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特定非営利活動法人コンフロントワールド|ボランティアのみで社会課題の解決に立ち向かい「不条理の無い世界の実現」を目指す!

特定非営利活動法人コンフロントワールド

特定非営利活動法人コンフロントワールド 代表 荒井昭則さん インタビュー

荒井昭則 (Arai Akinori)

1994年生まれ、東京都出身。国際協力NPO法人「コンフロントワールド」の代表理事。大学在学中、カンボジアでの衛生教育活動に参加し、その後『ボランティアをしながら世界一周』に挑戦。スリランカ、ケニア、アイスランドなどでボランティア活動を行い、現地コミュニティと密接に関わりながら国際協力の現場を学ぶ。
大学卒業後は大手人材企業に勤務する傍ら、NPO法人コンフロントワールドを設立。ウガンダ共和国での貯水タンク・トイレ建設、タンザニアでの小学校建設支援をはじめ、ペルー刑務所発ファッションブランドの日本展開など、多岐にわたる国際協力活動を展開しています。
これまでの活動が評価され、ワールド・ビジョン・ジャパン主催「未来ドラフト」でグランプリを受賞。著書『副業で世界を変える方法 週末でアフリカに学校や貯水タンクを建設した会社員の物語』では、会社員として働きながら国際協力に取り組む自らの体験を綴っている。

introduction

特定非営利活動法人コンフロントワールド(以下コンフロントワールド)は、ウガンダ共和国やタンザニア連合共和国などで、貯水タンクやトイレ、学校の建設といった支援を行っている団体です。

メンバー全員が学業や仕事と兼業で活動していることが大きな特徴です。

今回は、「不条理の無い世界の実現」を目標に活動している、コンフロントワールドの代表、荒井昭則さんに活動の詳細や今後の展望などを伺いました。

立ち向かい、誰のせいにもできない不条理な世界を変えたい 

–まずはじめに、コンフロントワールドのご紹介をお願いします。

荒井さん:

コンフロントワールドは、ウガンダ共和国での水衛生支援(貯水タンク建設・トイレ建設・石鹸生産)、タンザニア連合共和国での教育支援(小学校の建設・保育施設の経営支援)、ペルー共和国の刑務所発ファッションブランドの日本販売などを行っている国際協力NGOです。

「不条理の無い世界の実現=生活と権利が保障され、誰もが自分で未来を決められる社会の実現」を目指し、2つのミッションである「紛争・貧困などによって困難な状況にある人々の自律を後押しする」「情報と選択肢を届け、人々の社会貢献を後押しする」を掲げ、学生・社会人スタッフが力を合わせ活動しています。

–団体名にはどのような思いが込められているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

荒井さん:

コンフロント(Confront)には、「立ち向かう」という意味があります。また、ワールド(World)は、不条理のない世界を指していて、不条理のない世界の実現のために立ち向かっていくという意味を込めています。

「不条理」と似た言葉に「理不尽」という言葉があります。

理不尽なこととは、自分には非がないのに、他人から被る被害のようなもの。簡単に言えば誰かのせいにできることだと思うんです。たとえばパワハラや近所からの騒音などのようなものですね。

対して、私たちが考える「不条理」は、もしかしたら、歴史を遡れば戦争や紛争などに起因しているかもしれませんが、現在は基本的には誰かのせいにすることができないことだと考えています。たとえば、生まれた国の貧しさや、生まれた家に水やトイレがないなどのようなことです。

私たちは、このような誰のせいにも出来ない不条理だと思えることに立ち向かい、世界を変えていきたいと考えています。

–不条理の無い世界を実現したいと思ったきっかけが何かあったのですか。

荒井さん:

きっかけは、一年間大学を休学して、ボランティアをしながら世界を周っていたときの体験です。

私は、学生時代に海外ボランティア活動を行う学生団体に所属していました。

そのときの活動がとても楽しかったので、休学してボランティアの旅に出ました。

そんな中、ケニアの孤児院で手伝いをしているときに、子どもが一人亡くなってしまったんです。日本では決して死なないはずの風邪や栄養失調で命を落とす子どもを目の当たりにしました。「なぜ生まれた場所によって生きることができない子どもがいるのか」と考えさせられました。

私は、それまでの人生の中で、社会になじめない時期があり、死んでしまいたいと考えていたことがありました。しかし、怖くて死ねなかったんです。でも、ケニアの孤児院の命を落とした子どもは、生きたくても生きられなかった。そのときに、誰のせいにもできずに死んでしまう不条理さを強く感じ、ひとりでも多く、命を失う人を減らしたいと思ったんです。

そして、社会人になった後の2017年に、仲間と一緒にこの団体を立ち上げました。2018年にはNPO法人として運営を開始しています。

《ボランティアの旅》

自分達の常識の押し付けでなく現地の意思を後押しする

–コンフロントワールドの活動には、何か特徴はありますか。

荒井さん:

学生や社会人が全員副業・兼業で活動しているのが大きな特徴だと思います。

私も、会社員として働きながら、就業後や休日にNPO活動をしています。

私自身は、会社員とNPO活動を合わせると365日休みがなく、大変なことも多く、つらく感じることもありますが、自分の命をどう使ったか、どれだけの人を助けられたかという使命感で活動しています。ゴールデンウィークにはウガンダに行ったり、有休をとって、活動を検討しているカンボジアに視察に行ったりと忙しい毎日です。

メンバーは比較的若く、ボランティアで活動しているユニークな団体で、株式会社では採算が合わないような、社会・公共の利益を目指しています。

出展:コンフロントワールド

もう一つは、現地の人達の思いや文化に根ざした活動を後押ししていることです。

私たちのミッション、「紛争・貧困などによって困難な状況にある人々の自律を後押しする」「情報と選択肢を届け、人々の社会貢献を後押しする」は、両方とも「後押しする」という言葉が入っています。

日本人の価値観や思想を押し付けることなく、現地の人たちと一緒に活動することや、社会貢献したいと思っている人たちを後押しすることを目指しています。

具体的に言うと、たとえば学校を作りたいと考えたら、現地で活動する組織やNGOを選んで一緒に取り組めるように手配し、現地の意図を汲んで、資金調達や資金管理、年間・月間計画、スケジュール管理などを行います。

資金さえあればいいかというとそんなことはなく、たとえ莫大な寄付があったとしても、それを有効に、計画的に使えるスキルが必要なんです。

現地の人たちだけでは、難しいこともありますから、私たちは、活動の計画からすべて現地の人たちと話し合い、一緒に取り組んでいます。現地のNGOのレベルアップの手助けも、私たちの役割だと考えています。

今注力しているのは、ウガンダ共和国での水衛生支援ですが、たとえばトイレの設置などの場合も、日本の常識で考えるのではなく、現地の常識を考慮しながら、他国の事例なども少しづつ提供するようにしています。

–では、注力しているウガンダ共和国での水衛生支援について、詳しくお聞かせいただけますか。ウガンダの水事情はどうなっているのでしょうか。

荒井さん:

まず、世界的な水・トイレ事情としては、約半分の人たちが水へのアクセスがなく、トイレを使えない状況と言われています。

出展:コンフロントワールド

参照:ユニセフ https://data.unicef.org/resources/jmp-report-2023/

出展:コンフロントワールド

参照:ウォーターエイド https://www.wateraid.org/jp/crisis/sanitation

ウガンダもほぼ同じような状況で、約半数の家には水やトイレがありません。電気やガスもありませんし、家庭だけでなく、学校にも水やトイレがないところも多いんです。

この状況を改善するために、私たちは、現在ウガンダのブタンバラ県という農村部で活動しています。ブタンバラ県は、首都カンパラから2〜3時間離れた、決して裕福とは言えないエリアです。

子どもたちは一日2回、遠いところだと片道2時間かけ水を汲みに行くのが日課で、そのために学校に通えない子どもたちがたくさんいるような地域です。

私たちは、ボランティア活動をしてきた中で、ミレニアム開発目標(MDGs)のころからSDGsの取り組みを意識しています。

さらにはSDGsの目標だけでなく、ターゲットまで詳細に意識して活動をしています。

このブタンバラ県での水衛生支援は、以下の目標達成に取り組むものです。

目標6「安全な水とトイレを世界に」

ターゲット6.1「2030年までに、すべての人々が等しく、安全で入手可能な価格の飲料水を利用できるようにする」

ターゲット6.2「2030年までに、女性や少女、状況の変化の影響を受けやすい人々のニーズに特に注意を向けながら、すべての人々が適切・公平に下水施設・衛生施設を利用できるようにし、屋外での排出をなくす」

水とトイレ 生命を維持し人間の尊厳を高めるもの

–では具体的に、どのような活動をしているのか、お聞かせください。

荒井さん:

まず、水に関しては、小学校に1万2,000リットルくらい入る、雨水をためる水タンクを建設しています。同時に学校の中に、簡易的なろ過装置や浄水フィルターの設置にも取り組んでいます。

今まで何時間もかけて汲みに行っていた水が、学校で手に入るというのが重要で、このために学校に通える子どもたちが増え、教育が受けられるようになりました。もちろん、その地域の人たちも水が使えるようになりました。

また、建設後は住民が管理し、持続的に使えるように、管理委員会を設置し、自律の後押しをしています。

そして、水が使えるようになった後、手洗いの仕方も教えています。

ユニセフが推奨している6種類の手洗いがあるんですね。その手洗いを学んで実践してもらっています。

出展:コンフロントワールド

水が手に入るまでは、手洗いの習慣はなかったのではないかと思います。その中で、蛇口から水が出る手洗い装置を作ったことで、手洗いを習慣化できるようにしました。手洗いに使う石鹸もコンフロントワールドで生産しています。

《手洗い装置と石鹸》

–トイレについてはどのような取り組みをされているのでしょうか。

荒井さん:

ブタンバラ県では、草むらに穴を掘り、屋外排出している家族が大勢います。

トイレへの転落事故が起きたり、女の子はトイレの姿を見られたくなくて暗くなってからトイレに行ったり、ハエが大量に発生して病気を媒介し、亡くなる子どもがいたりします。

《屋外につくられたトイレ》

私たちは、プライバシーが守れるような作りで、内側からカギがかけられる、安心して使えるトイレを各家庭に建設しています。

トイレを建設する家庭は、現地のヘルスケアセンターや診療所とNGOが提携して選びます。SDGsのターゲット6.2にあるように、主に病気の人、シングルマザー、経済的により厳しい人など、より弱い立場にある人たちの家庭を選んでいます。

トイレが設置されると、衛生面が改善され、健康になったとの声をよく聞きます。ほかにも、トイレがなかったために家に人を呼べなかったけれど、設置したことで人を呼べるようになり、コミュニティでも認められるようになったという話を聞きました。

トイレは、衛生面だけでなく、人の尊厳も高めるもので、大事なものなんだということを活動を通して知ることができました。

課題解決が民主化された世界を作りたい

–支援を受けている現地の方々や、一緒に活動しているNGOの方の反応はいかがですか。

荒井さん:

現地の人たちは、小規模農家や自営業のような人たちばかりで、水源が近くに欲しいとか、トイレを作りたいと思っても訴えるところがどこにもないんです。行政でさえ困っていることが多いんです。

ですから、やはりとても喜んでくれています。私たちが活動することで、今まであきらめていたこと、「子どもに教育を受けさせる・病気が減る・人の尊厳が保てる」というようなことが実現でき、これは私の主観ですが、未来に希望を持てるようになっているんじゃないかと感じています。

そして、一緒に活動しているNGOの人たちですが、取り組みを始めた当初は、質問しても今よりも手ごたえのない返答しか返ってきませんでした。しかし、何年も一緒に活動する中で、使命感や責任感が出てきて、地域や各家庭の具体的な課題なども把握し、自分の地域・国を良くしたいと、じぶんごと化するようになってきているので、それがとても嬉しいと思っています。

《現地NGO JEDOVC(ジェドヴィック)》

–では、最後に今後どのように活動していきたいか、展望をお聞かせください。

荒井さん:

今まで、メンバーには専門性のある人がいませんでした。

たとえばトイレ事情に精通する研究者とか、衛生面や設計の専門家などにも参加してもらえたらと考えています。専門家でなくても、多角的な視点で物事を見られる人にも参加してもらいたいですね。

また、PR活動にも力を入れ、コンフロントワールドの活動を多くの方に知ってもらいたいです。

「不条理の無い世界の実現」はすごく大きな目標で、とてつもなく長い道のりだと思います。ですから、出来るだけ多くの日本人を巻き込んで、活動したいと考えています。

正直に言うと、活動を始めたときはここまでやれるとは思ってもみませんでした。でも、今はかなり活動の範囲を広げられていると感じています。

もちろん、このままウガンダやタンザニアなどの支援を続けながら、今起きている社会問題で、私たちができることはしていきたいですね。

「課題解決の民主化」と言っていますが、社会課題の解決のために、社会問題の専門家だけに任せず、プロボノ(仕事上の知識やスキルを無償で提供する社会貢献活動)やボランティアなど何らかの活動をする人たちをどんどん増やしたいと思います。

課題解決が民主化された世の中をつくっていきたいと考えています。

–本日は貴重なお話をありがとうございました。

関連サイト:

コンフロントワールド公式サイト:https://confrontworld.org/
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