北川 竜太 取締役
2010年04月 (株)日本総合研究所 入社
2014年01月 当社 入社
2014年11月 中央電力エナジー(株) 代表取締役社長就任(現)
2015年06月 当社 取締役就任(現)
2021年01月 中央電力DX(株) 取締役就任
目次
Introduction
マンション1棟分の電気を一括購入することで、工場や商業施設などが利用している高圧契約が結べ、居住者の電気料金が安く抑えられるマンション一括受電サービス。このサービスで国内トップクラスのシェアを誇るのが中央電力株式会社です。
同社は他にも、カーボンニュートラルに積極的に取り組み、再生可能エネルギーの拡充を進めるなど、環境に配慮した事業を展開しています。今回、事業内容や今後の展望について、北川さんからお話を伺いました。
マンション一括受電から電力小売へ事業を拡大
-まずは事業内容を教えてください。
北川さん:
中央電力の事業の柱は、2004年に始めたマンション一括受電サービスです。それに続く形で、2014年に電力の小売事業に参入しました。これは、既存の大手電力会社から契約を切り替えていただくことで、電気をお得にご利用いただけるサービスです。現在、新電力と呼ばれる新たな電力会社が全国で約700社あり、その中で我々は、50〜60番目に位置しています。
-電気はどのように届けられているのでしょうか?
北川さん:
地域の電力会社の送配電網(電柱や電線)を使って供給します。そのため、契約先を変更することで、停電しやすくなるなど電気の品質が変わることはありません。
-新電力というと、最近は一般家庭でよく使われている印象があります。
北川さん:
それは、2016年に電力小売事業への参入が全面自由化されたことが関係しています。規模の小さい「低圧」と呼ばれる一般家庭などの電力も自由化されたことで、携帯キャリアやガス会社など、電気と他のインフラをセットにしたサービスが増えました。ただ、我々は、一般家庭ではなく、ビルや工場など中堅・中小企業のお客様を対象に事業を展開しています。
-それはなぜですか?
北川さん:
一般家庭向けには、他のインフラとのセット販売に加えて、他にも様々な分野の企業が参入し、価格競争が激しい上に、差別化も難しくなっています。また、大規模ビルや工場に対しては、すでに地域の電力会社がかなりお得な料金で電気を販売しています。そこで我々は、地域の電力会社の手が届かない中小規模のビルや工場を潜在的なお客様として設定しました。2014年に東京電力エリアから事業を始め、2022年6月現在、沖縄と離島を除く全国で、中央電力のサービスをご利用いただけるようになりました。
再生可能エネルギー等、環境に配慮して作られた電気を使う「環境メニュー」を提供
-続いては、中央電力が電力小売にも事業を拡大した背景を教えてください。
北川さん:
最初は、2014年に一括受電を導入したマンションに電気を届けるところからスタートしました。電力の調達や需給の管理を行う部門を社内に作り、日々のオペレーションに関する仕組み・体制を構築しました。折角の仕組みや体制ができたのであれば、マンション以外の一般のお客様にも電力を供給しようと考えたことがきっかけです。
開始当初は、電気料金を少しでも安くしたい、ということでお引き合いをいただきましたが、最近では法人分野を中心にカーボンニュートラルへの動きが、大企業だけでなく中小企業にも広がってきています。
-カーボンニュートラルや脱炭素への取り組みが進む中、環境に配慮した電力の提供は不可欠ですよね。
北川さん:
そうですね。我々は、お客様のカーボンニュートラルに向けた動きをサポートするために環境メニューの提供を始めています。これは、再生可能エネルギーの電気を供給するものなど複数のメニューで構成させ、お客様のニーズに合わせて選んでいただけます。2021年の下期は、新規に契約頂いた25%のお客様に環境メニューを選んでいただきました。
-環境メニューを選択する企業が増えたのはなぜですか?
北川さん:
アップルなどのグローバル企業や国内の大手企業が「今後は再エネを使用している会社としか取引しない」と声を挙げ始めたことが大きいと思います。2021年頃から、大手企業だけでなく、それらの企業に商品を納めているサプライヤー企業からも再生可能エネルギーを使いたいという声をいただくようになりました。
「じこたくサポート」は再エネ価格高騰に備えて今からできる対策
-契約してからサービス開始までの期間はどの程度かかるのでしょう?また、一般メニューと比較して、金額の違いはありますか?
北川さん:
サービス開始までの期間は一般のメニューと同じく、契約から2週間から1か月程度で、供給する電力会社が中央電力に変わると同時に、再エネの電気を使っていただけます。一概には言えませんが、通常メニューに比べて、5%程度高い傾向にあると思います。ただ、各企業が2030年や2050年に向けてカーボンニュートラルの目標を達成しようとすると、再エネの電気が不足し、価格が高騰すると予想しています。
-駆け込み需要で、価格が上がる可能性があるんですね。
北川さん:
はい。日本全体の再エネの電気には限りがあり、現状はまだ供給量に余裕がありますが、今後、需要が高まれば価格が必ず上がります。将来にわたって再エネの電気を安定的に調達するためには、電力会社から再エネの電気を買う以外の選択肢を持つことが大切になります。
-どのような方法があるのでしょうか?
北川さん:
一番シンプルな方法は、ビルや工場の屋根の上などに太陽光パネルを設置し、自家消費を行う方法です。電力会社から買う電気を太陽光パネルが発電する分だけ減らすことができ、多くの企業で導入が進んでいます。
ただ、屋根の形状や耐久性の観点から太陽光パネルが設置できないケースも多く、また、屋根の大きさにも限りがあることから、敷地内の太陽光パネルで賄える電力は全体の10%程度に留まることが課題です。
そこで我々は、その課題を解決する新たなサービスとして「じこたくサポート」を開発しました。
-詳しく教えてください。
北川さん:
自己託送という地域の電力会社の送配電網を借りて、遠隔地の自分たちの発電所から、実際に電気を使う場所(工場やビル等)まで電気を運ぶことができる仕組みがあります。この仕組みを利用することで、例えば、遠隔地に作った太陽光発電所で発電した電気を、送配電網の利用料を支払うことで、屋根に設置した太陽光パネルによる自家消費と同じように使うことができます。
「じこたくサポート」は、お客様がこの仕組みを活用できるよう、包括的に支援するサービスです。
-具体的にはどのようなサービスを提供されるのですか?
北川さん:
お客様(需要家)が自己託送を行うために必要となる業務のほぼ全てを実施します。
具体的には、太陽光発電所を設置する土地の準備、その開発やO&M(オペレーションとメンテナンス)、設備の保有に加え、送配電網を利用するための各種手続きや日々の発電予測、計画提出など多岐に渡ります。
我々は、リース会社である三菱HCキャピタルと2021年10月に「じこたくサポート」を展開する合同会社リネッツを設立しました。「じこたくサポート」をご利用いただくことで、電気事業の経験のないお客様でも太陽光発電を活用した自己託送に取り組むことが可能となります。
-じこたくサポートのように、自己託送の業務委託を行う会社は多いのでしょうか?
北川さん:
電力小売事業と違い、多くはありません。10社もないのではないでしょうか。サービスを提供するために必要な機能が、多岐に渡ることが理由の一つだと思います。
我々は、三菱HCキャピタルの再エネ発電所に関するファイナンスやファシリティマネジメントのノウハウと、中央電力の電力小売事業に基づくオペレーションやリスクマネジメントのノウハウを組み合わせることでサービスの提供が可能となっています。
環境負荷の少ない再生可能エネルギーの拡大にこだわる
-リネッツが準備する再エネ発電所は、どのようなものなのでしょうか?
北川さん:
リネッツは、環境負荷の少ない再生可能エネルギーの普及・拡大にもこだわっており、耕作放棄地などを利用した小規模な太陽光発電所の開発に注力しています。ひとつひとつは、テニスコートよりも少し大きいくらいの土地ですが、たくさんの場所に設置することで、お客様の必要な電力を発電します。
-じこたくサポートの反響はいかがでしょうか?
北川さん:
実は、じこたくサポートの最初の顧客は中央電力です。マンション一括受電サービスで電力供給を受ける際の名義人は中央電力なので、マンションに使うための発電所を作っています。2022年10月から順次運転を開始し、年度内には約100か所が稼働する予定です。
サービスのリリース以降、様々な企業に関心を持っていただいており、中央電力での実績をもとに、来年度には他の企業でもじこたくサポートの提供が開始できると考えています。
-スピード感もそうですが、壮大なテーマにチャレンジしていることに驚かされます。
北川さん:
カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの電力はまだまだ足りません。環境負荷の少ない小規模な太陽光発電を広げることに、我々はこれからも挑戦していきます。
-今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございます。
中央電力 公式サイト https://denryoku.co.jp/