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ゴールドリボン運動とは?取り組み事例や私たちにできること

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ピンクリボン、レッドリボン、オレンジリボンといわれて何のことかすぐにわかる人はどのくらいいるでしょうか。ピンクリボンは乳がん検診のよびかけ、レッドリボンはエイズで亡くなった方への追悼、オレンジリボンは子どもの虐待防止を伝えるための運動で用いられます。

リボンの色に様々な意味を持たせる運動をまとめて「アウェアネスリボン」といいます。その中の一つに「ゴールドリボン運動」があります。ゴールドリボン運動は小児がんと闘う子どもたちや家族を支援するための運動です。

遊び盛り、学び盛りの子どもたちが突然、小児がんと宣告されて病院での治療を余儀なくされている現状があります。しかし、小児がんは大人のがんと比べると症例が少なく、研究が進んでいません。

今回はゴールドリボン運動の内容や運動の背景、NPO法人ゴールドリボン・ネットワークの活動や活動事例について紹介します。ゴールドリボン運動を知る際の参考にしていただければと思います。

ゴールドリボン運動とは

ゴールドリボン運動とは、小児がんの子どもたちや家族を支援する運動のことです。大人のがんに比べて圧倒的に数が少ない小児がんについての理解を促進し、精神的・経済的なサポートをに理解を示す印として用いられています。

小児がんは大人のがんに比べると治療法の研究や薬の開発が遅れています。なぜなら、小児がんの患者は大人のがんに比べて少ないからです。大人のがんは年間で約100万例(男性566,460例、女性432,607例)*1)報告されているのに対し、小児がんは年間で2,000~2,300例です。*2)

加えて、他のがんに比べて小児がんは理解が進んでいない病気であり、専門医が少ないという課題があります。せっかく治癒しても肥満や低身長といった後遺症が残ることがあり、生活の質が低下してしまうという難題も抱えています。

そのような背景の中、近年ゴールドリボン運動は、小児がんの子どもたちを支えるための運動として広がりを見せつつあります。リボンにゴールド(金)を用いている理由は、子どもたちが国の宝であると考えているからです。ゴールドリボンには子どもたちの健康を守り、夢や希望をもって生きられるようにするための願いが込められています。

小児がんとは

もう少し踏み込んで小児がんについて確認していきましょう。

小児がんとは、小児がかかる様々ながんの総称です。*3)日本では15歳未満を「小児」と区分しますが、小児であっても大人と同じようにがんに罹ります。主な小児がんは以下のとおりです。

白血病血液中の白血球ががん化し無制限に増殖する病気で、小児がんで最も多くの割合を占める。32.3%
脳腫瘍頭蓋骨内にできる腫瘍のことで、発生数は白血病に次ぐ。25.1%
リンパ腫免疫機能をつかさどるリンパ節・脾臓・骨髄といったリンパ組織で発生するがん。
リンパ組織は全身に分布しているため、全身のあらゆる場所で発生する可能性がある。
9.8%
胚細胞腫瘍精子や卵子にある前の細胞から発生する。
胸の奥や後腹膜、お尻の骨といった体の中心部で発生する。
7.1%
神経芽腫副腎や交感神経節(背骨の脇)などで発生する。6.1%
*2)*3)

大人のがんとの大きな違いは、生活習慣に関わりなく発生することです。小児がんの症状は、特有なものがほとんどありません。風邪のような症状や痛みが継続といった理由で受診した際に、小児がんと診断されることがほとんどです。小児がんの主な症状は以下のとおりです。

  • 発熱
  • 頭痛
  • リンパ節の腫れ
  • 骨や関節の痛み
  • 筋肉のしこり
  • 胸のしこり
  • おなかのしこり
  • 血液細胞の異常
  • その他の症状

*3)

どれも一般的な風邪や筋肉痛で発生してもおかしくない症状です。その他の症状としては、歩行がおぼつかない、顔面がゆがむ、視力の低下、眼の動きの不自然さ、けいれん発作、離すことが不自由といったものがあります。

もともとわかりにくい小児がんですが、年齢によって発見が遅れることもあります。たとえば、乳幼児は表現方法が限られているため自分の症状を親などに伝えにくく、病気の発見が遅れてしまうことがあります。*3)

年長児の場合は、症状があっても親などの大人に相談せず、症状が進行してしまうことがあります。小児がんの中には急激に進行するものがあるため放置するのは危険です。何らかの重い症状があったり、いつもと様子が異なったりした場合は、必ず医療機関に相談しましょう。

ゴールドリボン運動が始まった背景

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ゴールドリボン運動はなぜ提唱されるようになったのでしょうか。ゴールドリボン運動を広めようとしている理由を考えます。

小児がんの知識の普及と小児がんの支援を目指す

ゴールドリボン運動はアメリカで始まりました。アメリカの小児がんに関する団体がゴールドリボンを使用したのが運動の始まりとされていますが、正確な開始時期などはわかっていません。*4)

ゴールドリボン運動の背景には、小児がんについてもっと広く知ってもらい、支援を訴えたいという思いがあります。先ほど述べたように、小児がんは大人のがんに比べて発生数が少なく、治療や薬の研究も遅れています。

小児がんの治療はとても大変です。治療の副作用や後遺症で日常生活に支障が出てしまうことが多々あります。たとえば、髪が抜けたり、身長が伸びなくなったり、透析が必要になったり、義足が必要になったりするといった影響が出るのです。*4)

小児がんの知識があまり一般に普及していないため、周囲からの無理解や偏見にさらされてつらい思いをする方も少なくありません。そうした状況を改善するための活動がゴールドリボン運動だといってよいでしょう。

ゴールドリボン・ネットワークの活動内容

ゴールドリボン運動に取り組んでいる団体として、2008年に設立されたNPO法人ゴールドリボン・ネットワークがあります。ここでは、ゴールドリボン・ネットワークの活動内容をいくつか紹介します。

オンライン医療相談

ゴールドリボン・ネットワークでは小児がんについての無料オンライン相談を受け付けています。本来は432円の利用料がかかるメディカルノートが提供しているオンライン医療相談サービス「Medical Note 医療相談」を無料で提供しています。

小児がんの初期症状や入院治療に関する質問、退院後の相談など幅広い内容に無料で応じてくれるためとても頼りになるサービスです。

小児がん情報提供

ゴールドリボン・ネットワークでは公益財団法人の神戸医療産業都市推進機構が提供する「がん情報サイト」や小児がんに関する広報誌・ガイドブックの制作を支援しています。

2013年に出版された「小児がん治療後の長期フォローアップガイド」では、小児がんに関する臨床事例や治療法、心理面でのケアなど幅広い内容が扱われており、治療に役立てられています。

イベントの開催

ゴールドリボン・ネットワークは小児がんの理解を進め、支援の輪を広げるために各種のイベントを開催しています。

具体的には、

  • ウォーキング
  • マラソン
  • スポーツイベント
  • 音楽イベント

などの各種イベント開催を通じて、小児がんに対する理解を呼び掛けています。

学習室等の環境整備のよびかけ

ゴールドリボン・ネットワークは治療や入院によって子どもたちの学力低下が起きないよう、教育の場を整備することが重要であると考えています。そのため、小児病棟に「ゴールドリボン学習室」を設置して学習環境を整備する運動を進めています。

就労支援

ゴールドリボン・ネットワークは小児がん経験者への自立支援を行っています。その一環として就労支援も行っています。小児がんの経験者は後遺症の影響や晩期合併症に対する周囲の理解不足などにより、働くことが難しい方もいます。

※晩期合併症

小児がんが治癒した後も残る影響のことで、がんそのものの影響のほかに、薬物・放射線の治療による後遺症などがある。肥満や糖尿病、不妊、学習障害、てんかん、免疫低下、肝機能障害、呼吸機能異常など後遺症は幅広い範囲に及ぶ。*5)

ゴールドリボン・ネットワークは、支援企業の協力の下、職場見学会や職場体験実習を企画し、就労支援を支援しています。

ゴールドリボン運動に関する取り組み事例

では、ゴールドリボン運動を支援する取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な取り組み事例を紹介します。

ウォーキングイベントの開催

アフラックは、2007年から始まった「ゴールドリボンウオーキング」に特別協賛を行っています。このイベントは小児がんの子どもたちを応援するためのチャリティイベントです。

イベントに参加することはもちろん、イベントで受け付けている寄付に応じることで小児がんへの支援に参加できます。集まった寄付金は小児がん病院の環境整備や医療研究機関、小児がん関連団体などに届けられます。*6)

チャリティグッズの販売

アフラックでは「ゴールドリボン・チャリティグッズ」であるゴールドリボンダックを紹介し、売上の一部を「小児がんゴールドリボンの日」に寄付しています。*6)

他にも、果物の輸入やカットフルーツの販売を手掛けているファーマインドでは、「山バナナ」「陽なたバナナ」の2品にゴールドリボン・ネットワークのロゴを入れて販売し、売上の一部を同NPOに寄付しています。*7)

ゴールドリボン運動で私たちができること

ゴールドリボン運動について、私たちは何ができるでしょうか。ここでは、イベントへの酸化とNPO法人への寄付について取り上げます。

イベントへの参加

1つ目は各種団体が開催するイベントへの参加です。先ほど紹介した「ゴールドリボンウオーキング」は歩くことで小児がんの子どもを支援するイベントですので、誰でも参加ができます。ゴールドリボンウオーキングの参加費は大人1,500円、小中学生700円です。*8)

参加費無料のイベントなども全国各地で開催されていますので、参加して小児がんに関する知識を深めるといった形の支援も可能です。

NPO法人などへの寄付

ゴールドリボン運動を行っているNPO法人などに寄付することでも運動の支援となります。NPO法人への寄付の中には、正式な手続きを踏めば寄附金控除が受けられ、税制面での優遇が受けられます。節税と支援を両立させることができるので、寄付をする人にとっても大きなメリットとなります。

ゴールドリボン運動とSDGs

小児がんは大人のがんに比べて研究が進んでおらず、まだまだ支援が必要です。ゴールドリボン運動は小児がんに苦しむ子どもたちの状況を少しでも良くするために活動しています。ゴールドリボン運動とSDGsの関わりについて見てみましょう。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」との関わり

小児がんの啓発活動や小児がん患者とその家族へのサポートはSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の理念に合致します。小児がんは生活習慣などで発生するがんではなく、自分で防ぐことが困難な病気です。

ゴールドリボン運動は彼らの生活が少しでもより良いものとなるための支援活動を行っています。私たちが直接できることは多くありませんが、イベントへの参加や支援団体への寄付を通じて、小児がんの患者と家族を支援することができるでしょう。

まとめ

今回はゴールドリボ運運動を取り上げました。小児がんは時折ニュースとして報道されていますが、一般的な認知度は決して高くありません。まして、治癒後の後遺症により社会参加が難しくなることはあまり知られていないと思います。

私たちはゴールドリボン運動に関連する活動に参加したり、小児がんについての知識を学んだりすることで小児がんへの理解を深め、彼らの社会活動をサポートできるように学ぶべきなのではないでしょうか。

参考
*1)国立研究開発法人国立がん研究センター「最新がん統計:[国立がん研究センター がん統計]
*2)国立研究開発法人国立がん研究センター「小児がんの患者数(がん統計):[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
*3)国立研究開発法人国立がん研究センター「小児がんについて:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
*4)がんサポート「小児がんで苦しむ子どもたちとその家族を救いたい ゴールドリボン運動のさらなる推進への熱き想い
*5)厚生労働省「小児がんの晩期合併症について
*6)アフラック「ゴールドリボン運動 | ESG | 企業情報
*7) 認定NPO法人 ゴールドリボン・ネットワーク「企業や団体からのご支援事例
*8)ゴールドリボンウオーキング実行委員会「ゴールドリボンウオーキング2024
*9)スペースシップアース「SDGs3「すべての人に健康と福祉を」私たちにできること・日本の取り組み事例 – SDGsメディア『Spaceship Earth(スペースシップ・アース)』