#インタビュー

フルッタフルッタ|アグロフォレストリーでつなぐ未来とアサイー、そしてブラジルとの絆

フルッタフルッタ

フルッタフルッタ 松田恵子さん インタビュー

松田 恵子

神奈川県出身。東京農業大学に在学中、持続可能な農業の在り方について学ぶ中でアグロフォレストリーと出会い、卒業後ブラジルへ語学留学とアグロフォレストリーの農場視察のため途伯。帰国後、「事業で社会貢献をしている企業で働きたい」という想いで株式会社フルッタフルッタに入社。以降、企画やメニュー開発、オンラインショップ運営等に従事し、広報担当に至る。

introduction

作物を育てると同時に、森をつくる農法「アグロフォレストリー」。近年、環境やSDGsへの興味関心が高まってきたことで、注目を集めています。

このアグロフォレストリーで生産されたアマゾンフルーツを輸入し、消費者の健康を追求した商品を展開するのが株式会社フルッタフルッタです。

今回、アグロフォレストリーを事業の軸に据えた背景や、ブラジルとの深い絆にまつわるストーリー、商品への想いなどを伺いました。

フルッタフルッタの企業理念:自然と共に生きる

–最初に事業内容について教えてください。

松田さん

弊社はアマゾンで森をつくる農業「アグロフォレストリー」に取り組む日系農協CAMTAと独占販売契約を結び、アマゾンフルーツなどの原料を輸入しています。それらの原料を使って、弊社独自の「フルッタアサイー」「アサイープレス」といったドリンクをスーパーやコンビニなどに展開したり、外食チェーン、飲食店、食品メーカーに対しては業務用製品、原料として販売したりしています。

–気になるワードがたくさん出てきたので、1つずつ伺います。まず、アグロフォレストリーとは何か教えていただけますか?

松田さん

アグロフォレストリーとは、アグリカルチャーとフォレストリーを掛け合わせた造語です。日本では「森林農業」などと呼ばれ、畑の中や周囲などに木を植えて、木の栽培と農業を同時に行う農法です。アグロフォレストリーには様々な手法がありますが、CAMTA農協が行っているのは、20年ほどかけて荒廃した土地を森林に変えていく「トメアス式アグロフォレストリー」です。

この農法の最も大きなポイントは、1年目から収入になる作物が収穫できることです。通常の果樹農園であれば、開始から収入(収穫して販売)になるまでに数年かかりますよね。一方アグロフォレストリーは、最初はすぐに収穫できる野菜や穀物などの作物を栽培しながら、森林となる苗や果樹の苗を栽培します。これにより継続して収入を得られますし、森の育成も同時に行えます。

1枚目の写真が荒廃した土地、2枚目が農場に様々な作物の苗を植え付けた1年目の農場です。

【荒廃地】

【1年目】

こちらが5年目です。この時期が、果樹の収穫が一番多い時期とされていて、アサイーなどのアマゾンフルーツが収穫されます。

【5〜10年目】

最終的には30から40mの木が生い茂り、背が高くなった木の木陰を生かして日陰に強いカカオなどの栽培も行えます。

【20年目〜】

また、このトメアス式アグロフォレストリーは、

  1. 環境…不法伐採抑制・生物多様性回復・温室効果ガス吸収・減農薬・省化学肥料
  2. 経済…安定収入・経済的自立
  3. 社会…生活水準向上・教育水準向上・児童労働防止・治安改善

の3つの面でのメリットがあります。

【トメアス式アグロフォレストリーの特徴】

ブラジルでは、生活に困窮した低所得者が不法に森の木を伐採して収入を得るという例があります。また、作物を栽培するにしても、農薬や化学肥料の多くを輸入に頼っているため、コストがかかる上に、これらを多量に使用すると土壌や地下水の汚染が起こってしまう可能性があるんです。

一方、トメアス式アグロフォレストリーでは、多様な作物の混植によって農薬や化学肥料の使用を最小限に抑えることができます。作物が多様化すればそれだけ農場内の虫や微生物も多様化するので病害虫が減り、農薬の使用量が抑えられます。また作物同士が養分を循環することによって肥料の使用も抑制することができます。このように、省コストで環境を守りながら安定した収入を得られるようになります。

その結果、貧困が原因の不法な伐採から森林を守れますし、経済的自立によって、社会の生活水準向上・教育水準向上・児童労働防止・治安改善などに繋がっています。

–実際に現地の人たちの生活は、アグロフォレストリーによって変化しているものですか?

松田さん

変わっていますね。ブラジルには、治安が良くない地域が存在しています。アグロフォレストリーを実践している農協のCAMTAの人たちによると、この手法で経済的に潤ったことにより犯罪の対象になってしまったそうです。そこで、地域の人たちにもアグロフォレストリーを教えることにしました。

すると粗末な家で暮らしていた人たちも、だんだんテレビを買えるようになったり、バイクに乗れるようになったりと潤っていき、まち全体が安全になったそうです。そういった活動が、大統領から表彰されたりもしています。

–絶大な効果が見られたんですね。では、なぜ御社はアグロフォレストリーに着目したのでしょうか?

松田さん

弊社の代表で創業者の長澤が、はじめはアサイーではなく、別のフルーツを求めてブラジルを訪れました。そして人づてにCAMTA農協を紹介され、トメアスに立ち寄った際に日系の生産者たちと出会いました。

彼らは日系2世・3世ですが、最初の1世の方々は、その多くが神戸からブラジルに渡って、厳しい環境の中で農業を続けながら「成功して日本に帰りたい」と思っていたそうです。この話を聞いた長澤は、自身が神戸出身ということもあり、彼らの想いをフルーツに託して日本に届けたいと考えるようになりました。

またトメアス周辺は、原生林が伐採された土地が広がっていたのですが、彼らは荒廃した大地をアグロフォレストリーによって森を再生させており、その姿に感銘を受けたことが何よりのきっかけです。

弊社の企業理念である「自然と共に生きる」もここから来ています。現在では、トメアスに住む170人ほどの農協組合員と、賛助会員という形で周辺の零細農家約1,800人が生産したアマゾンフルーツ原料を輸入しています。

【フルッタフルッタのシンボルマーク】

–そういった背景があったのですね。

松田さん

この出会いは、弊社のシンボルマークにも表れています。真ん中の鳥はコンゴウインコで、アマゾンでは絆の象徴とされています。

コンゴウインコを真ん中に配置することで、シンボルマークに「絆を大切にする会社」という思いを込めています。その絆を繋ぐのが「WILD TROPICAL FRUITS(野性的なトロピカルフルーツ)」です。

「BELEMーKOBE(ベレンー神戸)」と記してあるのは、日本からブラジルに渡った人たちが、神戸から出発してアマゾン川の河口の都市ベレンに降り立ったことから、このストーリーも大切にしたいという想いをこめています。

社名の「FRUTA FRUTA(フルッタ フルッタ)」は、ポルトガル語で「フルーツ フルーツ」という意味で、2つ繋げることでたくさんあるというイメージや多様性を表しています。

ブラジルの奇跡 アサイー:造血効果も!

–続いては、アマゾンフルーツについて教えてください。

松田さん

弊社では、アサイー・ピタヤ・クプアス・アセロラ・カカオ・マラクジャ(パションフルーツ)・カジュー・グァバ・グラヴィオーラ・マンゴー・アバカシ(パイナップル)の11種類のアマゾンフルーツを取り扱っています。それぞれのフルーツがさまざまな栄養素を含んでいるので、「天然のサプリメント」と例えています。

【アマゾンフルーツの栄養素】

強い紫外線にさらされて育つアマゾンフルーツはストレスで発生した活性酸素から身を守るため抗酸化成分を蓄えるとされており、そういった成分が結果的に人間にサプリメントのような効果をもたらします。

例えばアサイーには、ポリフェノール・鉄分・ビタミンEなどの栄養素をはじめ、アボガドなどと同じオレイン酸といった、体にいいオイルも含まれています。

少し前までは、抗酸化成分のポリフェノールが話題となっていましたが、今は貧血に効果のある鉄分が注目されています。

鉄分は酸素を運ぶ赤血球の原料となる栄養素ですが、さらに最近の研究で、マウス実験の段階ですが、アサイーを摂取すると体内でエリスロポエチンというホルモンが分泌されて、造血を促進する作用があることがわかりました。

–とても有能ですね!このアマゾンフルーツを使った商品作りに対するこだわりはありますか?

松田さん

「アマゾンの恵みを守って届けたい」という思いがあり、極力加工せず、美味しさと新鮮さをなるべく保持した状態でお届けする商品を作っています。

例えば、弊社のメイン商品であるアサイースムージーの「フルッタアサイー エナジー」は、ぶどう・アサイーピューレ・バナナ・レモンバーム抽出物・レシチン(大豆由来)と原材料も少なく、フルーツの甘みを活かしているので砂糖も添加していません。さらに、保存料や香料も添加していません。

スムージーの見た目はすごく濃いのですが、味はさっぱりしていてお菓子などにも使うことができますし、年齢・性別問わずいろいろな方に飲んでいただけます。ヴィーガンの方が安心して口にできるのも特徴ですね。

また、アスリートの方にも選んでいただいています。特に減量を必要とする競技や持久系の競技の方々に重宝されており、減量時の栄養不足を補ったり疲労回復や貧血改善のサポートに繋がっていると評価いただいています。

–おいしさや健康面のメリットなどは、今でこそ浸透していますが、販売開始当初の認知度を考えると、大変だったこともあるのではないでしょうか?

松田さん

2002年の創業時はとても苦労したと聞いています。代表はまずジュース屋さんから始め、当初はアグロフォレストリーや移民の人たちへの思いを前面に出していました。

しかし、一生懸命伝えてもお客様は引いてしまうことが多く、ある時「何かの宗教ですか?」と言われて足元から崩れるような衝撃が走り、目が覚めたそうです(笑)。それからは美味しさや健康面でのメリットを推して、ストーリーや想いは知りたい人にだけ知ってもらえればいいというスタイルに変更したそうです。

今ではサステナブルなどの意識も高まってきたこともあり、アグロフォレストリーや現地の人たちに対する想いも推せるようになりました。

今後の展望:アグロフォレストリーでつなぐ未来

–今後の展望を教えてください。

松田さん

環境に配慮した取り組みを色々と進めていきたいですね。

最近、アグロフォレストリーによるCO2削減量を商品ページに表示する「可視化表示」という取り組みを始めました。これにより、消費者の皆さんが少しでも「環境に貢献しているのだな」と感じてもらえたら嬉しいです。

商品パッケージも、凸版印刷のカートカン※という環境に配慮したものを使っています。この容器を使うことで間伐材を有効利用できるので、衰退している日本の林業の活性化にも貢献していければと思います。

カートカン

凸版印刷が開発した長期保存とリサイクルを可能にする紙製の小型飲料容器。高いバリア性と木を植え、間伐材を紙の原材料に利用することにより、資源を循環させ、環境に配慮している。

出典:TOPPAN『小型紙製容器 カートカン』

通販においては、工場から送られてきた大きな箱から個包装にしてお客様に発送しなければならないという作業があります。この時の梱包材を削減するために、工場やブラジルから届いたままで送る取り組みも行なっています。

そうなると1回の注文の量がすごく多くなってしまうのですが、それでも買ってくださるお客様がいらっしゃいます。はじめは「買ってくれる人はいるのだろうか」と社内で話していたのですが、意外にも買っていただけて。

これらの取り組みに加えて、今まであえて強くは語ってこなかったアグロフォレストリーや、ブラジルへ渡った日系の人たちのストーリーをどんどん伝えていこうというのが今後の弊社の方向です。最近、アグロフォレストリーへの関心が高まっていて「やっと、時代が来た!」と感じているので、どんどん発信していきたいなと。

–現在の商品以外にも展開していく予定はありますか?

松田さん

アグロフォレストリーでは、フルーツの他にも色々なものが収穫できます。材木も取れますし、樹脂や香辛料など多種多様です。これらをバランスよく消費して、どんどん現地を活性化していきたいですね。

ただ、それを実現しようとすると、弊社だけでは手が回らず限界があります。そこで、他の会社と連携しながら、アグロフォレストリーを広げていきたいと思っています。現在ではアグロフォレストリーで収穫したカカオを大手菓子メーカーのチョコレートの原料に使ってもらっているんです。

このように収穫できる素材に合った多種多様な業種の会社と連携して、アグロフォレストリーで生産したものを産業界全体に広げたいと思っています。また将来的にはカーボンクレジット発行を視野に入れながらゼロ・カーボンエコノミーの実現に貢献していきたいと考えています。

–貴重なお話ありがとうございました!

関連リンク

株式会社フルッタフルッタ:https://www.frutafruta.com/

アグロフォレストリー詳細情報:https://www.frutafruta.com/fruit/agroforestry/

オンラインショップ:https://frutafrutashop.com/