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グローカルとは?注目理由と真似したい企業の取り組み事例を解説

日本経済は第2次世界大戦以降、世界経済との結びつきを深める中でグローバル化が進み、急速に成長してきました。GDPは1980年代から伸びていき、1993年には世界の約18%を占めます。日本企業が、製造の拠点をアジアへ移し始めたのもこの頃です。※[i]

しかし今、グローバルにはない新たな視点が注目を集めています。それが「グローカル」です。この記事では、グローカルとは何か、なぜ注目されているのか、実践する企業と取り組み事例などを紹介します!

グローカルとは

グローカル(glocal)とは、グローバル(global:地球規模の)とローカル(local:地域的な)を合わせた言葉で、「地球規模の視野で考え、地域で行動すること」を言います。

この考え方は、国際開発支援や環境保全運動の中で生まれた「地球規模の視野で考え、地域で行動せよ(Think globally, act locally)」という標語によって広まり、国連人間環境会議(1972年)から地球サミット(1992年)を通じて使われました。この間の1980年代に、海外市場に進出した日本企業が、現地の文化や習慣に合わせた製品やサービスを提供するマーケティング戦略として「グローカル化(Glocalization)」を打ち出したのが、言葉の起源です。

最近では、「グローカル企業」「グローカル人材」など、様々な場面で使用されています。

グローカル企業とは

グローカル企業とは、国際的に事業を展開しながら、地域の特性に合わせた方法で事業活動を行う企業のことです。海外に現地法人や子会社を持つ大企業だけでなく、海外進出を進める中小企業など、地域の言語や文化、習慣に応じた事業を行う企業を指します。

グローカル人材とは

グローカル人材とは、国際社会に通用する能力やグローバルな視点を持ち、地域社会や地域経済の活性化と発展に貢献する人材のことです。求められる能力は、

  • 語学力
  • コミュニケーション力
  • 多文化を理解する力
  • 世界から見た地域産業の魅力を発見する力
  • 世界に情報を発信していく力

などが挙げられます。

企業におけるグローバル戦略をリードし、世界と地域を結んで、産業を活性化するなどの役割が期待されています。

なぜグローカルが注目されている?

グローカルが注目されている理由には、人口問題や経済成長という日本が抱える課題が関わっています。

人口減少に伴う国内需要の低下

日本の総人口は、2021年10月1日時点で1億2,550万人と、前年に比べ0.51%減少し、減少幅は過去最大になりました。※[ii]2040年には、1,500万人少ない1億1,092万人になると予想されています。※[iii]

このまま人口が減少すれば、国内需要が低下し日本経済の成長も見込めません。そこで、日本から世界へ市場の枠を広げ、国内の産業の発展につなげていくことが求められています。国外に事業を展開し、海外の需要を取り込む戦略です。グローカルは、これを実現するための手段の一つとして期待を集めています。

経済成長の必要性

経済産業省は、人口の少ない地方が経済成長を実現するモデルを確立し、日本経済全体を活性化させる「グローカル成長戦略」をまとめています。※[iv]

それによると、日本のGDPの伸びは、平成元年から平成29年まで約1.6倍であり、アメリカの約3.5倍、ヨーロッパの約2.7倍と比べて低い結果となっています。また、世界の情勢に目を向けてみると、北朝鮮の問題や中国の台頭などにより、日本を取り巻く環境は不安定です。

これらのことから、自由と民主主義、繁栄を続けていくためには、日本の経済成長が欠かせないとしています。人口の少ない地方でも、世界市場とつながることで成長している他国の事例もあり、日本においてもグローカル戦略を進めていく方針です。

グローカルを実践する企業と取り組み事例

グローカルを実践する企業4社の取り組み事例を見ていきましょう。

イオンモール株式会社

(引用元:イオンモール株式会社「海外事業」)

イオンモール株式会社は、全国に商業施設を展開し、ショッピングモール開発や管理・運営をする企業です。経営方針では、「グローバルレベルで通用し、地域(ローカル)に密着した経営を実現するグローカル企業を目指す」と定めています。

海外事業展開

イオンモールは、中国と東南アジア(ベトナム、カンボジア、インドネシア)で事業を行っています。中国では、北京、天津、山東省、江蘇、浙江、湖北、広東を中心に出店を進め、東南アジアでは12モールを展開。現地のニーズに合わせて、柔軟に事業活動を行ってきました。

各国に合わせたサービスの提供

インドネシアでは、タクシーの配車や電子マネーなどを扱う現地のベンチャー企業、ゴジェック(GOJEK)と協業して、施設内でこれらのサービスを提供しています。また、同国のECプラットフォーム運営会社とも提携を結び、オンラインとリアルの店舗を新規出店し、現地の顧客の利便性を向上していくとしています。

一方、中国では、ネット通販の大規模なセールが行われる独身の日(11月11日)に、イオンモール内の専門店の価格をネット店舗と同じにしたり、オンラインよりも安くなるクーポン券を発行したりするなどのサービスを行いました。※[v]

セールの開催はもちろんのこと、現地の企業との協業により、需要のあるサービスなどをより的確に提供しているのが特徴です。

サラヤ株式会社

サラヤ株式会社は、洗浄剤や消毒剤、うがい薬などの衛生用品の開発・製造・販売などを手掛ける会社です。グローカルな取り組みとして、東アフリカの国ウガンダにて、手指消毒剤の製造を行ってきました。現地で実施しているプロジェクトと共に紹介します。

100万人の手洗いプロジェクト

本プロジェクト開始当時、ウガンダでは5歳未満の子どもの死亡率は非常に高い状況でした。現在でも、1,000人中55人の子どもが亡くなっています。死因の多くは、下痢性疾患や肺炎などの手を洗うことで予防できる病気です。しかし、水や手洗い設備が足りていません。

そこで、日本ユニセフ協会とウガンダ政府とパートナーシップを結び、簡易の手洗い容器を普及させる活動を支援。手洗いの重要性を啓発する活動も行っています。※[vi]

アルコール手指消毒剤の現地生産

ウガンダでは、病院などの医療機関においても手指衛生の設備が整っておらず、WHOが推奨するアルコールベースの手指消毒剤の調達が難しいという実情がありました。そのため、アルコール手指消毒剤の現地生産と共に、医療従事者への教育・普及活動を行っています。

ウガンダでは、ビールや蒸留酒が国内で生産されています。サラヤは、現地の大手製糖会社と共にその技術を生かして、アルコール手指消毒剤の生産に成功しました。現地スタッフの採用や教育、資材の確保、品質管理などの多くの課題を乗り越え、今では安定して生産ができているとのことです。※[vii]

ウガンダでの生産活動は、現地の会社やスタッフと協力しながら、社会貢献活動にもつながっている点が、成功している理由でしょう。

【関連記事】サラヤ株式会社|社会課題に寄り添い解決する商品開発で、明るい未来を創る

株式会社たじまや

(引用元:株式会社たじまや「干しなまこ」)

島根県隠岐郡海士町にてナマコの加工場を営むのは、株式会社たじまやです。漁業者から原料となるナマコを購入し、乾燥加工した後、販売しています。代表取締役の宮崎氏は、出身地を離れて移り住んできたIターン者です。ここでは、海士町の支援策にも注目して見ていきましょう。

町が商品開発を支援

宮崎氏が中国のナマコ市場に関する情報を集めたところ、食へのこだわりが強いことや、医食同源にも関心があることが分かりました。そこで、海士町の商品開発研修生になり、ナマコ加工の事業計画を立てました。町はこの計画を支援し、宮崎氏が研修生の間、月給を支給しました。

海士町はもともと、地域おこしとしてIターンに力を入れているほか、島の外からの視点だからこそ気づく「島に眠る価値」を見いだし、商品化してもらうための移住制度「商品開発研修生」を創設しています。宮崎氏はこれを利用して事業を起こしたのです。

香港や中国への乾燥ナマコの輸出

近年、中国ではナマコの人気が高まり、需要も増えています。中国の山東省はナマコの産地として有名ですが、養殖が主流です。そのため、日本の天然の乾燥ナマコはブランド力が高く、人気があります。

たじまやは、当初中国の大連に直接出向いて販路の開拓をしましたが、商売には結びつきませんでした。転機となったのは、海士町のIターンによる移住者が話題になり、新聞に連載されたことです。それを見たナマコ商社からの問い合わせがあり、取引が始まりました。現在では、売り上げ実績は比較的安定しており、香港や中国各地の高級食材の店頭に並べられています。

町の充実した支援制度や、商社を介したグローカルビジネスの好例と言えるでしょう。※[viii]

株式会社西原商事

(引用元:株式会社西原商事「海外事業」)

株式会社西原商事は、廃棄物処理・資源物リサイクル事業を展開する企業です。インドネシアのスラバヤ市に分別リサイクル施設(JICA事業)や、生ごみの堆肥化施設(環境省事業)を建設しています。

外務省やJICA、環境省、北九州市などの支援による分別処理施設の建設

スラバヤ市では、廃棄物が投棄や放置されたままになり、そこにはごみを拾うことで生計を立てる人が集まっている実態がありました。そこで、外務省やJICA、環境省、北九州市などの支援により、現地の人と共に分別施設を建設し、廃棄物の処理を行っています。

衛生面や効率面、資源循環率が向上するほか、環境負荷の低減に貢献しています。

現地の雇用の創出

建設した処理施設では、ごみを拾うことで生計を立てていた低所得者を雇用し、安心で安全な生活を提供しています。また、西原商事は、継続的な人材育成や、住民の環境意識の向上にも貢献してきました。その結果、河川への不法投棄がなくなったことで水害を防止できたほか、交通渋滞の緩和にも寄与しています。※[ix]

外務省などの支援を利用しながら、社会や環境の向上、現地の雇用を創出した取り組みが光る事例です。

グローカルを実践するためには

グローカルは大きな可能性を秘めつつも、海外進出はハードルが高いと感じる部分もあるでしょう。企業の取り組み事例にあるように、自社のみで実践しているケースは多くはありません。そこでグローカルを実践するヒントを、主に2つのポイントから見ていきます。

支援機関を利用する

一つ目が、外務省やJICA、環境省、自治体などで行う支援を受けることです。外務省では「日本企業支援」として、日本企業の海外展開支援を行っています。各国の大使館や総領事館などに日本企業支援窓口を設け、相談を受け付けています。

例えば今年、在サンフランシスコ日本総領事館などが主催し、サンフランシスコにて、和牛PR事業が行われました。企業では、TREX(和牛輸入業者)、米国サントリー、北米伊藤園などが参加しています。※[x]

他にも、民間企業とJICAが、途上国の課題解決に取り組む民間連携事業や支援組織があります。

■海外進出の主な支援機関

  • 外務省「日本企業支援」
  • JICA「民間連携事業」
  • JETRO(日本貿易振興機構)
  • 中小企業庁など

支援機関に相談し、海外進出のプロセスを含め、グローカルな視点を知るのも一つの方法でしょう。

現地の組織とパートナーシップを結ぶ

二つ目は、現地の自治体や企業と協業したり、提携を結んだりすることです。現地の文化や習慣、ニーズを知り、それらを事業に活かしていくためには、多くの情報を持った地元の組織と連携すると、円滑に進めることができます。提供したい製品やサービスに合わせた連携先の選び方は、先に紹介した支援機関に相談することも可能です。

グローカルは自社のみで進めていく方法もありますが、関係機関と一緒に進めていくことで、より視野が広がる場合もあります。支援を受けながら、さまざまな情報を集めていくのも有効でしょう。

まとめ

「地球規模の視野で考え、地域で行動すること」を意味するグローカルは、これから日本経済や企業が成長するために必要な考え方です。とはいえ、企業にとって海外進出は容易ではありません。この記事で紹介した取り組み事例を参考に、自社の製品やサービスを海外で提供するイメージをつかんでみるのも良いでしょう。支援機関を利用すれば、より具体的なプロセスが見えてくるほか、情報収集も効率良くできます。グローカルを実践するためには、さまざまな支援や組織との連携が役に立つでしょう。

<参考資料>
※[i] 経済産業省 通商白書 第2章 グローバリゼーションの過去・現在・未来「第3節 日本のグローバリゼーションの歴史
※[ii]総務省統計局「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)
※[iii] 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)
※[iv] 経済産業省「グローカル成長戦略報告書
※[v] WWDJAPAN「アジアで急拡大する「イオンモール」 26年2月期に倍増の70施設に」、流通ニュース「イオンモール/インドネシアEC大手のJDドットアイディーと協業開始イオンモール株式会社
※[vi] サラヤ株式会社「100万人の手洗いプロジェクト
※[vii] サラヤ株式会社「病院で手の消毒100%プロジェクト」、生物工学 第98巻 第8号(2020)「企業のグローカル事例:ウガンダにおける バイオエタノールを利用した手指消毒剤の製造と利用」隈下祐一著
※[viii] 株式会社たじまや、多摩大学研究紀要「経営情報研究」No.22 2018「グローカルビジネスと地域振興―島根県隠岐郡海士町のナマコビジネスを例に―」奥山雅之著、隠岐郡海士町オフィシャルサイト
※[ix] 経済産業省 令和3年版 通商白書 第Ⅱ部 第2章 第3節「3.価値を共有する仕組みの実現」、株式会社西原商事
※[x] 外務省「日本企業支援