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公式に認定されているエコツーリズムスポット!オーストラリアのタウンズビルが意識するエコな観光における5つのポイントに着目

日本でも旅行先として人気の高いグレートバリアリーフは、ケアンズだけでなくクイーンズランド州のさまざまな街からアクセスできます。

ケアンズの南に位置するタウンズビルもグレートバリアリーフから程近く、観光地として人気です。

しかし、観光業は環境へのデメリットが大きいことから、効果的なエコ活動や対策を徹底することが必要不可欠です。

タウンズビルはエコな観光地として高く評価されており、グレートバリアリーフをはじめとする環境への保全活動に努めています。

この記事では、タウンズが実際に取り組んでいる環境保全対策の詳細について解説していきます。

タウンズビルの基本情報

タウンズビル(Townsville)は、クイーンズランド州の北東岸に位置する街です。

州都のブリスベンから北に約1,400km、観光地として賑わうケアンズからは南に350kmほどの場所にあり、人口は約18万人とされています。

グレートバリアリーフと隣接しているほか、ビーチ、滝、熱帯雨林、国立公園をはじめとするバリエーション豊富な自然環境が魅力です。

タウンズビルは承認を受けているエコな観光地

クイーンズランド州の有名な観光地として、ケアンズを挙げる方も多いのではないでしょうか?

実はケアンズから程近いタウンズビルもケアンズと似た気候や自然環境であり、グレートバリアリーフや熱帯雨林へアクセスしやすいという特徴があります。

しかし、自然関連の観光地は環境問題による悪影響を受けやすく、観光地として機能させるためにはエコを意識することが必要不可欠です。

タウンズビルは1990年代から環境に優しい観光地としての取り組みをスタートし、2024年4月にはEcotourism AustraliaからECOデスティネーション認定を受けました。

Ecotourism Australiaは1991年に設立された非営利団体で、オーストラリア国内のエコツーリズムの促進を目的に運営されています。

環境や文化への理解、保全の促進に繋がる観光体験、持続可能な観光などの基準を満たすことで認定を取得できる仕組みになっており、タウンズビルはクイーンズランド州内で3番目、オーストラリア国内では9番目の ECOデスティネーションです。

タウンズビルが提供するさまざまな種類の観光体験

タウンズビルは、環境に関する多彩な観光体験を提供している点が高く評価されたことによってECOデスティネーション認定を受けました。

主な観光体験としてエコツーリズム、エデュツーリズム、ボランツーリズム、持続可能な観光、再生型ツーリズムの5つを導入しており、観光客が多方面からタウンズビルの自然環境や保全活動について学べる仕組みになっています。

以下では、それぞれの詳細や具体的な取り組みについて見ていきましょう。

エコツーリズム

タウンズビルが力を入れている観光体験のひとつめは、皆さんもご存知のエコツーリズムです。

観光を通して環境保全の重要性を教育すると共に、生態系への悪影響を最小限に抑える観光アクティビティの提供を行っています。

タウンズビルは1998年にエコツーリズムワークショップを開催し、2000年にエコツーリズム戦略を作成しました。

現在では有名観光スポットはもちろん、ホテル、カフェ、レストラン、グランピング施設といったさまざまな場所がエコツーリズムを実施しており、観光客が滞在中に環境と観光の両立について体感できるアクティビティ、コンセプト、プログラムが提供されています。

エデュツーリズム

タウンズビルがエコな観光地として高く評価されている理由に、エデュツーリズムの実施が挙げられます。

聞き慣れない言葉ですが、教育を意味するエデュケーションとツーリズムを掛け合わせた言葉のことです。

単に観光を楽しむだけでなく、観光客が現地の環境や歴史について学べる機会を提供することを目指しており、タウンズビルではさまざまな観光スポットでガイドトークを導入しています。

代表的なものがBush Oasis Caravan Parkで、野生動物公園のBillabong Sanctuaryや周辺の大自然を満喫できる自然の中の宿泊施設です。

野生動物公園の中には飼育されているわけではない野生の動物も多く入り込んでいるため、ワラビーや鳥をはじめとする野生動物とふれあいながらガイドによるトークを聞ける点が特徴です。

また、Bowling Green Bay National ParkやAustralian Institute Of Marine Scienceを通した教育プログラムも実施しており、湿地教育と水の保全の重要性を観光客に伝えています。

プログラム内ではタウンズビルの市街地からグレートバリアリーフのサンゴ礁までの水循環の追跡のほか、テーマに沿った生物多様性ホットスポットの分析なども行っています。

観光地と自然環境の密接な繋がりについて楽しく学べることから、子どもにも人気のアクティビティです。

ボランツーリズム

タウンズビルがエコな観光のために取り組む3つ目のポイントは、ボランツーリズムです。

ボランティアとツーリズムを合わせた言葉で、旅行体験の一部として観光客がボランティア活動に参加できる仕組みを構築しています。

ボランティアの受け入れ施設は動物園、自然公園、イベントなど多岐にわたり、各施設では環境問題への取り組みを行っている点が特徴です。

地元の取り組みや保護活動に貢献することでリアルな現場の環境対策を目の当たりにできることから、通常の観光とは違った体験をしたい観光客から人気を集めています。

持続可能な観光

タウンズビルは環境、社会、経済の3つに着目することで、持続可能な観光地としての役割を果たしています。

手つかずの自然と比べると、観光地化された場所は廃棄物、水、エネルギーなどによる環境負荷が大きくなりがちです。

そこで、タウンズビルは自然環境への悪影響を最小限に抑える観光地として機能するために、市内のメジャーな観光地のリサイクル率アップ、水のろ過及び有害物質の除去、再生可能エネルギーの導入などに力を入れています。

再生型ツーリズム

再生型ツーリズムでは、観光を通して失われつつある生態系や文化の回復や再生を目指しています。

持続可能な観光よりもさらに1歩深く踏み込み、生物多様性の保全や環境問題へのアプローチなどを行っている取り組みです。

タウンズビルが行っている再生型ツーリズムの例として、Creek to Coralと呼ばれるプログラムがあります。

グレートバリアリーフの端に位置するタウンズビルは、年間を通して乾燥した熱帯気候であるがゆえに降雨量が不安定です。

干ばつや洪水などが頻発しており、水質に大きな影響を及ぼします。

タウンズビルの水は最終的にグレートバリアリーフに流れ込むため、タウンズビル内で水の管理を徹底することが必要不可欠です。

Creek to Coralはタウンズビルの淡水と沿岸の海洋環境を管理・保護するために作られたプログラムで、雨水から下水、降雨から排水といった市内の水関連のインフラをモニタリングすることで水質の悪化を防いでいます。

また、タウンズビル発祥の環境団体であるリーフ・エコロジックも再生型ツーリズムに貢献しています。

リーフ・エコロジックは熱帯海洋生態系が直面する環境課題の提示や解決策の設計を目的としており、企業、政府、NGOと協力してグレートバリアリーフのサンゴ礁の保全に取り組んでいる団体です。

オーストラリアを代表する観光地・グレートバリアリーフは、近年サンゴ礁の白化といった環境問題に悩まされています。

白化が進むことで生殖機能に異常が生じるため、サンゴ礁の個体数が減少するのはもちろん、サンゴ礁に依存している魚などの生物たちが住みかを失う可能性が高いです。

リーフ・エコロジックはタウンズビルと協力しながらサンゴ礁の調査や改善への取り組みを強化し、グレートバリアリーフ全体の環境改善に努めています。

まとめ

観光業は自然環境への負荷が大きく、環境汚染や生態系破壊といったさまざまなデメリットを抱えています。

グレートバリアリーフから程近いタウンズビルは、5つのポイントに着目することでECOデスティネーション認定を受けるなど、環境保全と観光業の両立を目指している街です。

日本でも、重要な産業である観光業。

サスティナブルな観光地としての地位を確立するためにも、タウンズビルから学ぶべきことはたくさんあるのかもしれませんね。