相対的貧困って?具体的事例や企業の取り組み・個人ができることまで

世の中には、貧富の格差が原因で、働いていても毎日の生活に苦労している人たちがいます。

目には見えにくい実態ですが、先進国を中心に増えている”隠れた貧困層”は「相対的貧困」といわれ、大きな問題になっているのです。

相対的貧困は日本でも早急に解決しなくてはならない課題のひとつであり、SDGsにも深いかかわりを持っています。

この記事では、相対的貧困とは何か?から、SDGsとの関連性や日本と世界の現状、私たちができることをお伝えします!

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)

相対的貧困とは?

みなさんが「貧困」と聞いて想像するのは、多くが途上国で暮らす貧しい人々ではないでしょうか。

これは「絶対的貧困」と呼ばれ、今回の記事でお伝えする「相対的貧困」とは異なります。

ここで一度「絶対的貧困」と「相対的貧困」の定義について確認していきましょう。

絶対的貧困

絶対的貧困とは

人間として必要最低限の生活が満たされない状態

つまり、水や食糧、住むための家、着るための衣服など、普段の暮らしに必要不可欠なものが手に入らない環境にあるということです。

世界銀行の発表によれば、2017年時点で1日1.9米ドル(約209円)以下の生活費で暮らす人の割合は9.3%。

地球には約77億人が住んでいますが、なんとおよそ7億もの人々が、家や食べ物がなくて困っています。

絶対的貧困が深刻な問題になっているのは、アフリカ諸国や南米が中心です。

多くの人々は、きれいな水を飲めない教育・医療を受けられないといった、生活に不可欠な要素が足りていないのです。

相対的貧困

相対的貧困とは

自分の属する国・地域社会で暮らす人々の平均よりも貧しい生活を送っている状態

先進国などでは絶対的貧困はほとんど見られないため、一般的には相対的貧困を用います。

たとえば日本の相対的貧困は、次のような特徴が挙げられます。

  • 世帯主年齢別では、高齢者が多い(全国消費実態調査では 60歳以上、国民生活基礎調査では 70 歳以上)
  • 世帯類型別では、平均的に単身・一人親世帯が多く、夫婦のみ・夫婦と子どものみ世帯が少ない
  • 国民生活基礎調査において、郡部・町村居住者が多い(=都市部から離れた地域に多い)

国や地域によっては、高齢者所得より子どもの貧困率が高い場合もあり、違いはさまざまです。

相対的貧困率

相対的貧困を知るには、どれくらいの人が相対的貧困状態にあるのかを示す目安が必要です。

国や地域の割合を見るための「相対的貧困率」という指標があります。

相対的貧困率の算出方法

相対的貧困率とは、国・地域で平均的な所得中央値の一定割合しか所得がない人の割合です。

所得は「可処分所得」ともいい、働いてもらえるお給料以外にも年金や財産・仕送りも含まれます。

計算式

・所得中央値 =世帯の所得(可処分所得) × 50%

・相対的貧困率 = 所得中央値 × 調査世帯の数

こちらは理解するのが難しいので、「このように計算されているんだ」程度の認識で問題ありません。

厚労省によると、日本では貧困の現状を把握するために、この計算方法を用いて3年に1度の調査を行っています。

最新のデータ(2018年)では、貧困の基準となるラインは127万円。この基準に満たない世帯割合を示す相対的貧困率は、15.4%でした。

どちらも、前回の調査時(2015年)から、わずかに上昇する結果となっています。

相対的貧困率は、その国・地域の貧困状況を知る大切な指標です。

世界の現状は?

ここで、相対的貧困の状況について、まずは世界の現状に目を向けてみましょう。

以下の図は、OECD(経済協力開発機構)が発表した、主要国の年代別相対貧困率を示すグラフです(2019年時点)。

●=すべての年代、◇=0~17歳、×=65歳以上

引用元:OECD

国によって、かなりばらつきがありますね。

興味深いことに、アイスランドやデンマーク・ノルウェーといった北欧諸国では、すべての年代と子どもの貧困率が低く、高齢者はむしろ全世代の平均を下回っています。

手厚い福祉制度が整っているため、高齢者の貧困率は特に低い傾向にある点がポイントです。

ただし、エストニアや韓国のように、国によっては年代の差が大きく、全体的に働く機会の少ない子どもや高齢者が貧困に陥りやすいのも現状です。

次は子どもの貧困に関するグラフを見てみましょう。

下の図は日本ユニセフ協会(unicef)が発表した、先進国の子どもの貧困率を表した図です。

国の所得中央値の60%に満たない世帯に暮らす子どもたちは、2014年時点で平均21%。5人に1人の子どもが貧困に陥っています。

引用元:ユニセフ

北欧を中心に割合が低いものの、それでもおよそ3人に1人は相対的貧困層

先進国といわれる米国やオーストラリアもまだまだ比率が高く、世界で貧困をなくす課題に向けて、各国が長期的に取り組まなくてはならない状態です。

SDGsとの関連は?

それぞれの国が抱える問題や実情は異なるものの、相対的貧困は、世界規模で早急に解決すべき大きな課題のひとつです。

貧困問題は、国連が2030年までの解決目標を定めたSDGsと深いかかわりを持っています。

ここでは、特に関係のあるSDGs目標1「貧困をなくそう」について見てみましょう。

目標1「貧困をなくそう」に深い関わりが

SDGs目標1「貧困をなくそう」について考えるとき、おそらく多くの人は「絶対的貧困」に注目しがちです。

しかしターゲットを見てみると、必ずしもそうではないことに気が付きます。

たとえば、こんなターゲットがあります。

1.2  2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。

ここで触れているとおり、先進国を含むすべての国にある「あらゆる貧困」をなくすことが求められています。

絶対的貧困をなくすことはもちろんですが、相対的貧困への課題解決も同じように重要視されているのが、SDGs目標1「貧困をなくそう」です。

もちろん、貧困問題は日本も例外ではありません。

世界的に見れば豊かな国のように見えますが、相対的貧困が一定数いるのは事実。

社会的・経済的に弱い立場である人々の声に耳を傾け、一刻も早く貧困層を救う必要があります。

いま日本では、どのような問題が起きているのでしょうか。

日本の現状は?

先ほど「相対的貧困率」の章でお伝えした通り、日本では2018年時点およそ15%の人が相対的貧困層です。

以下の図は、厚労省が行った調査をもとに、日本の貧困率の推移をまとめたものです。

1985年から2018年にかけて、太線の「相対貧困率」が上昇していることが分かります。

引用元:厚生労働省

そして、ここで注目すべきもうひとつのポイントは「子どもの貧困率」。

上のグラフからも分かるように、2018年時点で14%の子どもが貧困層で、人口の約7人に1人に当たります。

相対的貧困層の子どもは、見た目だけでは貧困状態かどうか分かりにくく、いじめや孤立を避けて口にしないケースが多数あるとされています。

実態をつかみにくく難しい問題ですが、確実に子どもの貧困率は増えているのです。

相対的貧困に陥った子どもは、さまざまな機会や権利にアクセスすることが難しくなります。

  • 習い事、塾に通えない→学習の機会を逃す
  • 美術館や博物館など文化施設に行けない→新たな世界に触れられない
  • 両親が共働きで夜遅くまで帰ってこない→家族とのコミュニケーション不足、将来への不安、社会的知識が身に付かない など

こうした権利・機会のはく奪は、子どもの成長に大きく関わるだけでなく、社会的損失にもつながると指摘されています。

日本財団の試算では、子どもの貧困を放置した場合、経済損失はおよそ42.9兆円にものぼると発表されました。

学習の機会が失われることで就職に影響が出ると、収入を十分に確保できず、税金・社会保障の支払いに支障が出るからです。

日本の将来を担う子どもは、私たちにとって希望であり、誰もが人として安心・豊かな生活を送る権利があります。

日本社会にとって負の循環をこれ以上生み出さないため、また子どもたちの将来の希望を取り戻すために、ひとりでも多くの子どもたちを貧困から救い出さなくてはなりません。

相対的貧困の解決に向けた国の取り組み

日本では、相対的貧困の解決に向けた取り組みを行なっています。

ここでは主に3つの政策を見ていきましょう。

子どもの学習・生活支援事業

厚生労働省が一般社団法人に委託する形で行っているのが、子どもの学習・生活支援事業です。

全国に相談所・支援施設を設置し、次のような取り組みに励んでいます。

  • 学習支援
  • 進路相談(学校・就職先など)
  • 生活習慣・育成環境への助言

都道府県や地域によって、独自のサービスを行なっている場合もありますので、詳しくはこちらのリンクから事業所リストをチェックしてみてはいかがでしょうか。

スクールカウンセラー制度

スクールカウンセラーとは、子どもの声に耳を傾けて悩み相談などを聞き、アドバイスをする職業です。

主に臨床心理士や精神科医の経験を持つ人が学校に所属します。

  • 不登校 ・いじめ問題
  • 暴力行為
  • 友人関係
  • 非行・不良行為
  • 家庭環境・児童虐待・貧困の問題
  • 教職員との関係
  • 心身の健康・保健 
  • 学業・進路
  • 性的な被害

広範囲にわたって子どもたちの声に耳を傾け、アドバイスや心のケアを行なうことで、相対的貧困の実態把握から支援に繋げる役割も果たしています。

また子どもだけでなく、保護者や教員といった大人に対して行うこともあり、社会・経済的な孤立から心理面でのサポートを求める人たちを支えるために、スクールカウンセラーは大切な存在です。

マザーズハローワーク事業

厚生労働省が行う取り組みのひとつに、マザースハローワークがあります。

全国に設置された施設では、共働きを目指す方はもちろん、ひとり親の方への支援が充実。

子どもがいても出来る仕事の紹介や、育児・家事との両立をサポートします。

施設内に、保育スタッフが駐在するキッズコーナーを設けている場所もあるので、親子で一緒に訪れることができる点はうれしいポイントですね。

相対的貧困の解決に向けた企業・自治体の取り組み

相対的貧困に悩む人々を支える取り組みは、国の政策だけでなく企業・自治体にも広がっています。

以下に、いくつか例を挙げてみました。

企業や組織として、何ができるのかを見ていきましょう。

株式会社ジモティー 〜ひとり親ユーザーを救え!〜

引用元:ジモティー

株式会社ジモティーのユーザー調査によれば、不用品の譲渡・売買を行なうサービス「ジモティー」ユーザーのおよそ半分が、ひとり親世帯。

そこで2018年には、協賛企業から支援物資を集め、貧困層の自立支援団体を通じて、ひとり親家庭を優先とした譲渡会を開催しました。

ほかにも、地域で食品の譲渡会を開き、相対的貧困層への積極的なサポートを続けています。

パルシステム 〜配達システムをかしこく活用〜

引用元:パルシステム

首都圏を中心とした生協(coop)が集まるパルシステムでは、配達仕分けなどの際に出てしまう野菜や果実を、フードバンクや子ども食堂に届ける取組を実施中。

宅配サービスならではの地域ネットワークを活かし、地元の活動団体からの依頼をもとに配達センターまで届けています。

子どもやひとり親世帯だけでなく、路上生活者への食糧支援を行ない、広い範囲で貧困層をサポートしている活動です。

東京都板橋区 ~みんなで助けあう町づくりを~

食品を集めて届ける「フードドライブ」は、企業だけでなく自治体も実施しているところがあります。

東京都板橋区では、18か所ある地域センターで食品を集め、子ども食堂フードバンクへ提供

区内を中心に、食料に困っている人々の元へ届ける活動を行なっています。

家庭で眠っている食品をどこへ預けたらいいかわからない!という人は、住んでいる市区町村の活動をチェックするのもおすすめです。

個人でできること

大きな組織だけでなく、私たち個人にできることも沢山あります。

最も取り組みやすいのは、支援団体への寄付や、ボランティア参加などです。

今回は、特に「日本の貧しい子どもたち」へ取り組めるヒントとなるよう、活動団体をいくつかピックアップしました。

日本こども支援協会 〜選べるオプションで、無理なくサポート〜

子どもの未来を守るために活動している「日本こども支援協会」では、

  • 寄付
  • 会員費
  • 遺贈寄付
  • ボランティア

といった、さまざまな形でのサポートシステムを提供しています。

子どもが充実した環境に身を置けるよう、里親・児童施設の支援をはじめ、全国の自治体や専門家との連携による活動を続けています。

個人または企業として、無理のない支援の形を選べる点がメリットです。

日本財団 〜直接寄付で、プロジェクトを応援しよう〜

引用元:日本財団

子どもの貧困をはじめ、災害・文化といった幅広い範囲での支援を行なっているのが、日本財団です。

中でも相対的貧困に悩む子どもへの支援には「子ども第三の居場所」や「日本財団夢の奨学金」といった内容で寄付を募っています。

自分が支援したいプロジェクトに直接寄付することができ、日本の子どもたちの未来を支える一員となれますよ。

Charibon(チャリボン) 〜本で子どもを支援!〜

募金へのハードルを感じる人でも、本の寄付ならやりやすいだろう、と立ち上がった団体が、チャリボンです。

寄付された本は、申し込み時に決めた支援先へ本のまま送られるか、お金に換えてサポートする形に。

団体は子どもの貧困以外にも多様なジャンルがあり、はじめて個人でのサポートを考えている人も、気軽にアクションを起こしやすいのではないでしょうか。

セカンドハーベスト・ジャパン ~余った食材を子どもたちに~

セカンドハーベスト・ジャパンは、日本ではじめてのフードバンクです。

困窮した子どもたちや、さまざまな事情を食べものを手に入れられない人々に向け、炊き出し・フードバンクといった支援を行なっています。

個人としてできるサポートには、

  • 食の寄付
  • お金の寄付
  • 時間の寄付(現地のボランティア活動)

個人だけでなく、企業も物流・備品の提供や、メディアの取材を通した活動があることを呼びかけています。

支援団体が多すぎて決められない!

全国には大小さまざまな支援団体が存在し、活動内容もそれぞれ異なります。

支援をしたいけど、どこを選んだらいいのか分からない!という人も多いのではないでしょうか、

その場合、まずは自分が気になる分野・キーワードを設定して調べてみましょう。

たとえば「子ども 貧困」「フードバンク」といった単語を並べて検索すると、具体的な組織名を知らなくても、たくさんの団体を見つけることができます。

団体のホームページに、定期的なレポート・報告や、明確な支援先が書いてあれば安心です。

時には、本当に支援先に届いているのかな?と不安に思ったり「ちょっと違うな」と感じることもあるかもしれません。

そのときは途中でその団体への寄付を止めて、別の団体を探せばよいのです。

あまり重く考えすぎず、まずは行動してみることが大切です。

まとめ

相対的貧困は、日本だけでなく世界全体で根深い問題のひとつです。

見た目では分かりにくく、さまざまな事情から実態が把握しづらいため、なかなか前に進まないのが現状ではあります。

しかし一方で、国や組織は、食・教育・物資支援といった取組をすすめ、課題の解決に努めています。

私たちが組織の一員として、個人として、できることは少なからずあり、SDGs目標1「貧困をなくそう」の達成にもつながるのです。

みんなが平等で幸せな社会をつくるためにも、ひとりひとりが行動に移していけば、必ず明るい未来が見えてくるはずですよ。

参考文献
ワールドビジョン
世界銀行
ユニセフ
厚生労働省
内閣府
NHK

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