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プラントベースで「食のバリアフリー」と「自分にも世界にもGoodな消費」を広げたい|株式会社フレンバシー

株式会社フレンバシー

株式会社フレンバシー 播 太樹さん インタビュー

株式会社フレンバシー 播 太樹様

播 太樹

1987年生まれ大阪出身。神戸大学国際文化学部卒業、在学中に米University of Georgiaへ留学。新卒で三井住友銀行に入社し、法人融資と国際与信に携わる。2015年に株式会社フレンバシーを創業、2022年にM&Aで株式会社ユーグレナ(東証プライム市場)のグループ会社となる。日本最大のプラントベースポータルサイト「Vegewel(https://vegewel.com/ja/)」、ソーシャルグッドな商品のマーケットプレイス「Good Good Mart(https://goodgoodmart.com/)」を運営。美味しい上に環境にも優しい、健康的な上に貧困の撲滅にも繋がるなど、自分にも世界にもGoodな消費の選択肢を広めることを目指す。

introduction

健康志向やアレルギー、環境・動物などの観点から、日本でも広がりを見せる食の考え方「プラントベース」。

そんなプラントベースで「食のバリアフリー」を実現し、「自分にも世界にもGoodな消費の選択肢の拡大」を目指すのが、株式会社フレンバシーです。

今回、代表の播さんにプラントベースを軸に事業を展開するようになった背景や、食に対する考え方、現在の取り組みについて伺いました。

インバウンド向けサービスから、「食のバリアフリー」を目指すVegewelへ

–まずは、会社の事業内容を教えてください。

播さん:

フレンバシーは、プラントベースの情報を網羅した日本初のポータルサイト「Vegewel」と、ソーシャルグッドな商品のマーケットプレイス「Good Good Mart」を運営している会社です。

創業は2015年2月ですが、初めからプラントベースを軸としたサービスを運用していたわけではありません。

当時、東京オリンピックが日本に決まり、インバウンド需要が盛り上がっていました。加えて、私が国際系学部出身で留学経験もあり、海外との繋がりに強い関心を持っていたことから、外国の方が日本で過ごすときに役に立つサービスを立ち上げたいと考えていました。そこでオープンしたのが、訪日外国人向け日本食予約サイト「Tokyo Dinner Ticket」です。これは、焼き鳥やお好み焼きといった和食飲食店を検索、予約できるというものです。

評判も上々だったんですが、サービス改善を目的に外部の方へインタビューをしていたとき、あることに気がつきました。それは、食に制限を持つ外国の方は「日本で食事を楽しめない」ということです。

宗教上の理由やアレルギーといった「食の制限」をもつ外国の方は、コンビニで買った白おにぎりと梅おにぎりしか食べられないこともあるとのことでした。

そのような外国の方の助けになりたいという思いから、誰もが食事を楽しめるプラントベースに特化したレストラン検索サイト&Webマガジン「Vegewel(ベジウェル)」が生まれました。

いざリリースしてみると、外国の方はもちろんのこと、日本の方にも多くの需要があると分かったんです。ベジタリアンやビーガンを実践している方はもちろんのこと、食物アレルギーを持つ方への需要も高く、日本にも「色々な食の制限」が存在していることを知りました。

「息子に卵アレルギーがあるから、バースデーケーキを食べさせたことがない」というお話も聞き、食の制限が日常生活の楽しみまで奪っている状態をとても不自由だと感じて。

そんな不自由をなくしたい、みんなが一緒に食事ができる環境を整えたいと、Vegewelを活用して「食のバリアフリー」の実現を目指すようになりました。

現在、月間約40万人のアクセスがあり、多くの方々に利用していただいています。

Vegewel

プラントベースでみんなの選択肢を広げたい

–では、そのようにして誕生した「Vegewel」について詳しく教えてください。

播さん:

1つ目の特徴として、全国各地のプラントベースを提供するレストランが掲載されていることです。2023年3月時点で1,442店舗のレストランが登録されており、オーガニックやマクロビなどの条件を追加して検索することもできます。

ご利用いただいている方は、ビーガンやベジタリアンの方はもちろんですが、やはり「食物アレルギー」をお持ちの方もたくさんおられます。

飲食店で食物アレルギー対応をお願いするのは、実は結構難しいんですよ。すべての店員さんがアレルギーに対する知識を持っている訳ではないので、「卵アレルギーなので、卵を抜いてください」と頼んでも、卵が含まれているマヨネーズをかけてしまうことも十分あり得ます。

その中でプラントベースのレストランは、食物アレルギーの主な原因物質である「鶏卵」「乳製品」を使用しないケースが多いので、アレルギー持ちの方の受け皿にもなっているんです。

Vegewel

2つ目の特徴は、プラントベースを中心としたお役立ち情報などをまとめたWebマガジンがあることです。

Vegewelの読み物には、大きく2つのコンセプトがあります。1つは、当たり前ですがプラントベースであること。そしてもう1つは、「何も否定しないこと」です。

 例えば、オーガニックの記事であれば、「慣行栽培や農薬がいかに危険か」といった内容の記事を読んだことがある人も多いと思います。

ですが、私たちがしたいのは「みなさんの選択肢を広げること」であって、何かに警鐘を鳴らしたり誰かの選択肢を狭めたりすることではありません。だからプラントベースのサイトではあるものの、畜産業の悪い側面を伝えるようなコンテンツは1つもないんです。

あくまでもポジティブな視点から「良さ」を伝えるメディアとして、「プラントベースかつ何も否定をしない」コンテンツであれば、イベントの記事、飲食店の取材、レシピなど、何でも載せています。

お客様の声で気づいた、消費で「他者へのGood」を実現する方法

–続いては、「Good Good Mart」について教えてください。

播さん:

Good Good Martは、健康的・おいしい・便利といった「自分へのGood」と、環境配慮や社会福祉といった「他者へのGood」、2つのGoodが両立した商品を購入できるECサイトです。

例えば、プラントベース食材で作ったレトルトカレーや、米粉やオーガニック野菜パウダーが使用されているパンケーキミックスなど、「自分には健康的で、さらに地球環境にも優しい」というように、両方へのGoodが必ず入っています。

Vegewelと同様に、Good Good Martも最初から現在の形だったわけではなく、「家で食べるプラントベース」を購入できるECサイト「Vegewel Marché(ベジウェルマルシェ)」が始まりです。

運用してしばらくすると、「環境や動物のため」にVegewel Marchéの商品を購入している方がいると気づいたんです。

実は私は、昔から貧困問題に関心があり、大学を卒業してからはWFPに寄付をしてきました。しかしそれは裏返してみれば、「社会に対してポジティブな貢献ができる方法」が、寄付以外に思いつかなかったからでもあるんです。

「私たちのプラントベース商品を購入してくれるユーザーさんの中に、社会への貢献を意識して消費活動をされている方がいる。」これに気づけたことで、自分のソーシャルな意識とフレンバシーの事業が結びついて、「Vegewel Marchéで、社会へのポジティブなインパクトを作っていけるんじゃないか」と考えました。

社会にとってポジティブなインパクトを起こしていくのに、プラントベースに限る必要はありません。そこでプラントベースに特化したECサイトからソーシャルグッドな商品を集めたECサイトへリニューアルしたのが、今の「Good Good Mart」です。

Good Good Mart

とはいえ、「ソーシャルグッド」は抽象的且つ幅広い考え方です。そこで、フレンバシーでは「ソーシャルグッド」を「自分以外の他者にポジティブな影響を与えるもの」としています。それを具体的にしたのが、Good Good Martの「地球にGood」の項目(プラントベース、オーガニック、クルエルティフリーなど)です。

パートナーシップで目標を達成しようクルエルティフリー

動物性の原材料を使用せず、開発にも動物実験を行っていないもの

項目ごとに選択できることで、自分の価値観に合った商品を見つけやすくなっています。

–Good Good Martで、購入する人が特に多い項目はどれですか?

播さん:

一番は、やはりプラントベースです。その他ではオーガニックや無添加、グルテンフリーも多いですね。

「自分以外の他者にポジティブな影響を与えるもの」とは言いつつも、どちらかというと「自分にGood」の軸で購入いただいている傾向が見られます。私たちはそれでいい、むしろそうしてほしいと思っています。消費活動はチャリティーではありませんから、「ソーシャルグッドな消費」の責任を、買う側に押し付けてはいけないと考えているんです。

Good Good Mart

自分がほしいものを買ったら、それがソーシャルグッドだった。そういう姿を目指して、Good Good Mart の1つ目のGoodは、「自分にGood」にしています。そんな思いから、お客様にとって「より美味しい」ものをお届けするために、冷凍食品の販売も始めました。

さらにもう1つ。「自分にGood、地球にGood」という世界観を何よりも詰め込んでいる商品に、「Good Goodシリーズ」があります。

「Good Goodシリーズ」

これは、無添加・プラントベース・アレルギー28品目不使用・社会福祉(障害のある方の福祉施設で製造しています)・砂糖不使用をコンセプトに、「食べる人には、食べられる喜びと健康を」「作る人には、自立支援を」「地球には、環境負荷の軽減を」提供することができる商品です。味もおいしいと好評をいただいています。

「ソーシャルグッドな消費」ができる日本最大のプラットフォームを作りたい

–プラントベースという分野に特化して、ここまで事業を展開される中で大変なこともあったのではないでしょうか?

播さん:

苦労があったといいますか、苦労しかしていないというのが正直なところです(笑)。

「Vegewel」のプラントベースにせよ、「Good Good Mart」のソーシャルグッドにせよ、注目はされているものの、そのような消費が一般的になっているかというと、まだまだそうではありませんよね。

ですから、検索で見つけてもらうこと・自分たちのサービスを知ってもらうことが難しかったですし、今でも苦労しています。

また、スタートアップ企業でしたので、資金調達も本当に大変でした。例えば、最初のサービスであるTokyo Dinner Ticketが終了してからVegewelをスタートさせるまでは、まったく収入がなかったんです。そのため当時は週3日、他の会社で働きながら、残りの時間でサービスの開発をしていましたね。

スタートアップ企業

ただ昨年ユーグレナ・グループに参画しましたので、現在はスタートアップ企業ではなくなりました。これからは、今まで協業できなかったような企業とも力を合わせて、ソールグッド・エシカルという市場を広げていきたいと考えています。

ユーグレナ・グループ

–今後の展望を教えてください。

播さん:

「ソーシャルグッドな消費」の、日本最大の流通プラットフォームを作ることを目指しています。

「ソーシャルグッド」はとても大きい概念なので、興味関心を持つ切り口は人によって違います。ビーガンもあれば、社会福祉もあれば・・・私の場合は貧困やフェアトレードというように。

私たちがしたいのは、「これがソーシャルグッドだ」と押し出すことではなく、いろんな切り口を作ることです。

それぞれが貢献したいと思えるソーシャルグッド・サステナブル・エシカルな商品が買えるプラットフォームができれば、この市場も拡大していくと考えています。

「ソーシャルグッド」

もう1つは、こども食堂やフードバンクにも携わりたいという思いがあります。私は「誰かがご飯を食べられないこと」、特に子どもがご飯を食べられないことに、理由のない憤りを感じるんです。

日本国内でもいまだに「食べられない」課題が存在していますし、そのような状況でアレルギー対応をするのはとても難しいはずです。会社の事業の中でできるか、私個人のライフワークになるかはわかりませんが、「食のバリアフリー」という、フレンバシーのコンセプトが入ったこども食堂やフードバンクを作るなど、自分にできることを模索していきたいと思います。

 –「食のバリアフリー」や「ソーシャルグッドな消費」が、1人でも多くの人に届いてほしいと感じました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。