ESG投資とは?仕組みや種類、メリット・デメリット、企業の事例も

近年、ESG投資への関心が高まっています。2020年の日本のESG投資額は、2.8兆円(約320兆円)と2018年と比べて31.8%も増加しました。とはいえ、ESG投資って何?と疑問に思う方も多いと思います。そこで本記事では、ESG投資の仕組みやメリット・デメリットなどを紹介します。まずは、ESG投資とは何かを見ていきましょう。

ESG投資とは

ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)要素を考慮する投資のことです。ここが、企業の財務情報(※)をもとに判断していた従来の株式投資と異なる部分です。

非財務情報を評価する考え方が広まっている

近年、公的年金基金のような超長期で大きな資産を運用する機関投資家(※)を中心に、企業経営の持続可能性を評価する考え方が広まっています。(参考:経営戦力としてのSDGs・ESG|白井 旬 著)

企業の持続可能性が高いと、

  • 社会的意義のある事業を行っているため、これからも成長が期待できる
  • リスクマネジメントができており、投資リスクが低い

などが、考えられるためです。

また、経済発展に伴い浮上した環境や労働・企業統治の問題は、経済や社会の持続可能性を阻害してしまう恐れがあります。そのためESG投資は、これらの問題を投資する際の判断材料として扱うことによって、長期的な価格変動(リスク)を調整でき、利益の改善も期待されているのです。(参考:年金積立金管理運用独立行政法人)

(※)財務情報

企業の活動によって変化する財務状況を示した書類である財務諸表を、確認することで得られる情報。法定開示書類となっており、企業外の人が行う監査やレビューの対象になる

参照元:みずほ証券×一橋大学

(※)機関投資家

生命保険や損害保険会社・信託銀行・共済組合・年金基金・農協など、大量の資金を使用し株式や積券運用を行う大口投資家

参考:SMBC日興証券

簡単にまとめると企業が社会に対して負う責任

簡単にまとめるとESGは、「社会的責任を果たす企業に投資をすること」を意味します。企業が、環境・社会・企業統治(ガバナンス)の3要素に対してプラスになる事業や取り組みを行い、投資家はその条件をクリアしている企業や業界に投資する。これが、ESG投資です。

ESG投資は拡大している

近年、投資をする際に、「企業経営のサステナビリティを評価する」考え方が広がっています。そのため、気候変動のような環境問題の解決を念頭に置いた長期的なリスクマネジメントや、企業の新しい収益創出の機会を評価する基準として注目されているのです。そのほかにも、SDGsの登場PRI(国連責任投資原則)にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が署名したことも拡大している理由と言えるでしょう。(PRI・GPIFについては後述)

参考:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/esg_investment.html

ESG投資の歴史

ここからは、ESG投資の歴史について確認していきましょう。

1900年頃から注目されるように

1900年代に入ると、ESG投資の始まりとなる宗教上の倫理投資や社会運動が起きました。その後、1990年に「企業の社会的責任(CSR)」という考え方が広まり、SRI(社会的責任投資)(※)を実践する機関投資家が登場します。CRSに優れた企業を選び投資する「ポジティブ・スクリーニング」が、考案されたのもこの時代です。

2006年になると、国際共同イニシアティブとして「国連責任投資原則(PRI)」がニューヨーク証券取引所にて公表されます。これによりESGは、企業価値に影響を与えるものとして、投資を行う際に考慮する必要があると認識されたのです。同時に、世界経済の中でも投資と結び付けて考えられるようになりました。

(※)SRI(社会的責任投資):企業のCSR評価に基づいて投資すること。

日本では2015年にGPIFがPRIに署名したことで広がりを見せる

1900年から世界的に注目され始めたESG投資。日本でも、GPIFがPRIに署名したことにより2015年から広がり始めます。

GPIFとは

GPIFとは、「年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund)」の略です。国に代わり、年金積立金の管理や運用を行います。収益を国に納付することによって、年金財政の安定化に貢献しています。

参考:GPIF

PRIとは

PRIとは、「責任投資原則(Principles for Responsible Investment)」の略です。国際連合が2005年に公表し、世界経済で大きな役割を果たす投資家達が、投資を通じて環境・社会・企業統治(ガバナンス)について責任を全うするために必要な6つの原則が示されました。

参考:PRI

引用元:責任投資原則|PRI

PRIに署名した機関投資家達は受益者に対して、長期的視点から最大利益を追求する義務を遂行するために、情報収集や検討・決断などの決定プロセスを行います。その課程で、ESG問題を最大限反映させることになるのです。

(※)投資ポートフォリオ:金融商品の組み合わせのこと
(※)受益者:信託行為により、発生した受益を受け取る権利のある人

SDGsへの関心の高まりも関係

加えてSDGsへの関心が高まったことも、ESG投資に注目が集まっている理由と言えます。

2015年の国連総会にて193カ国が賛同したSDGsは、世界中で起きている環境・社会・経済に関する課題解決を目指す国際目標です。(参考:ESG投資との関係 p.2)

ESGも、環境・社会・企業統治に考慮した取り組みや事業を行うため、SDGsと目指している方向が近い部分があります。そのため、ESG投資を考えている投資家が投資先を決める際に、SDGsが評価基準の1つになりうるのです。

ESG投資の仕組み

では、ESG投資の仕組みについて見ていきましょう。

投資リターンの関係

投資リターンとは、投資を行った際に得られる収益です。収益の振れ幅であるリスクが小さいほど、リターンも小さくなります。

(参考:SMBC日興証券)

そして、環境・社会・企業統治(ガバナンス)に優れた企業は、ESG問題の解決につながる技術やサービスを提供できるため、環境や社会問題・企業の不祥事に対するリスクが低くなるのです。そのため、長期的に安定した投資リターンを得られる可能性があります。

(参考:野村アセットマネジメント)

続いては、ESG投資の種類について見ていきましょう。

ESG投資の種類

ESG投資には、さまざまな種類があります。1つずつ確認していきましょう。

ネガティブスクリーニング

タバコ産業や武器製造など特定の業種、または動物実験のような特定のテーマに関連する企業を排除し、その他の投資対象から選択する方法です。主に環境破壊や人権侵害など、社会に悪影響を与える恐れのある企業や業界を除いて投資します。

ポジティブスクリーニング

環境や社会に良い影響を与える、ESG評価の高い企業と業界を投資対象にする方法です。例えば、再生可能エネルギーやリサイクルに関する企業・ダイバーシティを意識した経営を行う企業などが挙げられます。また、各業界の中でも特にESG評価の高い企業を選び投資することを、ベスト・イン・クラスと言います。

国際規範スクリーニング

  • 国連グローバルコンパクト10原則(UNGC)
  • OECD多国籍企業行動指針
  • 国際労働機関(ILO)

などの団体が設定した、国際的なルールに違反している企業や業界を投資対象から外す方法です。

武器製造や原子力など特定の業界を除くネガティブスクリーニングと似ているものの、こちらは業界の指定はありません。

ESGインテグレーション

従来の投資方法に用いられていた財務情報とESGに関する非財務情報の両方を踏まえて、投資対象を選択します。これは、国連責任投資原則(PRI)の第一原則にも明記されている投資方法です。米国でも主流となっており、日本でも2020年3月末時点で88%と、ESGインテグレーションの割合が最多となっています。

サステナビリティ・テーマ投資

ESGの特定のテーマのうち、

  • 再生可能エネルギー
  • 持続可能な農業
  • 水資源
  • グリーンテクノロジー

など、持続可能性(サステナビリティ)に関するテーマに力を入れている企業や業界を、投資対象とする方法です。サステナビリティ・テーマ投資はSDGsとの関連性も高く、日本では年々増加傾向にあります。

インパクト・コミュニティ投資

社会問題や環境問題の解決を目的とした事業を行っている企業、業界に投資する方法です。

例えば社会問題では、貧困層や低所得者向けに医療・教育・金融などの供給を目的とした、マイクロファイナンス(※)やコミュニティ開発金融に対する投資。環境問題では、再生可能エネルギーや持続可能な農業などへの投資が挙げられます。
(※)マイクロファイナンス:貧困層・低所得者を対象とした小規模金融。貧困緩和を目的として行われている

企業エンゲージメント

自ら株主となり、ESGの課題改善に向けて企業へ働きかける方法です。株主の特権である、議決権行使や経営層とのエンゲージメント

(※)・株主提案を使用することによって、ESGの取り組み促進につながります。
(※)エンゲージメント:投資先の企業や投資を検討している企業先に対して、機関投資家が行う「建設的な目的をもった対話」のこと

続いては、ESG投資の運用によって得られるメリットを見ていきましょう。

ESG投資のメリット

ESG投資のメリットは、大きく分けて2つあります。

メリット①長期の資産形成

従来の株式投資は、一定期間の業績を見て判断したり、これから価値の上がりそうな企業を選び投資したりしていました。

現時点では業績が上がっているため、その期間の投資パフォーマンス(※)は高くなるかもしれません。しかし、問題を起こしたり、環境や社会に対して悪影響を及ぼす事業を行ったりすると、企業の価値が著しく損なわれてしまう可能性もあります。つまり、短期的な目線では大きな利益を得られますが、その分リスクも大きくなるのです。

対してESG投資は、環境・社会・企業統治(ガバナンス)の要素も投資の判断材料になります。従来の株式投資のように、企業価値が下がる危険性が低いと言えるでしょう。短期間で大きな利益を得ることは難しい反面、長期的に安定した利益を得やすくなるのです。そのため、長い目線からの資産形成に向いています。

(※)投資パフォーマンス:運用成果や運用実績・過去の価格の動き

メリット②社会貢献

ESGの要素を意識している企業は、

  • 二酸化炭素の排出量が少ない再生可能エネルギーの開発
  • 低所得移民労働者に向けた送金手数料の低い送金システムの開発
  • ダイバーシティを意識した経営

など、環境・社会・ガバナンスを意識した事業や経営を行っています。

そのため、投資することによってそれらの企業は更に事業に力を入れられます。事業は拡大し、ESGに関わる問題の解消にもなるでしょう。つまり、投資家は利益を得られるだけではなく、社会貢献も間接的に行ったことになります。

ESG投資のデメリット・問題点

ESG投資には、デメリットや課題も存在します。

デメリット①短期のリターンが小さくなる可能性

ESG投資は、短期間で大きなリターン(利益)を得られる点に注目し投資するのではなく、「環境や社会問題に力を入れているか」のような、短期間では成果が出ない、または成果が見えにくい点を重視します。そのため繰り返しになりますが、長期的な資産形成には向いているものの、短期のリターンは小さくなる可能性があるのです。

デメリット②グリーンウォッシュに注意が必要

グリーンウォッシュとは、表面上は環境に配慮しているように見せかけているが、実際はそうではない状態です。

例えば、

  • 商品やサービスと関係ない自然やエコなどを連想させる写真を多用する
  • 実際はそうではないが、環境に優しい企業だとイメージさせる広告を出す

など、取り組んでいないのに「環境に良いイメージ」を植え付けようする手法を取る企業が挙げられます。

そのため、「この企業は環境に良いことをしているんだ」と誤解し投資してしまうと、その活動を支援してしまうことになります。「名前にグリーンと付いているから」「環境に良さそうだから」とイメージだけで判断するのではなく、企業についてしっかりと調べてから投資しましょう。

世界のESG投資の現状

ESG投資のメリット・デメリットを理解したところで、続いては世界の現状を見ていきます。

サステナブルファイナンスへの関心によって増加するESG投資

GSIA(世界持続的投資連合)は、2020年の世界のESG投資額が35.3兆ドル(約3,900兆円)であったことを発表しました。

参考:https://www.nikko-research.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/rc202108_0001.pdf

前回発表のあった2018年より15%増え、なかでも英国は42.4%と大幅な増加を見せました。理由としては、英国のサステナブルファイナンス(※)への関心の高まりが挙げられます。

しかし欧州では、サステナビリティ開示の新規則によって、ESG投資とみなされない投資戦略を除いた結果、14.6%減少しました。そのため、2018〜2020年の伸び率が下がったと言えます。

※)サステナブルファイナンス:環境や社会問題の解決を、金融面から誘導する手法や活動を指す言葉

日本のESG投資の現状

続いては、日本の現状を見ていきます。

ESG投資は日本でも広がりを見せている

グラフからも読み取れるように、近年日本では、サステナブル投資に対する注目が高まっています。

そのなかでも、とくにESG投資が伸びており、2020年の日本のESG投資額は2.8兆円(約320兆円)でした。2018年より31.8%も増加しています。

ESG投資の手法としては、

  • ESGインテグレーション:66.1%
  • エンゲージメント / 株主行動:60.4%
  • ネガティブ・スクリーニング:43.6%

の3つが大きな割合を占めています。

また、日本ではプライベート・エクイティ(※)や積券・不動産などに投資する際も、ESGを意識する人が増えているようです。

(※)プライベート・エクイティ:未上場企業の株式

日本におけるESG投資の企業事例

続いては、ESG投資の企業事例を確認していきましょう。

【花王 株式会社】Kirei Lifestyle Plan

花王は、2019年にESG戦略である「Kirei Lifestyle Plan」を開始しました。Kirei Lifestyle Planは、世界中の人々の「持続可能なライフスタイルを送りたい」という思いや行動に応え、心豊かに暮らせるように事業の革新や社会貢献を行っています。

実際の取り組みの1つに、「製品のコンパクト化」が挙げられます。製品の性能を高め、見た目をコンパクトにすることによって、1回あたりの使用料やゴミの量を減らし、原材料とエネルギー消費量も少なくしました。代表的な製品に、衣料用粉末洗剤の「アタック」があります。

参考:https://www.kao.com/jp/corporate/sustainability/#area-LocalNavBottom01

【AGC 株式会社】ガラスカレットで人工干潟の再生に貢献

AGCグループのAGC高砂事業所では、製造工程で発生したガラスの屑「ガラスカレット」を人工ケイ砂化し、人工干潟の再生に活用しています。高度経済成長期、干拓や埋立が盛んに行われていました。これにより干潟の減少が問題となっていましたが、AGCの人工ケイ砂が干潟の再生に貢献しています。この活動は、環境省が主催する「環境技術実証事業」の実証対象技術としても推進されています。

参考:https://www.agc.com/csr/environment/environment_3.html

ESGランキング

「ESG投資をしたいけれど、どの企業が良いのだろう」と、悩む人もいるでしょう。その際に参考にしたいものが、「ESGランキング」です。今回は、東洋経済新報社が発表した『CSR企業白書2021年版』に掲載している、上位5つの企業を紹介します。

【ESGランキング】

順位企業名
1位SOMPOホールディングス
2位オムロン
3位j.フロント リテイリング
4位富士フイルムホールディングス
5位KDDI

引用元:『CSR企業白書2021』|東洋経済新聞社 2021年4月

ESG投資は個人もできる?

ここまでESG投資について紹介してきましたが、そもそも個人でもできるのでしょうか?

投資初心者には比較的おすすめ

ESG投資は、長期的な資産形成に適しています。そのため、「老後のために資産をつくりたい」や「大きな利益はいらないから、リスクを抑えて投資をしたい」という人におすすめです。また、リスクを抑えられる点では、初めて投資をする人も従来の株式投資より挑戦しやすいでしょう。

まとめ

ESGの3要素が優れている企業や業界に、株式投資を行うESG投資。企業価値が下がる可能性も低く、長期的に安定したリターンを期待できます。リスクも抑えられるため、投資初心者にも比較的貯戦しやすいでしょう。また、投資することで間接的に社会貢献にもつながります。

「株式投資をしてみたい」や「環境や社会問題の解決の手助けがしたい」という人は、ESG投資を検討してみてはいかがでしょうか。

〈参考文献〉

GSIA 「Global Sustainable Investment Review2020」を発表~世界の責任投資市場に関するレポート(2020年版)|日興リサーチセンター
経営戦力としてのSDGs・ESG|白井 旬 著(合同フォレスト)
ESG投資|GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)
ESG投資|経済産業省
わが国のESG投資の現状|日興リサーチセンター 社会システム研究所 ESG投資調査室
GPIFって、なに?|GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人
責任投資原則|PRI
SDGsとESG投資|みずほ総合研究所株式会社
2020年ESG投資家実態調査|Quick
ESG投資を巡る課題|早稲田大学 根本直子
自然共生社会|AGC
製品のコンパクト化|花王
干潟の働きと現状|水産庁