橋本商店街協同組合 | 「社会的弱者にやさしいまちをつくる」顔の見える関係性を大切にした、これからの商店街の役割

橋本商店街協同組合 古橋さん インタビュー

古橋 裕一

1973年2月 相模原市で生まれる。最終学歴は、法政大学経済学部経済学科卒業。中学、高校、大学と10年間体育会柔道部に所属。この部活動で色々な意味でのメンタルが強化されたと感じる。25歳で父の経営する、地場ビルダーである相陽建設㈱に後継者として入社、32歳の12月に同社代表取締役に3代目として就任。就任後、商工会議所活動や青年会議所(JC)活動を通じ、地域経済活性化の重要さを強く感じる。会社は社会の公器であることと、地場ビルダーの社会的責任、そして自らが思う理想の街は、「社会的弱者に優しい街」であり、自治会を含め様々な地域団体が衰退する中、街を牽引するのは経済人であるとの信念から、商店街活動及び商工会議所活動に積極的に取り組んでい

introduction

神奈川県相模原市にある橋本商店街協同組合。昭和40年に法人化しましたが、その歴史は古く、江戸時代から宿場町として栄えてきました。全国で商店街が縮小や衰退する中、橋本商店街は様々な取り組みを行い、地域経済の発展に貢献しています。

今回は、橋本商店街協同組合の古橋理事長に、取り組みや大事にしている想いなどについて伺いました。

歴史があり、恵まれた立地にある橋本商店街

–早速ですが、橋本商店街について教えてください。

古橋さん:

橋本商店街は、相模原市の中でも中心市街地である橋本駅周辺の地域にあります。JR東日本の横浜線と相模線、京王電鉄の相模原線の3線が乗り入れ、将来的にはリニアも通るため利便性が高く、恵まれた立地条件の地域です。

橋本商店街協同組合は、この橋本駅周辺の商業を営んでいる方々が組織している商業者団体です。組合が法人化したのは昭和40年ですが、商店街自体はもっと前から存在していて、江戸時代から宿場町として栄えてきた歴史があります。

現在、組合には飲食店や美容院、ネイルサロン、建築業など様々な業種で、主に小規模事業者が多く集まっています。商店街協同組合に加盟しているのは、このような小規模事業者が136店舗、大手スーパーなどの大規模事業者が約23店舗の合計約160店舗です(2022年8月現在)。

私たちは商店街が活性化し、地域経済が元気になるように、様々なイベントや企画に取り組んでいます。その中で大事にしていることは、地域団体との連携です。商店街だけで取り組むのではなく、自治会やNPO、企業、学校など、地域の団体や人々と連携して、地域経済を盛り上げていくことを目標に活動しています。

現代における商店街の役割と時代に沿った戦略でまちを活性化

–具体的にどのようなイベントを行っているのでしょうか?

古橋さん:

地域のお祭りや子ども向けのハロウィンイベント、スタンプラリーなどを行っています。

また、商店街の店舗が先生となって、一般の方向けの講座をする「まちゼミ」にも力を入れています。店の経営者が自分たちの商品やサービスに関することを教える、少人数向けの講座です。たとえば、飲食店で包丁の研ぎ方を教える講座や、居酒屋では子ども向けに「お父さんに作るおつまみ講座」を開催しました。

まちゼミをやる目的は、お店のファンを作ることです。店舗と住民が交流することで、お店の人柄を知り、「この人から買いたい」と思ってもらえるような仕掛けをしていきたいんです。

というのも、今はコンビニやスーパーの数が充実していて、ペットボトル一つ買うにしてもお店の選択肢がたくさんある時代ですよね。それを「あの人がいるからこのお店に行きたい」と思ってもらえるような、顔の見えるイベントを考えていくのが、これからの時代の商店街の役割だと思っています。単純にイベントを開催するのではなく、人と人のつながりを意識したイベントを企画していきたいですね。

商店街は小規模店が集まっているので、大規模な宣伝や広告はどうしてもできません。そのため店が単体でやるのではなく、商店街として寄り添い協力し、戦略的にやっていくことを意識しています。

その宣伝媒体の一つに「橋本アプリ」があります。

地域住民の方にアプリをダウンロードしていただき、お店の情報や地域のお祭り、イベントなどの情報を発信しています。アプリを使ったスタンプラリーも実施しました。店舗に設置したQRコードをアプリで読み込んでもらい、5つスタンプがたまるとスマホ上でガラポンができる仕組みです。おかげ様で現在4,000ダウンロードを達成し、多くの方に利用していただいています。

このように、時代に合わせた商店街のあり方や宣伝、集客方法を常に模索しながら活動しています。

–現代社会では、多くの商店街が衰退しているイメージがありますが、橋本商店街ではさまざまな工夫をして盛り上げているんですね。

古橋さん:

全国の商店街が衰退している原因の一つに、高齢化もあると思います。橋本商店街は比較的若い年代の方が多く、平均年齢は40代です。私は約10年前に30代で理事長になり、当時は相模原で一番若い理事長でした。理事長が若返ったのも、全体が若くなった要因かもしれませんね。そして、恵まれた橋本の立地条件にも支えられていると思います。

とはいえ、やはり商店街は工夫しなければ生き残りは厳しい状況です。私は商店街が地域経済を引っ張っていく役割があると思っています。経済が活性化しなければ地域は盛り上がりません。商店街がリーダーとなって、地域経済の発展を担う。これをみんなの共通認識として持ち、経済でまちを元気にすることを目指しています。

社会的弱者にやさしいまちをつくる!引きこもり支援活動「職業トレーニングプログラム」

–橋本商店街では、「引きこもり支援活動」や「橋本のまちをキャンバスに!SDGs Color Art Project」など、SDGsにも積極的に取り組んでいますよね。それぞれ詳しく教えてください。まず、引きこもり支援はどのような内容でしょうか?

古橋さん:

若者の職業的自立を支援する「さがみはら若者サポートステーション」と連携して行っている取り組みで、引きこもり経験者やコミュニケーションに不安をかかえた若者を受け入れ、職業体験を実施しています。

18〜39歳の若者を橋本商店街協同組合の事務局で受け入れ、最大3カ月間、かんたんな事務作業や電話の対応、配布物を加盟店舗に届けるなどの仕事を体験してもらいます。事務局では年間3〜4人を受け入れており、これまでに累計29人のサポートをしてきました。

–この取り組みをはじめたきっかけはなんだったのでしょうか?

古橋さん:

さがみはら若者サポートステーションが橋本にできたのをきっかけに「一緒にやりましょうか」と、連携して行うことになりました。

以前より、私は「社会的弱者にやさしいまちをつくる」ことを商店街の理想として持っていました。ストレス社会と言われる現代において、誰もが弱者になる可能性がありますよね。そんな社会で、どんな人でも安心して暮らせるまちをつくれば、将来的に長く住めるのではないかと思います。

そして現実的な問題として、引きこもりだった人々が職に就こうと思ったときに、職業体験を受け入れてくれる先が少ないんです。多くは短期のみで、軽作業しかやらせてもらえない。でも、商店街はいつでも人手不足だし、資料を封筒に入れるなどの単純作業も多いので、3カ月の長期間で受け入れることにしました。

さらに商店街は人と人とのふれあいが多いので、どっぷりとした人間関係の中に入ることで彼らにとっていい影響になるんじゃないかなと思っています。

–この取り組みを通して、若者に変化はありましたか?

古橋さん:

受け入れを始めたときよりも笑えるようになったり、自分から話しかけられたりするようになったと思います。朝起きて、仕事をするルーティーンができて「健康になった」という人もいますね。はじめは硬くなっていても、「こんなに温かい人間味のある世界があるんですね」という人もいました。

職業体験の期間が終わると、関係性ができて商店街の中で就職する人もいれば、自信がついて就職活動をがんばる人もいます。明らかな変化があり、効果を実感しています。

実は、受け入れをはじめた当初は、店舗側からは「引きこもりを受け入れて大丈夫なのか?」と心配する声もありました。しかし、取り組みはじめて、一緒に店舗を回ってあいさつしたり話したりしているうちに「普通の子なんだね」と受け入れてくれるようになります。職業体験をしている子たちも「自分は受け入れられている」と実感できて、双方にとっていい影響があるように感じています。

おかげ様でこの職業トレーニングプログラムが評価され、2019年に「さがみはらSDGsアワード大賞」を受賞しました。

アートでSDGsと多様性を投げかける「橋本のまちをキャンバスに!SDGs Color Art Project」

–次に、「橋本のまちをキャンバスに!SDGs Color Art Project」について教えてください。

古橋さん:

「SDGsカラーをモチーフにした思い思いの線を描く」がテーマのアートプロジェクトです。SDGsカラーを使ったアート作品を多摩美術大学の学生と障がい者の方に制作していただき、地下道や橋本駅北口の喫煙所など、橋本エリアの様々な場所に掲示しました。

このプロジェクトは、日本たばこ産業株式会社(JT)と私たち橋本商店街協同組合が「さがみはらSDGsパートナー※」になったことがきっかけで生まれました。

さがみはらSDGsパートナー

相模原市とともに、SDGsの達成に向けた取り組みや地域課題の解決、SDGsの普及啓発に取り組む企業・団体等を「さがみはらSDGsパートナー」として登録する制度。

JTの方と「せっかくお互いSDGsパートナーになったから、何かできるといいですよね」と話していたんです。橋本商店街の周辺には美術大学もあるので、そこも含めてSDGsとアートをかけ合わせた取り組みはどうか、と相談していました。

そこで、同じくさがみはらSDGsパートナーの「障害福祉サービスの生活介護事業所『8-18』」も一緒になって、学生と障がい者がSDGsカラーのアートを描く取り組みをすることになりました。アート作品が人々の目に触れることで、SDGsやダイバーシティについて考えるきっかけを持ってもらうことや、住み続けられるまちづくりに貢献できたのではないかと思います。

正直に言うと「SDGsは開発途上国のための指標」というイメージがあったので、商店街でSDGsを取り入れることは難しいと感じていました。しかし、このような連携の機会をいただき、地域住民の方のSDGsへの認知にもつながったのでうれしく思います。

地域住民の反応と今後の課題

–このように様々なことに取り組んでいる橋本商店街に対して、地域の人々はどのように思っているのでしょうか?

古橋さん:

まず地域住民は、大きく2つに分かれます。自分の馴染みの店がほしくて商店街を積極的に利用する人と、大規模商店だけを利用する人です。

商店街をよく利用している方からは「いいことやってるね」「がんばってるね」など、好意的に受け取っていただいています。しかし、大規模商店ばかりに行く人は、そもそも商店街の存在を知らない人も多いんです。

皆さん「商店街」というと、アーケードがあるところや通りをイメージするかもしれませんが、橋本商店街はそうではなく店が点在しています。そのため商店街自体を知らない人がまだまだ多いのが現状です。認知度が足りていないので、ここに関してはもっと努力する必要があると感じています。

一方、商店街の加盟店数はこの10年ずっと増え続けているので、一定の評価をいただけているのかなと。これからも加盟店の皆様と協力して、商店街を盛り上げていきたいと思っています。

時代に合わせて変化しながら、経済活性でまちを元気に

–最後に、今後の展望や商店街での目標などについて教えてください。

古橋さん:

目標は、地域にある商店街すべてに加盟していただくことですね。そして、「住むなら橋本だよね」「店をオープンするなら橋本だよね」と言われるようなまちをつくることを目指していきます。

まちづくりに経済の活性化は欠かせません。地域のお店が元気になり、活発に住民が行き交うことが住みやすいまちだと信じています。そのためにも、今はアプリに力を入れています。時代に合わせてツールややり方を柔軟に変えながらも、商店街ならではの人とのつながりを大事にしていきたいです。やっぱりまちは人とのつながりが一番ですから。

今後も、社会的弱者も含めてみんなにやさしいまちづくりを目指していきます。

–お話を聞いて、これからの商店街の可能性を感じました!本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

関連リンク

橋本商店街協同組合 公式サイト:https://84moto.biz/