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ダイバーシティ(多様性)とは?語源とインクルージョンとの違いを簡単に解説

ダイバーシティの意味とは?多様性が尊重される理由と日本や海外の事例やSDGsとの関連を紹介

近年、政治や文化などのグローバル化が進む中で、「ダイバーシティ」という言葉が注目を集めています。ビジネスにおいても市場環境の国際化により多種多様な経営戦略が求められており、経営計画の中にダイバーシティの推進を掲げる企業も増えています。

しかし、ダイバーシティとは具体的に何を意味しているのか分からない方も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、ダイバーシティの基本知識や国・企業による取り組み、SDGsとの関わりなどについて解説していきます。

目次

ダイバーシティとは?

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ダイバーシティとは、多様性・多種多様性のことです。

ダイバーシティ(diversity)は、ある集団において、

  • 年齢
  • 人種
  • 宗教
  • 学歴
  • 性的傾向
  • 障がいの有無

などといった様々な違いや傾向を持つ人々が集まった状態のことを表します!

中でも、ビジネスシーンでのダイバーシティは、人々の多様な違いを積極的に活用しようという動きのことです。これをダイバーシティ経営(ダイバーシティマネジメント)と呼びます。

多様性を生かした経営

ダイバーシティ経営は、組織の生産性を高める他、企業のブランディングの向上にも繋がります。そのため、積極的にダイバーシティを推進していることを宣伝する企業が増えています。経済産業省も「ダイバーシティ経営企業100選」を実施するなど、ダイバーシティ経営を推進しています。

ダイバーシティの2つの種類

ダイバーシティには、表層的な属性と深層的な属性の2種類が存在します。ダイバーシティ経営を取り入れる際には、両者の特徴を理解しておくと良いでしょう!

①表層的な属性

「表層的な属性」とは、他者から見えやすい部分の属性を意味します。具体的には、

  • 性別
  • 国籍
  • 人種
  • 性的傾向
  • 障がいの有無
  • 民族的な伝統

などであり、自分の意思で変えられない、もしくは変えることは難しいのが特徴です。

②深層的な属性

「深層的な属性」とは、内面的な部分の属性のことであり、

  • 職務経験
  • 家庭環境
  • 考え方
  • 教育
  • 宗教
  • 働き方
  • コミュニケーション能力
  • 言語

などが挙げられます。これらは目で見えないものであるため、他者に見落とされやすく、そのことがかえってミスコミュニケーションなどの問題を引き起こす側面があります。そのため、深層的なダイバーシティをしっかりと理解し活用していくことは、企業にとって大きな課題と言えるでしょう

まとめるとダイバーシティとは、表層的なからだの性別や障害などの特徴や内面的な職務経験や宗教などの属性などの多様性を指します。

ダイバーシティとインクルージョンの違いとは?

ダイバーシティと似た言葉に「インクルージョン(inclusion)」があります。

インクルージョンは、日本語では「包摂(ほうせつ)」と訳され、全ての人々を包み込むことを意味します。高齢者や障がい者など、社会的に弱い立場と言われる人々を社会の一員として受け入れ、共生するという理念です。

多様な人材を受け入れるという点がダイバーシティとインクルージョンの共通点ですが、ダイバーシティが多様性を受け入れた状態を指すのに対し、インクルージョンではさらにそれらの多様性が活かされていることを指します。

つまり、インクルージョンとは、ダイバーシティが達成された上で目指すことができる社会の在り方、と言えるのです。

ダイバーシティの歴史

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ここからはダイバーシティの歴史を見ていきましょう。

1960年代~1970年代にアメリカで発生

ダイバーシティという概念は1960年代のアメリカで生まれました。

1960年キング牧師が人種差別撤廃を訴えて行った演説は現代にも語り継がれるほど有名です。

この演説に代表されるように当時のアメリカでは人種差別や女性差別撤廃に関する運動が活発に行われており、その結果1964年には公民権法が成立しました。

公民権法は、雇用における差別を撤廃するよう規定しており、これにより性別や人種にかかわらず皆平等に雇用の機会があるべきだという考え、つまりダイバーシティの概念が生まれたのです。

しかし、企業は必ずしもダイバーシティ推進に積極的に取り組んだわけではありません。当時は、差別による訴訟を回避するために社会的弱者と呼ばれる人々を組織に受け入れ始めたという実態がありました。

1980年代に入りダイバーシティを強みにする企業が増加

1980年代に入ると、人種や性別の違いに価値を見出す企業が増えてきました。マイノリティならではの価値観や視点は、商品の開発に役に立つとされたからです。

本当の意味でのダイバーシティはこの時代から始まったと言えるでしょう。

また、この時代では同時に、ダイバーシティを推進することは社会的責任だという潮流が発生し始めました。多様な人材を受け入れると企業のイメージアップにも繋がるため、多くの組織がダイバーシティを経営戦略の一部として考えるようになったのです。

このようにしてダイバーシティの受容は進み、新しい価値を生み出す為の戦略として定着していきました。

日本でもダイバーシティの概念が認識され始める

1980年代、日本でもダイバーシティの概念が認識され始めます。

当時の日本は、家文化による男性主義を背景に、企業内でも男性を優先した採用や昇格が行われるといった男女の雇用差別が行われていました。

そんな社会に変化が訪れたきっかけは、1985年に定められた「男女雇用機会均等法」でした。募集や採用、昇進など雇用に関して男女間の差別を禁止するこの法律が制定され、女性の社会進出が進んでいったのです。

また、1999年には「男女共同参画社会基本法」が成立。「男女平等を目指す」という点は共通していますが、男女雇用機会均等法が雇用に関してのみ述べられている一方で、男女共同参画社会基本法は社会活動全般に関しての法律となっています。

これらの法律の制定により男女の間における待遇の平等化が進み、ダイバーシティという考えが広まり始めました。

さらに、2000年に入ると、少子高齢化による労働力人口の減少への対応海外を視野に入れた商品開発などのため、多くの企業がダイバーシティを推進するようになりました。男女平等に採用するだけでなく、障がい者や外国人の雇用にも積極的な企業が増えています。

ここまでダイバーシティの概念や歴史を確認してきました。

次からは、日本でダイバーシティが注目される理由を見てみましょう。

ダイバーシティの推進が注目されている理由

この章では、ダイバーシティが推進される理由を4つに分けて解説します。

労働力人口の減少

日本では、少子高齢化による労働力人口の減少と年金確保の困難が問題視されています。内閣府がまとめた「令和5年版高齢社会白書」によると、2022年の総人口のうち65歳以上の割合は20%近くを占めており、近年大きく上昇しています。同資料の推計によると今後も高齢者の割合は増加し続けると推計されています。

また、みずほ総合研究所は日本国内の労働力は2065年には2020年対比で約61%まで減少すると推測しています。

日本の企業は、労働人口を確保するためにも、女性や障がい者、外国人といった多様な人材を採用する必要に迫られているのです。

働き方と価値観の多様化

戦後、「必死に働くことが美」とされていた日本人の働き方は、ここ数年で大きく変わりました。働き方改革が進み、2019年には厚生労働省によって時間外労働の上限規制が定められました。以前は厚生労働大臣告示による行政指導のみでしたが、法律として時間外労働の上限が定められたことで、原則月45時間を超えての残業ができなくなったのです。

働き方改革は個々の価値観の多様化にも影響を与えています。最近では「ワークライフバランス」といった仕事と私生活を両立する考えが広まっています。

働き方や価値観の変化に合わせて、企業側もこれらのダイバーシティに対応できるマネジメントが求められるようになったのです。

企業のグローバル化

企業のグローバル化もダイバーシティが推進される理由の1つです。

日本企業の海外進出が進むにつれ、海外の言語や文化に対応できる人材が求められるようになりました。その結果、在住外国人や留学経験者など、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用する企業が増えています。

実際、総務省が2016年に行った調査によると、調査対象の約5割の企業が、10年前よりも多くのグローバル人材を採用したと回答しています。多様な価値観を持つ海外顧客のニーズに対応するため、国籍や人種を問わず、戦力となる優秀な人材の採用に力を注ぐようになったのです。

消費行動の多様化

近年、日本人の消費行動は多様化しています。経済産業省の報告によると、2000年においては「とにかく安く経済的な物を買う」という消費者が多かったのに対し、2015年には経済性よりも自身が共感できる商品・サービスを求める消費者が増加しました。また、環境や社会、地域に配慮した商品を購入する「エシカル消費」を意識する消費者は調査全体の約6割に登ることからも、経済性といった一律の価値のみでは購買意欲を掴めないことが分かります。

競争が激しい市場環境の中で生き残っていくためには、ダイバーシティによる柔軟な意思決定や組織変革により、消費行動の多様化に対応していくことが鍵となるのです。

ダイバーシティに対する日本の取り組み

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ダイバーシティは日本の安定した経済成長に大きく関わるため、国も積極的に推進しています。ここからは政府による取り組みを見ていきましょう。

経済産業省のガイドライン「ダイバーシティ2.0」

ダイバーシティ2.0」とは、経済産業省が中心となって2017年に策定した、ダイバーシティを組織内で推進するためのガイドラインです。

  • 1. 経営戦略への組み込み
  • 2. 推進体制の構築
  • 3. ガバナンスの改革
  • 4. 全社的な環境・ルールの整備
  • 5. 管理職の行動・意識改革
  • 6. 従業員の行動・意識改革
  • 7. 労働市場・資本市場への情報開示と対話

の7つの柱から成るこのガイドラインは、非常に細かく具体的なアクションが提示されています。ダイバーシティを推進したいけどどう始めたら良いか分からない場合においても参考となり、すぐに行動を起こせるものとなっています。

女性活躍推進法

女性活躍推進法」は2015年に制定された、性別に特化した法律です。

現在の日本は、育児を理由に働けていない女性が多いことや再就職するにあたっても元のキャリアに戻れず能力を活かせない、といった現状があります。また、社会全体における人手不足といった問題もあり、それらを解消するためにも、働きたいと思う女性が活躍できる社会を目指す必要があったのです。

制定当初は、301人以上の労働者がいる組織に、女性活躍に関する状況を届け出ることを義務付けるという法律でしたが、その後2019年に改正され、301人以上の企業から101人以上の企業へと範囲が広がっています。

他にも、女性の活躍推進に関する取り組みが優良な企業を認定する「えるぼし認定」を実施するなど、積極的に女性が働ける社会づくりを支えている法律となっています。

なでしこ銘柄

なでしこ銘柄」とは、経済産業省と東京証券取引所が共同するダイバーシティの取り組みです。これは先述したえるぼし認定と同様に、女性活躍推進に優れた上場企業を紹介するものであり、2012年より毎年実施されています。なでしこ銘柄に選ばれると企業のイメージアップに繋がるのはもちろんですが、他にも投資家の関心を一層高め、各社の取組を加速化していくことが期待されます。

選定は、東京証券取引所の全上場企業に対し女性活躍度調査のアンケートが実施され、女性取締役が1人以上いるかなどの項目を満たす企業に加点する方式です。

これまでに多くの企業がなでしこ銘柄・準なでしこ銘柄に選定されており、令和2年度においてはなでしこ銘柄は44社、準なでしこ銘柄は19社が選ばれています。

ダイバーシティ経営のメリット

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ここまでダイバーシティの歴史や国の取り組みなどを説明してきました。しかし経営サイドの方にとって一番気になることは、ダイバーシティ経営を取り入れた際の企業の利益ではないでしょうか。

そこでこの章では、ダイバーシティを推進することで企業が得られるメリットを紹介していきます。

人材確保ができ人手不足解消に繋がる

先述した通り、少子高齢化が進む日本では人材確保が困難になっていくと言われています。そこでダイバーシティを推進し、女性や外国人、障がい者などが働ける環境を整えれば採用の幅が広がり、多様な人材獲得を目指すことができます。

また、ダイバーシティの推進は企業の魅力を高めるため、求人に対する応募者の増加が見込めます。その結果、優秀な人材の確保がしやすくなり、最終的に人手不足解消にも繋がるでしょう。

海外進出に強い企業を目指せる

かつての日本の企業では、集団をまとめるために同一性を重視する傾向にありました。しかし、似たような環境で育った人材が集まれば創造的な発想は生まれづらくなります。年齢や性別、人種が異なる人材が集まり様々な視点を持つことで、革新的なアイディアが生まれやすくなります。

ダイバーシティを推進し多様な人材を採用することで、海外進出に強い企業を目指すことができるでしょう。

外的評価の向上

ダイバーシティを推進し多様な人材を採用することは、「差別なく働きやすい会社」「ホワイト企業」といった企業のイメージアップに繋がります。すぐに窓口が変わる企業は、業務引き継ぎの混乱などといった問題を招きかねず、取引先や顧客からの印象が下がる可能性があります。ダイバーシティを重視し従業員が働きやすい環境を作ることで、離職率が低くなり、取引先への印象も良くなるでしょう。

また、市場からの評価が高まることで、より多くの投資家の関心を得られるようになるメリットも生じます。

ダイバーシティ経営のデメリットと課題

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ダイバーシティの推進はメリットだけではなくデメリットも存在します。ここでは主な2つのデメリットを確認していきましょう。

コミュニケーションへの弊害

育った環境や文化、国籍が異なる人材が集まることで、コミュニケーションの面でデメリットが発生する可能性があります。

言語の違いにより情報を正確に伝えることが難しかったり、同じ母国語で育った従業員同士でも、過去の経験やスキルの違いで予期せぬ誤解が発生してしまうこともあります。こういったコミュニケーショントラブルにより、生産性に悪影響が発生することが懸念されてます。

チームワークの低下

多様な価値観を持つ人々が集団としてまとまって働くことは簡単ではありません。特に今まで同質性を重視してきた組織では、意見の違いによってトラブルが発生することは少なかったかもしれません。様々な考えや働き方が生まれ、それを尊重し、組織としてまとめ上げなくてはならないダイバーシティ経営は、経営側・従業員側のどちらにとってもストレスが生じ、チームワークの低下に繋がる可能性があります。

これらのデメリットを最小限に抑えるためには、それぞれ強みの異なる人材を採用したとしても、達成すべき目標や企業の価値観はしっかりとシェアすることが重要です。

これらのデメリットを踏まえた上で、次ではダイバーシティの推進方法を見ていきましょう。

ダイバーシティ経営の推進方法

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ダイバーシティをどのように推進していくかは、多くの経営者が悩むところです。ここでは組織内で推進する際に必要な施策を、

  • ワークスタイル
  • 職場環境を整える
  • キャリア支援とスキルアップの場の提供

に分けて具体的に解説します。

ワークスタイル

ダイバーシティの推進では、従業員1人ひとりが働き続けやすい環境を作るために、柔軟なワークスタイルを提供することが重要です。働く意思があっても、家庭の事情などによってフルタイムで働けない従業員にフレキシブルな雇用形態を提供するなどの工夫が求められます。

育児休業・介護休業

優秀な社員が育児や介護を理由に退職してしまうのを防ぐため、育児休業や介護休業制度を充実させることが必要です。しかし、制度は利用できなければ意味がありません。「制度を利用しやすい」環境づくりに成功してこそ、初めて制度が整ったと言えるでしょう。

勤務体系の柔軟化

ダイバーシティでは、個々が最大限にパフォーマンスを発揮できるような勤務体系を提供することが重要です。例えば始業時刻と終業時刻に一定の幅をもたせる「フレックス制」の導入や、労働時間の分配は従業員に任せる「裁量労働制」の導入など、従業員の希望に合わせて柔軟に対応することで、生産性の向上が期待できます。

また、近年はテクノロジーの発達により、オフィス以外での就業が可能になりました。リモートワークに対応することで、オフィスに通えない事情を抱える人材の採用も可能になります。

職場環境を整える

個々の多様性を受け入れ1つの集団としてまとめるには、人事だけでなく従業員1人ひとりがそれぞれの価値観を理解し尊重することが重要です。そのためにも、女性の活躍推進だけではなく、LGBTQ+や障がい者などマイノリティへの社内理解を促進するなど、どのような個性であっても働きやすい職場環境を整える必要があります。

研修プログラムの充実

マイノリティやダイバーシティに対する理解を深めるための研修プログラムの充実は、働きやすい環境づくりに繋がります。上層部のマネージャーだけでなく従業員全員が、マイノリティを含む個々が持つスキルを把握し、お互いの違いを尊重しながら働くための柔軟な思考スタイルを身につける方法をEラーニングやコンサルタントから学ぶことは、組織の意識改革に繋がり、ダイバーシティを定着させることが可能になります。

ダイバーシティ推進担当者を設ける

経済産業省によると、ダイバーシティを推進する際には、推進組織や推進担当者を設けることで活動を持続できる可能性が上がると言われています。これらの推進担当者が中心となり正しい知識を全社内に広めていくことで、効率的、また持続的にダイバーシティを推進することができます。なお、ダイバーシティ推進担当者は、障がい者などのマイノリティが働きやすい職場環境を物理的に整える(オフィスをバリアフリー化するなど)ことも求められます。

なお、ダイバーシティを推進する際に女性管理職比率や外国人採用率を用いることがありますが、表上の数値を上げるだけでなく何のためにダイバーシティを推進するのか、目的をクリアに共有することで、チームワークや生産性が向上し、企業の利益にも繋がりやすくなります。

キャリア支援とスキルアップの場の提供

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スキルアップの場を提供することもダイバーシティの推進には有効です。個々の意欲や能力を存分に発揮できる機会を提供することで、従業員の率先力や定着率が向上し、最終的には企業にもメリットが生まれるでしょう。

社内インターンシップ

多様性を活かすためには、決められた仕事をこなすだけでなく、社内インターンシップを通し新たな強みや弱みを発見するのが有効です。興味のあるプロジェクトに参加することで従業員のモチベーションが高まる他、より個々の能力を引き出すことが可能となり、従業員の自信やキャリア形成にも繋がります。

社内インターンシップとは

現在働いている部署以外の業務に興味や関心を持つ従業員が、対象期間中に希望する部署で業務に従事できるという制度。

キャリア形成支援

スキルや経験が異なる従業員が集まれば、個人間でキャリア形成や昇進のスピードに差が生まれてしまうのは自然なことです。そこで、性別や年齢、人種に関係なく相談窓口や研修などのキャリア形成支援を平等に受けることができれば、従業員の満足度向上に繋がります。

ダイバーシティ経営の世界・日本の導入事例

ここからは実際にダイバーシティを導入している企業を紹介していきます。ダイバーシティの推進を検討している企業の方は是非参考にしてみてください。

【世界】

まずはダイバーシティを導入している海外の事例を見ていきましょう。

成功事例①【マイノリティへの支援を実施】P&G

P&G
引用:P&G

アメリカのオハイオ州に本拠を置く世界最大の一般消費財メーカー「P&G」は、ダイバーシティの推進を行っています。社内の男女比率がほぼ5:5なだけでなく、従業員を「個性あふれるイノベーターやクリエイター」として考え、企業独自の強みであると唱えており、障がい者やLGBTQ+の従業員の採用にも積極的です。

イギリスのオフィスでは、「自閉症を持つ人々は健常者とは異なる考え方ができ、新たな製品やサービスが生まれやすい」として、自閉症を持つ人々の採用に取り組んでいます。企業イメージアップのためだけでなく、ダイバーシティを企業成長のための戦略として活用している良い例と言えるでしょう。

また、P&Gは支援や研修制度が充実しているため、働き続けやすい環境が整っている企業でもあります。

LGBTQ+とは

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニングのこと。クエスチョニングは、性自認や性的指向について、「まだ決まっていないと思う」「わからない、違和感がある」と感じる人々を意味する。また、+は、性的思考がLGBTQだけではないことを表している。

成功事例②【LGBTQ+が最も働きやすい企業】Marriott International

ホテルやリゾートを世界各地に展開している「Marriott International」は、1927年という非常に早期の段階からダイバーシティを取り入れていた企業です。様々な多様性を持つ従業員を採用し、文化の違いを学べるワークショップや女性のリーダーシップ開発の推進を行っています。

LGBTQ+などマイノリティへの理解促進はMarriott Internationalの最優先課題のひとつであり、2016年にアメリカで実施された企業平等指数(Corporate Equality Index)では、満点を獲得し、LGBTQ+が働きやすい企業ナンバーワンに選ばれました!

企業平等指数とは

*企業平等指数とは、LGBTQ+等、平等に関する職場の評価のこと。

【日本】

次に日本でダイバーシティを導入している企業を紹介します。

成功事例①【活躍の場を公平に】カルビーグループ

カルビーグループ」はスナック菓子やシリアルといった商品を扱う食品製造販売会社です。「女性の活躍なしにカルビーの成長はない」という信念のもと、女性の活躍機会の推進に取り組んでいます。実際に従業員の男女比率はほぼ半々となっており、時短勤務やフレックスタイム制を導入することで、働き方にかかわらず成果によって評価が受けられる職場環境が整っています。

さらに近年は、女性の活躍だけでなく、障がい者やLGBTへの理解促進にも取り組んでいます。2020年には無意識の偏見を学ぶため、管理職を対象としたEラーニングを実施しており、積極的にダイバーシティを導入する企業であることが分かります。

成功事例②【男性の育児休暇取得率80%】株式会社メルカリ

フリマアプリとスマホ決済サービスを取り扱う「株式会社メルカリ」では、性別や年齢、性的指向、宗教、信条、障がい、国籍など、多様なバックグラウンドを持つ従業員が働いています。誰もが平等にキャリアアップの機会を得られるよう、一度キャリアを離れた人の「キャリア再開支援プログラム」や、外国人労働者と日本人労働者がスムーズにコミュニケーションが取れるように独自の言語支援をするなど、働きやすい職場環境づくりを実施しています。

また、株式会社メルカリでは男性の育児休業取得率は約80%と非常に高い値となっています。従業員の性別は関係なく育児参加と職場復帰の機会を得られる風土が根づいていることが分かります。

ダイバーシティはSDGsの目標達成にも貢献

圧縮済みSDGs画像

最後に、ダイバーシティとSDGsの関係について見ていきましょう!

ダイバーシティ経営の多様性を受け入れ組織の中で積極的に活用しようという動きは、SDGsの「誰一人取り残さない」という考え方に相似しています。

まずはSDGsについて簡単に説明します。

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年に国連サミットで採択された世界共通の持続可能な開発目標です。貧困や飢餓、環境問題などといった社会課題を解決するための17の目標と169のターゲットから構成されています。2030年までに持続可能な世界を目指し、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを掲げています。

ダイバーシティはSDGsの様々な目標の達成に貢献していますが、今回は特に関わりの深いSDGs目標8「働きがいと経済成長も」について確認していきましょう!

SDGs8「働きがいも経済成長も」

SDGs8「働きがいも経済成長も」は、人々の生活を良くするために安定した経済成長を進め、誰もが人間らしい生産的な仕事ができる社会の実現のために掲げられています。

中でもターゲット8.5では、

”2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。”

といった行動が求められており、これは性別や人種、障がいの有無に拘らず多様性を認め採用するというダイバーシティの考え方そのものです。

また、他のターゲットにおいても”多様化”や”イノベーション”を通じた経済成長の必要性が求められています。多様性を活用し組織の強みにするダイバーシティは目標8の達成に必須の概念なのです。

まとめ

ダイバーシティを推進し、女性や外国人、高齢者、障がい者を含む多様な人材を活かすことは、企業の強みとなりイノベーションに繋がります。グローバル化を目指す組織はもちろん、人材不足に悩む企業もダイバーシティを推進することで解決に導ける可能性が大きくなります。

一方で、ダイバーシティの推進にはデメリットも存在することも忘れてはなりません。推進方法をしっかりと把握し、多様な人材が働きやすい環境づくりに取り組む必要があります。

決して簡単な取り組みではありませんが、社会的弱者と言われる人々を含め、多様性を活かし経済発展に繋げるダイバーシティは、企業や労働者、そして社会にとっても価値の高い取り組みと言えるでしょう!

<参考文献>
経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」
日本の人事部「ダイバーシティ」
東洋経済「ダイバーシティって何?(第2回)–ダイバーシティの歴史的展開と企業のかかわり」