#SDGsを知る

ウォーターフットプリントの意味は?バーチャルウォーターとの違いや日本の現状を紹介

イメージ画像

ウォーターフットプリントという言葉は、まだあまり馴染みがないかも知れません。しかしウォーターフットプリントについて学ぶことで、私たちが消費する製品やサービスが水環境に与える影響を理解し、環境に優しい選択ができるようになります。

また、企業が水資源の利用状況を把握することで、不要な水使用の削減持続可能な水利用の促進に役立ちます。つまり、企業の環境負荷を減らし、持続可能な社会の実現に貢献するのです。

ウォーターフットプリントの計算方法や問題点など、今後に役に立つ知識を分かりやすく解説します!

目次

ウォーターフットプリントとは

ウォーターフットプリントとは、私たちが消費する製品や食べ物を作るためにライフサイクル全体で必要な水の量を表す言葉です。似たような言葉にバーチャルウォータがありますが、厳密には意味が異なります。

私たちが日常的に使うものには、想像以上に多くの水を必要としていることがあるので、ウォーターフットプリントを知ると、水利用の現状を見直すことができます。

例えば、1枚のTシャツを作るためには、綿花の栽培や織物の製造に大量の水を使います。また、食べ物の場合、畑や牧場での農作業や家畜の飲み水、飼育施設の清掃に必要な水もウォーターフットプリントに含まれます。

ウォーターフットプリントへの理解は、水の大切さや持続可能な生活の意識を高める上で重要です。私たちが消費する商品やサービスがどれだけの水を必要としているかを知ることで、より水を節約する方法環境にやさしい選択肢を見つけることができます。

【ウォーターフットプリントとは】

ウォーターフットプリントは世界中で普及しつつあります。2010年には、国連環境計画(UNEP)※がウォーターフットプリントに関する報告書を発表しました。この報告書は、ウォーターフットプリントが世界的な環境問題の1つであることを指摘し、ウォーターフットプリントの削減を呼びかけました。

※国連環境計画(UNEP)

国際的な環境保護のために、国連が設立した機関の一つで、環境問題に関する調査や政策提言、技術支援などを行っている。

Water Footprint=水の足跡

ウォーターフットプリントは、地球上の水循環などを研究する分野から誕生した考え方です。2002年にUNESCO-IHEに在籍していた研究者、Arjen Hoekstra教授※によって考案されました。

英語の頭文字をとってWFPまたは単にWFと略されることもあります。和訳して「水の足跡」ともよばれます。

※Arjen Hoekstra教授

オランダのトゥエンテ大学の水管理学教授であり、UNESCO-IHE Water for Waterで働いている間にWater Footprint Networkの共同設立者であり科学者でもあるディレクターだった。

世界的には、さまざまな国際機関や大学で、水の過剰利用が直接起きている生産国だけでなく、輸入や消費を通じた潜在的な形で生じている影響を定量的に評価するため、ウォーターフットプリントを明らかにする取り組みが進められています。

日本では、WWFジャパンが2021年に「日本のウォーターフットプリント調査」を実施しました。

ウォーターフットプリントによって分かること

ウォーターフットプリントは、製品のライフサイクル※(製品の一生)で使用する水の総量を数値化し、水環境への影響を評価します。よって、ウォーターフットプリントを算出すると、

  • 製品やサービスのライフサイクル全体で使用する水の総量
  • 水環境への影響
  • 水利用によって起こる水量の変化水質の変化が環境に与える影響
  • 製品やサービスの裏側に隠された水の消費量や汚染

などを知ることができます。この値を環境への影響削減や貴重な水資源の利用に役立てるのです。

※ライフサイクル

ある生物が生まれてから成長し、繁殖し、老化して死ぬまでの一連の過程のこと。物やサービスの場合は、原料の生産・調達から廃棄またはリサイクルされるまでの一連の過程。

【関連記事】カーボンニュートラルに欠かせないLCAとは?メリット・デメリット、問題点も

なぜ水を大切に使うのか

水は、地球の生命の循環の中で大切な役割を持っています。水源の豊かな日本に暮らしていると実感が湧きにくいかもしれませんが、水を大切に使うことは、水循環を正常に保ち地球環境を守ることにつながります。

また、水を大切に使うことで、エネルギーを節約することができます。例えば、水を節約することは、温室効果ガスの排出量を減らすことにもつながります。

水は、私たちの生活や経済活動に欠かせないものです。水を大切に使い、ウォーターフットプリントを減らすことで、持続可能な社会の実現に近づくのです。

次の章では、ウォーターフットプリントを算定する際に必要となる、3種類のウォーターフットプリントについて解説します。*1)

3種類のウォーターフットプリント

イメージ画像

ウォーターフットプリントには、グリーン、ブルー、グレーの3種類があります。これらは、水の使用方法水源によって異なります。

これら3種類を区別することで、ウォーターフットプリントをより詳細かつ正確に評価することができます。

グリーンウォーター

グリーンウォーターとは、雨水や雪解け水などの自然界で使われる水を指します。グリーンウォーターフットプリントとは、商品やサービスを生産するために、どれだけのグリーンウォーターが使われたかを表します。主に農業で使用される雨水の量が含まれます。

ブルーウォーター

ブルーウォーターとは、地下水や河川、湖沼などの水を指します。ブルーウォーターフットプリントとは、商品やサービスを生産するために、どれだけのブルーウォーターが使われたかを表します。地表水地下水を使用することで計算されます。また、湖や河川、地下水から引かれた灌漑用の水も含まれます。

グレーウォーター

グレーウォーターとは、家庭や工場などで使用され、排出された水を指します。グレーウォーターフットプリントとは、商品やサービスを生産するために、どれだけのグレーウォーターが排出されたかを表します。生産過程で汚染が発生した場合、この汚染を低減させるために使われる水が計算されます。

つまり、この3種類のウォーターフットプリントは、それぞれ異なる水源から来る、製品やサービスのライフサイクルにおいて異なる段階の水と言えます。この3種類の色分けは国際的にも認知されているもので、オランダで設立された非営利組織ウォーターフットプリントネットワーク(WFN)※では、グリーン、ブルー、グレーの3種類のウォーターフットプリントを設定しています。

※非営利組織ウォーターフットプリントネットワーク(WFN)

世界中の企業や政府、研究機関などと協力して、水の使用量を把握し、持続可能な水資源管理に取り組むための情報提供や啓発活動を行う組織。

次の章では、ウォーターフットプリントの算定方法に進みましょう。*2)

ウォーターフットプリントの算定方法

ウォーターフットプリントの算定方法には、

  1. インベントリ分析法
  2. 影響評価法

という2つの方法があります。

①インベントリ分析法

インベントリ分析法とは、特定の製品やサービスの生産・消費に伴う水の使用量を、水の種類、使用量、使用場所、使用期間などから算出する方法です。

②影響評価法

影響評価法とは、インベントリ分析法で算出した水の使用量を、水資源枯渇や水質汚染の影響に換算する方法です。

ウォーターフットプリントの算出に必要な情報をそろえる

ウォーターフットプリントを算定するためには、

  • ブルーウォーター(地表水や地下水): 農業や産業などで使用される水。
  • グリーンウォーター(降水量によって供給される水): 農作物や植物が自然の降水量を利用する水。
  • グレーウォーター(水が使用後に汚染物を含んで排出される水): 汚水処理や浄化プロセスによって処理される水。

この3つの要素ごとに、

  • 水の使用量
  • 水の排出量
  • 環境への影響

を分析して整理します。この情報が十分でないと、ウォーターフットプリントは正しく算定できません。

【影響評価の流れ】

ウォーターフットプリントを算定する

製品やサービスのライフサイクル全体にわたる水の使用量を、ブルーウォーター、グリーンウォーター、グレーウォーターごとに集計したら、次の手順でウォーターフットプリントを算出します。

①集計した水の使用量を、それぞれの水源の重要度を考慮して加重平均する。

  1. それぞれの水源の重要度を決定します。水源の重要度は、その水源が水資源の不足や汚染などのリスクにさらされているかなどの状況や、その水源が人間や環境にとって不可欠であるか、などによって決定されます。
  2. それぞれの水源の重要度に応じて、集計した水の使用量に重みをつけます。重みは、水源の重要度が大きさに比例します。
  3. 重みをつけられた水の使用量を加算します。
  4. 加算した水の使用量を、それぞれの水源使用量の合計で割ります。

加重平均とは、複数の値を、それぞれの値の重要度を考慮して、平均値を計算する方法です。ウォーターフットプリント算定においては、それぞれの水源の重要度を考慮して、水の使用量を加重平均することで、より正確なウォーターフットプリントを算定することができます。

②加重平均した水の使用量を、製品やサービスの単位あたりの量に換算する。

次に、水の使用量を、製品やサービスの単位あたりの量に換算します。水の使用量を単位あたりの量に換算するには、次の式を使用します。

ウォーターフットプリント(単位あたり) = 総水の使用量(m3) / 製品またはサービスの生産量または消費量(個・kgなど)

例えば、りんご1個を生産するために80リットルの水が必要だとします。この場合、りんご1個あたりのウォーターフットプリントは80リットルとなります。

【ウォーターフットプリント算定と解釈】

牛肉の算定方法の例と試算

近年、CO2の排出量が多いことでも注目された牛肉の生産を例に考えてみましょう。牛肉のウォーターフットプリントを算定するには、以下の3つの要素を計算する必要があります。

①製品の生産に必要な水の量

牛肉の生産には、牛の飼料としての穀物や草を栽培するために水が必要です。また、牛の飲料水としても水が必要です。これらの水使用量を合計することで、牛肉の生産に必要な水の量が算出されます。

②製品の使用によって消費される水の量

牛肉を調理するためには、水を使うことがあります。例えば、牛肉を茹でたり、焼いたりする際に水を使います。これらの水使用量を合計することで、牛肉の使用によって消費される水の量が算出されます。

③製品の廃棄によって生じる水の汚染の量

牛肉の廃棄物は、環境に悪影響を与えることがあります。例えば、畜産業においては、排泄物飼料残渣などが河川や地下水に流出して、水質汚染を引き起こすことがあります。これらの水汚染量を合計することで、牛肉の廃棄によって生じる水の汚染の量が算出されます。

→牛肉1kgあたりのウォーターフットプリント

牛肉1kgあたりのウォーターフットプリントは、一般的に約15,415リットルと言われています。この値は、牛を育てる際に必要な水の量を、牛肉1kgあたりに換算したものです。

牛肉のウォーターフットプリントは、他の肉類よりも大きくなっています。例えば、豚肉のウォーターフットプリントは約5,988リットル、鶏肉のウォーターフットプリントは約4,325リットルです。その理由としては、牛は他の家畜よりも体が大きく、成長に必要な期間も長いため、多くの水を必要とするからです。

コーヒーの算定方法の例と試算

普段何気なく飲んでいるコーヒーもウォーターフットプリントが多い製品の1つです。まずは先ほどのように以下の3つの要素を計算する必要があります。

①コーヒーの生産に必要な水の量

コーヒーの生産には、コーヒー豆を栽培するための水が必要です。また、コーヒー豆を収穫する際にも、豆の加工法によっては多くの水を使うことがあります。これらの水使用量を合計することで、コーヒーの生産に必要な水の量が算出されます。

②コーヒーを飲むときに消費される水の量

コーヒーを飲むためには、水が必要です。例えば、イタリア式のエスプレッソ、ドリップコーヒーなど、コーヒーを淹れるほとんどの方法で水を使います。これらの水使用量を合計することで、コーヒーの使用によって消費される水の量が算出されます。

③コーヒーを淹れた後の豆などの廃棄によって生じる水の汚染の量

コーヒーに関する廃棄物は、環境に悪影響を与えることがあります。例えば、コーヒー豆の殻や粉末が土壌や水質を汚染することがあります。これらの水汚染量を合計することで、コーヒーの廃棄によって生じる水の汚染の量が算出されます。

→コーヒー1杯あたりのウォーターフットプリント

これらの計算により算出されるコーヒー1杯あたりのウォーターフットプリントは、一般的に約140リットルと言われています。平均的なコーヒー1杯は200ml程度ですから、1つのカップの中のコーヒーを淹れるためのコーヒー豆(7.2gで計算)を生産するために必要な水の量は、その700倍にも及びます。

筆者もコーヒー愛好家ですが、このウォーターフットプリントには驚きました。フェアトレードのコーヒー豆スペシャルティコーヒーを選ぶなど、原産地に少しでも負荷の少ない、良い影響のある消費を心がけましょう!

次の章では、なぜウォーターフットプリントが必要なのかを考えてみましょう。*3)

なぜウォーターフットプリントが必要なのか

ウォーターフットプリントが必要な理由は、私たちの生活と水環境のつながりを理解するための重要な指標の1つだからです。ウォーターフットプリントを算出することで、私たちは現在の水の使い方を見直し、

  • 水資源の節約
  • 水環境の保全
  • より環境に優しい生活

などに貢献することができます。

私たち人間も生き物です。地球上の生き物はすべてが地球という大きな生態系(エコシステム)※の中で、お互いに影響しあいながら命の循環を繰り返しています。

ウォーターフットプリントを知ることで、あなたを取り巻くエコシステムの一部を理解することができるのです。

英語ではecosystem、森林・草地・河川・湿地・サンゴ礁など、さまざまなタイプの環境とそこに生息・生育する生物を1つのグループとして見た時の呼び方。近年ではビジネス用語としても使われるようになっている。

ウォーターフットプリントの算定によって問題点が発見できることも

ウォーターフットプリントの算定によって、これまで知られていなかった問題点が発見された例としては、次のようなものがあります。

日本のテキスタイル産業

日本のテキスタイル産業※は、世界でも有数の水を消費する産業で、1人当たりのウォーターフットプリントは、世界平均の約2倍となっています。これは、日本のテキスタイル産業が、コットンやウールなどの原材料の栽培・加工に多くの水を必要としていることも影響しています。

日本のテキスタイル産業では、1枚のTシャツを製造するのに、約2,700リットルの水が必要とされています。これは、1人が1日に2リットルの水を飲むとしたら、1,350日分に相当します。

このような背景がある中で、日本のテキスタイル産業は、水の消費量を削減するために、さまざまな取り組みを行っています。例えば、

  • 水を節約できる生産技術の導入
  • 水を再利用する取り組み

などです。しかし、日本のテキスタイル産業が世界で最も水を消費する産業であることは、変わりありません。

私たちは、衣料品を購入する際に、その衣料品がどれだけの水を消費しているかを意識し、水を節約できる衣料品を選ぶことが大切です。

※テキスタイル産業

繊維を原料に生地や衣類を製造する産業。

【衣類製品のライフサイクルの例】

日本の1人あたりのウォーターフットプリントは世界平均の2倍

日本人1人当たりのウォーターフットプリントは、年間で約1,750トン(1,750,000リットル)です。これは、国連食糧農業機関(FAO)が算出した世界平均(1,385トン)よりも多くなっています。

日本人がウォーターフットプリントを削減するためには、無駄な食料や衣類などの消費量を減らすことが重要です。また、輸入食材を減らし地元産の食材を選んで使ったり、水を節約する生活習慣を身につけたりすることも効果的です。

いま世界はサーキュラーエコノミー(循環経済)を目指して進んでいます。これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄(リニアエコノミー)からは、早々に卒業する必要があるのです。

私たちの、

  • 食生活
  • 消費活動
  • 生活スタイル

は、すべて水環境に影響を与えています。自分の生活につながるウォーターフットプリントを理解することで、私たちは、水環境を守り、より持続可能な社会を実現するために、自分の水の使い方を見直すことができます。次の章では、ここまでの内容を思い出しながら、ウォーターフットプリントのメリットを確認しましょう。*4)

ウォーターフットプリントのメリット

ウォーターフットプリントには以下のような、たくさんのメリットがあります。

メリット①水の節約に役立つ

ウォーターフットプリントは、水の使用量を知ることができ、節水の意識を高めることができます。私たちが直接使っている水の量以外にも、物やサービスに必要な水の量を計算することができるため、これまでより一歩進んだ意識で水の節約について考えることができます。

メリット②環境に優しい選択を促す

ウォーターフットプリントは、水の使用量が多い製品や食品を特定できるため、環境に優しい選択を促します。つまり、環境負荷を減らすことや、地球環境を守ることができるのです。

メリット③水の管理に役立つ

水資源が限られている地域では、水の使用量を把握することは非常に重要です。ウォーターフットプリントによって、これまでより効率的な水の管理に貢献します。

メリット④企業の水資源管理に役立つ

ウォーターフットプリントは、企業が水資源の利用量を効率的に管理するためにも役立ちます。これにより、水の使用によるコストを削減することができます。

多くのメリットがあるウォーターフットプリントですが、実はまだ問題点や課題ものこされています。次の章ではウォーターフットプリントの問題点に迫ります。

ウォーターフットプリントのデメリット・問題点

ウォーターフットプリントは、人間活動による水の消費量を把握するための有効な指標です。しかし、その性質上、問題点もいくつかあり、結果として特定の対象にデメリットとなる可能性もあります。

現状、ウォーターフットプリントの問題点として、次のようなことが考えられます。

デメリット・問題点①水の質や地域の水不足を考慮するのは難しい

ウォーターフットプリントは、水の使用量に重点を置いており、水の質や地域の水不足などを完全に考慮して数値化するのは難しいため、正確な評価ができない場合があります。

例えば、ウォーターフットプリントでは、ある国で生産されたトマトの水の使用量を評価する際に、

  • その水が地域の水不足に影響しているか
  • その水が地域の水質に影響しているか

などを正確に評価するのは非常に困難です。にもかかわらず、水の使用量を単純に数値化するだけでは、その水の質や地域の水不足については考慮できないためです。

デメリット・問題点②国や地域によって異なる水資源の状況を考慮していない

ウォーターフットプリントは、国や地域によって異なる水資源の状況を考慮していないため、国際的な比較には限界があります。例えば、ウォーターフットプリントで評価されたある商品の水の使用量が、異なる2つの国で同じだったとしても、その水の質や地域の水不足の状況は、地域によって異なることがほとんどです。

豊富な水資源を持っている国では、水の使用量が多くても問題がないかもしれませんが、水不足に悩んでいる国では、同じ水の使用量でも深刻な問題になる可能性があります。先ほど触れたように、ただでさえ水の質や地域の水不足を考慮するのは難しいので、現状の測定技術では厳密な国際的な比較は困難です。

デメリット・問題点③消費者の水節約をあまり重視していない

ウォーターフットプリントは、生産者や製造業者などが水の使用量を減らすことを目的としていますが、消費者が水を節約することについてはあまり言及されていません。

しかし、近年の傾向では、「消費者の行動が経済を動かす」という考えのもと、環境省や国連環境計画などは、消費者の努力も必要としています。

デメリット・問題点④水の使用量の測定が難しい

ウォーターフットプリントは、水の使用量を測定することが難しく、正確なデータを収集することが困難な場合があります。

そのため、データとしての信頼性に疑いを持たれる場合もあります。

デメリット・問題点⑤水不足への意識の低さ

現在、世界中で水不足が深刻な問題となっており、ウォーターフットプリントを活用して水の使用量を減らすことが求められています。しかし、国や地域によっては、水資源が豊富なため、ウォーターフットプリントを意識することが少ない場合があります。

ここで挙げたような問題点を解決するためには、ウォーターフットプリントの指標改善や、より正確に水の使用量を割り出す技術開発が必要です。*5)

ウォーターフットプリントに関するよくある質問

ここでは、ウォーターフットプリントについてよくある疑問にお答えします。

ウォーターフットプリント一覧はどこから見れる?

環境省では、国内企業によるウォーターフットプリント算出を促進しています。そして、水資源の保全や有効活用のため、ウォーターフットプリントを効果的に活用していく取り組みを進めています。その一環として「ウォーターフットプリント算出事例集」を作成しており、環境省のウェブサイトで見ることができるので、ぜひ目を通してみてください。

リンクはこちら→環境省『ウォーターフットプリント算出事例集』

企業はどのように活用すればいい?

企業はウォーターフットプリントを以下のように活用することができます。

  • 製品やサービスの裏側に隠された水の消費量や汚染などの可視化
  • 事業者や消費者が製品における水資源の利用状況把握
  • 不要な水使用の削減
  • 持続可能な水利用の促進

環境省は、これらを企業がウォーターフットプリントを活用する意義として挙げています。

バーチャルウォーターとの違いは?

ウォーターフットプリントは製品やサービスの裏側に隠れた水の消費量や汚染などを可視化する指標です。一方で、バーチャルウォーター製品や食べ物の生産に必要な水の量を表す指標で、直接的には見えない「仮想の水」とも呼ばれます。

カーボンフットプリントとの違いは?

ウォーターフットプリントは、製品やサービスの裏側に隠れた水の消費量や汚染などを可視化するものです。一方で、カーボンフットプリントは製品やサービスの裏側に隠れた温室効果ガス(GHG)の排出量を可視化するものです。

エコロジカルフットプリントとの違いは?

エコロジカルフットプリントは環境全体に与える影響を測る指標です。一方で、ウォーターフットプリントは水資源に与える影響を測る指標です。

次の章では、ウォーターフットプリントを知ることであなたの生活がどう変わるかに焦点を当ててみましょう。*6)

ウォーターフットプリントであなたの生活はどう変わる?

ウォーターフットプリントの存在や算出方法を知ることにより、自分たちが使用する製品やサービスが、どの程度の水資源を使用しているかがわかります。また、その製品やサービスが水環境に与える影響を理解することができます。

このような知識を学び、理解を広げることによって、私たちは個人でも水資源の効率的な利用や持続可能な水利用に貢献することができます。ウォーターフットプリントを知ることで、あなたの日常生活と将来に以下のような可能性が生まれます。

水の大切さを再認識できる

ウォーターフットプリントを知ることで、水がどのように私たちの生活や社会に欠かせないものであるかを再認識できます。水を大切にすることで、将来の水不足問題を回避することができます。

そして、自分がどのように水を使っているかも把握することができます。節水につながる習慣を身につけることで、水道代の節約につながります。

企業のCSRに関心を持てる

ウォーターフットプリントを知ることで、企業のCSR(企業の社会的責任)に関心を持つことができます。CSRに力を入れている企業を支持することで、社会に貢献することができます。

持続可能な未来を実現する

ウォーターフットプリントを知ることから、持続可能な未来を実現するために、あなたにもできることがあると気がつくはずです。あなたの行動が社会や環境に与える影響を考えることで、より良い未来を築くことができます。

つづいて、ウォーターフットプリントとSDGsの関係について考えてみましょう。

ウォーターフットプリントとSDGs

ウォーターフットプリントとSDGsは、どちらも持続可能な社会の実現を目指しています。SDGsの目標を達成するためには、ウォーターフットプリントを減らすことも重要な鍵です。

ウォーターフットプリントと関係のあるSDGs目標を確認しましょう。

目標6「安全な水とトイレを世界中に」

ウォーターフットプリントは、水の使用量や水質に関する指標であり、SDGs目標6「清潔な水と衛生の確保」に関連しています。ウォーターフットプリントを減らすことで、水をより効率的に使用し、水質を改善することができます。

目標12「つくる責任つかう責任」

SDGs目標12「つくる責任つかう責任」は、持続可能な生産と消費に関するものであり、ウォーターフットプリントとも関連しています。ウォーターフットプリントを減らすことは、持続可能な消費と生産を促進するためのつくる責任・つかう責任を果たす重要な取り組みの1つです。

目標13「気候変動に具体的な対策を」

ウォーターフットプリントは、SDGs​​目標13「気候変動に具体的な対策を」にも関連しています。水の使用量を減らすことで、水の輸送や処理にかかるエネルギーを削減し、温室効果ガスの排出量を減らすことができます。

目標15「陸の豊かさも守ろう」

ウォーターフットプリントは、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」のためにも重要です。水の使用量が増えると、水源地や湿地帯などの自然環境が損なわれることがあります。ウォーターフットプリントを減らすことで、自然環境を守ることができます。

目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、国内外のパートナーシップを強化することで、SDGsを達成することを目指しています。ウォーターフットプリントを減らすことは、国内外の企業や団体と協力して、持続可能な水資源管理を推進するための重要な取り組みの1つです。

ウォーターフットプリントを意識することで、私たちは水を節約し、SDGs目標達成に貢献することができます。あなたもウォーターフットプリントについてこれからも学び、新しい情報を得ることを続けながら、水を大切にすることを習慣づけましょう。

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ:自分の生活が地球環境に与える影響がわかる!

ウォーターフットプリントとは、商品やサービスの生産・消費・廃棄などのライフサイクル全体にわたって使用される水の総量を測る指標です。あなたのウォーターフットプリントはどれくらいでしょうか?

ウォーターフットプリントを減らす行動には、個人でも簡単にできることも多くあります。普段の生活の中で具体的にできることを挙げると、

  • シャワーの時間を短くする
  • トイレの水を節約する洗濯物をまとめて洗う
  • 環境に優しい製品を選択する(エコラベルが付いた製品、リサイクル可能な製品など)

など、これらの行動は1つ1つはささやかな取り組みに見えますが、多くの人々がコツコツと実践することで、大きな変化をもたらすことができます。私たち人間は誰1人として例外なく、生き物として地球の命の循環の中で全ての生き物とつながり影響しあっているのです。

あなたもウォーターフットプリントを知る習慣を身につけ、できることから将来の地球のために良い行動を続けましょう!

〈参考・引用文献〉
*1)ウォーターフットプリントとは
環境省『水・土壌・地盤・海洋環境の保全 ウォーターフットプリント算出事例集』
WWF『日本が世界の水環境に及ぼす影響を明らかにする「ウォーターフットプリント」』(2021年3月)
公益財団法人 地球環境センター『ウォーター・フットプリント』(Water Footpirint)水の足跡とは?
沖 大幹・近藤 剛『ウォーターフットプリントの現状と課題』(2010年7月)
カーボンニュートラルに欠かせないLCAとは?メリット・デメリット、問題点も
*2)3種類のウォーターフットプリント
厚生労働省『水道対策』
総務省『水道事業についての現状と課題』(2018年1月)
*3)ウォーターフットプリントの算定方法
環境省『水・土壌・地盤・海洋環境の保全 ウォーターフットプリント算出事例集』
環境省『ウォーターフットプリント算出事例集』p.5(2014年8月)
山本 裕己 中山 卓三 徳武 真理子 伊坪 徳宏『コーヒーと紅茶を対象としたカーボンフットプリントとウォーターフットプリント』(2011年3月)
*4)なぜウォーターフットプリントが必要なのか
環境省『ウォーターフットプリント算出事例集』p.16(2014年8月)
内田 裕之『衣類のウォーターフットプリントの事例と課題』(2015年7月)
環境省『ウォーターフットプリント算出事例集』(2014年8月)
VOGUE『オーガニックコットンは本当にサステナブル? 専門家たちの回答。【サステナビリティ最前線】』(2019年10月)
TOSHIBA『知っておきたい「ウォーターフットプリント」。意味や提唱の経緯とは?』
エコシステムとは?ビジネスにおける意味や取組事例などをわかりやすく解説
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは?リサイクルとの関係・取組事例も
*5)ウォーターフットプリントのデメリット・問題点
Water Footprint Network『What is a water footprint』
Water Footprint Network『Do you know how much water was used to grow your food and to produce your clothes and the things you buy?』
*6)ウォーターフットプリントのよくある疑問
環境省『virtual water』
バーチャルウォーターとは?原因と問題点、解決策、私たちにできること、SDGsの関係
経済産業省・環境省『カーボンフットプリント ガイドライン』(2023年3月)
WWF『エコロジカル・フットプリントとは?早わかり解説』(2015年9月)
CSRとは?意味とメリット、企業の活動例・取り組み事例とSDGsとの違いを解説