らしを豊かにすることにつながるからです。

【主要援助国のODA実績の推移】

出典:外務省

2018年時点で、日本のODA支出は172億ドル(1ドル108円として約1兆8,576億円)で、アメリカ、ドイツ、イギリスに次いで世界第4位です。

目標8では、特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を目標に掲げているため、日本のODAは目標達成に向けて貢献していると言えるでしょう。

ODA(政府開発援助)とは?取り組み事例やSDGsとの関連も

世界の団体/企業の取り組み事例

海外の企業・団体の取り組み事例も2つ紹介しておきます。

テトラ・パック社

スウェーデンの食品容器大手であるテトラ・パック社では、途上国において、品質の高い牛乳を適切に市場に売り出すことによって、現地の人々の収入を増加するなどの取り組みを行っています。

10億人近い人々が、小規模な自営農地や家族だけで数頭の牛を飼育しながら生産しています。しかし、小規模農家が適切に市場にアクセスすることができないことから、牛乳の多くが加工されずに廃棄されてしまっていました。

テトラ・パック社では、独自の「デイリーハブモデル」を打ち出し、小規模農家乳牛メーカーと結びつけることで、品質の高い牛乳を長期的に供給する事業に取り組んでいます。

例えば、バングラデシュの小規模農家は、牛乳生産量を4.45リットルから10.8リットル(143%)の増産に成功し、月収も大幅に上昇しました。

テトラ・パック社のこの取り組みは、途上国への直接支援や技術革新による牛乳生産量の増加や安定供給(生産性の向上)に貢献しています。

国際労働機関(ILO)

目標8で重要と位置付けられている「ディーセント・ワーク」の実現は、この言葉が初めて使われたILOにとって活動の軸となるものです。世界中の国々で次のような取り組みを行っています。

  • 児童労働をなくすためのプロジェクトを実施
  • 社会保障制度の策定と拡大
  • 雇用集約型投資
  • より良い仕事で労働環境の改善

例えば児童労働については60以上もの国が自国の法律をILOの児童労働条約に合わせて修正しており、世界の児童労働の削減に大きく貢献しています。児童労働に従事している子どもの数は、2000年の2億4600万人から、2017年には1億5200万人と、30%も減少させることに成功しています。

出典:国際労働機関(ILO) 

働き方の現状を知り、環境を変えるため、私たちにできること

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」の目的や課題、日本や世界の取り組みを見てきました。しかし、問題が大きすぎて自分にできることなどないのではないか、と感じてしまう方もいるのではないでしょうか。

そんなことはありません。私たち一人ひとりが、普段の生活の中でできる取り組みもたくさんあります。

フェアトレード商品を購入する

フェアトレード商品とは

公平・公正な取引と認定された商品を指します。フェアトレード商品を購入することによって、児童労働や不当に労働力を搾取することに加担するこなく、生産者の安定した生活を支えることができるのです。

フェアトレード商品と認定されたものには、認証ラベルが付いています。フェアトレード商品には、チョコレートやコーヒー、紅茶、ワイン、果物、コットン製品などがあります。

フェアトレード商品を買うことは、日本にいながら世界の人々の労働環境の改善に貢献できる、とても身近な方法の1つなのです。

最近では、普通のスーパーでもフェアトレードマークのついた商品を見かけることが増えてきました。見つけたときはぜひ手に取ってみてください。

フェアトレードとは?背景や明日から消費に活かすポイントも

地産地消で地元の経済を回す

日本の経済をよりよくするためにも、私たちにできることがあります。

それは、国産の商品を購入する、地元で取れた野菜を購入する、などの「地産地消」を心掛けることです。

輸入商品を購入すればお金は海外に流れ、国内経済への影響力は少なくなってしまいます。国内や地元で生産された商品・サービスを購入すれば、地域の経済を活性化させ、さらには地域の雇用を生むことにまで貢献できます。

野菜の地産地消においては、学校給食や福祉施設で地元の野菜を使う取り組みが各地で行われています。これも地元の野菜を買うことで地域の農家を支援することにつながるのです。

また、地産地消では商品を遠くへ、あるいは遠くから運ぶ必要がないので、輸送で排出されるCO2を削減できるという地球環境への配慮にもつながります。

地産地消とは?SDGsとの関係や最近話題の道の駅事例まで

ESG投資を行う

ESGとは

Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス・企業統治)の頭文字を取ったもので、最近SDGsと共に注目度が増しています。

ESG投資は投資をする際に、その企業が「儲かっているか」「財務状況は良いか」といったことだけではなく、「環境への取り組みを行っているか」「従業員は働きやすい環境にあるか」「地域社会に貢献しているか」などの視点で投資先を選択する方法です。

通常の投資ではなくESG投資を行うことで、SDGsに取り組んでいる企業を応援する形になり、投資によって社会貢献をすることができます。

働き方改革で、誰もが働きやすい環境に

少子高齢化が進み、労働力人口が減少している日本では、早急な労働力の確保生産性の向上が必要です。2019年に施行された「働き方改革関連法」では、「労働の質を向上させること」「労働の量を維持すること」という項目で具体的な目標を掲げています。

  • 労働の質を向上させること・・・長時間労働をなくし、生産性を上げる努力をしましょう。
  • 労働の量を維持すること・・・・女性が出産や育児で離職してしまうことを防ぎ、誰もが働きやすい環境を整えることで日本全体の労働力を維持しましょう。

とは言え、国がどれだけ法律を作り、国民に伝えても、実際に働く私たち一人ひとりの意識が変わらないと現場はなかなか変わりません。

あなたがもし管理職なら、率先して残業せず定時で帰るすることで、部下が帰りやすい職場の雰囲気を作ることができるでしょう。産休や育休を取りにくい雰囲気の会社なら、あなたが最初の育休取得者になることによって、後に続く人が出てくるかもしれません。

まとめ

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」について解説しました。

私たちを取り巻く課題は、

  • 世界の貧困
  • 低い経済成長率
  • 児童労働
  • 若者の失業率
  • ジェンダー格差
  • 長時間労働

など、まだまだたくさんあります。

しかし、一人ひとりが「ディーセント・ワーク=働きがいのある人間らしい仕事」を意識し、行動していくことによって、社会は変えることができます!

  • 国や企業が行う取り組みを応援する
  • この記事で得た知識を、家族や友人に話す
  • フェアトレード商品や地元のものを意識して購入する
  • ESG投資を意識してみる
  • 自分の働いている会社で雰囲気づくりに心がける

など、私たちの身のまわりでできることもたくさんあります。

児童労働や貧困問題など、目を背けてしまいたくなるかもしれません。しかし、世界や日本の状況を正しく知ることは、「今私たちに何ができるのか?」を考える第一歩となります。1人の行動はとても小さなことかもしれませんが、多くの人が一緒に行動を起こせば大きなインパクトになります。

ぜひ私たちと一緒に、より良い未来に向けて行動しませんか。