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代替肉を世界に広めて地球温暖化の解決にインパクトを与えたい|ネクストミーツ株式会社

ネクストミーツ

ネクストミーツ株式会社 牧野勇也さん インタビュー

牧野勇也

ネクストミーツ株式会社 CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー) / 1995年静岡県生まれ。大学時代に環境問題に興味を持つ中で食(とりわけ過剰な畜産)も多大な影響を与えていることを知り、環境×食に関心を寄せる。しかし当時は該当するような企業がほとんど無かったこともあり、将来重要性がより高まり求められるであろうデジタルマーケティングのスキル・知見を習得すべく、大学卒業後はデジタルマーケティングのベンチャー企業で働く。その後2020年夏にネクストミーツを偶然知り、即座に応募して入社。設立間もない時期だったこともあり、マーケティングだけでなく広報、営業、採用など幅広い業務に携わり、現職に至る。普段から代替肉やプラントベースの情報収集、レストラン周りに勤しんでいる。

introduction

日本発の代替肉ベンチャーとして2020年に創設された「NEXT MEATS(ネクストミーツ)」。創設者である佐々木英之さんは、環境問題への危機意識から代替肉事業に着手しました。「地球を終わらせない。」を理念に掲げ、代替肉を通して社会課題の解決に向けたメッセージを投げかけています。

今回、ネクストミーツの広報である牧野さんに、代替肉と環境問題の関係やネクストミーツの商品について伺いました。

代替肉を新たな食のスタンダードに

「NEXT MEATS(ネクストミーツ)」

–まずは御社の事業内容について教えてください

牧野さん:

ネクストミーツはフードテックベンチャーとして代替肉の開発・販売をしています。地球環境に配慮した次世代の肉として、代替肉を新たな食のスタンダードにすることを目指しています。

代替肉は簡単に言うと、お肉のようで、お肉でない、お肉です。代替肉には、「植物性タンパクを使った代替肉」と「動物の細胞から作る代替肉(培養肉)」の2種類がありますが、ネクストミーツが展開しているのは前者です。大豆やえんどう豆といった植物性タンパクを原料として、お肉のような味・食感を再現しています。

コレステロールフリーで脂質も控えめなので、消化負担が少なく済みますし、食物繊維も一緒に取れるメリットがあります。

過去には動物性と比べて、植物性の代替肉はアミノ酸スコアが低い(タンパク質の質が低い)と言われていたのですが、最近の研究では動物性と変わりないタンパク質が取れるという結果が出ています。

代替肉は社会課題の解決の糸口になる

「NEXT MEATS(ネクストミーツ)」

–ネクストミーツが代替肉に着目したきっかけを教えてください。

牧野さん:

創業者の佐々木は、ネクストミーツを立ち上げる前に、中国の深圳でビジネスを行っていました。当時の深圳は新しい企業がどんどん参入してきて、街が急激に成長していく一方で、PM2.5などの環境汚染が社会問題になってました。

その中で、ビジネスを通して社会課題につながることがしたいという想いが出てきて、中国での生活で環境汚染を体験したこともあり、特に環境問題に意識が向くようになりました。

その頃にちょうどアメリカで代替肉が注目されているというのを知り、興味を持ちました。詳しく調べていくと、環境問題と代替肉が密接に関係しているということがわかり、事業をスタートさせたという経緯です。

–食品と環境問題はどのように関係しているのでしょうか?

牧野さん:

世界の温室効果ガス排出量の約14.5%が、畜産によるものという調査結果が出ています。これは車や電車・飛行機などの交通から排出される温室効果ガスの量とほとんど同じくらいの割合です。

具体的な数値でみると、牛肉1kgにつき温室効果ガスは99.48キログラム排出されていて、これはガソリン約43リットル分に当たります。また、家畜を育てるためには多くの水が消費されています。飼料が必要ですし、飼料を育てるためには土地が必要で、土地が足りなければ森林伐採をして土地を作ることになります。

それぞれの工程において水が消費されているので、1kgの牛肉を育てるためには20,600リットル、お風呂100杯分以上に相当する水が使われていると言われています。いかに地球に負担をかけているのかが分かりますよね。

もう一つ違う観点から見ると、人口増加と経済成長も食品と関わりがあります。将来的に世界の人口が増加していき、2050年には96億人まで増える見込みです。そして、今は途上国と言われている国もこれからどんどん成長して、生活水準が上がっていきます。そうなるとお肉の消費量も増えていくはずです。じゃあ、増加した分のお肉の供給を増やしていけるのか?というとそれは難しい。

これらの問題の解決に向けて注目されているのが代替肉なんです。

代替肉の原料である大豆と牛肉との比較にはなってしまいますが、温室効果ガスは-99%、土地の使用料は-97% 、水は-87%、エネルギーは-81%と、圧倒的に環境負荷を下げて商品提供ができます。

今ネクストミーツでは大豆を使って代替肉を製造していますが、より環境負荷の少ない原料が見つかったら、そちらをメインにしていくことも考えています。

環境問題は刻一刻と悪化している

–ネクストミーツは販売開始3年目ですでに海外にも進出されています。すごいスピードで成長されていますよね。

牧野さん:

ネクストミーツは、どれだけ早くインパクトを作れるかということを意識しています。

地球温暖化問題や気候変動問題は、刻一刻と悪化してる喫緊の問題です。

私自身の話になりますが、大学生の頃にミクロネシア連邦という国の海岸沿いの家にホームステイした際、朝起きると家の玄関間際まで海水がきていて驚きました。現地の人に話を聞くと、ここ10年ほどで急激に海面上昇が進んでいて、浸水間際の状況になっているとのことでした。このように、環境問題は身近なところに影響を与え始めているんです。

代替肉はまだ発展途上ではありますが、世界中で関心の高いカテゴリーです。そのため日本だけではなく、早く世界に広めていければ、環境問題の解決につながると考えています。

とはいえ、ネクストミーツとしては環境問題を全面に押し出して代替肉を広めるというよりは、やはりおいしさを重視していきたいと思っています。

一般的な感情として、社会問題を解決するために食べ物を選択するのではなく、美味しいものを食べたいですよね。だからこそ「美味しいから代替肉を食べる」というポジティブなイメージで、自然に広まっていくことを目標にしています。

日々改良が重ねられている商品たち

–では、ネクストミーツが展開している商品について詳しく教えてください。

牧野さん:

今の市場は、ハンバーグやソーセージといったひき肉から作られる料理に寄せた商品が多いのですが、ネクストミーツでは「NEXTカルビ2.0」と「NEXTハラミ1.1」と名付けた一枚肉タイプの代替肉を販売しています。

商品で特にこだわっているところは、食感・匂い・味わいの3つです。

従来の代替肉は、「肉の食感とは違う」、「大豆の匂いが気になる」、「肉っぽいけど何か違う」と言われる傾向にありました。その中で、どれだけ本物のお肉に近い感覚で食べられるかにこだわって開発しています。

大変なことばかりですが、特にカルビとハラミで異なる食感を出すのにはとても苦労しましたね。できるだけ食品添加物を使わない商品を目指しているので、限られた材料の中で表現するのが難しかった。試行錯誤を繰り返し、食感の面ではかなり本物のお肉に近いものが再現できていると感じています。

今後はパサパサ過ぎず、油っぽく感じない程度のジューシーさがある製品を目指しています。

ちなみに、商品名の後ろについている2.0や1.1というのはバージョン番号です。既存商品のおいしさを追求して常に改良していくことにも力を入れているので、バージョンアップされればこの数字が更新されていきます。ユーザーさんからSNSでいただく感想やご要望を参考にしたり、社内で改良のアイディアが常にあるので、それを元にブラッシュアップしています。

–代替肉は特にどんな方におすすめでしょうか?

牧野さん:

まずコレステロールを下げたい方や脂質が気になる方、健康に気をつかっている方におすすめですね。とはいえ、一気にすべての肉料理を代替肉に切り替えるというのは難しいですよね。

そこで休肝日のようなイメージで、週に1日「休肉日」を決めると良いかもしれません。その日は普通のお肉ではなく代替肉にしてみるなど、少しずつ生活の中に取り入れていくと良いと思います。

先程紹介したNEXTカルビ2.0やNEXTハラミ1.1以外にも、牛丼やハンバーガーのパティ、ツナなど様々な種類の商品を展開しているので、飽きずに楽しめるのもポイントです。

また、ご高齢の方で硬いお肉が食べれなくなっている方にも代替肉はおすすめです。代替肉は噛みやすいですし、スジなども無いので食べやすく栄養も取れるなど、メリットがたくさんあります。

世界に代替肉を広めていきたい

–メリットがたくさんある代替肉ですが、何か課題に感じられているところはありますか?

牧野さん:

私自身が思っている以上に、代替肉の認知がなかなか広がっていかないことに難しさを感じています。

お店での売り場が定まっていなかったり、割高なイメージがあったりするので、手にとっていただきにくいんです。また、コロナの関係もあってスーパーで試食が出せていないことも原因の一つだと思っています。

以前、3ヶ月ほどですが、キッチンカーを使ってオフィス街で代替肉牛丼を提供しました。初めて代替肉を食べる方がほとんどだったんですが、「違和感がない!」「おいしい!」と言うお声を多くいただきました。一度口にしていただければ代替肉の良さが伝わると感じましたね。

その中で、つい先日からコストコでNEXTカルビ2.0を改良したNEXTカルビ2.1の販売を開始しました。週末一部の店舗で試食販売を実施する予定ですので、そこをきっかけに、知っていただく機会を増やしていけたらなと考えています。

–ネクストミーツの今後の取り組みを教えて下さい。

牧野さん:

普通のお肉と同じくらいの価格で販売できるようになれば、代替肉がもっと身近な存在になっていくと思うので、コスト面も模索していきたいですね。もちろん同時においしさも追求し続けます。改良を加えて、一度食べた人が「また食べたい」と思ってもらえるぐらいの品質にしていきたいです。

そして最終的には全世界で販売できるようにしていきたいですね。

今はオンラインショップもしくはダイエーやイトーヨーカドー、イオンなどのスーパーで販売されているので、ぜひ一度お試しいただけると嬉しいです。

※詳しい販売店舗は以下をご確認ください。

オンラインショップ

販売店舗

–これからのネクストミーツの成長が楽しみですね!本日はありがとうございました。