#インタビュー

福島県|「次の世代に残したい福島」を考える。SDGsに重なる復興再生への取り組み

福島県 企画調整部 復興・総合計画課 山田さんインタビュー

山田 清貴
昭和48年(1973年)9月23日、福島県福島市生まれ。
平成9年(1997年)4月、福島県庁入庁。商工労働部観光課配属。
平成13年(2001年)4月から2年間、人事交流により天栄村役場へ派遣。総務課財政係配属。
震災後平成23年(2011年)6月から5年間、企画調整部エネルギー課配属。エネルギー政策(原子力)、再生可能エネルギー推進を担当。
平成29年(2017年)4月から2年間、川俣町派遣(副町長)。
平成31年(2019年)4月に県庁に戻り、企画調整部復興・総合計画課配属。現在に至る。復興に関する情報発信や総合計画の策定を担当。

introduction

2011年の東日本大震災そして原発事故から11年。福島県では、県を挙げて復興に取り組み続けています。

今回は、企画調整部 復興・総合計画課の山田さんに、復興・再生や地方創生、そして国連の持続可能な開発目標、いわゆるSDGsに関して、どのような取り組みをしているのか、また今後目指していることについて伺いました。

復興×SDGs=福島県総合計画

–2022年4月にスタートした福島県総合計画には、SDGsの視点が盛り込まれていました。まず、福島県総合計画策定の背景ときっかけについて教えてください。

山田さん:2011年の東日本大震災と、東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下、「原発事故)という」からの復興・再生は本県にとって、避けて通れない問題であることはご存じの通りです。

総合計画は、「ありたい将来の姿」を県民の皆さんや本県に想いを寄せる方々とともに描いた県政運営の指針です。

本来であれば、令和元年から2年間でつくり上げて、令和3年の4月から新しい計画がスタートする予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響が甚大であったため、全庁をあげて感染防止に努めなければなりませんでした。

総合計画の改訂は、県のあらゆる計画を見直すことに繋がります。そこで一旦、計画策定作業を凍結し、また、新型感染症がもたらす影響分析も加えた総合計画を、3年間かけて策定することとしました。

本県が東日本大震災と原発事故からの復興という、複雑で多様な課題の解決に取り組むその姿は、世界の課題を解決しようとしているSDGsの理念と一致していると考えています。

また、SDGsが掲げる17のゴールというのは、持続可能な社会を目指す上で、世界全体で考えなければならない「課題の縮図」とも言えます。

そのため、新しい総合計画の策定に際しては、SDGsの理念と一体化して策定することとし、具体的には、17の目標ごとに「福島県であればこういう状態を目指したい」ということを、文字にして表しました。

大きな課題は人口減少:150万人維持をめざして

県の将来を考えていくうえで、人口減少は大きな課題の一つと思われますが、お考えや具体的な取り組みについて教えてください。

山田さん:人口減少は全国的に大きな課題です。福島県でも東日本大震災以降、人口減少スピードは加速しており、平成10年1月の214万人をピークに、直近では180万人を割り込んでいます。

人口減少対策については、地方創生総合戦略や人口ビジョンを策定して、目標値を掲げて取り組んでいるところであり、いかに減少スピードを押さえるかが重要です。

本県においては、「2040年に150万人程度を維持する」という数値目標を掲げています。

この地方創生総合戦略は、総合計画の実行計画(アクションプラン)と位置づけて、「人・仕事・暮らし・人の流れ」の4本柱で、全庁をあげて人口減少対策に取り組んでいます。

人口減少の要因としてはどのようなことが考えられるのでしょうか。

山田さん:人口減少の要因は、自然減と社会減の2つです。特に、自然減の理由として出生数の低下があります。それには未婚化・晩婚化・晩産化が関係しています。

本県は、全国的にみても平均初婚年齢が低い県だったのですが、その年齢が上昇しています。社会の変化、女性の社会進出によるライフスタイルの変化など、要因は様々です。単純な施策で解決できる課題ではない、まさに総合政策として取り組むべき重要な課題です。

地方に追い風が吹いている!DXを活用した雇用創出と暮らしの変革

–「地方からの若年層の流出」という点も、人口減少の課題の一つだと思いますが、雇用を増やすために県としてどんな取り組みをされていますか?

山田さん:いかに生業(生計を立てるための仕事)・働く場を確保するかは、県民の皆さんの暮らしに直結する大事な視点であるため、様々な部署が取り組んでいます。

若い方、特に女性が就職や進学先を考えるとき、働きたい仕事・会社・業界や学べる場の全ニーズを東北地方の1都市で賄い切れるかというと、なかなか厳しい状況です。就職や進学のタイミングで、一定程度の人口流出は自然な流れなのかもしれません。

魅力的な学びの場・働く場所をつくる施策も大事にしながら、一旦首都圏などに出ていった方が戻ってくるような還流をいかに作れるかが大事と考えています。

コロナの世の中になって、地方に追い風が吹いていると思っています。

いわゆる働き方の多様化が進んで、場所を問わない働き方を選択できるチャンスが広がっています。そこに響くような施策が有効だと考えています。

県では2021年度に「デジタル変革推進基本方針」を打ち出しました。企画調整部のデジタル変革課が中心となって短・中・長期的な視点で取り組んでいるところであり、主に県庁内を対象とした「行政のDX」と県民の暮らしや仕事など地域社会を対象とした「地域のDX」の2本柱で、市町村との連携・協働にも力を入れながら、DXを進めているところです。

Degital(デジタル技術による)Transformation(変容/交差⇒X)デジタル技術を用いることで、生活やビジネスをよりよく変化させること

–自治体同士の連携も重要ですね。

山田さん:福島県は、7つの地域に分けられます。会津地方は会津と南会津、中通りは県北・県中・県南、浜通りは相双といわきに区分して、それぞれに「ミニ県庁」とも言える「地方振興局」が置かれています。

現在、会津地域を中心にデジタル変革が進んでおり、役場内の組織を変えたり、有識者をアドバイザーに招へいしたりし、デジタル変革に向けた新たな取組が生まれています。そういった先進事例を参考にしていくことも連携の1つです。

中核都市を中心とした他のエリアでも変革の動きはあります。しかし、全ての仕組みを県で統一することはなかなか大変なことです。その地域の歴史やこれまでの経過等も踏まえながら広域的に統合していく、そこを県が支えていく、というのがオーソドックスなやり方ではないかと思います。

怖いのは無関心!震災の風化を防ぎ、復興ビジョンを実現するために

県では東日本大震災と原発事故からの復興再生に取り組み続けていらっしゃいますが、一方で世界のコロナ禍によって、震災が風化されてしまう心配もあります。風化を防ぐためにはどのようなことが大切になるでしょうか。

山田さん:福島の将来に関心を持ってもらう取り組みが、やはり大事だと考えます。

福島の課題は福島だけの課題ではありません。日本全体もしくは全世界にも影響のある課題が山積している訳ですから。

例えば原発の廃炉作業とそれに伴う、汚染水・処理水の問題が注目されています。国は、来年には処理水を海洋放出しようとしていますが、県としては「国民の理解醸成が大前提である」と訴えています。海は世界と繋がっていますので、福島県だけの課題ではないのです。

そこで1番怖いのは無関心だと思います。SDGsの考え方に通じると思いますが、「次の世代を担う子どもたちに残したい将来ですか?」というところを見据えると、風化というのは一番の敵ではないでしょうか。

メディアだけに任せていると、月日が経つごとにどうしても露出は減っていきます。我々が「東日本大震災・原発事故の課題は常に身近にありますよ」という発信をし続けていくことが大切です。

復興・総合計画課として、節目節目の行事でも普段の業務としても、知ってもらう活動に力を入れていきます。

震災の影響で、一時は福島県産の食材に対する風評被害も出ました。月日が経ちこれらは落ち着いてきましたが、一方で新たな販路開拓に苦戦する生産者の方もいるようです。生産者を支援する仕組みについてはいかがですか。

山田さん:総合計画の中の「仕事」の領域で、「もうかる農林水産業の実現」という柱を立てて取り組んでいます。

「売れない」ということの原因をしっかり分析すること、そして、作ってから売り先を考えるのではなく市場のニーズに合ったものを作っていくということも大事だと思います。

風評被害は間違いなくあります。一方で、風評のせいばかりにせず、「風評被害以外の原因はないのか?」という思考も有効であると感じています。

震災を風化させないための取り組みの一つとして、「ホープツーリズム」や教育旅行の誘致にも力を入れていると思いますが、観光業についてのお考えを聞かせてください。

※ ホープツーリズムとは

震災・原発事故の被災地をフィールドとした、福島県が推進するアクティブラーニング対応型の新しい教育旅行プログラム。

山田さん:教育旅行全般については、コロナ前には震災以前の7〜8割まで回復していたのですが、現在のコロナ禍の状況ではどこの県も厳しいと考えます。インバウンドについても同じ状況で、外国人観光客がグッと減ってしまい、観光中心のエリアにはダメージが大きい。

県としては、観光業は引き続き主力産業と考えています。例えば、会津地方の歴史と文化、そして浜通りの災害があったエリアでのホープツーリズム。「学びのツアー」というのは、本県の観光業の大事な視点です。

復興の柱は「再生可能エネルギー・水素」。新たな雇用創出も

–環境への取り組みについてお聞かせください。

山田さん:震災後の県復興ビジョンの柱の1つが、「再生可能エネルギー先駆けの地の実現」です。

福島県は、大規模水力や火力、そして原子力等による「電気のふるさと」として日本経済の発展を支えてきました。ピーク時は首都圏(東京都と隣接3県)の使用電力量の3割超を福島県産の電気が占めていました。

しかし、原発事故の甚大な被害を受けた福島県は、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を復興の柱の一つに掲げました。

原発ではなく、再生可能エネルギーにシフトしていく。同時に水素にも注目しています。水素は非常に環境に負荷が少ないエネルギー源です。

そこに着目した大手自動車会社と連携しながら、様々な施策を進めています。

–新しい雇用も期待できそうでしょうか。

山田さん:原子力産業は裾野が広く、大きな雇用を生んできました。その代わりの新しい産業を作らなくてはいけない。

国策としてのイノベーションコースト構想にも水素エネルギーが重要なキーワードとして位置付けられています。水素を中心にして日本の社会・産業も変わっていく可能性があるのではないでしょうか。

総合計画周知のための授業・SDGs・プラットフォーム

–SDGsと一体化した総合計画を周知していくために、どんな事をしていますか?また今後していきたいことがありますか?

山田さん:計画はつくって終わりではなく、つくってからどう活用するかが本当に大事です。

まず、総合計画を知ってもらう・触ってもらうことが大事と考え、小・中学校、高校、大学にこちらから出向き、知事を筆頭に、復興・総合計画課の職員による出前講座を実施しています。

また、学校だけでなく、依頼のあった会社や団体に行って、計画に込めた想いやポイントなどを説明しています。

特に「福島県は将来どういう姿になっていたいのかを、いろいろな人の意見を聞いてまとめた」ということを意識してお話ししています。

関心を持っていただければ、足元の暮らしを見つめ直していただくきっかけになるのではないかと考えています。そして、目標とのギャップが見つかればそれを課題とし、解決するためにすべきことを考える、そのような行動の流れを促せれば、と思っています。

総合計画の知名度は、残念ながら高くはありません。一方で、SDGsという言葉はとても有名なキーワードです。そこで、SDGsというキーワードの方を入口にして、将来の事や今なすべきことを考えてもらう、という伝え方をしています。

SDGs推進のためにというより、結果的にSDGsの理念に通じるということが、特に行政では多いのです。

日頃の業務でSDGsに関係していないものはほとんどなく、「SDGs推進のために」と言わなくても、東日本大震災からの復興につながる仕事であれば、結果的にSDGsのどこかに繋がってくるはずです。復興・再生も人口減少対策も、SDGsの17のゴールのどこかに効いてきます。

難しく考えず、SDGsの知名度を生かして取り組んでいきたいと思います。

現在は内閣府と同じような推進プラットフォームを起ち上げ、4月から会員を募集し、会員同士で切磋琢磨し、課題解決に取り組めるような仕掛けづくりにも力を入れています。

–ふくしまSDGs推進プラットフォームについて具体的にお聞かせください。

山田さん:今は復興・総合計画課の既存のホームページにリンクを貼っていて、専用サイトは準備中です。

ふくしまSDGs推進プラットフォーム
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11015b/fukushima-sdgs-pf.html

県内に会社や支店がなくても、福島県内のSDGsの取り組みに関心がある団体であれば会員になれます。任意の団体、学校の部活やサークルでも入れます。ハードルをなるべく低くしてまず会員を募り、こちらから情報を発信しながら、会員同士で繋がっていけるような仕組みを作っているところです。現在155団体(7月末時点)が参加しています。

SDGsに関心を持って取り組んでもらうためには、「企業にとってのメリットを提示する」ことも必要なのかもしれませんが、将来的にはメリットを意識せずとも当たり前のように取り組んでいるような状況にならないと、その企業自体の存続が厳しくなってくるかもしれません。

CSRでもなく、当たり前にならないと生き残れない。ただ、いきなりそこに行くのは難しいですね。コストを考えれば安いところに流れてしまうのを、どうやって会社の理念として乗り越えていけるか、これはすぐには変えることはできないと思います。

その辺りをどう支えていくかは、行政として責任のあることだと感じています。

Corpolate Social Responsibility 企業の社会的責任。収益を求めるだけでなく、環境活動、ボランティア、寄付活動など、企業としての社会貢献の活動。

–最後に今後に向けての展望をお聞かせください。

山田さん:「30年=1世代単位で将来を考えていく」、それが次の世代にどういう福島を残したいかに繋がると思います。

途中経過地点のゴールとして、総合計画には「こういう2030年でありたい」と書きました。

ひと・暮らし・しごとが調和しながらシンカ(進化、深化、新化)する社会としましたが、SDGsにも経済と社会と環境が調和した社会とあり、一致しています。その理念と一体化しながら次の世代に持続可能な福島を残していく、常に30年先を意識しながらその時その時にすべきことをしっかりやっていく、私としてはそう思っています。

これらの取り組みは県庁だけではできません。福島の復興に想いを寄せてくださっている県外の方も含めて、将来の姿を共有しながら取り組んでいくことが、1番の近道と考えています。

–本日はありがとうございました。

取材:大越
執筆:栗田

関連リンク

福島県総合計画
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11015b/comprehensiveplan2022-2030.html